魔導剣史リリカルアート・オンライン   作:銀猫

5 / 17
なんだかんだで連載することにします。

前回までのあらすじ

キリトがシグナムとの模擬戦で二刀流スキルを発動した瞬間、デバイスが壊れてしまった。
その時、キリトの脳裏には75層のあの場面が蘇った。


#2 禁句(タブー)

―試験前日:訓練所―

 

「はぁ!!」

 

 

 

キリトが二刀流でガジェットを切り捨てていた。今現在フォワードはデスクワークをしているため、局員ではないキリトが貸切状態で剣を振ることができるのだ。

 

そして二刀流スキル『センレツココウセン』でガジェットを破壊していた。

 

 

《マスター! ストップです!!》

 

「っ!!」

 

 

最後のガジェットを切ろうとした瞬間、エリュシデータがそう叫んだ。すぐさまデバイスを引き、エリュシデータでガジェットを切ったあとにデバイスを見た。

 

 

「……ダメか」

 

 

デバイスの刀身には罅が入っていた。腹の部分から柄、全体的に薄くだ。これ以上無理をしたら今度は刀自身まるごと砕けてしまいそうだった。

 

 

「う~む……明日の試験どうするか……」

 

 

相手が片手剣のソードスキルのみで倒せる相手ならまだしも、二刀流で挑まなければならなくなった場合、おそらくデバイスだとジ・イクリプスやスターバースト・ストリームなどの上級スキルが1度使えるかどうかだ。

 

 

「パパ~!」

 

 

すると、訓練を見守っていたユイがナビゲーションピクシーの姿でやってきた。

 

 

「どうかしたのか?」

 

「これを見て欲しくて……」

 

 

 

そう言ってユイが見せたのはとあるウィンドウだった。

ちなみにどういうわけかユイはこの世界の電子機器やこういった魔法関係のウィンドウ操作が既に問題なく行うことができる。

さすが元カーディナルのAI

 

 

「これは……何かのデータか?」

 

 

ずらっと並んだ文字列、一応メカトロニクスを専攻し、ある程度のプログラミングなどができるキリトだったがこれがなんのデータなのかはわからなかった。

 

 

「私の中に残されていた僅かな『ダークリパルサー』のデータです」

 

 

―デバイスルーム―

 

 

「なるほどね……確かにこれは私の考えてたシステム構造とはだいぶ違うわ……」

 

 

わずかに残ったダークりパルサーのデータを見たシャーリーは唸っていた。

それと同時にエリュシデータのシステムも確認していた。

 

 

「これは……ユイちゃん、大手柄よ!」

 

「え?」

 

 

 

興奮したようにいったシャーリーはエリュシデータのデータとデバイスのデータを表示した。キリトは何がどうなってるのかわからないがユイはそれを見てハッとしていた。

 

 

「これは……エリュシデータのデータにはアンチクリミナルコード有効圏内と同じシステムが……?」

 

「SAOの『圏内』と?」

 

 

圏内――それはSAOにおいての『安全地帯』である『主街地』に張られたシステムだった。

その圏内ではプレイヤーへの攻撃は不可視の障壁に阻まれ、HPは減少せず、攻撃を食らうとノックバックと衝撃音が発生する。

 

 

「けどなんでそんなものが…?」

 

「デバイス全部に『非殺傷モード』ってのがあるの。多分それがユイちゃんのいうアンチクリミナルコード有効圏内ってのとほぼ同じ作用をしてると思う。だからエリュシデータにそれがあるのに気づかなかったのよ。そして…」

 

 

次に表示したのはデバイスのデータ。拡大されたシステムコードにはそのシステムが表記されていなかった。

 

 

「多分これが理由だね。このシステムがキリト君のソードスキルってのを発動するための制御に何らかの影響があるんだと思う。それと同時にデバイスにかかる負荷を抑えている…それでデバイスが壊れたけど、エリュシデータは大丈夫だったんだ。特に二刀流は負荷が大きいんだね」

 

「なるほど…じゃあそのシステムをデバイスに搭載することはでるか?」

 

 

キリトの言葉にシャーリーはサムアップして答えた。手伝いのため、部屋にユイを残してデバイスルームからキリトが出るときに後ろから「さあ、忙しくなるぞー!」「はい!」と喜ぶような声が聞こえた。

 

 

 

―翌日―

 

 

「すいません、わざわざ車を出してもらって…」

 

「ううん、今回の推薦人のはやての代理として行くことになってたから気にしないで」

 

 

ミッドチルダの道路を静かに進むのはフェイトの運転する車だった。助手席にはシャーリーが乗り、後部座席にはキリトが座っていた。

 

 

「ところで、ユイちゃんは?」

 

「ああ、ユイは寮母のアイナさんに頼みました」

 

 

アイナ・トライトン。機動六課の寮の寮母であり今回キリトは彼女にユイを預けてきた。

 

本人は来たがっていたが、昨夜の作業に思いのほか時間がかかったのか、終盤になると寝てしまったようでシャーリーが一人で作業していた。

 

一応起こしたのだが、すぐにぐっすりと眠ってしまったのでそのままアイナに任せてきた。

 

 

「そういえば、今日俺が試験で相手する人ってどんな人なんですか?」

 

「えっと、確か管理局の武装隊の訓練生だったはず」

 

 

武装隊:戦闘が見込まれる事態が発生した場合、前線の戦闘員として出動する戦闘専門の魔導師が所属する部隊。

 

 

訓練生となるとそれほどの強者――少なくとも昨日戦ったシグナムのような相手が来ることはまずないだろう。

 

 

―武装隊:待合室―

 

 

「おー、ここか…」

 

 

試験会場となる武装隊の訓練場。キリト以外にも十数人のライセンス取得のためにやってきた魔道士がいた。その中にはキリトの仲間であるエギルのような筋肉質な男性もいれば『鼠』のアルゴのような少女もいた。

 

 

「ではこれより委託局員のライセンス取得試験を開始する。番号が呼ばれたものから戦闘を始める」

 

 

試験官らしき男性の言葉に他のメンバーに緊張が走った。だがキリトはそんなものは新たなエリアのフロアボスよりも気楽に居ることができた。

 

 

「俺の番号は…15か」

 

 

目算で数えると最後のほうだろう。そう思ってキリトは朝シャーリーから受け取ったデバイスを起動させ状態を確認した。

 

 

―朝:回想―

 

 

「キリトさ~ん!!」

 

 

正面玄関にて車を回してくるフェイトを待っているとシャーリーが生き生きとやってきた。

 

 

「完成しました!」

 

「早いな!?」

 

 

徹夜で作業したとは思えないほどハキハキしているシャーリー。

彼女の手には昨夜と同じようにカード式になったデバイスとエリュシデータがあった。

 

 

「それとブレイブハートにダークリパルサーのバックアップを搭載しました!」

 

「ブレイブハート?」

 

 

 

聞き覚えのない名前だったがシャーリーは「あ」と思い出してキリトに渡したカードを指差した。

 

 

「その子の名前です。ずっと名前がなかったので…」

 

「…そうだな、よろしく。ブレイブハート」

 

 

キリトの声に反応するかのようにカードが光った気がした。

 

 

―回想終了―

 

 

この2日で2度壊れたとは思えないほど刀身は綺麗になっており、シャーリーが徹夜で『圏内』のシステムを導入してくれたため、おそらく二刀流で戦っても問題はないはずだった。だが、それでも試し切りなんてする時間がなかった。

 

 

「…エリュシデータ、今回はできる限り二刀流は使わないでいく。だけどいざという時になったら頼むぞ」

 

《了解》

 

 

それからキリトが呼ばれたのは30分後だった。

 

 

 

―訓練所―

 

訓練所は闘技場のように円形で、壁のほうには観客席のようなものがあり、何人かの観客がいた。見た感じ、そこにいるのは推薦人のようでフェイトとシャーリーもいるのが見えた。

 

 

「では試験番号15番、桐ヶ谷和人の試験を開始する。最終確認だが使用デバイスはアームドデバイス、剣型で間違いはないな?」

 

 

「はい」

 

 

すると訓練所中央に水晶のようなものが置かれた。

どうやらまずはこの水晶である程度の力を測るそうだ。

 

 

「エリュシデータ、セットアップ」

 

《Set Up》

 

 

キリトはエリュシデータのみセットアップさせ、構えた。

ほどなく、ソードスキルの光が灯った。だが剣としての間合いにしては遠すぎる。

すると、その場から動かずにキリトは切り上げるようにエリュシデータを振った。

 

 

「マジンケン!!」

 

 

地を這うようにしてキリトの放った斬撃が水晶にぶつかった。

すると「ピッピッピ」という音とともに試験官の目の前にウィンドウが現れた。

 

 

「ふむ…Bランクか…なかなかの素材だな…」

 

「(えーっと、たしか最大がSで次にA、Bって言ってたから…そんなもんか)」

 

 

マジンケンはSAOのソードスキルでは基本的な技だ。ほかにも強力な技もあるが、正直に言うとキリトは昔あった血盟騎士団の勧誘のようなことがあると面倒だから手を抜いていたのだ。

 

 

「では次は実技だが……おい、ケンはどうした?」

 

 

試験官がそう近くにいた補助員に聞くと彼は少し難しい顔をしていた。それに「またか」と頭を抱える試験官。すると近くの扉が開いて金髪で右耳にピアスをしたいかにもチャラい少年が入ってきた。

 

 

「ちょっす、遅れったす」

 

「ケン、お前いいかげんにしろよ…」

 

 

どうやらキリトの試験の相手のようだが、日常的なサボリ魔のようだった。

 

 

 

「あー、どうせ俺が来なくても変わらないからいいっすよ。そこにいる『女顔』が相手っすよね?」

 

「…(ピク)」

 

 

 

半笑いでキリトを見ているケン。一瞬キリトの口角がつり上がったのに気づいていないのか、ポケットからデバイスらしきキーホルダーを取り出すと指先でくるくると振り回し始めた。

 

 

「こんなんらくしょーっすよ。パッパッと終わらせますって」

 

 

「………」

 

 

 

水晶が撤去され、広くなった訓練所。剣をセットアップしたケンという少年に対しキリトは笑顔だった。

 

 

「わりーな、遅れちまって。まあどうせ俺様に勝てないから気にするな」

 

「……エリュシデータ」

 

 

 

エリュシデータはただ名前を呼ばれただけなのにカタカタ震えていた。デバイスでも恐怖を感じるのかとキリトはなにか違うことを考えていた。

 

 

「二刀流だ、セットアップ」

 

《で、ですがマスター。できる限り二刀流は――》

 

「hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry hurry」

 

 

《s set up!!》

 

 

 

過去にも感じたことがない恐怖にエリュシデータはすぐにカード状のブレイブハートを起動させた。

キリトの背に現れたブレイブハートを間髪いれずに抜くキリト。

 

 

 

「そ、それでは実技を開始――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン! マジンケン!」

 

「がぐぎえごばぇどぎえごばをぅぇどぶだげがくぎぎょぼぶぅぇどぶだげがびをくぎぎょぼぶぅぇどぶだげがびぃがぇごがぶだぎえごばをぅぇどぶだげがくぎぎょぼどぶだげがくぎぎょぼぶぅぇどぶだげがびをくぎぎょぼぶぅぇどぶだげがびぃがぇごがびぃがぇごがぐぎえごばをぅぇどぶだげがくぇどぶだげがびぃがぇぎぎょぼぶぅぇどぶだげがびをくぎぎょぼぶぅぇどぶぅぇどぶだげがびをくぎぎょぼぶぅぇどぶだげがびぃがぇごがげがぎえごばをぇどぶだげがびぃがぇぅぇどぶだげがくぎぎょぼぶぅぇどぶだげがびをくぎぎょぼぶぅぇどぶだげがびぃがぇごがびぃがぇごがぐぎえごばをぅぇどぶだげがくぇどぶだげがびぃがぇぎぎょぼぶぅぇどぶだげがびをくぎぎょぼぶぅぇどぶだげがびぃがぇごがぐぎえごばをくぎぎょぼぶぅぇどぶだげがびぃがぇごぇどぶだげがびぃがぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

両手の剣を用いて、マジンケンを連発するキリト。この技は使用者のAGI(敏捷)によってスピード、STR(筋力)で威力、DEX(技術)で硬直時間短縮ができる。

 

そしてキリトのステータスは並大抵の相手よりも上なのだ。そのためほぼ硬直時間が無く、強力なマジンケンを連発できる。

たいていの相手だとマジンケンはただの牽制にしかならないが、相手は見た感じ訓練をサボっているど素人、よけれる可能性は低かった。

 

 

 

そんな蹂躙される光景に他の試験官や見守っていた推薦人達はあんぐりしていた。

 

 

「お゛、お゛れがごんな゛お゛ん゛ながお゛に゛ぃ゛」

 

「エリュシデータ」

 

《りょ、了解!》

 

 

 

マジンケンを放ちながらキリトはケンに近づいた。そして間合いに入るとマジンケンから次は二刀流で切りまくった。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!」

 

 

切り上げ、斜め切り、交差、ブレイブハートは折れることもなくしっかりとその威力を保っていた。

 

そしてその動きは――

 

 

「あれは…スターバースト・ストリーム…」

 

 

シグナムとの戦いで見せたキリトの技。だがその時よりもキレも威力もあるのはなぜだろうとシャーリーは考えていた。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

《エンブレイサー》

 

 

「グフォッ!!!」

 

 

エンブレイサー――通常なら手刀で相手の体を貫くこの技だが、最後の理性なのか握りこぶしで殴りかかった――顔面に。

 

 

 

1回、2回とボールのように跳ねて、ケンはそのまま壁に激突した。

そして『返事が無い、ただの屍のようだ』よろしく、気を失った。

 

 

「…来なくても結果は変わらなかったな。お前の負けで」

 

 

そう言って、キリトは剣を収めた。

 

―機動六課―

 

 

「合格なのは良かったけど……なんか、お疲れやな」

 

 

 

部隊長室でキリトの合否判定を戻ってきたフェイトから聞いたはやてはそう呟いた。その横に立っているシャーリーも同様でこの場にいないキリトが何をしたのか気になる反面、知ってはいけない気がしていた。

 

 

「そういや、キリト君は?」

 

 

―キリト・ユイの部屋―

 

「ぶぅ~」

 

「機嫌直してくれよ…ユイ…」

 

 

ベットの上、頬を膨らませてふてくされているユイにキリトは申し訳なさそうにそういった。その光景を微笑ましくアイナは見ながら取り替えたシーツをたたんでいた。

 

 

「ユイちゃん、もうパパさんのこと許してあげたら?」

 

「だってパパの戦う姿見てみたかったんです~!」

 

 

そう言ってプイッと顔をそらしたユイ。だがそのことを後に聞いたフェイトとシャーリーは見なくてよかったよと口を揃えて言っていた。

 

 

「お願いだ~」

 

「…じゃあ、ひとつだけ我が儘聞いてください」

 

 

 

―無限書庫―

 

 

「わぁ~!!」

 

 

ユイのお願い、それはミッドチルダの最大図書館である無限書庫に連れて行って欲しいというものだった。起きた時に六課にあった本を読んでいたんだが、それは管理局についての資料だったりと彼女はあまり興味がなかったようだった。

 

そんな時、アイナから無限書庫の一般公開コーナーには様々な物語の本が貯蔵されているというものだった。

 

 

「すいません…無理を言って…」

 

「ははは…構わないよ。最近だと無限書庫に来る子供もいないからね」

 

 

幸いにもキリトの世界の免許はこの世界でも使用可能だったため、ヴァイスからバイクを借りて無限書庫にやってきたのだ。

 

あらかじめ、なのはがここの職員に話を通しておいてくれたおかげか、ユイはすぐに興味深々に本を物色していた。

 

 

 

「そういえばまだ名前を聞いてなかったね。僕はこの無限書庫の司書長のユーノ・スクライア」

 

「あ、俺は民間委託魔導師のキリトです」

 

 

小声でその後「今日からですけどね」と付け足した。すると読みたい本があったのか、ユイは取り出した本を浮かびながら読んでいた。

 

 

「ところで、あの子は君の妹か――」

「娘です」

 

 

間髪いれずに答えたキリト。この質問や間違いはこの世界にやってきて何度もあったためすでに条件反射のごとく答えてしまう。

 

 

「…見たところ、君は僕と同じぐらいの歳みたいだけど…」

 

「今年で18歳だ」

 

 

それを聞いて少しユーノは驚いていた。ボソリと「僕より年下だったのか…」というのが聞こえたため、おそらくユーノはアスナと同い年ぐらいだろう。

 

 

「じゃあ、あの子はワケあり…かな?」

 

「そう…ですね」

 

 

そのことは一番キリトとアスナが気にしていたことだった。自身も訳ありということだからそのことに偏見を持つことがなかったが、他人のからユイをそういうふうな目で見られるのは我慢ならなかった。

 

 

「ああ、ごめん。気を悪くしたらな謝るよ。僕もそうだったから…」

 

「…え?」

 

 

そして思い出すかのようにユーノは自身のことを語っていた。両親と死別して、部族に育ててもらったこと、そしてその後、紆余曲折でなのはたちと出会ったことを聞いていた。

 

 

「だからかな、あの子が羨ましいなって。どんな事情があれ、親と一緒にいられるのが」

 

「……………」

 

 

 

 

―翌日―

 

 

「じゃあ、今日からキリト君も訓練に参加してもらうことになるからね」

 

 

早朝訓練でなのはがそう言うとフォワードの4人は「おー」と驚いた顔と少し複雑な顔をしていた。

あの日、難易度最大のシュミレーションを難なくクリアしたのだ。そんな実力者がポンと隣に立っているのは複雑のようだった。

 

 

「じゃあ、キリト君VSフォワードで戦ってみようか」

 

 

「「「「「「………………え?/キュクル?」」」」」」

 

 

隣ではなく、相手として立ちふさがった。

 

 

 

 

 

 

 

 

いつものようにシャーリーが設定した廃墟の訓練所に5人+1匹の姿があった。だがキリトはひとりで準備運動がてらに体を伸ばして4人はどうするかのミーティングをしていた。

 

 

「まずキリトの装備、剣だけど対処できる?」

 

「剣のデバイスを持ってる人ってシグナムさんしか知らないね…」

 

 

ベルカ式の戦い方では剣よりもリーチがある槍の方が好まれていた。その中でも実力者と言えばシグナムぐらいしかいない。

 

 

「じゃあ、次に注意するのはキリトの反射速度だね」

 

「そうですね…」

 

 

スバルの言葉に4人の脳裏にはあの雨のように降り注ぐレーザーを掻い潜るキリトの姿が浮かび上がった。

 

 

「…とりあえず、通常通りエリオとスバルで接近、私がサポートでキャロがブースター…」

 

《そろそろ開始するよ》

 

 

 

廃墟中央の広場に立つキリト、その背中にはエリュシデータとブレイブハートがあるが、ブレイブハートのみを構えていた。

 

一方フォワード陣はスバル・エリオを2トップに後ろにはティアナとキャロという通常のフォーメーションだった。

 

 

《じゃあ、レディー…ゴー!》

 

 

 

なのはの開始の合図とともにスバルがまず距離を詰めた。

 

 

「リボルバーナックル!!」

 

 

スバルの合図とともに、右腕に装備されたリボルバーナックルから薬莢が弾きとんだ。

そして、既に間合いの中にいたキリトに向かって右腕を振りかぶった。

 

 

「はぁああああああああああああああ!!!!」

 

《リボルバーシュート》

 

 

至近距離で放たれた砲撃。通常なら避けるにもダメージは免れることができない距離、確実に当たると確信するスバル。

 

 

 

「…はぁ!!」

 

 

「「「「!!!!!?」」」」

 

 

 

だが、それは真っ二つに切られたリボルバーシュートが否定した。

 

 

 

 

「なっ…」

 

「魔法を切った!?」

 

 

その光景に避けた場合の援護の準備をしていたキャロとティアナも驚いていた。

キリトのALOにおける《システム外スキル》の一つ《魔法破壊(スペルブラスト)》だ。キリトにとってGGOの弾丸の速度からすればスバルのリボルバーシュートは比較的楽に切ることができた。

 

 

 

「考え事していいのか?」

 

「っ!!」

 

 

そう、スバルの攻撃がヒットしなかったということは、そこに好きが生まれる。

体術が基本のスバルの間合いにキリトがいるということは逆に『剣が武器のキリトの間合い』にいることにもなる。

 

 

 

 

「たぁ!!」

 

「くっ…」

 

ブレイブハートで横一線に切り出す『バーチカル』をスバルはなんとかリボルバーナックルで受け止めた。

 

 

「スバルさん!」

 

「おっと!」

 

 

その攻防戦の中、横からエリオがストラーダを振り下ろしてきた。

だがSAOのときのソロで大量のMobを殲滅していたキリトにとってその程度の奇襲なんて楽に避けれた。

 

 

「エリオ!!」

 

「!」

 

さらに、キリトは先ほどと同じように横一線でエリオを切った。

ギリギリで身を引いたためか、かすった程度だった――

 

「甘い!!」

 

「横!?」

 

 

横一線で切ったキリトはそのまま一回転すると同じように、今度はエリオの右側に横一線に剣を振るった。

 

 

「ッ!!」

 

「やばい!!」

 

鈍い痛みがエリオのわき腹を襲った。だが今度は背中、そして左側と連続で横一線に鈍い痛みが入った。

 

それを見たティアナはクロスミラージュで射撃するも、キリトはそれを難なく避けた。

 

 

「ま…だ…!!」

 

「いいや、終わりだ」

 

《ホリゾンタル・スクエア》

 

 

先ほど、キリトが剣を振るった軌跡が光の線となり、再びエリオに襲い掛かった。

 

 

「うわあああああああああああああ!!!!」

 

「エリオ!!」

 

 

ホリゾンタル・スクエアを食らったエリオはストラーダを手放してそのまま仰向けに倒れてしまった。

 

 

「残り3人…!!」

 

「キャロ、全力でサポートするわよ」

 

「了解!!」

 

 

ティアナの指示にキャロはすぐにスバルにブースト魔法をかけた。

それを確認したのか、すぐさまスバルはキリトとの距離をつめた。

 

「はあああぁぁ!!」

 

「!(速度が上がった…そうか、これがブースト魔法か!)」

 

 

スバルの殴打のラッシュを避けながらキリトはそう考えていた。

先日、シャーリーから教えてもらった魔法の種類について考えていると次にとるべき行動をすぐに導き出した。

 

 

「エリュシデータ」

 

《はい?》

 

 

キリトは背中のエリュシデータを抜くと、一言かけた。

だが雰囲気的に二刀流を使用したりするわけでもないため、エリュシデータは少しいやな予感がしていた。

 

 

「ごめん!」

 

 

そういうとキリトは『シングルシュート』で投げた。

 

 

 

 

 

 

《――――――マスタアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!!!!?????》

 

 

――エリュシデータを

 

 

「えええええ!!!?」

 

 

ドップラー効果で飛んでいくエリュシデータの向かう先には威力強化のブーストの詠唱をしているキャロがいた。

彼女はまさかキリトが剣を投げるとは思っていなかったらしく、驚愕しながら激突し、そのまま意識が切り取られた。

 

 

「きゅう~…」

 

「キャロォォォ!?」

 

 

僅かな時間で一気に2人、残ってるのは攻撃が全く当たらないスバル、そしてティアナ援護射撃をしてもキリトはそれを難なく避けていた。

 

フリードも残っているが、召喚師のキャロが戦闘不能のため何もできない。

 

 

「クッ!!(なんて反射なの…連携を簡単に崩すなんて…!!)」

 

「<ティアナ、どうするの!?ブーストなしで攻撃が当たる気配が全然ないよ!!>」

 

 

念話でそう泣き言を言うスバルだったが、実際問題キリトに攻撃がまだ一度も入ってないのだ。

 

その様子を見ていたなのはは少し考えていた。

 

 

「あくまでキリト君の戦い方はソロで戦うのに特化してる状態…」

 

「けど、おかしくないですか。キリトさんの実力はBクラスですよ、それなのにあの4人を圧倒するなんて…」

 

 

このとき、なのは達はキリトが手を抜いてBランクということを知らなかった。

 

 

 

 

「(攻撃は見えるんだが、防御力が高いな…75層にいればリタイアを減らせたかもな…)」

 

 

SAOの最大の惨事ともいえる75層のフロアボス戦。

最多の犠牲者を生み出した戦いでスバルほどの盾戦士がいれば救えた命も多かったかもしれない。

 

 

「(っと、今は関係ない。まずはどうやって…)」

 

「クロスファイア、シュート!!」

 

 

スバルの後方でティアナが無数の弾丸を発射させた。すぐさまスバルがその弾道線上から離れた。

 

 

「ッ…!!」

 

「(タイミングを逃してる、当たる!!)」

 

 

ティアナは立ち止まったキリトを見て攻撃が当たることを確信した。

 

 

「…見えた」

 

「え!?」

 

 

当たる寸前、まるで弾丸が来ないところが分かってるかのようにキリトは攻撃を避けていた。

 

 

「ティア、危ない!!」

 

「!!」

 

 

キリトは突きの体勢で突っ込んできた。スバルはリボルバーナックルで防御するために間に入って右手を盾にした。

 

 

「うおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

「!! (なに、この音!?)」

 

 

ジェットエンジンのような音と共に、キリトの突きにスバルは弾きとんだ。

 

 

「きゃあああああ!!!」

 

「きゃぁ!!」

 

 

そのままスバルはティアナに激突した。だが、それでも威力が止まらず、2人そろって吹っ飛んだ。

 

 

『そこまで!』

 

 

こうしてキリトとフォワードの初めての模擬戦はキリトの圧勝で終わった。

 

 

 

To be continued →

 

 




ひとまず様子見ながらこっちでも連載することにしました。
ユイ「様子みながら?」
「ここまで行ったら連載やる」ってラインギリギリだったから載せるんだけども、取りやめる可能性があるって感じ。
まあ、そこらへんは考えながらだね。


ユイ「パパは強いです!」
なんとなく、ファントムバレット編で女性アバターというのに肩を落としていたから女顔というのにコンプレックスを抱いてることにしました。
その結果がマジンケン連発…
ユイ「ということは、テイルズシリーズのスキルが多く入ることに?」
うん、本当はスターバースト→ジ・イクリプス→スターバースト→ジ・イクリプスというシステム上ありえない動きの予定だったけど、流石にパワーバランスの考慮してやめた。

そしてデバイスの名前は【ブレイブハート】とこの作品の本元での募集で投稿されたのをそのまま使用します。

それと言い忘れてましたがデバイスの音声は《》、スピーカーなどの音声や強調単語は『』、念話は「<>」で表示します。
ユイ「少しややこしいかもしれませんね…」
仕方ないけどわけないとどれがどの会話かわからないからね

それとアンケートは『オリキャラの募集』です。
ユイ「オリキャラですか? そういえばタグにもありましたね」
『ソードアート・オンライン』『魔法少女リリカルなのは』のイメージどちらかでも構いません。例えば『SAO帰還者で今はGGOで活動してる』や『機動六課の補助メンバー』などのキャラを募集します。
また、そのキャラと原作キャラとのカップリンクもありえます。
ユイ「え…」
……前もって言っておくとキリアス以外ですけどね。そこは譲りません。てかユイがいるのにキリトが浮気するなんてことは流石に…ね

っと、募集の前にこの作品、特にSAOの大まかな時代設定を説明してなかったですね。
ユイ「そういえば、いつの話なんですか?シノンさんがいるということはファントムバレットの後だと思いますが…」
時代的にはマザーズロザリオ後、アリゼーション前といったところです。キリトが襲われる少し前といったところですね。
そのためGGOプレイヤー、シノンの知り合いとかでも十分参加できます。
以下、注意事項

―SAOの世界からのオリキャラ―

・本名及びプレイヤーネーム必須(おそらくプレイヤーネームがメインで使用)
  ・デバイスを持っているのなら名前も一緒に(なかったらバックヤードもしくは勝手につけます)

・『SAO帰還者』『ALO』『GGO』などの(元)VRMMOのプレイヤー
  ・武器などの指定がある場合は書いてください。ただし二刀流などのユニークスキル等は不可とします。

・『管理局職員(民間委託)』などの正式局員ではない扱いになります。

―リリカルなのはのオリキャラ―

・名前及び階級

・所持デバイス(無ければ無し)の名称

・戦闘スタイルやポジション(あれば)

―共通―

・場合によってはオリジナルの部署所属になる(例:空士56部隊のように)
  ・必ず機動六課に所属することになるとは限らない

・出番の長さが安定してない。また場合によっては一話のみや途中退場などになる可能性がある。

・カップリンクについては作者の独断で決定します。「○○とのカップリンク」という希望があっても反映されないと思いますし、場合によってはオリキャラ同士となる可能性もあります。(オリキャラ同士が嫌という方がいるならあらかじめ言って下さい)
  ・もしも「なんで俺のキャラと○○とのカップリンクやらねぇの?」みたいなコメントや、批判があるのならキャラの登場を取りやめる可能性があります。

・『SAO』『リリカルなのは』以外の作品の容姿・能力等という説明があっても作者がわからない可能性があるので『○○の作品の○○に似ている』といったものはやめてください。

・名前や能力のみで投稿する場合は不採用にします。必ずそのキャラの来歴・経歴を下記のテンプレートに記入してメッセージで送るかもしくは活動報告の『キャラクター募集』で投稿してください。

※キャラクターテンプレ

名前:

(SAO)プレイヤーネーム:

(リリなの)ポジション:

年齢:

性別:

容姿:

デバイス名:

(SAO)VRMMO:

(リリなの)階級:

使用武器(形状):

詳細説明:


詳細説明の欄にはそのキャラの履歴などを書いておいてください
ユイ「どういうことですか?」
『SAOでは中層で活動してエギルとは店主と客の関係だったがALOでは自身も店を開いて、リーファがそこの常連~』のようにキャラとの関係や、立ち位置などを教えていただいたら登場がよりスムーズになります。
流石に名前や容姿だけで「お願いします」は無理なので…


さて、次回待ち遠しかった方もいるかもしれませんね。
ユイ「?」
次回#3 初出動-ファーストアラート-
お楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。