「たぁ!!」
ブレイブハートと名もないデバイスでクラインに切りかかるキリト。
部隊ザ・シードが設立されてから数日が立ち、結局キリトは押し切られる形でカグヤから剣を一本見繕ってもらったのだが――
「っあ――!!」
「…また駄目かよ」
クラインの言う通り、4本目の剣が真っ二つに折れた。コンソールを動かして様子を見ていたカグヤも頭をガシガシと掻いてため息をついた。
「原因は何ですかね」
「たぶんキリトのステータスの問題だろうな。基本的にブレイブハートは二刀流の補助で使われてたから耐久値の消耗が比較的に少なかったんだろう。やっぱりただのデバイスとゲームの武器がデバイスとなったのだと耐久値も高かったんだろう」
シャーリーの言葉にカグヤはそう自分の見解を述べた。現にブレイブハートもカグヤが修復する前は残り1割ほどの耐久値だったのだ。
すぐさまカグヤのデバイス『ガン・ドライバー』によって修繕したため、しばらくは問題ないだろう。
「…ところでよ、俺は何かしたか?」
先ほどから妙な視線が隊長陣やティアナから感じることにカグヤは怪訝な顔をした。事前に部隊長へと事情説明をしているはずなのだが、それにしても妙な感じがするのだ。
「えぇと…前にキリトさん達といざこざがあって…ザ・シードの人に対して少し思うことがあるらしいんです」
「いざこざ…ね。そんなの俺の知ったこっちゃねーよ…」
するとコンソール端にウィンドウが開き、アスナが表示された。その映像はキリトたちのところにも表示されているようでキリトとクラインがこちらを見ていた。
「キリト君、なんかはやてさんから招集だって」
―部隊長室―
「――という訳で、このままではあかんと思うんや」
はやてに呼び出されたのはザ・シードのメンバー全員とユイだった。ちなみにカグヤはほかに抱えてる部隊のザ・シードの隊員のところに向かったのでいない。
そしてやはりというべきか、呼び出した内容は今現在の交流環境だった。亀裂の走った今、もしもの状況に陥って連携を取らなくちゃいけなくなる場合、問題になりそうな雰囲気だ。
「それでどうしろと? 俺たちにすべてを話せっていうのか?」
「いや、私たちにだって人には言いたくないことぐらいあるわ。それを口にせいっていうのは無理な話や。やからの、ちょっとした協力作業せいへんかって思ってな」
そう言ってはやてが表示したのは――『地球』だった。
「今この地球…まあ、キリト君たちがいた地球とちゃうけど、ここにロストロギアがあるのが判明したんや。それほど危険度がないし、軽いものやけど、互いにピリピリしたまんまやとアカンから息抜きにどうやと思って」
「確かに私は仲が悪いのは嫌です…けど…」
シリカが言いたいのは最もだ。どちら側も今の環境が納得できるものではないとわかっている。だがそれだからこそ改善できるものではないというのもわかる。
特にティアナは幻惑の弾丸(ファントムバレット)を所持してるシノンに睨みを利かせている節がある。どうやら「努力もせずにレアスキルを手にした」と思っているのだろう。シノンは狙撃手としての精密射撃の訓練をしているため、ガンナーとして様々な訓練をしてるティアナと比べるとそう見えても無理はないかもしれないが。
「言ったやろ、息抜きやって。たまには違う空気を吸って気分を変えるのもええもんや。もしかしたらそれで何かが変わるかもしれへんしな」
「…ところで、ユイを呼んだ理由はなんだ?」
「ああ、ユイちゃんはどうするかなって。連れて行ってもええんやけど、仕事中は一人で留守番するのは心配やから現地の知り合いに預けることになる。大丈夫やと思うけど嫌なら六課で留守番することになるわ」
確かに、本人の意思で行くかどうか決めなくちゃならない。だがユイは迷うことなく一緒に行くことを決めた。
実際ここで待つのも地球へ向かうのもあまり違いがないからだ。
―翌日―
「第97管理外世界、文化レベルB……」
ヴァイスとアルトの操縦するヘリに分譲して転送ポートへ飛んでいる最中、キャロが地球の情報を眺めていた。ちなみにヘリ内部ではお互いの輸送スペースが映像で流れて会話できるようになっていた。
「魔法文化なし…次元移動手段なし…って魔法文化ないの!?」
ティアナが驚いたような声を上げた。一方キリト達からすればあったほうが驚きだった。異世界とは言え、自分たちが生まれ育った場所になたところで魔法が普及していたら違和感でしかない。
「ないよ、うちのお父さんも魔力ゼロだし」
「スバルさん、お母さんになんですよね」
「うん!」
スバルの両親については聞いたことがなかったが、よくよく考えれば『ナカジマ』という苗字も日本名だ。
「……なんでそんな世界からなのはさんとか八神隊長やキリトたちみたいな魔道士が…」
「突然変異というか、たまたまな感じかな?」
「っへ、あ、すいみません!」
まるで化物呼ばわりしたことに気づいたティアナはすぐに謝罪の言葉を並べるがはやては笑顔で許していた。
もともと、そういう自覚があったのだろう。
「私もはやて隊長も、魔法と出会ったのは偶然だしね」
「俺たちは…まあ、原因不明だな…相変わらず…」
ヒノメやカグヤから聞いたが、彼女もALOにインしてソロで狩りをしていると、気づいたら陸ミッドチルダにいたらしい。
そして、彼女たちもSAO時代の武器がデバイスとして一緒にあった。
「ふ~ん……偶然、魔法を手にした…ね」
「…なによ?」
「別に」
少し不機嫌になったティアナにそれに突っかかるシノン。やはりというべきか「銃」というカテゴリーで同じ立場のティアナとシノンは相性が悪かった。
そうしているうちに転送ポートへとたどり着いた。ここから地球へと移動することになるのだが
「ピナ」
「フリード」
2人がパートナーの小龍に呼びかけると、先日と同じように子供の姿となった。わかったことが彼らが子供の姿になるのは変身魔法の一種のようで、あらかじめ服を着てから小龍になり、また子供になると服は着たままとなっている。
「あ、そうだ! はい、リインちゃんのお洋服」
「わぁ、シャマルありがとうです!」
シャマルの取り出した可愛らしい服にリインは子供のように喜んでいた。だがその服の大きさはユイと同じぐらいでとても彼女が着れそうに思えない。
「あれ?リインさん、その服って…」
「はやてちゃんのちっちゃい頃のお下がりです」
「あ、いえ、そうではなく…」
キャロの言いたいこともわかるが、フォワード陣も民間委託メンバーもどう見てもそれは普通の子供服だった。
「あ、そう言えばみんなには見せたことなかったですね!」
「「「「「「「「「「え?」」」」」」」」
「システムスイッチ、アウトフレーム、フルサイズ!!」
そう言うとリインは目をつぶると、そこにいたのはナビゲーションピクシーのような妖精ではなく、ユイのような子供の大きさのリインだった。
「リインが大きくなりました!?」
「えへへ…」
ユイが驚いているのにリインがしてやったりというように笑っていた。というよりも、ただ単に言い忘れていたようだった。
「向こうの世界にはリインサイズの人間も、飛んでいる人間いねぇからな」
「一応…ミッドにもいないと思います…」
「俺たちの世界にもいないぞ…」
ヴィータの言葉にエリオとクラインがそういった。すると着替え終わったのか、ユイとリイン、キャロ、エリオ、シリカ、ヒノメ、フリード、ピナが並んだ。
「こうしてみると同年代の友人みたいな感じがするな」
「「あ、あはは……」」
だが、シリカとヒノメは高校生というのにライマは気づいてない。
ひそかにライマの言葉にショックを受けたらしいロリっ子2人組。
「じゃあ、私とヴィータ隊長とシグナム体長、シャマルは寄るところがあるから先に現地入りするわ」
「「「「了解」」」」
そういってはやてとシグナム、シャマルが転送ポートへと入った。光が消え、次に残ったメンバーが移動する先の座標に設定された転送ポートへと全員が入った。
―地球―
「おー、なんか懐かしいな」
転送終了後、クラインが辺りを見回してそういった。ミッドチルダはどちらかというと摩天楼のような建物が多く、近未来な場所だった。
だが転送された先はどこかのどかな風景が残る自然な場所だった。
確かにそれは見慣れた彼らの『地球』に似ていた。
「ここが…」
「なのはさん達の…故郷…」
キャロとエリオは物珍しそうにあたりを見回して、フリードとピナは目を輝かせて目の前の湖を見ていた。
その湖を見て――
「なんだか…懐かしいね」
「…そうだな」
キリトとアスナはそう呟いた。今でも彼らのALOのホームがある『アインクラッド』22層の湖によく似ていたからだ。SAOの時は、湖の主をニシダというプレイヤーとともに仕留めたこともある。アスナが。
「ところで、ここは具体的にどこなんですか?」
ヒノメがそう聞いた。見たところ、湖畔のコテージのような場所のためもしかしたら見つかったらまずい可能性もある。
「ここは現地の協力者の別荘だよ。今回の待機所ってところかな」
「ブルジョワ…」
「シノン?」
シノンの呟いた言葉にアスナが反応した。よくよく考えてみれば彼女も良家の令嬢だ。
すると、一台の自動車が向かってやってきていた。
「自動車…こっちの世界にもあるんだ」
「地球は原始時代だとでも思ったのか…」
スバルの言葉にキリトは静かに突っ込みを入れた。それはそうと、この場所にいるとなるとおそらく自動車を運転しているのは例の協力者ということになるだろう。
ほどなく車は停車し、運転席からは金髪ショートの、どこかフェイトに似た感じの女性が下りてなのはとフェイトのもとに駆け寄った。
「なのは! フェイト!」
「アリサちゃん!」
「アリサ!」
女性はアリサという名前で3人は嬉しそうに手を合わせて会話していた。どうやら『協力者』という重苦しい関係よりも『友人』というほうがしっくりくる。
いくつか会話しているとアリサがほかのメンバーに気付いたようだ。それにフェイトが思い出したように紹介を始めた。
「みんな、紹介するね。この人が協力者で私となのはとはやての友達」
「アリサ・バニングスです、よろしく」
「「「「「「「「よろしくお願いします」」」」」」」」」
ちらりとキリトが横のクラインを見ると、やはりというべきか、若干鼻の下が伸びていた。
「えっと…みんな2人の生徒?」
「あ、ううん。半分ぐらいは民間委託なの。じゃあフォワードから自己紹介してね」
「スターズ04のティアナ・ランスターです」
「スターズ03のスバル・ナカジマ」
「ライトニング03のエリオ・モンディアルです」
「ライトニング04のキャロ・ル・ルシエ…こっちの子はパートナーのフリードです」
「よろしくぅ~」
少し間延びしているフリードの言葉でフォワードの紹介が終わった。すると少し驚いた感じにアリサがエリオとキャロを見た。
「しっかりした子だね…この2人がフェイトが保護責任になったって子でしょ?」
「あ…うん。……しっかりしすぎて…るけどね…」
フェイトの最後らへんの言葉は誰にも聞こえていなかった。
「じゃあ、次は俺から…桐ケ谷和人、民間委託(ザ・シード)所属。キリトって呼んでほしい」
「私は結城明日奈、アスナです。こっちは娘のユイ」
「よろしくお願いします」
「朝田詩乃、シノンでいいわ。短い間でしょうけどよろしくね」
「オレぁ、壺井遼太朗、一応この中では年長だな。クラインって呼ばれてる」
「綾野珪子、シリカです。こっちの子はパートナーのピナ」
「よろしくお願いします」
「え、えっと…か、神楽有希(かぐらゆき)…ヒノメ…です、その…よろしくお願いします」
「桐ヶ谷直葉、さっきのキリトの妹です」
「真雲慧雷。ライマでいい」
民間委託の紹介が終わったが、一つ気になることがあった。
「なんでみんな呼び名が違うの?」
アスナとユイ以外はそれぞれ呼び名が違う。確かに何も知らなければあだ名ぐらいにしか思わないだろうが、それにしては多すぎる。
「俺たちはもともとオンラインゲームでの仲間なんです。だから呼び合うときはプレイヤーネームが反応しやすくて…」
「…え?でも…」
そういってアリサはアスナとユイを見た。それにビクッとアスナは動きを止めた。彼女たちだけは名前とプレイヤーネームが同じ――
「は、初めてやったオンラインゲームだったので…その…実名を…」
「……ぷっ……」
「うわ~ん!!」
噴き出したアリサにアスナは顔を真っ赤に恥ずかしそうにキリトの肩に泣きついた。実名を使うのは初心者がやりそうなことなので、一段と経験を積むとそれが恥ずかしく感じるようだ。
ユイはもともとAIのため、プレイヤーネームという概念がない。
「さて、と。それじゃあまずはサーチャーを設置するね。街と空をキリト君、アスナちゃん、シノンちゃん、リーファちゃん、スターズで。街の周りをライトニングとクラインさん、シリカちゃんとピナちゃん、ヒノメちゃん、ライマ君でお願いね」
今となってはキリト以外にもALOフォームになれるため、十分に空での作業ができる。そのため空戦魔導師でもあるフェイトたちが空に飛ばなくても十分ことが足りる。
そして全員がALOでの訓練を行ってるため、キリトのような反射はできないが戦闘も充分こなせている。
「アリサちゃんはユイちゃんとお店の方に行ってくれるかな?あとで私たちも行くから」
「任せなさい」
―街:周囲―
「にしても、見れば見るほど俺たちの世界そっくりだな」
年長であるクラインの指揮でちびっこ(約二名高校生)がサーチャーを仕掛けていた。仮にもギルドリーダーである彼は人を纏める力があるので、まだ作業などに慣れないライトニングも作業に集中することができた。
「そういえばクラインさん、ギルドってどんな感じなんですか?」
「ん…風林火山か…まあ、ギルドって言っても俺のギルドとアスナのいたギルドと違うからな。俺のところは身内でわいわいやる感じだったが、アスナのいた血盟騎士団は管理局みたいに上下関係があって部隊みたいなものだった。ヒノメはソロだったんだろ?」
「は、はい…その……」
言わずもながらわかった。キリトの場合はビーターとしての覚悟の上、シリカはレベル的な問題のため、そしてヒノメは――
「こ、怖くて…」
人見知り的な理由で。
そんな会話のなか、なのはから渡された地図をもとに、また一つサーチャーを設置した。
こっちのグループはスムーズに事が進んでいた。
―街―
上空に飛び上ったのはスプリガンとなったキリトにケットシーのシノン、それとシルフのリーファの3人、そして町のことをよく知っているなのはの計4人。見送ったティアナたちはその時初めて見たシノンの猫耳になぜそんなものがあるのか疑問に思っていた。
「ほい、これで半分だ」
「手際がいいね、3人とも」
襲撃はないはずなのでブレイブハート、ヘカート、そしてリーファの刀の【エーデル・ブリーズ】は展開せずにALOフォームとなったキリト、シノンとリーファになのはがそういった。
「ところでなのは、ひとついいかしら?」
「ん? どうしたの?」
自分のノルマを終えたシノンはサーチャーの最終チェックを行っているなのはに声をかけた。
「ティアナ…過去に誰かを失ったりしてる?」
「!!」
その言葉になのはは目を見開き、手を止めた。一方シノンの過去を知ってるキリトとリーファもなのはの言葉を待っていた。少しうつむき気味になのはは頷いた。
「ティーダ・ランスター…ティアナの兄で武装隊のエースだった。けど、ある事件の容疑者を追跡中に命を落としたの」
「その人もガンナーだったのか」
キリトの言葉の理由はティアナがたまに口にする自らを奮い立たせる言葉「ランスターの弾丸は全てを撃ち抜く」という意味、それを考えるとティーダもまたガンナーであることが想像できる。
「同族嫌悪、ってやつなのかしらね」
シノンの呟きはなのはの耳には届かなかった。
―海鳴:街―
「ティ~ア~!」
街のサーチャー設置の地上組であるティアナとスバル、アスナが行っていた。だが先程からアスナがサーチャーを設置しているあいだにティアナが先に進むという団体行動とは言えないことを行っていた。
「なによ、スバル」
「はぁ…はぁ…アスナさん置いて行かないでよ!」
だがスバルの言葉にティアナは別に気にせずという態度だった。もともと彼女は努力して今の実力へとなったのだ。だがキリトたちの言葉だけを聞くと、彼らは努力せずに、ただゲームをするだけで強くなったという捉え方ができてしまう。
そしてそれが努力をしていた彼女は許せないのだ。また、彼らが何を隠してるのかもわからず、それがさらにイライラの原因でもあった。
「別に置いていってないわよ。分担でやろうと思ってただけ」
「けど」
「構わないわよ、スバル」
そう言ってサーチャーの設置を終えたアスナが合流した。だが言葉とは裏腹に少し冷めた目でティアナを見ていた。
「私はなのはに頼まれて組んでいる、民間委託魔道隊となった以上管理局の上司からの指示だから従ってるだけ。私たちの立場はあなたと比べて下だからあなたが分担で行動するっていうのならそうするしかない」
その時の彼女の口調は、ユイや仲間たちにするような優しいものではなくただ事務的に事実を告げていた。
当時を知っているキリトやクラインといった攻略組は、それが攻略の鬼だった彼女だということがわかる。すなわち、彼女はティアナ達を『信頼してない』ということだ。
「それで、次はどうするのかしら?新人の兵士(チャイルド・ガンナー)さん」
「ッ…」
「ティア!!」
アスナの言葉にティアナはカチンと来たのか、クロスミラージュを取り出そうと懐に手を入れて、動きを止めた。
「覚えておきなさい。集団行動では勝手な行動がどんな結末を迎えるのか」
ティアナがクロスミラージュに手を伸ばすよりも早く、ランベントライトをアスナが彼女の喉元へ構えた。幸いにもこの時間帯は人通りも少なく、そんな彼女たちの行動を見る人がいなかった。
「身勝手な行動は自分だけじゃなく、仲間にも破滅をもたらす。まあ、後悔しないとわからないでしょうけどね。けど、後悔したときは…遅いのよ」
そう言ってアスナは寂しそうに俯いてランベントライトをモードリリースした。
―上空―
「うん、みんなお疲れ」
街の空も地上も外もサーチャーの設置が終わり、コテージへと合流したグループに対してフェイトが声をかけていた。とはいえ、全員疲れた様子もないので苦笑いしていたのだが。
「ロングアーチ、こちらスターズ1、サーチャーの設置完了」
『はい、おつかれ~』
ロングアーチとして待機しているはやてとともに待機してるシャマル。だが予定だと夕方までかかるのだったが予想外に全員手際がよく、残りの時間どうするかとなのはは考えていた。
「う~ん……でも、手ぶらで帰るのも何かな~…まあ、大丈夫かな」
はやてたちへの報告も終わって全員がリラックスしてるのから外れてなのはがブツブツと考えていた。そんなつぶやきがフォワード陣たちにも聞こえたようで不思議そうに見ているが、それに気にせず携帯を取り出した。
「あ!お母さん?……なのはです!」
「「「え?」」」
その言葉にフォワードメンバーが驚いた声を出す。しかし彼女はそれに気にせず会話を続けていた。
というよりもその姿は仕事の上司というよりも家に電話をする女子校生のようだった。
「にゃはは……お仕事で近くまで来てて……そうなの……うん、ホントすぐ近く。あ、もうアリサちゃん来てたんだ…うん。でね、皆にうちのケーキ、食べてもらいたいから…」
そう言って話をつけたのか、振り返って笑顔で集合をかけた。
「さて、ちょっと寄り道ね」
「あの…お店って…」
「私の実家が喫茶店なの」
「(喫茶店ね…)」
「(Dicey Cafe…また行きたいね…)」
驚くフォワードをよそにキリトたちはそう行きつけのカフェを思い浮かべていた。
そういえば、といつものメンバーがこちらに飛ばされているのだがリズやエギルは大丈夫なのかとクラインの頭によぎった。
―喫茶店・翠屋―
「ただいま!」
大通りにあるお洒落な店へとやってきたなのはたち。店はまだ昼前だというのに既に『clause』という札がかけてあるがそれに気にせずなのはは入った。
「あら、なのは。おかえり」
そう言って出迎えたのはなのはに似た女性――なのだが――
「(たしか、なのはってアスナとほぼ同い年(一歳年上)だったよな…)」
「(お母さんよりも若い…)」
見た目がクラインやエギルぐらいなのに20歳を迎える娘がいるとは思えないほど若かった。
フォワードだけではなく民間委託のメンバーも驚いていた。
「お、なのは!帰ってきたな」
「お帰り、なのは!」
厨房と思わしき扉から若い男性と女性が出てくる。見たところなのはの兄弟のようだが――
「お父さん、お姉ちゃん。ただいま!」
明らかに父親と姉が同い年ぐらいにしか見えないほど若い。もしかしてここはゲームの世界で外見グラフィックがエラーを起こしてるのではとキリトは思い始めていた。が、横にいるスバルたちも驚いているのを見ると普通におかしいみたいだ。
「パパ!」
「ん、ユイ。いい子にしてたか?」
窓際のテーブルでアリサとユイが座っていたが、キリトが来たのに気づいたのか嬉しそうに抱きついていた。
ちなみにアスナはここに来るまでの道中でなのはと何かの会話をしてはやての元へと向かっていた。
「おや、君がユイちゃんの父親なのかね?」
「え? そうですけど」
なのはの父親――名前を士郎というらしいが、キリトがユイの父親ということに驚いていた。
「ふむ…失礼だが、歳はいくつなのかな?」
「今年、18歳ですね」
ユイを抱きかかえたキリトは少し怪訝そうに言った。すると士郎は少し申し訳ないそうに苦笑いした。
「気を悪くしたなら申し訳ない。なのはとあまり変わりがない歳なのに苦労してるようだからね、『君たちは』」
「「「!!!」」」
今の言葉はキリトではなく民間委託のメンバーに向けられた言葉だった。そしてその意味を理解したキリト、クライン、シノンは驚いていた。
なのは達にも詳しく説明してない、はずなのに士郎はある程度感じていたようだ。キリトたちが命懸けなの何かを経験したことを。
「ははは、そんなに警戒しなくて構わないよ。僕も19の時に北アフリカの紛争に赴いたこともあるから」
「…なのはのお父さんって何者なのよ…」
小声でため息をつくようにシノンが聞いた。それになのはもよくわかってないように「にゃはは…」と笑っている。
「そうだ、よければこれ召し上がってくれないかな?」
そう言って士郎が思い出したように持ってきたのは綺麗なデコレーションがしてあるショートケーキだった。
「すごく美味しかったです、このケーキ!」
既に食べていたようでユイが嬉しそうにそう言っていた。それならばと各々テーブルについてそのケーキを口にした。
「おっ…確かにうまいな」
「美味しいです!」
「エギルのとこでこのケーキ食べたいわね…」
「エギルって?」
クラインとシリカがそのケーキに舌鼓をうっているとしみじみとシノンがそう呟いた。
するとこの場にいない名前を聞いてアリサがそう聞いた。
「俺たちの世界で喫茶店をしてる仲間で…まあ、よく集まる集合場所でもあるな」
何かのイベント事には毎回『Dicey Cafe』を使用していた。それを聞いた士郎は思いついたようにある紙の束をクラインに渡していた。
「これは?」
「残念ながらこのケーキは新商品の没アイデアでね…よければそのエギルさんにこのレシピを渡しといてくれないかな?」
こんなに美味しいのに没?とシリカが思っていたらそのレシピの没になった理由が書かれているようでシノンが納得していた。
「これ、普通のケーキを作るのと少し違うわね」
過去にケーキを作ったこともあるらしく、シノンが普通のケーキとの違いに気づいたようだ。
趣味のように作るのならまだしも、ここはケーキを売りにしている喫茶店、となればそのためだけに作り方を変えるというのは手間のようだ。
「まあ、エギルのとこはコーヒーが売りだからなケーキもそれほどなかっただろうし、いいんじゃないか?」
「お、そうだ。今度クロアに会ったときにでも渡しとこうぜ」
『Dicey Cafe』はケーキの種類も少ないため、違う作り方のケーキでもそれほど問題はないだろう。
そんな談笑をしているとフェイトとシグナムがやってきた。はやての方の用事が終わったらしく、フォワード陣を迎えに来たようだ。
「じゃあ、お父さん、お母さん。また今度ね」
「うん、元気でやりなさいよ」
「気をつけてな」
その後、フェイト、シグナム、もう一人の協力者であるすずかの車に分乗するとそのまま最初のコテージへと向かった。
若干遅くなった
ユイ「別作品が更新されてるようでしたが…」
ニコニコで遊戯王GXのMAD見てたらそっちの意欲が沸いた。
長いこと放置してたからガス抜きには十分でした。
ユイ「今回から地球編ですか…」
一応2話構成の予定。まあ、切羽詰ることも無いだろうし、文字通りはやての言ってた『息抜き』にする予定です。
たぶんその前にカイルとヒノメの過去の話をする予定ですけど。
それとギルティと予定だとレイも作ってる最中ですね。
ユイ「ところで、リーファさんのデバイスの名前とは?」
【エーデル・ブリーズ】と言うことにしました。意味は「高貴なそよ風」
まあ、作中のあの刀の名前をオリジナルで考えただけですけどね。
そして街中での一コマ…
ユイ「ティアナさん、若干ヒステリック起こしてますね」
まあ、次回でそれが反動となるんですけどね
さて、次回は地球編その2
#13 クエッション
その前に過去編の話を投稿すると思います。お楽しみに!