魔導剣史リリカルアート・オンライン   作:銀猫

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#8 シルフ・メテオ

「スバル! エリオ! キャロ! シノン……っ…」

 

 

先程からティアナはほかのフォワードメンバーとシノンに連絡を取ろうとしてるが、念話が繋がらないのだ。現場でAMFが発生して繋がらないのか、ほかの場所で戦っているのかわからない。孤立してる可能性もあったが、手がかりがない。

 

 

「仲間と連絡取れないのか?」

 

「…ええ、シノンが2人と一緒にいるから問題はないでしょうけど…スバルは…」

 

 

キャロとエリオがシノンと共に行動してるのは先程ユイから教えてもらった。一応聞いた話だとシノンはこの手の遭遇戦の経験(GGO)が豊富だから問題はないだろうが。

 

 

 

 

 ―ミッド技術開発ホール:出入口付近―

 

 

「第四、第二グループチェンジだ!!」

 

「おっけー!!」

 

「スイッチ!!」

 

 

 

 キョウの言葉にグループで邪神の攻撃を受け流していた即席の盾集団が交代した。最初、キョウをはじめとしたキリトたちのレイドが邪神を相手にしていたのだが、それを見たほかの魔導師たちも即席でチームを組んで戦っていた、が

 

 

 

「おい、俺らの出番はまだか!」

 

「まだだ、次は出入口側から変わってもらいたい」

 

「ちっ…了解」

 

 

 それぞれが妙なタイミングで攻撃したり、防御が疎かになったりしたので誰かが司令塔となる必要があった。SAO時代でもヒースクリフだったりが指示を出して統率をとっていた。

 

 そして、最初にこの作戦を行っていたキョウが抜擢されるのは必然とも言えた。

 

 

 

「けど、どうする?」

 

 

 クラインがそう心配するのも無理はない。キリトたち含め30人前後6チームで立ち回っているのだが、邪神の体力ゲージが残り五本と最初の7割以上残っているのだ。一方こちら側は魔力を温存する戦い方だが、既に全員が半分ほどしか残っておらず、体力的にもきつい。

 

 増援についてもまだ来る様子はない。

 

 

「クライン、次で一撃を当てるぞ」

 

「まあ、地道にやって打開策を見つけるしかないか。キョウ」

 

「わかった…第一、第六交代!!」

 

 

 その言葉にキリト、クライン、シグナム、レイが駆け出した。

 真っ先に駆けたレイが槍状態の自身のデバイス、イクシエールを振り上げた。

 

「爆ぜろ!!」

 

 

 その言葉とともに魔力の衝撃波が飛び、邪神のバランスを崩した。そこに魔力の篭ったイクシエールを邪神の右半身へと叩きつけた。

 

 

 《BUROOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!》

 

「コウガゲッショウセン!!」

 

 

 その攻撃で今現在残っている一番外の体力ゲージの四分の一が吹き飛んだ。そして、衝撃で邪神は完全に体勢を崩している。

 

 

「スイッチ、行くぞ、シグナム!!」

 

 

 今度は左側へクラインが光の灯った刀を繰り出した。そして、上空ではシグナムのレヴァンティンが自身の鞘と一体化し、ひとつの弓(ボーゲンフォルム)ひとつの弓(ボーゲンフォルム)となっていた。

 

 

「ったく、無茶をするなよ」

 

 《ロードカートリッジ》

 

 

 排出されたカートリッジが地面に落ちる。そして、シグナムは弓を引くとそこに無数の剣の形をした矢がセットされた。

 

 

「駆け抜けろ、隼!!」

 

 

 

 地上へ向かって、炎をまとった矢が雨のように降り注いだ。しかし元々シグナムは剣士で、弓は本職じゃないためか、いくつか溢れた矢がクラインと邪神の間に刺さった。

 

 

「行くぜ!!」

 

 《本当にあなたは…》

 

 

 呆れるカラクレナイだが、無理もない。なんとクラインは走りながらその矢を手にした。

 剣の形とはいえ、元々はそれは矢なのだ。それをまるで剣のように掴んで邪神との距離を詰めた。

 

 

「無茶苦茶だ」

 

「へっ、あんがとよ!!」

 

 

 地上に降り、レヴァンティンを抜いていつの間にかクラインの横で一緒に走るシグナムは呆れていた。

 

 

「うぉら!!」

 

「はあぁっ!!」

 

 

 クラインが矢を突き刺し、シグナムもそれに合わせて斬りかかった。

 

 

「やってやるぜ!!」

 

「仕留める!!」

 

 

 

 そして最後には交差するように突き抜けた。

 

 

「「ガオウセンレツコウ!!/ワイルドコンビネーション!!」」

 

 

 《BAROUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!!!!!》

 

 

 

 なぜかクラインとシグナムの技名が違うのに動きが全く同じだった。

 

 邪神の体に突き刺さった矢が爆散し、これでレイのと含めて一本のゲージが消えた。残っているゲージはあと三本。

 そして、キリトはALOフォームで二本の剣を構えた。

 

 

「締めるぞ!!」

 

 《了解!》

 

 

 ALOフォームの飛行で高速接近したキリトが空中ながらも2本の剣を構えた。

 が

 

 

 

「なぁっ!?」

 

 《マス――!!》

 

 

 エリュシデータで斬りかかったとき、その違和感があった。発動しようとした自分の二刀流の技の中では比較的強力であり、十八番のスターバースト・ストリーム。

 

 

 それの第一撃、エリュシデータの斬りかかった手応えがないのだ。それは邪神を倒したからでも、クリティカルヒットしたからでもない。

 

 

「エリュシ…データ…?」

 

 

 エリュシデータの刀身が完全に砕けたからだ。

 

 ―大通り―

 

「邪神…?」

 

「はい、私たちのやってたゲーム…ALOっていうのでよく似たのがいるんです」

 

 

 直葉は出入り口にいる敵の情報があまりにもあの時、トンキーを襲いラグナロクで消滅した邪神。その驚異も知っていた。

 

 

「弱点か何かないの?」

 

「…ない、ですね。ALOでも大型レイドで挑んで五分五分ってところでしたから」

 

「あー…サラマンダーのボルケーノ部隊やウィンディーネのリヴァイアサン部隊ね」

 

 

 ボルケーノ部隊とリヴァイアサン部隊とは両種族ではトップクラスの部隊でケットシーのドラグーン部隊と同格とされているものだった。が、邪神討伐で壊滅的な被害を受けて新生ALOに移行するまで動くことはなかった。

 

 

「てか、あんたら…ALOなら、飛んでいけるんじゃないの?」

 

「「……あ」」

 

 

 キリトの空戦対策としてALOフォームがあり、2人もそれができるのなら走るよりも飛んだほうが早かった。

 そのことを失念していた直葉と慧雷は呆然とした。

 

 

 

『<ティアナさん!>』

 

「!」

 

 

 ある意味で固まった2人にゲンナリとしたため息をついたティアナ。すると、彼女の脳内に念話が入った。声はまだ幼さの残る男子――エリオだった。

 それにティアナは立ち止まった。

 

 

「<エリオ、大丈夫なの? みんなは?>」

 

『<はい、僕たちは…けど、スバルさんの様子が…>』

 

 

「ティアナさん…?」

 

 

 突然黙って立ち止まったのに直葉は少し心配層に声をかけた。ティアナは簡単に「仲間からの連絡」と伝えるとエリオとの念話に戻った。

 

 

「<スバルがどうかしたの?>」

 

『<最初に解散した広場の近くで放心したようにボーッとしてて…声をかけたら気を失ったんです。シノンさんが言うには軽いショック状態で問題はないと…>』

 

 

 エリオはそう言うが流石にパートナーを組んで長い付き合いになるためか、相棒のことが心配のようだった。

 

 

「<まだ、広場?>」

 

『え、あ、そうです。そろそろキャロの応急処置が終わるので…』

 

 

 広場まではいくつかの施設を挟んで反対側。ここから行くのなら数分でたどり着く。

 

 

「…ちょっと、用事が出来た。この大通りに沿っていったら現場よ。先に向かってくれる?」

 

「構わないが…」

 

 

 慧雷の言葉にティアナは大通りを外れた。その行動に顔を合わせた直葉と慧雷は取り敢えず、セットアップして出入口へと飛んだ。

 

 

 ―出入口―

 

 

 邪神に対してスターバースト・ストリームを発動しようとしたキリト。だが、一撃目のエリュシデータ明滅しながらも、何も言葉を発することのなくなった自身の愛剣にキリトの頭の中が真っ白になった。

 

 

「キリト!!」

 

「っ!!」

 

 

 そのため、今が戦闘中で邪神の攻撃範囲内にいたのを忘れ、『邪神が剣を振り上げた』ことに気づかなかった。

 

 

 

《BORUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!!!!》

 

「クッ!!」

 

《マジンケン》

 

 

 クラインがヘイトを稼ぐために遠距離技で邪神に牽制するがそれを食らった邪神はキリトから目を離してない。つまり、キリトがタゲから外れてないのだ。

 

 

「う、あああああああああ!!!!!」

 

 

 振り下ろされた剣を、絶叫しながらもブレイブハートで弾こうとするキリトだが巨大なギロチンのような大剣にただのデバイスのブレイブハートで防げるわけもない。

 

 

「大丈夫だ」

 

「!?」

 

 

 レイドで最初に攻撃を仕掛け、すぐに動けたレイがそう言ってキリトと大剣のあいだに割って入った。だがその手にはイクシエールはなく、まるで、自分の体を盾にするようにしていた。

 

 

「レイッ!!」

 

「ッァ―――――――!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 ザシュッ、という体を切り裂く音とボキィッという骨が砕ける音が同時にキリトの耳に入った。

 そして響いたレイの言葉にならない悲鳴にキリトは呆然としていた。

 

 

『さらばだ、キリト君』

 

 

 75層の一騎打ちでそう告げられた言葉。スキル発動の硬直時間は斬られるのに時間が充分だった。そして、その刃を受けたのは自分ではなく、恋人のアスナだった。

 

 

「あ…う…あっ……!!」

 

『ごめんね、キリト君』

 

 

 倒れこむレイを受け止めたキリト。その腕の中にいるレイの顔がアスナと被った。

 

 

「全員突撃!!2人を守れッ!!」

 

 

 司令塔のキョウの言葉に突然のできごとで動けなかった魔導師はハッとしてすぐに邪神へと向かった。

 一方の邪神も戦えない傷を負ったレイとそれを受け止めているキリトよりも周囲の魔導師が驚異と判断し、ターゲットを変更したようだ。

 

 

「あす…な……?」

 

「おい、キリト、おい!!」

 

 

 駆け寄ったクラインの言葉にキリトはハッとして腕の中にいるのはアスナではなく、レイだということを思い出した。

 

 

「レイ!!」

 

「ったく、無茶しやがってバカが…」

 

 

 そう苦言を呈したのは彼の相棒とも言えるキョウだった。だが、彼の性格上考えられない言葉にクラインは目を丸くしたが、冷静な判断ができないキリトは彼に掴みかかった。

 

 

「どういうことだッ!!」

 

「やめろ、キリト」

 

「「――え?」」

 

 

 激昂したキリトを宥めたのは、動けないほどのダメージを負ったはずのレイだった。

 それにスルスルとキョウの胸倉を掴んでいたキリトの手が緩んだ。

 

 

「ッ…さすがに効いたな」

 

 

「どう、いうこった…これは…」

 

 

 明らかに切られ、そして骨が折れたはずなのにレイはピンピンしていた。

 すると彼は自分の左腕のバリアジャケットを捲り上げた。

 

 

「なっ…」

 

「こりゃ…」

 

 

 レイの左腕はまさに『異形』と言えるものだった。深紅色に染まったその腕はまるで返り血で染め上げたような色だった。

 

 

「先ほど、私のことをロストロギアだと言っていただろう? こういうことだ」

 

「体に…寄生してるのか…」

 

 

 今まで見たロストロギアはレリックや資料として目にしたジュエルシード、ラミアスケイルといった装飾のようなものばかりだった。

 

 

「これの影響で私は並大抵のモノで死なない体になった。だからそう気に病むな」

 

「…ふざ、けんな…!!」

 

 

 クラインはそう叫びたかったが邪神の方で動きがあったようだ。HPゲージが残り2本になったところで攻撃のパターンが変わったようだ。

 

 それに気づいたキョウはすぐに指示を出した。

 

 

「一旦引け! 体制を立て直す!! 第二、第五グループで防衛!!第四はサポート!!第三、第六は負傷したメンバーの治療だ!!」

 

「キリト君!!」

 

 

 キョウが前線へと赴いて指示が飛ぶ中、避難所からの援軍としてアスナ、そして途中で合流したのかなのはがやってきた。

 

 

「なんなの…あれ…」

 

「ALOの邪神、よね。体力ゲージ…?」

 

「今やっと3分の2まで減らしたところだ。けど、もう限界だ…」

 

 

 キリトの言葉通り、負傷者が多すぎてうまく連携を補えきれなくなってきた。たとえキョウが盾部隊隊長としての実績があるとは言え、即席で組んだこの人員に指示を出すのも限界に近い。

 

 

「そうだ…これ…!!」

 

 

 そう言ってアスナが取り出したのはユイから渡されていたキューブだった。それが一体なんなのかわからない。だが、既に摩耗した部隊と今現在の状況を考えるとそれが最後の手だった。

 

 

「クラインさん、少し時間を稼いでもらいますか?」

 

「え? 構わねぇけど、どうするんだ?」

 

 

 正直なのはや現在こっちに向かってる増援の魔法で削っていけなくもないが、先ほど起こったキリトのデバイス損壊の原因が不明な以上、ほかのメンバーのデバイスも大丈夫とは言えない。

 そうなれば短時間で倒せる方法をとるしかなかった。

 

 

「ユイちゃんから渡された『最後の手』です。これを使ってみるので」

 

《起動に約数分から数十分要します》

 

 

 ライベントライトの報告にシグナム、なのは、レイは武器を構えた。それにクラインもカラクレナイを掴むと思いだしたようにキリトを見た。

 

 

「キリト、お前はここにいとけ」

 

「な、俺も――…」

 

 

 俺も行く、それが言えなかった。二刀流が使えないとなるとブレイブハートのみ、そして今現在エリュシデータのスキル管理機能が使えるかどうかわからない。

 先程から明滅を繰り返してはいるものの、何を言ってるのかわからないのだ。突撃して攻撃を仕掛けたがただの切り払いのみなんてことになったらやられてしまう。

 

 

「お願い、キューブ、起動!!」

 

 

 ライベントライトに接続されたキューブが起動するとそれに気づいた邪神が狙いをアスナに向けた。

 どうやら邪神もそのキューブになにか驚異を感じているのだろう。

 

 

「え、アスナさん!?」

 

「キョウ、余所見するな!!」

 

 

 アスナが狙われていることに気づいたキョウだったが、シグナムの言葉に振り下ろされた大剣をうまく受け流していた。

 

 

 《Program during installation. Compression system decompression. Install start to the relevant player. Second form's corresponding election success. Frame system change now.》

 

「死んでも通すんじゃねぇ!!」

 

「あっ――」

 

 

 クラインの檄に全員が奮え立つが、そんな中邪神の足元でハンマーを振るっていた少年の足が瓦礫に掬われて倒れてしまった。

 

 

「あぶねぇ!!」

 

「い、いやああああああああああああああ!!!!!」

 

 

 キョウが気づくも、既に邪神の足が彼を踏みつぶそうとすぐそこまで迫っていた。

 そして、ドシンと彼の上に足が振り落とされた。

 

 

「うそ、だろ…」

 

「そ、そんな…」

 

 

 

 誰かが、そう口にした。突然の襲撃をするモンスターに既に限界の一同。そして初の死亡者が出てしまった――

 

 

 

「ぼさっとするな!!まだ生きてる!!」

 

「「「え?」」」

 

 

 近くの窪み――先ほど、レイがキリトを守って出来たそからチラリとチェーンソーなようなもので支えられた瓦礫の中に先ほどの少年とグスタフがいた。

 

 

「ぶ、無事…」

 

「よかったぁ…!!」

 

「そ、それよりも体勢を立て直そう!」

 

 

 

 グスタフの行動にホッとしている暇なんてないと思い出した一同は再び連携を取り直そうとした。

 今度は、邪神が大剣を振り上げて、比較的魔導師が密集してるところで振りおろそうとしていた。

 

 

「散開!!」

 

「逃げろォ!!」

 

 

 キョウの指示とレイの叫びが木霊した。ズシンという鈍い響きと共に剣が振り下ろされた。

 

 手早く状況に対応できたおかげか、捲れた地面にけが人は幸いにもひとりもいなかった。

 

 

「ウェス!!」

 

「了解!!」

 

 

 窪みから気を失っている少年を連れて安全な場所へ移動しながらグスタフが誰かを呼ぶと、どこからかカウボーイがショットガンを持ってやってきた。

 

 

 

「こいつで寝てろ!!」

 

 《爆裂弾装填》

 

 

 ウェスは振り下ろされている大剣を足場に駆け上がった。そして、邪神の一番下の顔にめがけてパワーグリフォンを向け、ラピッドファイヤーで全弾発射した。

 

 

「うおおおおおおお!!!!」

 

 《BRUO!!!BOOOOOO!!!!》

 

 

 着弾すると小さな爆発する弾薬を弱点とも言える顔に受け、一発一発で邪神は体勢を崩していく。そしてとうとう仰向けに倒れた。と、同時にアスナの手にしていたキューブが光り輝いた。

 

 

 《complete》

 

「え?」

 

 

 ランベントライトの音声と同時に、その光が大きくなった。その光にアスナを含め邪神もほかの魔導師も目を瞑った。

 

 

 

 ―ミッドチルダ上空:ヘリ―

 

「うぅ~~!!」

 

「お、落ち着いて…」

 

 

 この日、六課で待機していたヴィータとフェイト、シャマルはヴァイスの操縦するヘリでミッド技術開発ホールへと急行していた。

 つい三十分ほど前に届いた巨大な魔力反応と救難要請に六課を含めて他の部隊も出動しているが、それぞれで急行する魔導師の選出などに手間取り、増援はまだ数名しか到着してないという戦況だという。

 

 

 それを聞いてヴィータは先程からヘリの狭い格納スペースをウロウロしていた。

 

 

「けどよ、あいつらがいるとは言え報告にあった巨人ってのはヤバイだろ?」

 

「確かにそう…ぅっ!?」

 

 

 回された邪神の画像にヴィータを始めとした実力者はその驚異に気づいていた。

 

 と、考えていたらヘリが突然揺れた。それにフェイトは頭をコツンと壁にぶつけてしまった。

 

 

「ヴァイス?」

 

「なんだ、どうした?」

 

 

 3人が操縦をしていたヴァイスの方を見ると彼は少し震えながら何かを指差した。

 それに彼女たちはその指差す方向を見て同じように固まった。

 

 

「なん、っすか…あれ」

 

 

 ヴァイスの疑問の声は沈黙するヘリの中で消えた。

 

 

 

 その指差す先には、天に登る光の柱が伸びていた。

 

 

 ―ミッド技術開発ホール:出入口―

 

 

 モノの数分の発光は終わった。

 

 

「………………」

 

 

 アスナの手からキューブが音もなく罅が入り、まるで砂のようにボロボロに消えた。

 

 

 《……………》

 

 

 一陣の風が吹き、キューブだったカケラは吹き飛んだ。

 

 

「……………で?」

 

 

 シグナムの言葉が虚しく響いた。必死に守りきって発動したキューブが光り輝いて終わった。一方の邪神もただ光ったという結果に困惑してるように立ち上がった。

 

 

「アスナちゃん。次は?」

 

「えっと……????」

 

 

 

 なのはの言葉にアスナも困惑した。ユイが渡してきた最後の手が発動したはずなのに、何も起こらないのだ。

 

 

 

「え、えへへ♪」

 

 

「「「「「えへへ、じゃねええええええ!!!!」」」」」

 

 

 《BUROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!》

 

 

 凍りついた空気にアスナがごまかそうとするが、全員にツッコミが入ると邪神が吼えた。

 それにニガ虫を噛んだかのように総員距離をとった。だがそれよりも先に邪神が横払いに大剣を振った。

 

 まだ攻撃範囲内には退避中の魔道士が多くいた。

 

 

「危ない!!」

 

 《セカンドフォーム》

 

 

 

 キョウの言葉と、誰かのデバイスの音声が被った。

 だが、それよりも強襲される大剣の動きを全員が見ていた。

 

 

 

「エモキ・モノレ・テブソ・オユズ・オー!!」

 

 《タイダルウェーブ》

 

「「「!!!?」」」

 

 

 魔法の詠唱と、それに反応してか邪神を中心に大きな渦が発生した。ミッドの魔導師には馴染みがないがALOプレイヤーにはそれがウィンディーネの中級魔法だというのに気づいた。

 

 

 だが、問題はそれを発動したのは『アスナ』だった。

 

 

「あ、れ?」

 

「え、アスナ…その姿…」

 

 

 先程まではSAOの血盟騎士団副団長だったハズの姿は、水色の髪のALOのプレイヤーである『バーサーク・ヒーラー』アスナとなっていた。

 

 

「え、な、なんでALOの!?」

 

「……! ここにいる者でALOというゲームをやってたやつはデバイスの確認をしろ!」

 

 

 

 レイがある仮定に行き着き、その場にいた漂流者にそう叫んだ。各々、キリト以外のALOプレイヤーはデバイスを見た。

 

 

 《《《《セカンドフォーム》》》》

 

 

「「「「!!!!」」」」

 

 

 すると、アスナと同じようにSAOを始めとしたVRMMOのプレイヤーの姿からALOの自身のアバターへと姿が変わった。

 

 

「うっそ!?」

 

「なんでケットシーになってるんだ!?」

 

 

 《BUROOOOO!!!》

 

 

 混乱する一同だが渦を抜け出した邪神が再び吼えた。流石にいきなり溺れさせられたためか、怒り狂ったかのようにアスナに目掛けてゆっくりだが動き出した。

 

 

 

「「フィアフルストーム!!」」

 

 《BUOOOOOOOOOOOOOOOO―――!!!!》

 

 

「ッ! なんて風だ!!」

 

 

 

 一歩歩いた時点でALOフォームの誰かの魔法で邪神が宙高く舞い上がった。その巻き上げた風はまるでハリケーンのように辺りの瓦礫を巻き込みながら邪神を上へ上へと運んでいた。

 

 その瓦礫でやっと邪神のHPゲージが1本となった。

 

 

「おい、あそこ!」

 

 

 一人の青年が指さした先には和服を着てその手には雷のようなギザギザの装飾がしてある十文字槍を手に浮かび上がった邪神と同じ高さを浮遊してるALOプレイヤーがいた。

 

 

「…風巻の雷?」

 

「シルフの、か――!?」

 

 

 クラインの言葉にキリトがそういった。どうやらリーファと知り合いのようで何度か領主サクヤが彼のことで小言を言うと愚痴っていたのを覚えていた。そして、そんな槍を構える彼の横に見覚えがある金髪の育ったからだの少女が風魔法の魔法陣のなかに浮かんでいた。

 

 

「リーファ…!!」

 

 

「さてと、そんじゃ…やりますか」

 

 

 そう言って風巻の雷ことライマは十文字槍を構えた。一方の邪神は空中でバランスが取れず、大剣を振るおうにも今だに上昇を続ける中、重すぎるのか腕が上がらないようだった。

 

 

 

「貴様を屠る――!!」

 

 

 ライマは持っていた十文字槍で未だ上昇を続ける邪神に鈍い一撃を与えた。それでやっと邪神の上昇が止まったがライマは更に持っていた槍を空中で一回転させ、勢いをつけた。

 

 

「――この俺の一撃!!」

 

 《BUROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!》

 

 

 

 やっと動けるようになった邪神は持っていた4つの大剣でライマを潰そうとした。

 

 

「スー・シャル・リンド・アシーニャ・バート・エーミ・オーグ ――スベルド!!」

 

 

 が、彼を守るようにして無数の蝶が盾となった。その魔法はルグルー回廊でキリトをサラマンダーの攻撃から守ったあの魔法だった。

 

 

 《BUROOOOOOOOOOOO―――!!!!!》

 

「クッ…!!」

 

 一撃一撃で蝶の壁が壊れていくが、ライマの攻撃の時間稼ぎには十分だった。

 

 

 

「喰らえ! 必殺、クリティカルブレードォォ!!」

 

 《――――――――――――――――――!!!!!》

 

 

 文字通り、言葉にできない咆哮を上げながら邪神は身動きのできない空中でライマの重い一撃を食らった。この技は実は、新生ALOで導入された『重力魔法』を同時にかけて威力を上げるという荒技なのだ。

 

 そして、ここは空中。つまり――

 

 

「全員離れろォォ!!」

 

 

 空中から一気に地上に堕ちる邪神はまさにひとつの隕石のようだった。

 そして、その隕石の衝撃から逃げるべく、シグナムの叫びを聞く前に地上にいた魔導師たちは逃げ惑った。

 

 ―避難所―

 

 

「信じていく――♪」

 

 

 クロスのライブで非常にリラックスしている避難所。ここが今緊急事態に陥っていることすら忘れてしまうようだったが、避難者から見えないようにした簡易テントの中には2人の人物が寝ていた。

 

 

「…また、無茶しちゃったんだね」

 

「ピュア…」

 

 

 ペロリと寝ているカイルの指先を舐めるピナ。そしてまるで死んだように眠ったカイルを暗い表情で見ているのはシリカだった。ピナの能力で回復したとは言え、応急処置に過ぎないそれでは満足できず、カイルの体は睡眠を欲した。そこで先に寝ていた彼女の横にスペースを作って寝かせているのだ。

 

 

「…スバルさん…」

 

 

 それは、フォワードの一人スバルだった。彼女はシノン・エリオ・キャロが通りかかった広場付近で偶然座り込んでいるのを発見した。まるで魂が抜けたかのように呆然としてる彼女に心配になったエリオが声をかけると糸が切れたかのように気を失ったのだ。

 

 

「(…口ずさんでいたのは生きている実感を確かめる言葉だった…ってことは…)」

 

 

 過去にあったある事件の当事者となったシノンは死んでもおかしくはない状況だった。そのため、警察に保護されたとき自分でそれを確かめるかのような言葉を並べていたのだ。

 

 それと同じ状態のスバル、つまり、死んでもおかしくない何かがあったのだろう。

 

 

「ティアナさん、お水入れてきました!」

 

「ああ、ありがと――!!!?」

 

 

 看病するティアナに洗面器替わりの器に近くの水道から水を入れてきたユイにお礼を述べようとしたしのんだが、まるで大型の地震があったかのように地面が揺れた。

 

 

 ―出入口付近―

 

 

「無茶しすぎだろうがァァ!!!」

 

「生きてるならいいじゃねぇか…」

 

 

 地面に大きく出来たクレーターに横たわり、そして徐々に消滅していく邪神。そのHPゲージは完全に消滅し、沈黙していた。

 そしてその状況――クレーターと周囲の建物全壊及び半壊を生み出したライマに対して一応ここに居る中で一番地位が高いグスタフが叱っていた。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁん!!」

 

「よしよし」

 

 

 一方、キリトの方には金髪のナイスバディな少女が抱きついて泣いていた。その光景を微笑ましくアスナが見守っていた。

 

 

「えっと、アスナちゃん、あの子は?」

 

「彼女はリーファ、桐ヶ谷直葉って言ったほうがいいかな?キリト君の妹なの」

 

「…似てないな」

 

 

 シグナムの言葉になのはも同意するが今の直葉の姿はALOのリーファで似ているわけはなかった。

 するとやっと他の部隊の増援がやってきた。

 

 

 各々が自分の上司などに報告や次の指示を受けている中、まさに『役人』という風貌の局員が2人ニヤついた笑で辺りを見回した。

 

 

「おいおい、なんだこの状況」

 

「はっ、ここまでの被害出してるなんて、役たたずやな」

 

 

 今更来たのにそう見下すような言葉にピキリとその場にいた一同に青筋が浮かんだ。

 だがその中でキリトとアスナだけは違う反応をしていた。

 

 

「そういうお前はこのホールを壊滅させても止めれないだろうな」

 

「なっ、自分、何言ってるのかわかってるんやろうなァ!」

 

 

 キリトの挑発に取れる言葉にその人物はキレた。泣いていたリーファも普段なら優しい兄のその言葉に泣くのをやめた。彼が挑発するとしたら、その後は大抵決闘に発展してるからだ。

 だがキリトにそっと近づいたなのはは耳打ちをしていた。

 

 

「キリト君、どういうつもりなの?あの人は上層部の人間なのよ」

 

 

 見るからに高官と見えるその服装と階章だが、その顔に2人は見覚えがあった。

 すると今度はアスナがクスリと笑みをこぼすようにして笑った。

 

 

「過去に自分の保身のために人を騙して、殺そうとしたのに人を貶すことができるんですか?」

 

「なっ、何の話や…」

 

 

 目に見えて動揺するその男性、そして彼とともに来た男性はアスナの言葉が信じられないといった感じだった。ひとつため息をついてアスナはまっすぐとその男性を見た。

 

 

「あなたは権力を得るために『効率の良い狩場』と『戦力』を当時リーダーだった人から奪った。その人は全員が平等にわけれるようにしてただけなのに、ね。そして立場が悪くなると自らの権力を誇示しようとして失敗、挙げ句の果てにはそのリーダーを殺そうとした」

 

「な、なんの証拠があんや!!そんなの自分のでっち上げやろうが!!」

 

 

 ここまで言ってまだわからないのか、とアスナは目の前の男性がひどく愚かに思えた。

 あの時も自分のことやすべてを棚に上げて自分勝手な理屈を並べていた。

 

 

「ユリエールさん、そのリーダーの副官だった人が救援を求めていた。そこで2人のプレイヤーがリーダーを救出した。ここまで言えばわかりますか?」

 

「なっ…そういうことか…お前も生還者か…!!けどな、あれはユリエールの狂言や。ワイはなんも関係ないんや!!」

 

 

 惜しいところまで来たが、アスナが言いたいこととはハズレだった。そして見苦しく言い訳をする男性にアスナは睨むように目が細くなった。すると彼女は腰にかかっているランベントライトに呼びかけた。

 

 

「ファーストフォーム」

 

 《オーライ、SAOフォーム》

 

 

「なっ…うそ、や…なんで…なんでや…!!」

 

 

『バーサーク・ヒーラー』から『血盟騎士団副団長』に戻ったアスナの姿に男性――キバオウは動揺を隠しきれなかった。

 

 

 

「これでもわかりませんか?ユリエールさんとシンカーさんを助けたのが誰なのか、あなたがどれほど邪魔な存在になってるのか」

 

「ク、ソォガキめ…」

 

 

 アスナのことはやはり仮にも『軍』という大規模ギルドにいたから詳しく知っているようだった。

 

 

「今みんな、戦いに疲れて、生きている喜びを噛み締めてる…正直に言います、消えなさい」

 

 

 まさに『鬼』とも言える殺気にキバオウは逃げ出すようにその場をあとにした。残された男性もアスナの気迫に押されて立ち去った。

 

 

「アスナ、やりすぎだ」

 

「いいのよ、これぐらいじゃないとね」

 

 

 その言葉に、周囲の緊張が離散していった。そしてどことなく、拍手が上がった。

 

 

「いいぞ君!」

 

「スカッとしたぜ!」

 

「お姉様と呼ばせてください!」

 

「アスナさん、結婚してくグホォ!!」

 

「あ、あはは…」

 

 

 あそこまで権力に屈せず、また『イケメン』ともとれる行為に一同が湧いた。そして求婚してきたキョウはキリトの体術スキルに沈んだ。

 

 

 ―避難所―

 

 

「うん、バイタルも安定して…二人共心配はないわ」

 

 

 シャマルが寝ている2人の診察を終えた。ギルティという強敵と戦い、傷ついたカイルと今だに眠り続けているスバル。幸いなことに避難者にけが人がおらず、魔導師も各自で治療を行っていた。

 

 

「ギルティ、ね」

 

 

 リーファとライマを出入口へと送り、そして邪神を沈めたのを見届けたティアナのもとにスバルの事ついてシノンから連絡があった。その場にいたクラインに2人のことを任せて取って返すように避難所に戻ったティアナはシリカからカイルに聞いた一連のことを考えていた。

 

 

「…多分、私を襲ったのもそいつだわ。特徴が一致する」

 

「……………」

 

「シノンさん?」

 

 

 何かを考え込み、俯くシノンに心配層にキャロが声をかけた。すると彼女は「外の空気を吸ってくる」と立ち上がった。

 

 

「さてと、二人を搬送するからティアナ、ヴィータちゃん、手伝って」

 

 

 ―出入口:付近―

 

 

「それで、話とは何だ?」

 

 

 戦闘を終えたあと、ライマがグスタフに叱られたぐらいの時にレイがクラインに呼ばれた。

 一方のクラインはBJを解除するのを忘れているのか、ALOフォームのままだった。

 

 

「オメェよ、なんでそこまで自分を捨てれるんだ?」

 

「どういうことだ?」

 

 

 質問の意図が本当にわからないレイだったがクラインの目は本気だった。それは彼が『風林火山』のリーダーという立場のときと同じ顔だった。

 

 

「身を挺してキリトを守った…それは別に何もいう気はねぇよ。けどな、それは『ロストロギア』があったからなのか?」

 

「…あろうがなかろうが、同じ行動をとっただろう」

 

 

 その答えにギリッとクラインは奥歯を噛み締めた。実は『風林火山』ではただ一つの掟があった。

 それは『絶対に死なない』というものだった。

 

 

「それで死んでも、構わねぇってか?」

 

「私の存在なんてそんなものだ。価値なんて――」

 

 

 そこまで口にしたところでクラインは彼の胸元を右手で締め上げた。そして左腕では今にも殴りそうに震えていた。

 

 

「価値だ、存在だ、そんなもん必要なのかァ!! 死ににくい、ただそれだけで心配かけてるんじゃねぇよ!!」

 

「……わからんな、なぜそこまで熱くなれる? 貴様とは戦う前に始めたあったと記憶しているが」

 

 

 レイはクラインという男がわからなかった。はじめは大雑把な性格なのかと思っていたが戦闘中もキリトやレイを始めにほかの魔導師の気配りや自ら進んで指示もしていた。

 

 

「いつ会ったとか、そんなもん関係ねぇ…問題なのはテメェとは背中を預ける存在なのに勝手にブッ倒れてるんじゃねぇってことだ。テメェの背中ぐらい守らせろ、抱え込んでいるんじゃねぇよ」

 

 

 クラインが風林火山のマスターをしている本当の理由はこれなのかもしれなかった。他者を思い、そして守るということが彼のリーダーシップだった。

 

 

「…………」

 

 

 だが、レイはその彼の気持ちが理解できなかった。

 

 

 ―ヘリ―

 

 

 大多数のスペースを横になったスバルで占めたその機内。カイルはグスタフがウェスを連れて病院へと搬送させた。スバルの方は精神的なダメージの方が大きかったようで問題はないが、カイルは物理的なダメージも多く、また彼の衣服からは麻痺薬や睡眠薬といった物質が検出されたため念のために検査を受けるのだ。

 

 

「で、これからどこに向かうんだ?」

 

 

 ひとまず身柄を保護されたライマとリーファ。ティアナが最初に避難誘導したということで2人の身柄は六課で持つことになったのだが、2人からすればどこに向かうのかわからないようだった。

 

 

「機動六課…俺たちが今世話になってる部隊だよ」

 

「へえ…」

 

 

 相槌を打ったリーファ――というよりも直葉。それに一瞬反応が遅れたがなのはたちは驚いていた。

 

 

「えっと…確か、直葉ちゃんだよね?」

 

「あ…、はい、えっと…」

 

 

 名前がわからなかったが、「自己紹介はあとで全員に」ということで直葉はなのはを見た。

 

 

「…金髪じゃなかったの?」

 

 

 いつの間にかALOフォームを解除して普通の姿に戻った直葉にそう聞いた。今まで見たメンバーではシノンが水色の髪になったり、ALOではキリトの髪型や姿が変わるぐらいだった。

 しかし、直葉とリーファは全くの別人だった。

 

 

「あ、ははは…私たちはもともと自分の姿をベースにしてるんですけど…」

 

「私は完全にランダムなんですよ。そういう仕様になる前に始めたので…」

 

 

 新生ALOとなってからはSAOプレイヤーは外見データを再現できるようになったりカスタマイズができるようになったが、サービス開始当時は完全ランダムだった。

 

 

「確か最初、お兄ちゃんでも気づかなかったよね…」

 

「ああ…それもあるし、ALOで初めて出会ったプレイヤーが妹だとは誰も思わないだろ…」

 

 

 キリトとリーファの出会いは偶然だった。それが同じ屋根の下でプレイしている兄妹だとは誰も思わないだろう。

 

 

「…さてと、それじゃあフォワードの3人に連絡ね。今日の午後の訓練及び明日の早朝と午前訓練は中止、今回の襲撃の報告書と休養をしっかり取るように」

 

 

「「「はい」」」

 

 

 ―六課:会議室―

 

「なんで出撃するたびに増えるんや…」

 

 

 最初は次元震の調査でキリト、この前のファーストアラートでアスナ達、そして今回はリーファ達となぜか民間委託魔導師の戦力が過剰になりつつ状況にはやては大きなため息をついた。

 

 

「…まあ、ええわ。ともかく今回の襲撃はそのALOちゅうゲームのモンスターやったというわけやね?」

 

「ああ、間違いない」

 

 

 ここに居るライマ以外のメンバーが『ラグナロク』で邪神を目撃していた。それと寸分の狂いがないモンスターとの遭遇。そして今だに増え続けているVRMMOプレイヤーの漂流者。

 単なる偶然としては出来過ぎる内容だった。

 

 

「それと、ライマ君…とんでもないことしてるみたいやな」

 

「…………」

 

 

 まるで睨むかのようなはやてにライマは視線を逸らした。最期の詰とは言え、邪神に攻撃した影響で無事だっ建物でさえ瓦礫にしてしまったのだ。リーファもまさかライマがあんな技を繰り出すとは思ってなかったようだ。

 

 

「…当分、うちでただ働きすることになったわ」

 

「ちょ、あれは――」

 

「大技で止めはわかる…けどあれはやりすぎや。上のお偉いさんがあんたを器物損壊・施設破壊の容疑で捕縛しようかと検討してたらしいわ」

 

 

 その言葉にライマは汗をだらりと流した。サクヤでさえ他の種族との抗争を防ぐためにあまり大きなことはするなと何度も言っていたが守らなかった、それと同じ感覚でやった結果が犯罪者とは笑えない冗談だった。

 

 

「…まあ、捕縛しない条件としてうちで働いてあの一件は不慮の事故とみなすかどうか判断する、という保釈もあるそうや。どうする?犯罪者として過ごすか、身の潔白を証明するか」

 

「………あんた、性格悪いって言われないか…」

 

 

 一瞬はやての背後に狸のしっぽのようなものが見えた気がした。

 やはり、ゲームの中でならともかく現実で犯罪者になりたくないので六課で保護観察という選択肢に落ち着いた。それに合わせるかのようにリーファも六課に保護されることになった。

 

 少なくとも、ライセンス取得後にキリトの妹ということでここに所属されることになるだろうが。

 

 

 

 ―デバイスルーム―

 

「なん、ですか…これ…」

 

「………」

 

 

 会議室でのやりとりを終えたキリトとクラインはすぐにシャーリーがいるデバイスルームへと向かった。そこにはユイと談笑するシャーリーとグリフィスがいた。

 

 しかし、どこか神妙な面持ちのキリトが渡したエリュシデータをみたシャーリーから笑みが消えた。

 

 

「これはひどい…」

 

「どうしたらこうなるんですか…」

 

 

 グリフィスの言葉も最もで、キリトが渡したエリュシデータは剣の鍔にはめ込まれたコアから指が3本分ほど離れた位置で完全に折れていた。一応回収した折れた刀身にも無数にヒビが入っていた。

 

だが、昨夜ユイがメンテナンスをした時にはそんなものは全くなかった。

 

 

「その邪神との戦闘で…こんなふうに…?」

 

「いや、俺のカラクレナイは…」

 

 

 展開したカラクレナイはユイが見たときとあまり変わりがない状態だった。キリトとクラインはレイドを組み、そして連携していた。多少の攻撃の種類やそういったもので武器にかけた負担は変わるが、それでもここまでの違いになるのは普通におかしかった。

 

 

「直せるか…?」

 

「…試してはみる、けど…あんまり期待しないでください」

 

 

 シャーリーのデバイスマスターとの経験で、直感はしている。

 

 

『この破損は治すことができない』

 




ユイ「エリシュデータが…」
相当ショックだろうね、50層のLAからずっと使い続けてるから。
それにフラッシュバックでトラウマが蘇ったのもあるし、結構ナーバスになってるね。

ユイ「戦闘中にあったシグナムさんとクラインさんの技名ってなんかおかしくなかったですか?」
あれの元ネタの技はTOX2の主人公ルドガーとパーティーメンバーのガイアスの2人で行う秘奥義ですね。作者自身はTOX2はやったことがないんですが、色々と調べてみると好感度やらで技名が変化するようなのです。
だからクラインは「ガオウセンレツコウ」、シグナムは「ワイルドコンビネーション」と言いながらも同じ技なんです。
ユイ「同じ技なのに名前が違うのは何か意味が?」
ん~、後々分かると思う。その時覚えてたら今回のことも説明するね。

ユイ「キューブでママを含めて全員がALOフォームになれるようになったんですか?」
そうだね。本来ならあれは接続したデバイスにALOフォームを組み込むというモノで試作段階だったんですよ。結果、すべてのデバイスにALOフォームが組み込まれるということになったんです。
ユイ「すべて…ということは、この場にいなかった人達も?」
まあ、そうだね。メタ的な話をすると最初はユイが組み込んだモノを解析してほかにも使えるようにしたことにしようと思ったんだけど、オリキャラが多くていちいちそういうことができなくなったからこうなった。
あ、でもリーファやライマは逆にALOしかないですね。本人たちがALOしかやったことがないから。(※この作品はインフィニティモーメント、ホロウフラグメントの設定は出てきません)

っと、オリキャラ紹介ですね。
今回は長らくお待たせしてしまったライマです。


ライマ

投稿者:左半身が不運さん

年齢:17歳

性別:男

デバイス名:風雷
・風雷:セットアップすると十字槍になる。待機状態はアナログ時計

VRMMO:ALO(シルフ)

容姿:短めの黒髪で、瞳の色は黒色で目つきが鋭い。顔つきは、少し女性に近い童顔。身長は平均より高め。

服装:上は灰色のパーカ(フードの顔が見えるところは少し解れている)、そして下は藍色のジーパン。黒く、所々に白い唐草模様の刺繍が施されている和服、そして手には黒い皮手袋。

詳細説明:
ALOプレイヤーの中では比較的古参に入り、彼が徹底的に敵または、別種族を倒すから【風巻の雷】と呼ばれるようになった。
リーファとは、良くデュエルをしており、大抵は力でゴリ押しして、勝つ。
キリト達のことは、お互いリーファ経由で知っているが、顔までは知らない。
武器は両方ともプレイヤーメイドの武器であり、常に持ち歩いている。
ついでに、リーファからは(突進馬鹿)と呼ばれている。
お人好しな性格で子供に好かれやすく容姿のせいで、年下の小さい子供には(おね兄ちゃん)と呼ばれて慕われている。
BJを展開すると、髪の色が白く染まる。冷酷に殲滅することもあるが、根がお人よしなため甘い部分もある。
ALOの中で、よく敵を全滅して移動しては、また別の場所で全滅させていたから、
領主のサクヤさんから、お咎め(と言う名の回復アイテムの大量買い等のお使い)を受けている。
武器は片手剣と十字槍を使い分けて魔法も使うが、詠唱が面倒なので基本簡単な回復魔法しか使わない。片手剣で攻め込むことが多いが、十字槍での一撃の方が重く、止めに使用することが多い。
虐めや差別が嫌いで、ボッチのプレイヤーを見ると助けてしまう。

今回、クリティカルブレードでいいところを持っていった人物です。
ユイ「あれ?その技って体術じゃないんですか?」
それはTOGのソフィの技ですね。実は同名だけど今回のような動きをしてるのがTOD2のロニが使うクリティカルブレードです。
ただそれだけだと弱いかなと思ったのでSAO本編で須郷が重力魔法についてやってたのでそれで威力強化をしているというなかなかな荒業になりました。

オリキャラに関して一つだけ発表があります。
最初に多くの投稿があり、今もちょくちょくオリキャラの投稿をしてる方がいらっしゃるのですが、およそ25人の投稿キャラと、これ以上増えたらコントロールができなくなると判断して来週の金曜日、9日の正午にオリキャラの募集を終了します。追加設定等は今までどおり受け付けますが、登場後だと大幅な変更は無理だということも覚えておいてください。

そして意味なく登場したキバオウ
ユイ「出た意味は…」
なんとなく。キバオウはこういう威張ってるイメージしかないからなんだかんだで上層部に取り込んで上から目線になりそうだなと思った。

さて、今回はこの辺で。次回デイブレイク 2ndお楽しみに!

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