俺は寝付けず空を見ていた。紫色の空に満月が爛々と輝いている。
隣にはリアスがいるが……俺の肩に頭をのせてすぅすぅと静かな寝息をたてている。
回りには誰もいない。
「……リアス」
俺は名を呼ぶと、彼女の髪に手櫛をかける。さらさらとしていて、まるでシルクのようなさわり心地だ。
「……リアス――月が、綺麗だな」
「……うーん……」
「……はは、なにやってんだろ、俺」
俺はリアスをお姫さまだっこをすると、部屋に運んで寝かしておいた。
……俺はリアスの頭を撫でると、リアスの私室を出る。部屋には王としての責務の本や、チェスのルール本、レーティングゲームの理論書や戦術指南書などが壁にある本棚にびっしりと並べられていて、調度品も必要最低限のものばかりだった。お世辞にも、女の子の部屋とは言えなかった。
「……」
俺はなにも言えずにテラスへでる。
「……イッセー先輩?」
おっと、先約がいたみたいだな。
小猫ちゃんだ。今は猫耳を出している。
「……隣、いいかな」
「……はい」
それっきり互いに言葉を交わせず、俺と小猫ちゃんは空に浮かぶ満月を見る。
「……なぁ小猫ちゃん」
「……なんですか、イッセー先輩」
俺は彼女の顔を見ずにこう言う。
「……いや、月が綺麗だな、ってさ」
「……! イッセー先輩……からかってるんですか?」
……はは、気づかれてしまったらしい。
「さてね」
「……イッセー先輩の意地悪」
「ごめんよ」
「……私、まだ答えられません。先輩の中にいる、『女の人』の事を片付けてからにしてください……誰かは、知りませんけど」
「! はは、ばれてたのか」
……。
「……もう、寝ましょう先輩」
「そう、だな。悪いな、付き合わせて」
「ん……別に、気にしなくてもいいです」
小猫ちゃんの頭を撫でながら考える。
……なぁ、俺はいったいどうしたらいいんだよ……リアス……。
日を重ねる毎に締め付ける過去の記憶。
……俺は……。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「……イッセー先輩?」
目が覚めてしまい、風に少し当たりたくなった私はテラスにでて耳を出していた。
すると、イッセー先輩が現れてビックリした。
「……隣、いいかな」
「……はい」
もちろん、断る理由もないのでそう答える。
月をぼーっと見上げているイッセー先輩。
「……なぁ小猫ちゃん」
「……なんですか、イッセー先輩」
彼は私の顔を見ずにこう言う。
「……いや、月が綺麗だな、ってさ」
その言葉を聞いた瞬間、私のなかでなにかがあふれでようとする。甘くて、切ないなにかが――
「……っ」
私はつい『もう死んでもいい』と答えそうになり、口をつぐむ。
そして、彼の目を横目に見ると、私ではなく他のだれかを見ていた。
「……! イッセー先輩……からかってるんですか?」
「さてね」
話をそらそうとするイッセー先輩。やっぱり、私は見てない。
「……イッセー先輩の意地悪」
「ごめんよ」
私を見てほしい。もっと、私を見て。
私の力を飲めといった彼自身は、別のなにかに縛られていた。
「……私、まだ答えられません。先輩の中にいる、『女の人』の事を片付けてからにしてください……誰かは、知りませんけど」
「! はは、ばれてたのか」
私がそういうと、彼は一瞬硬直した。やっぱり、私じゃない誰かに……しかも、部員たちでもない。
「……もう、寝ましょう先輩」
これ以上辛そうな先輩なんて、見てられなかった。
「そう、だな。悪いな、付き合わせて」
すまなさそうにそういう彼は私の頭を撫でる。彼のなでは気持ちよくて癖になりそうだ。
「ん……別に、気にしなくてもいいです」
私は答えながら思う。
先輩――見ててくださいよ。私、今回のゲームで乗り越えて見せますよ。もっと、先輩に追い付けるように。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「……なぁ」
「……なんだにゃーん?」
「月が綺麗だねぃ」
「死ね糞野郎」
「失礼な、まっすぐな感想だぜぃ」
「煩い……あー! ミスったー!」
「Normalシューターの斬ちゃんにはHardは厳しーんじゃないか?」
「そろそろ美猴には仕置きだにゃー。今晩の飯抜き」
「そ、そんな殺生な!」
「妖怪だからしにゃーしないだろー?」
「それは、そうだがな」
「なら問題なしだにゃー。……チッ、餓死すればよかったのに。空気読んで死んどけよそこは」
「この外道!」
「よし、一週間断食だにゃーん」
「美しく可愛らしい我らが御剣様に失礼を働いてしまい大変申し訳ありませんでした」
「よし。そろそろ飯にするんだにゃー」
「やっぱり黒歌とキャラかぶるよな」
「ひどいにゃ」
「声真似すな。妙に似てて逆にキモい。」
これからレーティングゲームです。いいね?