パーティー。そう、パーティーだ。
立食式のパーティーだ。
俺は用意してもらったタキシードを着用して赤ワインを飲む。……悪魔だし年齢がどうのってのはないだろ。
というか飲んでなきゃやってられるか。ディオドラの顔を長時間視界に入れ続けてたんだ、ストレスもたまるってもんだ。
「ふぅ……」
「あ、駄目ですよイッセーさん、お酒なんて飲んじゃ!」
俺に声を書けてきたのは……アーシアか。うむ、ドレスもにあいます。
「ワインは神の血と聞くが……?」
「それでもダメですっ」
「むぅ」
うーん、酔いが少し回ってるな、俺も。
ワイングラスの中身を飲み干し、空になったそれを執事さんみたいな人に渡し、水を二つ頼む。飲み物は注文すればこうして持ってきてくれるのだ。俺が飲んでたのは比較的度数の低いワインだけど、少し気分がよくなった。
「アーシア、パーティーは楽しんでる?」
「緊張しちゃって喉カラカラです……」
まぁ、俺達は今まで挨拶回りしてたしな。
「お冷やをお持ちしました」
「ありがとう。ほらアーシア」
俺はアーシアに水を渡す。甘い飲み物は乾いた喉に悪いからな。
「あ、ありがとうございます……んっ……ふぅ……」
アーシアは数口水を飲むとため息をつく。
「『成績優秀者は我が儘を多少通す』か……」
「レーティングゲームの話ですか?」
「ああ。だから若手悪魔にレーティングゲームの準備をしろ、って話だったのか」
今回サーゼクスさまから告げられた重要な発表というのがこれだ。サーゼクスさま曰く、
俺達は自発的に冥界入りしたけど、ソーナ会長たち等はそうでもないらしい。聞いたところによると、レーティングゲームのために冥界入りをしろという話だったらしい。
「アーシア」
「あ、ゼノヴィアさん」
ゼノヴィアがこちらへ来た。
「折角のパーティーだ、もっと食わんと身が持たんぞ」
「そうですね、イッセーさん、私ゼノヴィアさんと一緒にいってきます!」
「おう」
俺は短く返事すると、ゼノヴィアとアーシアを見送った。
「赤龍帝、楽しんでおられますか?」
と、俺に話しかけてくる美少女。金髪ロールヘアーの少女。レイヴェルだ。
「ライザーの妹の……レイヴェルだったか?」
「は、はい。覚えていたのですか?」
「まぁな」
レイヴェルには世話になった。本当にいろんな意味で……ふぅ。
「そうですか……」
「そういえば、ライザーはどうなってる?」
「塞ぎこんでおりますわ……少々、トラウマ気味ですが、まぁいい薬かと」
「なかなか厳しいな」
「身内は過小評価しやすい、というやつですわ」
「成程」
思わず納得してしまった。
「まぁ、今は眷属ではありません。お母さまの未使用の駒とトレードしましたので、実質上フリーの眷属ということですわ」
「なるほど……トレード、か」
「ええ、所で赤龍帝」
「んー、赤龍帝もいいけどさ、名前で呼べよ。なんか堅苦しい」
「そうですか、ではイッセー様と」
「あー、うん。わかった」
やっぱりイッセー様か。慕われてる、のかねぇ。
ふと視線をそらせば、黒髪に紫苑の瞳を持つ美少女―――。
ベルーナ・バアル。なんでも、サイラオーグさんの腹違いの妹だという。
「ベルーナさんは悪魔たちの中でも結構人気がありますわ」
「まぁ、みてくれも可愛いし、人当たりも良さそうだしな」
「ええ、それに男に対してガードが固いのもポイントアップですわ」
みれば男が群がっているものの、すべてきっぱりと断っているようだ。ガードが固いというよりも、どちらかと言えば……興味がなさげだった。
……ん? あれは……よろずさんか。
こんな時でも巫女服なんだな……。そして傍には緑髪の少女がメイド服で控えていた。
「万さんは下級悪魔や転生悪魔、それに日本好きの悪魔に人気ですわ。現役を引退したとはいえ巫女で悪魔という珍しいですからね」
「なるほど。巫女は日本でも絶滅危惧だからな」
「そうなのですか?」
「神降ろしをするかんなぎとしての巫女はな。コスプレとか売り子をやってる巫女はいるけど。異能者としての巫女は見ないなぁ」
「そうなのですか……」
などと話していると、万さんが急に視線を別の場所に移した。その視線の先には……小猫ちゃん?
小猫ちゃんは外へ出ようとしてるみたいだ。
「イッセー」
「部長!」
「小猫が……」
「わかってます。つけましょう」
俺はレイヴェルに別れを告げてから向かおうとする。
すると、万さんから声をかけられた。
「グレモリー、赤龍帝。私も混ぜなさい。……あやかしの気配がするわ」
「わかったわ。専門家がそういうのなら間違いないわね」
リアスが了承したので、俺たち三人はあとをつけることにした。