リアスを愛したい。でも、前世のリアスを裏切ることにならないか?
愚考する。
考えて、考えて。
でも、まだ答えはみつからない。
「うーん……」
「……先輩?」
「いや、なんでもないよ……」
あの、夢。うむむ、悩んでたら小猫ちゃんに心配されてしまった。
ぼんやり、としか覚えてないんだけど……なんだろう。ドライグもガウェインも覚えてないみたいだし。
馬車の中でずぅーっと思い出そうとするんだけど、こう、頭のなかがぼんやしりて……あぁ、もう! やめだやめ! これ以上考えてたら頭が煮えちまう!
「着いたようね」
リアスが呟くように言う。うむ、リアスの実家はデカイ。ゼノヴィアやアーシアも驚いている。
「お嬢様、そして眷属の皆様、どうぞお進みください」
すげぇな。前も見たけど……これがRedcarpetってやつか……圧巻だなぁ。
《なぜにネイティヴ?》
『知るか』
またなんかやってるよこの二人。
「さぁ、いくわよ」
リアスがカーペットの上を歩き出そうとした瞬間!
メイド達の列からッ一人の小さな人影が飛び出すッ!
その人影はリアスへと向かってッ飛び込んでいくッ!
そう、彼こそがミリキャス様だッ!!
「リアス姉様! おかえりなさい!」
「ミリキャス! ただいま。大きくなったわね」
「はい!」
リアスがミリキャス様を抱えながらこちらを向く。
「この子はミリキャス・グレモリー。お兄様――サーゼクス・ルシファーさまの子供なの」
サーゼクスさまとグレイフィアさんとの子供だったな。
魔王と女性悪魔最強の一角との間の子。まさに才能の塊だ。
ちなみに夕麻ちゃんとヴァーリ、そして龍咲さんはグレゴリの研究施設へ行っているそうだ。
「ほら、ミリキャス。あいさつをして? この子は私の新しい眷属よ」
「はい。ミリキャス・グレモリーです! 初めまして!」
「こちらこそ初めまして、ミリキャスさま。
取り敢えず丁寧に挨拶を返しておく。そして最敬礼。ふふん、大人の礼儀だよキミ。
「……イッセーくん、に、似合わなさすぎるのに様になってる……」
「……祐斗先輩。言わないでください。腹筋が痛くなってきました」
「……奇遇だな二人とも。私もだ」
剣士二人と小猫ちゃんがなんか言ってるけど取り敢えず無視しておく。
「よ、よろしくお願いします!」
「あら、イッセーってそんな言葉遣いも出来たのね。さぁ、屋敷へ入りましょう」
こうして、屋敷のなかへ入っていくのだった。
―*´ω`*―
リアスのお母様、ヴェネラナ・グレモリーさま。彼女にも丁寧に挨拶をしたら驚かれた。「最近の学生はこんなに礼儀正しいのですか?」ってね。
そんなことはありませんと謙遜しておいたけど。
謙遜と謝罪と先送りの種族、それが日本人デース。
夕食の時。うん。俺また驚かれた。マナーしっかりしてるって。
まぁ、リアスやリアスのお母様にみっちりしごかれたからなぁ……あ、下的な意味じゃないぞ?
やはり小猫ちゃんの様子が何時もよりおかしい。
……うーん。やっぱり悩んでるんだよなぁ、あれ。食事が進んでないからよくわかる。
俺は“知っている”からこそ、対応できる。
……あー、ステーキうまい。
「ところで兵藤一誠くん」
「はい」
リアスのお父さんが話しかけてくるので食事を中断して答える。
「ご両親は変わりないかな?」
「はい。こちらが気圧される位には元気です」
「それはよかった、うむ……そうだ兵藤一誠くん。私の事をお義父さんと読んでくれないかな?」
……出来るのか? 俺に?
つまり、リアスと結婚を前提に考えている。
……………………。俺は。
俺、は……。
「はは、ご謙遜を。私めはいまだ一下級悪魔。リアスさまのお父上をお義父さんなどとお呼びする程の立場ではございませぬ故」
気がつけば取り繕いの言葉と共に断っていた。
俺は、逃げている――まだ、まとまってないから。踏ん切りがつかないから。
本当なら、リアスや皆を抱き締めたいくらいだ。
でも、彼女たちから愛を受ける度に、思い出す。過去の記憶。16年と数ヵ月前の、あの日々を……。
「ぬぅ、そうか……」
「あなたは気が早すぎるのですよ」
「しかし、赤と紅なのだぞ? めでたいではないか」
「めでたい色は赤と白ですよ」
「ぬぅ」
リアスのお母様とお父さんがなにやら話しているが、ちっとも頭に入らなかった。
―;ω;―
「であるからして、上級悪魔の社交界というのは――」
はい。何故かミリキャスとお勉強をしております。
「若様は悪魔文字をご存知ですか?」
「はい。一通りは読めるはずです」
「わかりました。では、応用的な、上級悪魔が多く扱う悪魔文字による単語を――」
ふむふむ。やはりためになる。早く上級悪魔にならないと……色々、面倒だからなぁ。
「では、グレモリー家の歴史についてですが――」
ドアが開かれる。
「おばあさま!」
「ミリキャスに一誠さん。お勉強は捗っていますか?」
そういいながらミリキャスさまと俺のノートを見て微笑んでいる。俺も決して下手ってわけじゃないけど、ミリキャスさま、すげぇ字が上手いんだ。流石は名家の子だなぁ、って思った。
「結構結構。グレイフィアやサーゼクスの報告通りですわ。何事も一生懸命ですわね」
「お褒めに預かり光栄です、麗しいマダム」
「あら、お世辞も上手だこと」
おぅ、さらりと流されてしまったぜ。
「もうすぐリアスたちが帰ってきますわ。そういえば二週間ほど後に若手悪魔の顔合わせの会合がありますわ」
若手悪魔、か。
サイラオーグさんにも会えるのかな?
そして、たぶんあいつもいる。
ディオドラ・アスタロト。アスタロト家の次期当主で……アーシアの人生を引っ掻き回した悪魔。
俺は、その時冷静でいられる自信がなかった。
時系列関連の修正を行いました。
修行→会合→調整→ソーナ戦となります。