転移の光が収まると、俺たちは部室にいた。
「っ! どうやってここまできた!?」
狼狽える魔法使いらしき存在を無視してギャスパーをみる。ギャスパーは縛られていて、涙を流していた。
それだけで俺が怒るのは十分だッ!
それに、これは分かってたことだ。俺は……呆けていてそれを忘れていた、対策なら多少は出来たろうに!
「『五月蝿い』」
俺は怒りを込めてそう言う。それだけで魔法使いたちの足はすくむ。手が震え、魔方陣もろくに書けず、魔力伝達すらままならない。
「くっ……!?」
「なんだ、このオーラ……」
狼狽える魔法使い達。……ドライグのオーラを意識して正解だな。
ドライグの威圧的な強いオーラなら、雑魚は一掃できる。
「部長……。僕、もう……嫌です、もう……」
俺はギャスパーに近づくと――頬を叩く。
「え……?」
「逃げるな。恐れるな。泣くな。お前は強い男の子じゃないか」
「で、でも……」
「……故人曰く、『失敗は成功の母』だ。失敗してもいい。だから」
『Boost!!』
俺の左手に籠手を出現させる。そして――
『Blade!』
アスカロンを呼び出し、俺の籠手の部分を切り裂く。
「イッセー……?」
戸惑うリアス。大丈夫です。
「だから、俺の血を飲め。最強のドラゴンを宿す俺の血だ。それで、決意を見せてみろ。お前は――お前は、どうしたい?」
「僕は……僕は。僕は! 僕は生きるよ!」
「ならば飲め! 念ずるな、勝ち取れ! お前の『生き様』を俺に見せてくれ!」
ギャスパーは頷くと、俺の腕に付着した血をなめる。
ギャスパーが俺の血を口にした瞬間、この室内の空気が変わる!
その変化により正気をとりもどした魔術師たちが室内を見渡すと。
赤い目を妖しく煌めかせながらコウモリが群れをなしていた。
「くっ、変化したか! 吸血鬼め!」
「この……!? くっ、体が、動かない?」
『体を停めました。もうなにもできないですよ?』
ギャスパーの声が響くと、コウモリたちが霧となって魔術師たちを襲う!
「くっ……血を吸っているのか!?」
「それだけじゃない、魔法力も吸われている!」
なにも出来ない魔術師たちは、一人、また一人と倒れていく。そして――
「おの、れ……」
最後の一人が倒れ、部屋には静寂が訪れる。
「やったなギャスパー!」
『はい!』
ギャスパーの潜在能力――本当に底が見えないな。
「さぁ二人とも、魔王様達の元へ急ぐわよ」
リアスの言葉に俺たちは頷くと、急いで部室から出た。
―・ω・―
校庭に出ると、そこには――
満身創痍の女性と、黄金の鎧――アザゼル先生。
満身創痍の女性の鳩尾にアザゼル先生のパンチが入る。
「あがっ……」
そして、その女性は崩れ落ちた。そしてアザゼル先生は女性を抱え、会議室のあったところへと投げ入れていた。
そして、目の前ではありえない光景が繰り広げられていた。
「ほらほらほらほらぁ!」
「がっ! ぐぁっ!?」
白い鎧が『黒』に攻められていた。
「どうした白いのぉ! その程度かぁぁ!」
「ぐっ、こ、のぉぉぉ!」
体が、動かないのか?
ヴァーリの影には数本のクナイが刺さっている。
もしかして、漫画で言う「影縫い」ってやつか!?
……ガウェイン、距離計算頼む。
《距離500、ここからなら狙い打てるよ。ただ、結構固いよ?》
ただ撃ち貫くのみ。
《そうか》
『Boost!!』
ヴァーリにあたらぬように、『黒』に悟られずあたらぬように。
………………来た! 一瞬の空白!
俺は右手の指をクナイに標準を直ぐ様合わせ、狙い撃つ!
「……スナイプ・ドラゴンショット、ってな」
速度と破壊力特化の魔力弾は高速で影に刺さるクナイへと伸び――
寸分狂わずクナイを全て砕いた。よし!
「……!」
ヴァーリは光速でそこから抜け出す。
黒は突如動きを止める。
「おおっ、白と赤の揃い踏み! 白と赤の共演! 俺の黒も混ぜてくれよ!」
それは端正な顔を狂喜の笑みで歪ませる少女。
――こいつっ、戦闘狂かよ!
「私一人じゃ太刀打ち出来ないっぽいね……リクエストに答えてみる?」
「ああ、やるさ、白と赤の共演をさ!」
「うんっ!」
いくぞドライグ!
『応よ!』
『Welsh Dragon Soul Fusion!!!!!!』
音声とともに俺のからだがあの鎧に包まれる。
背には翼があり、腕には杭と砲門。
『9min』『76%』
よし、いくぞ。
「ヴァーリ、合わせるぞ!」
「ええ……!」
俺はパワーと防御力。
ヴァーリはテクニックと速度。なら、俺達がとる行動は――ひとつ。
「このまま一直線に突っ込むっ!」
「先ずは……それ!」
『Jet!』
俺は魔力噴出口から火を吹かせて加速し、高笑いする黒へ突っ込む!
ヴァーリは後ろから援護射撃に徹する。
「ほぅ、互いの特性を生かしているのか! 面白いぞ、赤と白ぉぉ!!」
楽しげな顔で俺に斬り込む彼女。ここは敵地に違いない。なら――
プロモーション、ルーク!
防御力と攻撃力があがる。相手の剣をそのまま受け止めるが……
「そらぁ! んー、固いっ!」
恐ろしいほどに鎧の表面が切れる。あの刀、すげぇぞ!?
俺たちの鎧は、ドラゴンの鱗そのものなのに!?
「あははははは!」
……!
一瞬の死角! とったのは俺だ!
背後に回り込んで魔力弾をうちこむが――かきけされてしまう。生半可な攻撃じゃダメだ。
「くっ……強い!」
もっと、ヴァーリと息を合わせないと。
もっとだ、もっと!
『Harmonics……』
胸の剣が俺の想いに応呼し、俺とヴァーリのオーラを調和する。
白と赤を混ぜず、反発させず、調和させる。
その間も俺達は攻め続ける。
「くうっ、流石に厳しい! だがそれがいい!」
「がっ!?」
黒の速く重い一撃を受けた俺はふきとび、丁度ヴァーリの隣へ着地する。
『Harmonics……Harmonics……Harmonics……』
互いにどちらからともなく手を繋ぐ。
赤と白が交錯する。オーラが交じり、調和し、互いの力が流れ込んで行く。
『Welsh Dragon Power is Taken!!』
『Vanishing Dragon Power is Taken!!』
互いの力が互いに流れ込む。
それらは調和し、馴染む。
「くっ……」
「がっ……」
しかし、痛みは免れない。反発した力が調和するのだ、あの時程でないにしろ痛い。
そして、俺の右の籠手と、彼女の左手の翼の色が反転する。
俺のが『
……ヴァーリの思考が手に取るようにわかる。それと同時に、ヴァーリに俺の思考が筒抜けなのも気づく。
今、俺達に言葉は要らない。そうだろ?
さぁ……反撃開始だ!
真っ向唐竹割りーーっ!