朱乃さんに呼び出された。まぁ、たぶんミカエルさんのことなんだろうけどね。
神社の石段のもとには、朱乃さんが立っていた。
「いらっしゃい、イッセーくん」
にこやかな微笑みが眩しかった。
石段を上る俺と朱乃さん。
「ごめんなさいね、イッセー君。急に呼び出してしまって」
「いえ、暇だったので大丈夫です」
しかし朱乃さんに巫女服がすげー似合ってる。巫女服は貧乳が似合うとばかり思ってた俺だが、朱乃さんを見れば巨乳でもいいと思える。流石「雷の巫女」と呼ばれるだけはあるな、本当。
長い石段を上りきると、そこには。
とても長い、地面につきそうなほど長い金髪をゆさゆさと揺らしながら、猫を追いかけている――幼女。幼女である。
「あ、きまちたね」
舌足らずなしゃべり方な幼女はこちらを見つけると余裕の表情で幼女らしからぬ表情で微笑む。
「お嬢ちゃん、飴食べるかい?」
「わーい! おにーちゃんありがとー!」
飴をあげると見た目に似合った甘ったるい満面の笑みを浮かべて飴を舐め始める。うむ、かわいい。思わず頭を撫でる。
「ふにゅー……」
目を細めて気持ち良さそうにする幼女。
「あ、あの、イッセー君?」
「なんですか朱乃さん」
「そこにいる可愛らしい幼子がミカエル様です」
「あ、どうも。はじめまちて、赤龍帝。ミカエルでしゅ」
チョー大物はろりっ子だった……ッ!
―○●○―
「あのですね。わかりまちたか? 私はですね、好きで幼女してるわけじゃないんでしゅよ」
システム運用のために力を使いすぎて一時的にロリ化しているという説明を受けた。
「うんうん。飴ちゃん食べる?」
「食べるー! ……ハッ!?」
やべぇ。幼女ミカエルさん……ミカエルちゃんおもしれー。
「ほ、本題に入りましょう。悪魔側にこれを授けるのでし」
あ、噛んだ。
「これは「ゲオルギウスの聖剣――アスカロンか」……あう」
俺がつい台詞を被せてしまい、涙目になるミカエルちゃん。慌てて頭を撫でるとにぱーと笑う。
なでなで、にぱー。なでなでなでなで、にぱー。
やべぇ。俺を萌え殺す気か!? ミカエルちゃん、恐ろしい子!
『ちなみに補足しておくが、龍殺しは基本的に槍で止めを指すのだ』
へー。
俺が頭を撫でるのをやめると、暫く蕩けていたミカエルちゃんが復活する。
「こほん、気を取り直して。特殊儀礼を施しているので、悪魔のあなたにも扱える筈です。それに、そのオーラ……なるほど、久しいですね」
なんか勝手に納得している幼女。
「まぁ、あれです。ごたくはいいんでささっとやっちゃいましょう。ほらほら、赤龍帝、ばばーんとオーラを合わせなさいな」
えーと、あのときと同じか?
取り敢えず籠手を出す。
《じゃあ、合わせるよ》
『おう』
俺のネックレスの剣から音声が流れる。
『Harmonics……』
そして、剣が生えたような感じになった。
うお、懐かしい。
「ふむふむ、どうやらアスカロンにも気に入られたようですね。中々スムーズに行きましたね」
「アスカロン、しかと受けとりました。あと、ひとつお願いが」
「それは会談の時に聞きます。では、会談であいまちょう。……あぅ、舌噛んだ」
そう言うと、ミカエルちゃんは光になって消えた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「久しい、親友」
「おう、オーフィスか。よく俺を見つけられたな。何年ぶりだ?」
「2005年と3ヶ月12日5時間17分34秒ぶり」
「お、おう」
「我、お願いがある」
「ほう?」
「我、グレートレッド倒す。協力して欲しい」
「……カカッ、例え親友でも無理な相談だ」
「何故?」
「そらおめぇよお、俺も色々としがらみがあんのさ。表だって自由に動けるようなじゃない」
「……でも」
「でもも案山子もない。それによぉオーフィス。レッドを倒して、それで……どうするんだ? アイツが泳ぎ好きなのは今に始まったことじゃ無いだろ」
「それでも、我は静寂を手にする」
「ハァ……まぁ、気を付けろよ。お前を狙うのは意外に沢山いるんだぜ?」
「我には関係ない」
「やれやれ、困った龍神さまだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「お茶ですわ」
「ありがとうございます。……結構なお手前で」
うむ、茶菓子にあうな。
一息ついたところで本題に入ろう。
「朱乃さん。アナタは堕天使の幹部、バラキエルの」
「ええ、娘ですわ」
朱乃さんの背中には、片方が悪魔の、もう片方が堕天使の翼が。
「汚らわしい羽根。堕天使と悪魔の異形。うふふ、私にお似合いですわ……イッセー君、私の事……嫌いに、なりましたよ、ね……」
朱乃さんははらはらと涙を流す。
朱乃さんは異形なんかじゃない。俺の方がよっぽど酷い。
転生なんて、ほとんどの人間が体験しないようなことを体験しちまってる。
……気付けば言葉を紡いでいた。
「朱乃さん。そんな事ないですよ。朱乃さんの事、俺は嫌いにならないです。堕天使は、たしかにいい思い出がありませんけど……俺は朱乃さんの髪のように黒々としたその翼、好きですよ?」
無意識の内に朱乃さんの堕天使の翼を撫でる。
「……ッ! イッセー、くん……ふふ、殺し文句、言われちゃいましたね……本当の本当に本気になってしまうじゃない……」
最後のほうが聞こえなかったが……やべ、俺変なこと言ったか?
朱乃さんは泣き笑いをすると目を擦り涙を拭う。
俺は翼を撫でるのをやめると、あっ……と残念そうな声をあげた。その姿が酷く幼く見えて、気がつけば頭を撫でていた。
「ぁ……」
小さく声をあげた朱乃さんは、目を細めてそれに委ねるようにする。
「イッセーくん、二人きりの時は朱乃、って呼んでくれません?」
……これは、答えなくちゃな。
「……『朱乃』。あ、なんかこれ恥ずかしいですね」
「……イッセー……あら、ほんとですわ」
くすくすと笑いあう。朱乃さんは不意に俺に身を委ねると……
「すぅ……すぅ……」
「寝ちまった、か」
仕方がないので朱乃さんを膝枕することにした。
固いだろうが、少し我慢して欲しい。
「……で、部長。どこから見てました?」
「……二人きりの時は、のくだりからよ。朱乃は『朱乃』なのね。でも、私は『部長』なの?」
……ッ。俺はリアスの言葉に思考を一瞬停止させた。
――イッセー♪
――だめよ、彼は私の!
――イッセー、愛してるわ。
手が震える。呼吸が乱れる。
ダメだ。
リアスを“リアス”と呼べない。
俺は、決心したのに……決意したのに!
くそ、開けよ、俺の口! 名前を叫べよ!
《仕方無いね。手を貸そう》
『Harmonics……』
その音声が静かに響くと、俺の意思が口とつながる。
口が動く。俺の思いは自然と吐露された。
「……リアス?」
冗談っぽく、
「――――ッ!! もう! あ、朱乃! 早く起きなさい!」
真っ赤に染まったリアスを見て、あ、これはハズレかと落胆した。
『この天然タラシめッ!』
《ドラゴンだからね――ある意味必然とも言える。それに》
『それに?』
《多人数プレイというやつに興味がある》
『この太陽(笑)の破廉恥騎士め!』
《黙ろうかドライグたん(笑)》
『うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!』
『Blade!』の時のアスカロンがどうみてもハンドソニックに見える俺は病気。
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