俺達が結界の中に飛び込むと、駒王学園のグラウンドに魔方陣のようなものが刻まれている。そして、その陣のところで作業をしている初老の男――バルパー。その近くでコカビエルが中に浮いた椅子に座っている。
「バルパー。あとどのくらいかかる?」
「もう5分もかからんよ、コカビエル」
「そうか。では、頼むぞ」
……25分、といったところだな。
『Boost!』
倍加を開始させる。……できれば、新技を使わざるをえないような状況にならないことを祈ろう。……多分、無理だろうけども。
コカビエルはバルパーからリアスへ視線を移す。
「サーゼクスはくるのか? それともセラフォルーか?」
「お兄様とレヴィアタンさまに変わって私たちが――」
リアスの言葉を遮るようにコカビエルが何かを放つ。
風切り音の後、爆音が一帯に響き渡る。体育館を消し飛ばした!
「つまらん。まあいい、余興にはなるか」
体育館があった場所には斜めに光の柱が刺さっている。
さて、現状確認といこう。俺の『切り札』は不確定だ。禁手も一分持つかどうか、というところだ。……燃費、少なくしなきゃな。
「さて、地獄から連れてきた俺のペットと遊んでもらおうかな」
闇夜の奥から、十メートル程の巨体を持つ、三つ首の犬――
「――ッ、ケルベロス!」
「部長、やりましょう!」
「ええ!」
『Boost!』
これで五回目、か。
「イッセー、今回私たちはあなたをフォローするわ」
「……分かりました。すでに六回目の倍加が終了しています。もうすこしで譲渡すれば部長でもケルベロスを倒すことができるレベルには」
「理解が早くて助かるわ。ところで、譲渡はあなた自身のパワーアップも含めて何回必要かしら?」
俺は思考を巡回させる。
……………
「最大まで高めれば4回、8回までの倍加なら10回が限界ですかね」
「そう。無駄撃ちはできないわね」
今日一日はパワーアップアイテムでいよう。
それがいい。
「朱乃!」
リアスと朱乃さんが飛び出す!
ケルベロスはというと――威嚇を向け、一気に飛び出してきた!
首のひとつがリアスに向けて炎をはくが――
「甘いですわ」
「喰らいなさいッ!」
朱乃さんが前に出て瞬時に炎を凍らせると同時に、リアスが前に出て滅びの一撃をはなつ!
しかし、ケルベロスの他の首が炎を吐き、リアスの魔力とぶつからせる!
と、ここで俺の籠手が点滅する。
「部長、朱乃さん、譲渡しますッ!」
『Transfer!!』
朱乃さんとリアスへドラゴンの力が流れ込む――
「――行けるわ。朱乃!」
「はい! 天雷よ、鳴り響け!」
朱乃さんが雷を支配し、ケルベロスに落とそうとする!
しかし――背後からもう一匹! リアスのたちを標準するが……
それを許さぬものがいた。
聖なるオーラが迸り、リアスの背後にいたケルベロスを消し飛ばす!
「加勢に来たぞ」
ゼノヴィアだ。聖剣を降り下ろしたポーズでそういう。
雷撃を察したのか、朱乃さんが狙っていた最初のケルベロスが逃げようとしていた。
「逃がさないよ」
しかし、無数の魔剣が足を縫い止めるように地面から生える!
木場か、相変わらずいいタイミングだ!
「――ッ!」
朱乃さんが落とした雷の柱により、絶叫ごと無に返されるケルベロス。
ケルベロスが消えた瞬間、間髪入れずにリアスがコカビエルへ手を向ける。
「喰らえッ!」
普段の十倍はありそうなその砲撃をみたコカビエルは――
片手をつきだすだけだ。
そしてその滅びの一撃を、片手だけで防いでいる。やっぱ、格が違う!
「なるほど、赤龍帝の力があれば、ここまでリアス・グレモリーの力が引き上がるか。面白い。実に愉快だ」
そう、心底愉快そうにいうと、リアスの一撃を空へとはねあげた。
その魔砲は天を裂くように空を目指し、消えてしまった。
「――完成だ。四本のエクスカリバーが一本になる」
バルパーの上擦った声。
神々しい光が校庭を覆う。
四本のエクスカリバーが一本に統合される。
そして、陣の中心に、
うわぁぁぁぁぁぁぁぁ。
新刊がトンデモ展開だぁぁぁぁぁ!
設定の練り直しじゃゴラァァァァァ!