二天龍が笑った   作:天ノ羽々斬

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コカインとの戦闘といったな、あれは嘘だ。

けして気力が無くなったわけではない!


War

裸エプロン先輩事件の夜。

その日もアーシア、リアス、レイと四人で寝ていると、とてつもないプレッシャーを感じて、目を覚ました。このプレッシャー、奴かッ!

アーシアとレイも何かを感じて身を起こしている。

窓から見下ろせば、糞神父がこちらを見上げていた。

「……クソ神父!」

奴がこちらへ手招きする。

「堕天使か」

リアスは忌々しげにそう吐き捨てると、制服を魔力で着替え、部屋の扉を開け放った。

 

 

 

「やっほー、イッセーくん、アーシアたん。元気してた? あっ、もしかしてセッ○スしてた? それはごめんねー、僕ちんは空気が読めないのが売りなの」

「黙れクソ」

「もはや神父扱いすらされない僕ちゃん素敵!」

相変わらずふざけた野郎だ。

「セ、セッ!? ま、まだしてません!」

アーシアもなんか慌ててるんだけど。まだ、ってなにさ、まだって。

リアスが見上げる先には、コカ……なんとかがいる。……あれ、コカ、コカ……コカインだっけ?

「はじめましてかな、グレモリー家の娘。紅髪が麗しいものだ。忌々しい兄君を思い出して反吐(へど)が出そうだよ」

「ごきげんよう、堕ちた天使の幹部――コカビエル。私の名前はリアス・グレモリーよ。お見知りおきを。ついでに言うならば、私と魔王は政治的繋がりはほとんどないわ」

――そうだ、コカビエルだ!

コカビエルだけはなんか、こう、覚えづらいんだよな。コビカエルなのかコカビエルなのか、コカインなのか。

まぁ、戦争狂だしヤクをキメててもおかしくはないがな。

「こいつは手土産だ」

コカイン――じゃなかった、コカビエルが俺に投げて寄越したのは、イリナだった。

「――ッ! アーシア、治療を!」

彼女は全身に裂傷があり、ボロボロで虫の息だ。しかし、アーシアの癒しのオーラにより傷は癒え、呼吸も落ち着いてきた。

「魔王と交渉などというバカげたことはしない。まぁ、妹を犯してから殺せば、サーゼクスの激情が俺に向けられるのかもしれない。それも悪くない」

こいつ……ッ!

まだ、耐えろ。ここでアイツとやりあえば、母さんと父さんも巻き添えになる。

「それで、私と接触した理由は?」

「お前の根城である駒王学園を中心としてこの町で暴れさせてもらうぞ。そうすればサーゼクスもでてくるだろう?」

こいつ、なんて自分勝手な。そんなに、そんなに戦争がしたいのか!?

「そんなことをすれば、また三竦みの戦争が始まるわよ?」

「それは願ったり叶ったりだ。エクスカリバーでも盗めばミカエルが戦争を仕掛けてくれると思ったのだが……寄越したのが雑魚のエクソシスト共と聖剣使い二名だ。つまらん、実につまらん! だからこそ、悪魔の――サーゼクスの妹の根城で暴れるんだよ。ほら、楽しめそうだろう?」

たぶん、俺の予想があってるなら、コカビエルはサーゼクスさんに消し飛ばされますよ。本気でなくても。あのひとヤバイもん。

でも、俺の住む町を巻き込もうっていうのは気に食わない!

「……戦争狂め」

リアスが忌々しげに呟くが、コカビエルは狂喜の笑いをあげるだけだ。

「そうさ、そうだとも! 俺は三つ巴の戦争が終わってから退屈で仕方なかったんだよ! アザゼルもシェムハザも次の戦争に消極的で神器なんぞ集め始めて訳のわからない研究に没頭し始めた。そんなクソの役にも立たないものが俺たちの決定的な武器になるとは限らん! ……まぁ、そこのガキが持つ『赤龍(ブース)帝の(テッド)籠手(・ギア)』なら話は別だが……」

コカビエルは、これでつまらん話は終わりだと言わんばかりに、愉しげな笑みを浮かべる。

「まぁなんにしろ、お前の根城である駒王学園で聖剣をめぐる戦いをさせてもらうぞ! サーゼクスの妹とレヴィアタンの妹、それらの学舎だ。さぞ魔力の波動が立ち込めていて、混沌が楽しめそうだ! エクスカリバー本来の力を解放するにもうってつけだ。戦場としてはちょうどいい」

ああ、くそっ、まじでいかれてやがる。

「ひゃはは、最高でしょ? 俺のボスって。イカれ具合が最高に素敵でさ、俺もつい張り切っちゃうのよ。こんな御褒美までくれるしね!」

フリードは二振りの聖剣を取り出す。腰にも二本帯剣している!

「右のが『(エク)(スカリ)(バー・)(ラピッ)(トリィ)』、左のが『(エク)(スカリ)(バー・)(ナイト)(メア)』、腰のは『(エクス)(カリバー)(・トラン)(スペアレ)(ンシー)』でござい。ついでにそこの娘さんから『(エク)(スカ)(リバー)(・ミミ)(ック)』もゲットしちゃいました! レアドロップってやつ? もう一人の娘が持っている『(エクス)(カリバー)(・デス)(トラク)(ション)』もゲットしたいですな! もしかして俺ってば世界初のエクスカリバー大量所持者じゃね? しかも聖剣を扱えるご都合因子をバルパーのジジィからもらってるし、まさにチート! 俺最強! ひゃはははははっ!」

フリードは心底面白おかしそうに哄笑をあげる。

「ふむ、バルパーの聖剣研究、ここまでくれば本物か。俺の作戦について来たときは正直怪しいところだったがな」

「……っ、エクスカリバーをどうする気なの!?」

リアスの問いには答えず、翼を羽ばたかせて学園の方に身体を向ける。

「ハハハハハハ! 戦争をしよう! 魔王サーゼクス・ルシファーの妹、リアス・グレモリーよ!!」

フリードの目眩ましアイテムで視力を奪われる。またこれかよ!

視力が回復すると、コカビエルもフリードも姿を消していた。

「イッセー、学園へ向かうわよ!」

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

《堕天使――聖書の存在が相手か。悪くない。エクスカリバーもある。ならば僕も……いや、まだ早いかな? ……まあ、いいや。支度を始めましょうか、ドライグたん》

『たん言うなッ!』

 

―○●○●○●―

 

「リアス先輩。学園を大きな結界で覆ってます。これでよほどのことがない限りは外に被害は出ません」

匙がリアスに現状報告をしている。尻叩きの影響か、立ち姿がどことなくぎこちない。

木場をのぞいた部員メンバー全員が今、駒王学園を目と鼻の先にした公園にいる。……きっと、木場とゼノヴィアもこの結界のどこかにいるはずだ。負傷したイリナは会長のお家で保護されている。まだ目を覚ましていないそうだが、命に別状はないそうだ。

「これは飽くまで最小限に抑えるものです。正直言って、コカビエルが本気を出せば学園どころかこの町ごと崩壊させることも可能でしょう。更に言うならば、その準備に取りかかっている模様なのです。校庭で力を解放しつつあるコカビエルの姿を下僕が捉えました」

会長の説明を聞きながら、俺はドライグに呼び掛ける。

……ドライグ。

『……』

ドライグっ!

『……! ああ、なんだ?』

あれの準備は?

『うむ……あれは分の悪い賭けだ。いくらイッセーと俺のオーラが似通っているとはいえ……最悪、意識の混濁を招く。危険だぞ?』

やるしかないだろ。いつだって本気で、全力でやらなきゃ。もしものときに対応できないからな。ヴァーリがコカビエル回収に来るかどうかも分からんしな。

「ありがとう、ソーナ。あとは私達がなんとかするわ」

「リアス、相手はけた違いの化け物なのですよ?」

ソーナ会長の声を遮るようにリアスが言う。

「分かってるわ。だからこそ――お兄様に連絡するよう、朱乃に言っておいたわ。眷属や私が死んでしまったら本末転倒ですもの。朱乃、お兄様達はなんと?」

「あと、45分程で到着するそうですわ」

おおっ、サーゼクスさまが来るのか!

でも、足りない。

あの場では、20分程度しかないのだから――

「45分……わかりました。その間、私たち生徒会はシトリー眷属の名に懸けて結界を張り続けて見せます」

会長の決意を見て、リアスも腹を決めたようだ。

「……45分ね。さて、私の下僕悪魔たち。私たちはオフェンスよ。結界内の学園に飛び込んで、コカビエルの注意を引いて、なんとしても町の崩壊を阻止するわ。これはフェニックスとの一戦とは違い、死戦よ。それでも、死ぬことは私たちは許されない――生きて、帰るわよ」

『はい!』

俺達は気迫のこもった返事をする。

「兵藤、あとは頼むぜ」

「わーってるさ、匙。……俺は今、怒りの炎に油を注がねぇように気張ってんだ。お前は尻のダメージでも気にしてろ」

「言うな! 言われると更に痛く感じる! お前こそ尻は?」

「はは、リアス部長の愛が痛い。まあ、今の状況はまさに尻に火がついたかんじだな」

「いやいや、笑えねぇって。……で、木場はまだか?」

「木場なら、案外もう中にいたりしてな」

「はは、違いない」

俺と匙は拳を合わせ、互いの健闘を祈った。

さあ、いこうぜドライグ。

『任せろ相棒。そしてコカビエルに教えやれ』

ああ。

赤龍の逆鱗に触れたものが、どんな末路になるのかをな。





テスト勉強しなくちゃ……。
だが私は小説を書き続けるッ←⑨

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