二天龍が笑った   作:天ノ羽々斬

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神父フリード

「……」

数日後。

あれから、夕方辺りを神父の格好でうろうろしているけどもなかなか捕まらない。誰って、フリードが。

フリード・ゼルセン。……あいつは、どうしてあんなんになったんだろうかと、時々思う。教会にて神を信じていた時期があいつにも少なからずはあったんじゃないか? うむむ。

……いや、考えるだけ無駄か。

「おっ、イッセー。いつになく難しい顔してるな」

元浜くいっと眼鏡を上げながら話し掛けてくる。

「ああ。俺だって悩みくらいあるさ」

「あれか? 姫島先輩とグレモリー先輩のおっぱい、どっちを揉めばいいか悩んでるのか?」

「あぁ、それなら常日頃悩んでいるさ、松田。最近はアーシアもどっかの変態眼鏡女に染色された故か、積極的でな。部長はこう、メロンみたいにずっしりとしてて、肌はシルクみたいなんだ。朱乃さんはこう、部長と同等くらいあるのに形が良いんだ。アーシアも実は巨乳でな。なんというか、洋菓子みたいな感じだな。部長たちに比べるとやや控え目だけど存在を主張しててな、そこが良いって言うか、なんというか。贅沢な悩みなのは分かってるが、俺には到底選べない」

俺はつい熱く語ってしまう。俺はおっぱい評論家か!?

「そんなことしてたとは……しかし、それでは先輩たちの信者共に殺されても知らんぞ」

「元浜。――――おっぱいは命より重い」

だが、愛すべき女はそれ以上に重い。……なんてな。

「――――っ、深いな。心に響くようだ」

今回はアーシアにほっぺたをつねられなくてすむな。

むにゅぅぅ。

あっ、駄目でしたか。

「あーひあ?」

「……」

むにむにと頬っぺたを(もてあそ)ばれている俺。

「くそ、イチャイチャしやがって。ところでイッセー、例のボウリングとカラオケをする会合どうするんだ?」

「あーひあとこねこひゃん、あと桐生はくるよ」

問題は木場なんだよな……会合これるかな?

いや、連れてくる。

「いよっし! 美少女二人ゲッツ!」

ガッツポーズする松田。まぁ、こいつはしょうがないか。だって、あいつのお母さんって……いや、言及はしない。プール開き後の参観会でまた今度。

「悪かったわね私がいて」

拗ねるように言うのは桐生藍華。

「あー? まぁ、眼鏡属性は元浜で間に合ってるしな」

俺はその言葉にすぐさま反応する。

「んぁ? おまへ男で萌えるのか?」

俺の言葉に松田は数瞬考えた後、桐生の方へ向く。

「……すまなかった桐生。危うく眼鏡属性を穢すところだった」

「気にしないで良いよ」

なんか桐生に謝ってた。

「僕の、僕の眼鏡は……」

「それに、その能力が貴方だけのものだとでも?」

忘れてたっ! こ、こいつの眼鏡は――

「私の眼鏡の能力はね。男子の色々なもののサイズを測ることが出来るのよ。無論、アレも」

桐生の視線が、俺たちの股間へ向く! やめろ! 見るんじゃない!

「ふむふむ、元浜は……まぁ、普通。松田は……おっ、中々あるわね。これなら女の子も満足ね。で、兵藤のは…………えっ」

俺の股間を凝視して固まる桐生。

そして、徐々に顔が赤くなっていき――

 

ぶしゃぁぁぁぁ!!

 

鼻血を撒き散らした。

 

――変態だ!

「す、すごく、おおきい、です……」

まるで遺言のようにそれを言うと、倒れてしまった。

「きっ、桐生ーー!? 傷は浅いぞ! 衛生兵、衛生兵ーー!」

「!? 桐生さん!?」

 

教室は鮮血によって染められたのだった――そう、彼女の鼻血という非常に残念なものによって。

 

……というか、俺のってそんなに……その、でかいのか?

 

俺の疑問に答えるものは居なかった。

 

―○▲○―

 

「……今日も収穫はなし、か」

なんだかんだ言って、結構気合い入っている匙。

……! 殺気!

「木場」

「祐斗先輩」

どこから……上か!

「上から来るぞ! 気を付けろ!」

匙の叫びと共に全員が上を向く。すると、フリードが降ってきた!

「神父の一団にご加護在れってねェ!」

剣をふるフリード。木場はそれを魔剣で防ぐ。

「フリード!」

「おやおやぁ? その声はイッセーくんかぁい? 元気してた? 俺様に殺される価値がある程度には成長しちゃった?」

相変わらずのイカれ具合である意味安心だ。

エクスカリバーを持っている。たしか、(エクス)(カリバ)(ー・ラ)(ピッド)(リィ)、だったな。……やはり既視感(デシャビュ)を感じる。俺がかつて見たからか?

……うーん。

「起きろドライグッ!」

『応ッ!』

『Boost!』

力強い音声と共に神器始動!

「延びろライン!」

匙の手の甲に、黒いトカゲのような――――いや、カメレオンか。そのカメレオンから舌が延び、右足に張り付く!

「ウゼェ! って、きれねー? 物理無効とかシャレにならんしょ!?」

聖剣で薙ぎ払おうとしても、舌は実体がないようにすり抜ける。『黒い龍脈』、それが匙の神器。確か能力は力の吸収、だったな。

「逃がさねぇぞ。木場ァ! やっちまえ! これで奴は逃げることはない!」

『Boost!』

「ありがたいっ!」

木場は二振りの魔剣――光喰剣(ホーリー・イレイザー)を二本か? あれなら聖剣相手でもある程度は戦えるはずだ。

「ちっ、光喰剣だけじゃないってか! 複数の魔剣所持、もしかして『魔剣創造(ソード・バース)』ですか? レア神器! 羨ましくて殺したくなっちゃう! だが――」

フリードは木場の魔剣を砕く!

「この程度の魔剣なら、俺っちのエクスカリバーちゃんの相手になりやしませんぜ」

「くっ!」

『Boost!』

木場は再び魔剣を創りだす。けど、このままじゃあジリ貧だ!

「随分とエクスカリバーを見る顔が怖いねえ。もしかしてエクスカリバーを恨んでたり? まぁどうでも良いけどさ! こいつで斬られると悪魔君は消滅確定! 確一! 死んじゃうよ! 死んじゃうぜ? 死んじゃえよ!」

フリードが飛び出し、聖剣を振るう!

木場は幅の広い魔剣を創りだし、受け止めようとするが……儚い音と共に魔剣は砕け散る。

……ッ! このままでは!

「小猫ちゃん、俺を木場に投げてくれっ!」

「……了解。祐斗先輩へパワーアップアイテムです」

「投げて当てるポーションボールじゃないってぇぇぇえ!」

俺は豪快に投げられ、弾丸のようにぶっ飛ぶ!

そして木場の肩に触れ、すぐさま譲渡!

「イッセーくん!?」

「いいから受けとれ木場ァ!」

『Transfer!!』

木場へドラゴンの力が流れていく。

「……貰った以上は使うしかない! 『魔剣創造(ソード・バース)』ッ!」

幾重もの魔剣があらゆるところから咲き乱れる! その凶刃はフリードへと向かう。

「あぁ、うざい!」

フリードはうざったそうに聖剣で魔剣の刃を薙ぎ払い、砕いてゆく。

その一瞬の隙を見逃さず、木場は神速で縦横無尽に駆け回る! それを追うように動くフリードの眼。なんつー動体視力だ。

生えていた魔剣は、木場の手によりフリードへ向けて様々な方向から投げられる!

「しゃらくせえ! 俺の聖剣の能力なら、速度なら負けないんだよッ!」

剣の刀身がぶれ、ついには見えなくなるほどの速度へ。速度上昇が能力!

その速度で周りの魔剣を全部壊して、木場へと斬りかかる!

「駄目か!」

「シネ!」

フリードの凶刃が届こうとしたとき、匙がぐん、とベロを引っ張る。そうだ、黒い龍脈っ!

「やらせるかよ!」

だが、バランスを崩しつつも無理矢理刃の軌道を変え、木場に再び凶刃が――届かせねぇ!

「護れッ!」

『ShieldBit!』

六角形の緑色に透けたクリスタルみたいな板が幾重も重なり、フリードの聖剣を止める!

「奪え、『黒い龍脈』!」

そして、匙の神器がフリードの力を吸い出す!

「っ!? 黒い龍脈だとぉ!? くそ、ヴリトラ系神器とは俺っち悪運強すぎ! ドラゴン系は進化したときが恐ろしいからねぇ! 忌々しいことこの上ない!」

ナイスフォロー、匙!

「木場、取り敢えずそいつ倒せ! こいつはヤバイ! 戦力として敵にいたら色々やべえ! 会長やグレモリー先輩にまで害がありそうだ! 俺が弱らせるから、一気に叩け!」

「……不本意だけども、この状況じゃあ四の五の言ってられないか! 他の使い手に期待するよ!」

「他の使い手なんざ、俺様なんかよりずーっと弱いぜ?」

その言葉に微妙な表情を木場。目元をひきつらせている。

「ほう、『魔剣創造』か? 使い手の技量次第では無類の強さを発揮する神器だ」

神父の格好をした初老(40代ほど)の男性。

「バルパーのジジィか」

フリードの言葉に木場目付きを変える。

「……バルパー。バルパー・ガリレイッ!」

「いかにも。私がバルパー・ガリレイだ。……フリード、何をしている? そんなもの聖なる因子を刀身に込めて切ってしまえ」

「こうか……よっ!」

ぶしゅっ、という音がして舌が切れる!

「逃げさせてもらうぜ! 次に会うときこそ、最高の決闘(デュエル)だ!」

捨て台詞を吐きながら逃げようとするフリード。だが――

「逃がさん!」

フリードの聖剣と火花を散らす斬り込み。

いいところにきたな、ゼノヴィア!

「やっほー、イッセーくん」

「イリナか!」

いつの間にかイリナもいた。

「反逆の徒、バルパー・ガリレイ、フリード・ゼルセンッ! 神の名において断罪してくれる!」

「はっ! 俺の前で憎たらしい神の名を出すんじゃねぇ、このクソビッチが!」

「そうか。言い訳はヴァチカンの独房で聞こう。ちなみに私は今だ男性に操を許すつもりはない」

激しい斬戟で斬り合う二人。フリードはガシガシと粗暴に攻めるが、ゼノヴィアはまるで流れる水のように、余裕の笑みすら浮かべて剣撃を捌く。

「チッ、並みの使い手じゃねぇな! ジジィ、一旦引くぞ!」

「致し方あるまい」

フリードが例の逃亡用のボールを叩きつける。

眩い光が視力を一時的に奪う。

視力が戻ったときには、既にあの二人はいなかった。

「追うぞイリナ!」

「うん!」

教会二人組が彼等を追う。

「僕も追わせてもらう! 逃がすか、バルパー・ガリレイッ!」

木場も二人の後を追う。

「はぁ……」

俺は深い溜め息をつく。そして後ろに振り返る。

それは、安堵によるものではなく――

「力の流れが不規則になっていると思ったら……」

「これは、困ったものね。イッセー、どういうことか説明してもらうわよ?」

――この後訪れる地獄の尻叩きへむけての憂いの溜め息だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




射撃は苦手なんだが……四の五の言ってられんか!

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