二天龍が笑った   作:天ノ羽々斬

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カテバイイ


聖剣計画。イッセーに降り注ぐ試練。

「聖剣計画、ですか」

俺の言葉にリアスは頷く。

ちょうど、聖剣計画の話を聞いているところだ。不必要だから殺す。処分する、という考え方。教会側でも忌み嫌うべきという。当然だろう。皆殺しの大司教、バルパー・ガリレイ。

「ええ、数年前まで、キリスト教内で聖剣エクスカリバーを扱えるものを育てる計画が存在したの」

「……はじめて知りました」

その言葉に俺は溜め息をする。アーシアは紛いなりにも“聖女”だったんだ。そういう教会の闇は耳にいれないように気を使ってたんだろう。

「聖剣は対悪魔にとって最大の武器。わたしたち悪魔が聖剣に触れたらたちまち身を焦がす。斬られれば為す術もなく消滅させられる。神を信仰し、悪魔を敵視する使徒にとっては究極ともいえる武器よ」

実は、俺は勉強の一環として、各地の伝説や神話を読み漁ってた時期があった。

それ故か、エクスカリバーの話も知っている。

アーサー王。最強の聖剣使いとまで呼ばれた王。赤い龍、すなわちドライグを意識してか、ペンドラゴン(ドラゴンの王)の称号を与えられている。後に家名となっているようだ。アーサーやルフェイがそう名乗っていたはずだ。

「他にも有名所でいえば、アスカロンやデュランダルにジョワユーズ、日本では『(あめ)(のむら)(くもの)(つるぎ)』が有名ね。他にも聖剣は色々あるわ。ベオウルフのフルスティングや、仏教では倶利伽羅剣もそうね」

アスカロンやデュランダルは知っている。ゼノヴィアがデュランダルを持ってたし、俺もアスカロンを持つことになるからな。知っておいて損はないだろう。でも、倶利伽羅剣やフルスティング、ジョワユーズは知らないなぁ。

「成る程……」

「祐斗は聖剣――特にエクスカリバーと適応するため、人為的に養成を受けたものの一人なのよ」

「……じゃあ、木場は聖剣は使えないのですね」

「……そう。彼や彼の同胞――被験者たちは、誰一人エクスカリバーどころか聖剣に適応しなかった。それを知った教会関係者は、祐斗たちを『不良品』と決めつけて処分に至った」

――処分、か。やはり嫌な響きだ。リアスは目を細める。不快に感じているときの癖だ。

「祐斗を含む被験者のほとんどは殺されたそうよ。ただ、『聖剣に適応できなかった』という理由だけで」

「……そんな、主に、神につかえるものが、そのようなことをしていいはずがありません」

アーシアは目を潤ませている。相当ショックだったようだ。

「彼ら教会の者は皆、私達悪魔を邪悪な存在だと言うわ。確かに、邪悪な悪魔もいるわ。けれど、人間の……いえ。すべての生物に宿る悪意こそが、この世で一番の悪だと私は思うわ」

俺はその言葉に賛同する。

「俺もそう思います。人間でなくとも、悪意は憎むべきなんですよ……」

「……そうね、私もそう思うわ。……私が、祐斗を悪魔に転生させたとき、あの子は瀕死のなかでも強烈な復讐を誓っていたわ。生まれたときから聖剣に狂わされた才能だったからこそ、悪魔としての生で有意義に使ってもらいたかった。祐斗の才能は、聖剣に拘るにはもったいないしね」

リアスは聖剣に狂わされた木場の人生を悪魔にすることで少しでも救いたかったのだろう。でも、木場は忘れることができなかった。

「あの子は忘れることができなかった。聖剣を、聖剣に関わった者たちを、教会の者達を。だからこそ神父や教会、聖剣に異常に反応するの」

ふぅ、と部長は溜め息をつく。

「今は見守ることにするわ。あの子は聖剣に猛烈に反応するけど、動く時を違えることはないわ……。普段のあの子に戻ってくれるといいんだけど……」

俺は写真を見せる。イリナが俺の肩に寄りかかって寝ている写真だ。壁にはきれいな装飾剣が飾られている。

「どうも、この写真が事の切っ掛けみたいです」

「……貴方、家族や親類に教会関係者が?」

訝しげに見るリアス。

「いえ、いません。でも……この子の父親が後ろの剣の使い手だそうです。この子はまぁ、昔馴染みってやつです。10年ほど前、引っ越していってしまいましたが」

「……そう。恐ろしいわね。私の前任者が消滅させられた、という話はここから……でも、確か――」

リアスは考え込むと時折ブツブツ呟いている。

しかし、リアスは考えるのをやめた。

「……もう寝ましょうか。あまりあれこれと考えていても煮え詰まってしまうだけね。祐斗の機嫌がおいそれとなおってくれるわけでもなし」

そういうと、リアスが服を脱ぎ出した。

「……部長? あの、ここは俺の部屋ですけど……」

わかっていながらもこの返答をする。

「あなたと一緒に寝るからよ」

さも当然といった口ぶりでそういい放つリアス。

やべぇ、鼻血がっ、でそうだ。

ふと隣を見れば、少々不機嫌そうなレイと、少々涙目のアーシアが。

「えー。私の特等席だよー?」

「部長さんとイッセーさんが一緒に…? 私だってイッセーさんと一緒に寝たいです!」

 

地獄が、始まろうとしていた。

 

―○▲○―

 

「ふぅ……」

『美少女二人に美幼女一人、着実とハーレムが完成しているようだな、相棒』

からかうようなドライグの声。

結局、三人で一緒に寝ることになったのだが……

アーシアの柔らかいおっぱい。リアスのすべすべで弾力のあるおっぱい。レイの控えめなおっぱい。

おっぱい三連撃で俺の息子さんが……その……起床、してしまいましてね……。トイレでスッキリしたあと、水を飲んで落ち着いているところだ。美少女三人に囲まれて寝れるかってーの。精神年齢はおっさんとはいえ、感覚的にはまだまだ盛りだぞ。

『相棒は前から女難の相が出てたからな』

そういえばドライグ、ドラゴンは自然と一夫多妻を築くってアザゼル先生が言ってたけどさ。いや、俺もリアスと一度は結ばれているわけでして……。

『……相棒。無理をして思い出そうとしなくてもいいぞ。お前の心が軋むおとが聞こえる』

……ありがとう、ドライグ。

『気にするな。……そういえば相棒、最近お前が感情を昂らせると俺のオーラが漏れるのを知ってるか?』

一応はな。

『あれは神器、そして俺と同調をしているようだな。無意識下で、だが』

……いいこと思い付いたぜ、ドライグ。

これを使えば、上手く行けば禁手化までいくかもしれん。

『ほう、言ってみろ』

ドライグが面白げに声をあげる。俺はその考えのイメージをドライグに送る。

『……面白いことを考え付くものだ。だか――確かに成功すれば少なくともパワーアップが見込めるな。上手く行けば禁手化できるという観点は間違いない。力量を理解できてきてるじゃないか』

これからはもっと激戦だからな。それにさ……リアスのおっぱいで禁手化したら、お前絶対泣くだろ。

『かけてもいい。泣く』

ですよねー。それに、おれも少し恥ずかしいし。

俺は足取りも重く、自室(おっぱいの楽園)へと帰っていった。

 

 

 

 

 

『……聞いていたのか』

《……ああ》

『相変わらずなやつだ。しかし、お前の存在を相棒に知らせたらどんな顔をするか』

《きっと、忌避するんじゃないかな?》

『そんなことはないだろう。気にせず受け入れるだろう。相棒――兵藤一誠とは、そういう男だ』

《そう。でもまだ黙っててくれよ、ドライグ》

『ふふ、わかっているとも、――よ。俺からはなにも言わん。自分自身でどうにかしろ』




マダマダヒヨッコダァ

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