第三章 プロローグ
『ゴホ、ゴホッ! ハヤク、シナイト、オクレチャウヨ?』
病弱娘のボイスで目を覚ます。下腹部に温もりを感じた。
「くぅー……」
そこには、気持ち良さそうに眠っている――幼女。
……いや、俺は
透き通るような白磁の肌。すべすべとしている。それでいてもちもちだ。
桜色の唇は幼い印象を更に強くしている。水色のロングストレートの髪も、幼さを引き立てているようにも見える。
ぷにぷにと頬をつつけば「んぅー」と不満の声を上げる。
もしかしたら気づいている方もいるだろう。この幼女は使い魔のレイなのだ。
母さんが甘やかしたり勉強教えたり甘やかしたりとしている。
さて、その顛末を話そう。アーシアの遠い親戚で、事情があってこちらに来たというでっち上げをリアスが一晩で説得させてしまったのだった。以上。
リアスとアーシアは今ごろ、母さんと一緒に料理でも作っているのだろう。こういうのなんかいいな。
さて、いくら休みとはいえ、そろそろ起きないとヤバい。体内時計が狂わぬ内に行動をしなくては。
まずはレイを起こさぬようにベッドから抜け出す。次に、トレーニングマットを引きずり出し、その上で腹筋100と背筋200、腕立て伏せ100、逆立ち10分、スクワット100、竹刀(自腹)の素振り100、その他諸々を行う。朝だから軽くしとかないとな。
それも程なく終えると、私服に着替える。『日々精進』と堂々と書かれた白TシャツにGパンというラフな格好だ。
ふと腕をみると、大分筋肉が付いてきたことがわかる。だが……かつての俺の5割もねぇか。日々鍛練だな。
日々鍛練で思い出したんだけど、実は最近ドライグと精神空間でまたバトルを再開させたんだ。やっぱりこれが一番修行になる。そのお陰か、大分、戦いのカンが戻りつつある。
「ぁ……おにーさんおはよー」
「おはよう」
どうやらレイも起きたようだ。トテトテと抱きついてくる。
「んー……おにーさんいいにおいするー」
「……そうか?」
朝の鍛練で少し汗臭いと思うんだが?
「イッセーさーん、レイちゃーん、ごはんできましたよー」
アーシアの声だ。
俺は返事をした後、レイと一緒に階段を降りるのだった。
ー○●○ー
話をしよう。あれは、数日前の出来事だ。
レイが着いていく、というので連れてきたが……どうやら、俺の家に住むつもりらしい。
人間の姿ならなんとかなるのにね、とリアスがこぼすと、レイは人間の姿になれると言う。
ドライグの話によれば、高位の、ある程度の力をもつドラゴンは人形をとることが出来る者もいるそうだ。つまりレイは相当の天才ってわけだ。食費を抑えることもでき、人の生活をすることが出来る。まさに
そして、今に至るのである。
学校にはついて来るわけではない。見た目は五~六才児くらいなので、二年位したら小学校にいれるらしい。……大丈夫か?
それはさておき。今日は我が家で部活を行うのである。
今月の契約数を話した後、今後の眷属の方針を話し合っていると。母さんが爆弾を放り込んできた。
言うまでもなく―――俺の、アルバムである。
以下、皆さんの反応。
「小さいイッセー小さいイッセー小さいイッセー小さいイッセー小さいイッセー……」
「わたしもわかります、リアスお姉さまの気持ち!」
と、これはリアスとアーシア。小さい頃の俺を見て息を荒げているご様子。
「……意外。かわいい」
「おにーさんって昔から落ち着いてる感じなんだ?」
と、これはロリっ娘ズ。
「小さい頃のイッセーくん可愛いね」
「木場……俺、その言動はちょっと引くわ」
「ひどいや」
よよよ、と泣き真似をする木場が、一枚の写真を見たとたん、目付きが刃物のように鋭くなり、瞳の奥に燻っていた、憎しみの炎が付いていた。
「イッセーくん、これは?」
「ああ、これか? 近所にすんでた幼馴染みとの写真だな。もう引っ越しちまったけど……うわ、俺ちっせ。そうそう、ここのお父さんが健勝なクリスチャンだったらしくてな」
「……そうかい。そんな偶然もあるんだね。イッセーくん、これは――聖剣だよ」
木場の復讐の炎が、再燃した瞬間だった。
イノチハナゲステルモノ