「さて、開戦から30分は相手と戦うことができないの。皆これをつけてね」
光の玉のようなものを配る朱乃さん。
そう、知っての通り念話機能のある魔方陣で、通信機のようなものだ。
「これは通信機のようなものよ、耳に近づければ勝手に吸い込まれるわ」
リアスの説明を聞きながら俺達は耳に近づける。その光の玉は溶けるように消える。
「部長、地図です」
木場がどこからか持ってきた地図。どうやら戦場の見取り図らしく、方眼用紙のように幾つかの区切りがある。隅にはadcといった小文字とABCという大文字のものになっている。チェスの升目と同じだな。
地図によると、俺がプロモーション出来るのはどうやら、新校舎に侵入した場合だ。
「体育館が重要な拠点になるわね……ただ、相手も相応の戦力を送ってくるはず……他の侵入進路は森と運動場ね。森は見通しが悪いから簡単なトラップと幻術、それに裕斗がいればいいわね。先に体育館を抑え……いや、この際壊した方が早いわね。問題はどれだけ敵を引き付けられるかね……ここはイッセーと小猫に……朱乃には体育館の破壊と遊撃ね……私とアーシアはここで取り合えず待機、かしら。体育館が爆破されたら運動場へ各自集合、そこから運動場の敵を片付け、そして新校舎を攻略といったところかしら……ライザーがどうでるかよね……」
リアスが考えを漏らしながらなにか思考している。
……あのときの失敗は二つ、小猫ちゃんの退場とアーシアの拉致だ。
「……よし。朱乃、貴女は森付近への幻術をお願いするわ。裕斗と小猫はその森にトラップを仕掛けて」
「はい部長」
「はい」
「……はい」
リアスの命により三人が動く。
そして、三人きりになる部室。
「イッセー、こっちへきなさい」
「は、はい!」
突然リアスに呼ばれる。隣に座ると。
「ぁ……」
視界が横になり、頬に柔らかい感触が伝わる。
思わず声が出てしまったのも仕方ない。
リアスに膝枕されているのだから。
「あら、泣くほど嬉しいのかしら?」
涙? ……ないていたのか。
「はい」
取り合えずそう言っておく。
「はぅ、うらやましいです……はっ、ああ我等が主よ罪深き私をお許しくださはぅぅ!」
……アーシア、少しは学習しようよ……まぁ、無理もないんだが。
アーシアは元とはいえ、シスター。欲には程遠かったんだろうな。……俺が、頑張らないと。
「今からイッセーの封印を解くわ」
「封印、ですか?」
「ええ。一番育って欲しい貴方には封印を使って必要以上に負荷をかけていたの。今からそれを解くわね」
リアスの掌から魔方陣が展開し、俺の中の悪魔の駒を調整しているのがわかる。
「……はい、できたわ」
……取り合えず、力が漲ってきた。
……ふむ、これなら行けるか。
ドライグ、調整はどうだ?
『鎧ならば、取り合えず代償なしでも1分だが……戦闘の事を考えると、やはり10秒もてば良い方だろう。体力は温存しておけよ』
おう。
そして、ついに時計の針は、ゲーム開始から三十分後であることを記していた。