二天龍が笑った   作:天ノ羽々斬

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お前は二度と引き返せない。


覚悟せよ

「ふぅ……」

俺は安堵のため息を吐く。自らのベッドの上で精神統一をしていた。

……リアスは、ここ最近は上の空だった。

どのくらい酷いか、というと。

 

「部長ー、契約完了しましたー」

「…………」

「ぶ・ちょ・う!」

「イッセー、どうしたの?」

「いえ、契約の仕事完了の報告です」

「え、ええ。そうだったわね」

 

と、常にこんな感じ。

 

……原因は言うまでもなく、アレだろうなぁ。

フェニックス家三男、ライザー・フェニックスとの婚約。リアスはあのときあまりいい感情を持っていなかった。当然だ、悪魔の純系の子孫反映がどうの、というもの。リアスの意志を無視しての事だった。

確かに純系の血筋が絶えれば悪魔としても困るだろう。だから躍起になって純系の血筋を残そうとしているわけだ。でもよ。

俺のリアスを巻き込むなよ……って、これじゃあまるでリアスが俺の所有物みたいでこの言い方やだな。それに、もしかしたらリアスが巻き込まれるのは必然だったのかもしれない。

七十二の家系、バアルの血とグレモリーの血を引く子。兄であるサーゼクスさまは魔王。……成る程、ネームバリューはバッチリだ。

俺の記憶が正しければサーゼクスさまもこの話には乗り気ではなかったそうだ。まぁあの人シスコン魔王だし。

……やっぱり、三大勢力って変な人ばっかりだよな。乳神の加護を受けた俺が言うのもアレだけども。

シスコン魔王、サーゼクス・ルシファーさま。

ぐうたら魔王、ファルビウム・アスモデウスさま。

魔王少女、セラフォルー・レヴィアタンさま。

技術屋魔王、アジュカ・ベルゼブブさま。

神器オタク総督、アザゼル先生。

SM父娘、バラキエルさんと朱乃さん。

戦争狂いのコカビエル。

自称天使のイリナもアホの子だし。

……あれ? 俺が知ってる限りだと悪魔、もとい冥界側の方が変人多くね?

聞いてみよう。ドライグちゃーん?

『ちゃん言うな!』

ゴメンゴメン。あ、そういえば神器の調整はどうにかなりそう?

『ああ。翼を馴染ませることに成功した。倍加や譲渡も問題ない。あとは鎧とアレだけだな』

ありがとうドライグ。アレが完成すれば、皆を守る手段が増えるはずだ。なぁ、アレ使いこなせるかな?

『さぁな、相棒の空間認識能力は未知数だしな』

うーん、クレーンゲームや弾幕シューティングは得意なんだけどなぁ。無論、格ゲーやレース系のゲームも好きだぞ。

戦闘ともなると気にしてられないか。おっぱい揉みたい。

『うむ。故に半自動化にしようと調整をしてはいるのだが……少々手こずっていてな。上手く適合してくれるといいんだが』

まぁ、神器は可能性のおもちゃ箱みたいなものだし、いざとなれば根性でなんとかする。あとおっぱい揉みたい。

『相棒が慢性的な乳欠症になっている……俺ではどうにもならんのが歯痒い』

ん? 乳欠症? なんだそれ。貧血みたいだな。おっぱい揉みたい。

『相棒の思考のなかに時折おっぱい揉みたいと入る病だ。俺がつい最近考えた。相棒は今、まさにおっぱいが足りてない』

なんだその病気……なにか支障でもあるのか? いや、実際ありそうだけど。俺おっぱい魔人だし。あとおっぱい揉みたい。

あ、本当だ。やべぇ、おっぱい揉みたいって思考がナチュラルに混じってら。それよりおっぱい揉みたい。

『うむ、今のところは支障は出ないだろう。だが……そのうちそれが表に出たら、恐らく以前のエロ丸出しのエロガキに戻ってしまうというだけだ。つまり、ハーレム王がどうのとか唐突に叫び出すわけだ。精神年齢は実質30超えてるから落ち着いているだけだが、おっぱいが足りないとこうなる訳だ。成る程、新たな発見だな』

……うーむ、あまり変わらないような?

まぁ気にしだしたら敗けってやつか。

そうそう、神器の事で忘れていたが。

天界にも変なやつっていたのか?

『ん? 天界か……俺が神器となってから知った事と統合するといるぞ』

へぇ、どんな?

『うむ。七代目の時は神側で天使とのハーフで上級天使だったらしいのだが、はぐれ悪魔に殺され、死ぬ直前にようやく俺の存在に気がついたというくらいの鈍感でな。暇潰しに天使の観察をしていたのだか、メタトロンという天使は日本のNinjaに憧れている忍者かぶれ。ジツを学ぶためにネオサイタマに行くと戯言を言っていたそうだ。その双子のサンダルフォンはオジサマ趣味、ミカエルはブラコン。ガブリエルは愛らしいものならなんでも、ウリエルは胃痛持ちで苦労人といった感じ。ラファエルは……あれは、なんだろうな。形容しがたいなにかだった。方向性がヤバイ。なんで堕天しないのかと誰もが不思議に思っていた位だ』

それでいいのか天界トップ陣。

変態がゴロゴロしてんじゃねぇか。いや、おっぱい魔神な俺が言えた口じゃあないけども。

ウリエルさん、強く生きてください。顔も見たことないけど。

 

そんな下らない話をしていると、下の階から声が聞こえる。アーシアのだ。

「イッセーさん、先にお風呂いただきますねー」

「おーう」

アーシアのお風呂か。あの素敵な裸体が…………………不味い。お前は起きてくるんじゃない。ステーイ、ステーイ。素直で清楚なアーシアを汚すとか……まあ、その、うん。シチュとしてはアリかな。でもアーシア相手は駄目だ、うん。

自己完結をして煩悩を退散するためにうんうんと唸ったり真紅の赫龍帝の呪文(実力不足の為に発動はしないが)を唱えたりとしていると。

部屋にグレモリーの魔方陣が現れる。

そこから制服姿のリアスが現れる。

 

「イッセー、お願いがあるの。早急に私を抱いてちょうだい」

 

……それは、悪魔の囁き。

魅力的な誘いにまるで魅了にでもかかったかのように動けなくなる。

 

「裕斗は根っからの騎士だから答えてくれないわ。一番手っ取り早いのは貴方だけなのよ」

 

頭の中になにも入らなくなる。リアスは上着を脱ぎ捨て、スカートにブラとパンツも脱ぎ捨てる。

リアスと結ばれたい。リアスとひとつになりたい。

「私、初めてなのよ。イッセーは経験とかあるのかしら?」

リアスがベッドに乗ってくる。熱に浮かされた頭で俺は首を横に振る。

「そう、お互い初めてなのね。初めて同士だけど、きっと上手くいくわ」

声すら遠く聞こえる。

心の悪魔が囁きかける。

リアスの唇を、リアスのおっぱいを、尻を、瞳を、心を、全てを俺のモノに――――――――――――――――――――――――――――やめろっ!

 

メキッ。嫌な音がした。

 

俺は自らの頬を殴り抜くことで正気を取り戻す。

 

どんな幻覚や幻痛でも、本物の痛みには、勝てないからな。

 

「っ!? イッセー!?」

狼狽えるリアス。

当然だ、自分の目の前でこれからまぐわおうという相手が自らの頬を殴ったのだ。

「……すいません、ちょっと正気じゃなかったです。――リアス部長、お願いですから、こんなこと止めてください」

「……私では魅力がないの?」

目を伏せるリアス。

「そんなことありません。部長は凄く魅力的で、むしろ今すぐ抱きたい位です」

「なら――」

何故、と問われる前に俺が先手を打つ。

「でも。こんなことでしたら、俺も、リアス部長も、きっと後悔します。――そんな初体験をするくらいなら、しないほうがいいです。人生は一度しか、無いじゃないですか」

だって、俺。これは二度目だけど。

三度目なんて絶対にあり得ないから。

そう、信じたい。

「……イッセー、貴方って人は」

カッ、とまた魔方陣が現れる。これもグレモリーの家紋だ。まぁ、俺が予想する通りであるのなら―――

「はぁ、時間切れというわけね」

現れたのは銀髪のメイド。

清楚、瀟洒、完璧――。そんな言葉が似合うであろう彼女。決して時を止めることが出来るわけではないが。

銀髪の殲滅(クイーン・オブ)女王(・デイバウア)の異名を持つ、ルシファー眷属最強にしてサーゼクスさまの(ヨメ)イド。

グレイフィア・ルキグフスさん。

「……お嬢様、そのような事を」

「……こうでもしなければ、御兄様も御父様も諦めてくださらないでしょう?」

「このような下賎な輩に操を捧げると知れば旦那さまとサーゼクスさまが悲しまれますよ」

そういうと、グレイフィアさんは脱ぎ捨てられていた制服の上着をかける。げ、下賎かぁ。まぁ、二度目とはいえキツいなぁ。その言を聞いたリアスがむっ、と口を歪める。

「私の貞操は私のものよ。私が認めた者に捧げて何が悪いのかしら? それに私のかわいい下僕を下賎よばわりしないでちょうだい。たとえ、あなたでも怒るわよ? グレイフィア」

そういわれると光栄ですが、今回はなんというか、利用された感がひじょーに否めないですよリアス。

「何はともあれ、あなたはグレモリー家の次期当主なのですから、無闇に殿方へ肌を晒すのはお止めください。ただでさえ、事の前なのですから」

女性の視線が俺に移る。思わず頭を下げた。

「はじめまして。私は、グレモリー家に使えるものです。グレイフィアと申します。以後、お見知りおきを」

「はじめまして、リアス・グレモリーさまの眷属、兵士の兵藤一誠と申します。こちらこそよろしくお願いします」

咄嗟に悪魔式の挨拶をする。調べてみたところ、中世ローマあたりの礼儀作法に近いものがある。

礼儀作法ならリアスの御母様から習ったからな。社交辞令であるダンスからナイフとフォークの使い方まで。中級試験への勉強もしてたし大丈夫だろ。自信はないけども。

「兵藤一誠、ですか……では彼が件の兵士ですか?」

「ええ、赤龍帝の籠手を宿しているの」

「赤龍帝の籠手、赤き龍帝に憑かれた者……」

異質な目線をこちらに送る彼女。

『憑かれたなど大層な言い分だな。まぁ、無理もないが』

ドライグが拗ねたように言う。まぁまぁ、おっぱいドラゴンに比べれば……

『ぁぅー、おっぱいこわい……』

っとと、ドライグのやつ引きこもりやがって。……調整は任せたぞ。

「グレイフィア、私の根城へ行きましょう。話はそこで聞くわ。朱乃も同伴でいいわよね?」

「『雷の巫女』ですか? 私は構いません。上級悪魔足る者、『女王』を傍らに置くのは常ですので」

……リアス。大丈夫かなぁ。

「よろしい。イッセー」

リアスが俺を呼ぶ。ツカツカと歩み寄ってくると、俺の頬へ近づき――――チュッ。

 

頬に触れる、しっとりとした柔らかい感触。

 

「今夜はこれで許してちょうだい。迷惑をかけたわね。明日、また部室で会いましょう」

そう言うと、リアスは魔方陣でグレイフィアさんと何処かへ転移してしまった。

……微笑むリアスを見送り、リアスが頬にキスをしたのだと、やっと気がついた。

 

「……負けられ、ねぇな」

リアスに頬キスを貰ったんだから。

 

俺の小さな呟きは誰にも聞こえることはなかった。

 

「イッセーさーん、お風呂上がりましたよー!」

「……おう!」

 

アーシアが俺に声を掛けるまで、俺は頬に残った柔らかな感触の余韻を味わっていた。





宇宙謝罪!謝意ニングフィンガー!この度は投稿を遅れて申し訳ございませんでした!この罪の償いはアレです、取り合えず二章終わった番外編でヴァーリたん書くんでどうか許してください!

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