実は幼女回でアザゼルがイッセーに「うらやま死ね」って言っていたな、あれはフラグだ。
最近思ったこと……小猫ちゃんマジ天使。というか幼女マジ天使。
稲荷駅へ到着した一行は、まっすぐ稲荷神社へと向かう。
「狐の石像……これが、穢れや魔を寄せ付けぬようにとしているのだが、例のパスのお陰でなにもないな」
ゼノヴィアは狐の石像を眺めながらそう呟く。
「見てくださいイリナさん! キツネさんがいっぱいいますよ!」
「ホントだ! ここでお土産買ってもまだ大丈夫かな?」
イリナとアーシアはそう言いながらお土産を見つめている。
イッセーは、伏見稲荷のある方をぼんやりと見つめていた。
(……俺の
イッセーはそんなことを考えていた。
(俺の記憶という強力なアドバンテージが無くなったあと、俺は……どうすればいいんだ? ……リアスを、アーシアを、ヴァーリを、皆を……守れるのか?)
そこまで考えて、イッセーはかぶりを振る。
(今そんなこと考えたとしてもどうしようもない、か)
イッセーはその事を考えるのをやめた。結局いつも「なるように」しかならないのだから。
「おばァさん、大丈夫ですかァ?」
「大丈夫ですよ、若いのに感心ねぇ」
フリードが転びかけていたお婆さんを助けていた。
「おー、いい眺めだ!」
元浜がそう言う。割りとまだ元気だな。まぁ、ほんなに昇ってないからな。
「じゃ、一枚撮っとくか……」
松田はそう言うと一眼レフを弄り始める。俺にはカメラはわかんねぇから弄ってるとしか、な。
「ココは地元の走り込みコースだそうよ。今は走ってないけど」
そーいえばおんなじことをいってたな。
……。
そうだ、九重が気になる。今あったとしても敵対されるだろうが……まぁ、行くだけいってみるか。
「わりぃ皆、ちょっと一足先に頂上見てきていいか?」
そういうと皆は頷き、ゼノヴィアが答えた。
「そうだな、元浜が先程から肩で息をしはじめているからな。ここらで小休止しておくよ」
「た、助かるよゼノヴィアさん……」
元浜がゼノヴィアに礼を言っているのを尻目に、俺は頂上……伏見稲荷大社へと向かっていくことにした。
俺は数段飛ばしで階段を駆け上っていく。うーん、悪魔の恩恵ってスゲーよな、と今更ながらに思う。
……しかし人がいないな。ガウェイン、ドライグ、結界でも張られてるか?
《……ふむ、人避けの結界が張ってあるな》
『うむ。それに、感じたことのある魔力があるぞ』
魔力……もしかしたら万さんかもな。あの人、八坂姫をババァ呼ばわりしてたし。
境内が見える。そこには、九尾娘……九重と、やはり、万七海さんがいた。
「大丈夫か七海、今天狗の使いに治癒の軟膏を届けるように伝えた。すぐなのじゃ」
「…………
ただ、万さんはズタボロだった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方その頃、アザゼルはある女性に絡まれていた。
「あぁん? 私の酒が呑めねぇってのかい?」
「っせぇ、もう五樽だぞ……流石に気持ち悪ぃ」
こうなってしまったのは、アザゼルがイッセー達と別れて町へ繰り出した所まで遡る。
―●▽●―
「いやー、舞妓に歌舞伎。いいねぇー京都!」
アザゼルは京都を存分に楽しむつもりでいた。焼酎を煽りながら舞妓さんとじゃれあったり、甘味や遊郭で遊び回るつもりでいたのだ。無論、イッセーとヴァーリを除けば、襲撃を知っているのは妖怪関係者と禍の団だけであろう。
兎も角、性槍使いの早漏……もとい、聖槍使いの曹操率いる英雄派が来ていることも露知らず、アザゼルは遊郭へ進もうとした。進もうとして────誰かに腕を掴まれた。
酷く小さい手だ。まるで童女のような、小さな手。振り替えると、そこには顔を朱に染め、目が座っている、浴衣姿の幼女がいた。どうみても酔っ払い幼女だった。酒臭い幼女という色々ダメな部類の幼女だった。
そしてアザゼルはそのような存在を一人しか知らない。
「伊吹か……?」
「みたことある顔がいたからねぇ。どういう風の吹き回しだい?」
伊吹と呼ばれた少女。その正体は、鬼であった。
幼い顔立ちに、低い背。茶髪を伸ばし放題にしているものの、ある程度整えられた、それでも地面につきそうなほどの長髪がその幼さをより引き立てている。だというのに、誰も酒臭い彼女を気にも止めない。
「……今更、私の前に面出して」
「別にお前に会いに来た訳じゃねぇよ」
嘘ではない。事実、二度と会うことはないだろうと考えていたからだ。アザゼルは、言い訳をするかのように彼女へ理由を話した。
「俺ぁ今よぉ、今代の赤龍帝のガッコで先公やってる」
「へぇ、風の噂には聞いたけど……本当に和平したんだ?」
「……ああ。ま、俺はお目付け役ってこった。あの赤いのは色々呼び込んじまうからな。修学旅行できてるって訳だ」
二人の間に妙な空気が流れ始めていた。二人はすでに表道を歩くことなく、裏道へと入っていっていた。
「……なぁ、もう少しすると私の別荘があるんだ。少し呑んでいかない?」
「……少しだけだぞ」
アザゼルはそう言うと、こつりと伊吹の頭を小突いた。
そうすると、伊吹はアザゼルの右手に抱きつく。
「……アザゼルの馬鹿」
「お互い様だ」
そして、冒頭に戻る────。
「ひっく」
「ちっ、聞いちゃちねぇ……」
アザゼルは、「なんでこんな目に……」と言おうとして──やめた。酒臭い部屋で、悲しげな瞳をみせる伊吹を見て。
「ま、いいか」
たまには、こういうのも悪くないな。そう締め括ると、軽く笑みを浮かべた。そして、伊吹の頭へ手をのせる。
「んぅ……」
目を細めて気持ち良さそうに呻き、アザゼルにしなだれかかる伊吹。
取り合えず時間だけはこまめに確認しよう、アザゼルはそう心に決めると、盃に酒を追加した。
室内の照明を酒が反射して、零れた雫が涙のようにきらりと光った。
「俺なんか諦めちまえば楽なのによ」
アザゼルはそう小さくぼやくと、注いだ酒を飲み干した。
・伊吹鬼
アザゼルとただならぬ仲の鬼(かわいい)幼女。常に酒臭い。月読に秘蔵の酒を盗られてナイーブ気味。
例によって見た目と年齢は比例しない。