二天龍が笑った   作:天ノ羽々斬

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遊び

学校が終わったので俺達が帰宅すると、そこには貴族服の偉丈夫……サイラオーグさんと、その義妹(いもうと)のベルーナさんがいた。

「いつぞやの会合以来だな、赤龍帝」

「ええ、お久しぶりです、サイラオーグさん」

「ああ」

そう言うと、お互い握手をした。

……なんか、サイラオーグさんがスゲーうずうずしてるような気がする。

左斜め後ろで静かに佇んでいたベルーナさんが微笑む。

「もう、お兄様ったらそんなにワクワクしなさらなくてもいいじゃないですか」

……すごく柔らかい口調だ。以前のパーティーで男達をあしらっているときとは大違いだ。

「いいではないかベルーナ。赤龍帝と組手をするのだぞ?」

「それは赤龍帝殿に許可をとってから です。お兄様はせっかちですわね……ということで、いいですか?」

……俺に話しかけるときは何か冷たいものを感じる。なんだろう、拒絶されてる?

まぁ、断る理由もないし、修学旅行に響くことはない筈だけど……。

「はい、と言いたいところですが……私自身の判断ではなんとも。リアス・グレモリー様に許可を頂かないと」

俺の言葉にニヤリと笑みを浮かべるサイラオーグさん。

「忠義者だな。実に主思いだ。リアス、いい眷属を持ったな……ベルーナ!」

「……了解です、お兄様」

サイラオーグさんへ一礼すると、俺へ軽く会釈して素早く立ち去るベルーナさん。俺はベルーナさんについてサイラオーグさんに聞いてみる。

「サイラオーグさん、彼女は……」

「ああ、ベルーナの事だな。俺を変える切欠になってくれた、出来た義妹(いもうと)だよ。少々依存気味だがな」

俺が聞こうと思っていた内容を言われてしまった。

……俺が見た限りだから性格じゃないかもしれないが、サイラオーグさんが彼女のことを語っている時、その視線は妹に向けるにはあまりにも熱を帯びている、そう感じた。

「お兄様、赤龍帝殿。許可がとれました。三十分後に訓練場へ案内するとのことです」

突如サイラオーグさんの左斜め後ろ――先程と同じ位置に現れたベルーナさんは、端的にそう告げる。

「そうか、わかった」

サイラオーグさんはそう答えると、ありがとう、と小さく彼女の耳元へ囁く。

「……はいっ」

ベルーナさんは声に喜色を乗せ、うれしそうに返事をした。

……おーい、誰か渋いお茶が怖いー。

 

―6○6―

 

訓練場。サイラオーグさんと俺が対峙している。観客席には眷属の皆とベルーナさんだ。

バッ、と貴族服を脱ぎ捨てるサイラオーグさん。その下には例のぴちぴちの黒い戦闘服を着ていた。

『WelshDragonSoulFusion!!!!!!!!』

『3hour』『87%』

……よし、俺達も準備完了だ。禁手(バランスブレイカー)は使わない。最近こっちを使ってなかったからな。定期的に使わないとシンクロ率が下がる。

「ほう、それが噂の同調か……興味深いッ!」

……やっぱり、手加減されてるんだよなぁ。なら、こっちが手加減する必要はないッ!

「『――部長、プロモーションの許可を』」

リアスが頷く。よし!

「準備完了か? ではいくぞ」

ぐぐ、と膝を曲げるサイラオーグさん。すると……もう目の前――ッ!? 騎士(ナイト)

「『――ッッァ!』」

俺は素早くバックステップをとることで距離をとることで一撃を免れる。

《油断しないでください》

ガウェイン、わかってるってーの! 

「ほう、これをよけるか」

感心するように呟くサイラオーグさん。なんの、これしきだ。

俺達は騎士(ナイト)の速度で近づき、殴るモーションに入る前に戦車(ルーク)へチェンジして――そのまま、ぶん殴るッ!

「『ッラァ!』」

「っ!」

サイラオーグさんは腹でそれを受ける! くそ、硬い!

「こんどはこちらからだ!」

「『ッ!?』」

しま――ッ!?

「フンッ!」

拳が腹へ迫る! 避けられる距離じゃない――ならば!

「『ッア!』」

「ほう!」

サイラオーグさんの正拳を左の腹を掠めさせて受け流し、硬直時間を狙ってパンチを胸に打ち込む! これも有効打じゃねぇ!

なら――もっとだ!

腹へ左!

「『オラァ!』」

「なんのっ!」

効かねぇ、なら……何度でも殴る!

「『っおおおお!』」

「ぐっ!?」

よし、うまく入った、なら――

「『ぶちぬけ!』」

「流石にやらせん!」

拳と拳が打ち合う! 轟音が闘技場に響き渡る!

……ああ、強いッ!

「流石だな兵藤一誠ッ! 俺をこうも熱くさせる!」

サイラオーグさんの闘気がさらに膨れ上がり――

「お二方、そこまでです」

ベルーナさんにより制止させられる。

「お兄様ったら、こんなに汗をかいてしまってもう……これから食事会なのですよ? 魔王を目指すのであれば対面というものを気にしてください。……私個人としては別に構わないのですが、ね?」

「む、むぅ……」

ベルーナさんに封殺させられるサイラオーグさんは肩を落とす。

「それから、赤龍帝。兵藤一誠といいましたか」

相変わらず冷たい瞳は、更に冷たさを増して俺たちに突き刺さる。

「レーティングゲームの時、お兄様の前で無様な姿を晒さぬよう、精進することです」

『Limit out absorb……』

「OK。望むところだ」

『天龍を舐めるなよ、小娘』

《僕もいますよ……ま、聞こえないでしょうが》

冷笑を浮かべたベルーナさんは、サイラオーグさんに柔らかい笑みを向けながら汗を拭いていた。

「ああ、お兄様……今日も素晴らしい筋肉ですっ……!」

なにか呟いていた気がするが、俺の耳には届かなかった。

 

 




ちなみに、ベルーナさんのイメージキャラは某劣等生の妹+ヤンデレという構成だそうです。

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