二天龍が笑った   作:天ノ羽々斬

121 / 130
第七章 エピローグ

「……黒歌、死ぬなよ」

「……わかってるにゃん」

「ルフェイちゃんによろしく頼むよ、アーサー」

「ええ」

「悪いな美猴、荷物送ってもらって」

「なぁに、俺達のなかじゃねえか、水くさいぜぃ」

「……キモい」

「ぐふっ!? ま、まぁ兎に角俺等はさっさと去るぜぃ。またいつか逢おうな……斬」

「斬と過ごした日々、愉しかったにゃ」

「では、また会う日まで」

「……ふっ。俺達の間に“さよなら”は要らないって? お前ららしいにゃー。んじゃあ……」

 

『またな!』

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

「俺はエセ忍者の御剣斬。ざんじゃなくてきりだからそこんとこよろしくにゃー」

こんなお気楽な声がオカ研の部室に響き渡る。戦闘の事後処理も終えて、部室で休憩中だ。

ロタンさんはロスヴァイセさんを拐って何処かへ行っちまったけどな。

「部長、どうして彼女を?」

斬の駒は『戦車(ルーク)』。これで一応全部の駒が揃ったことになるんだけど……

「サーゼクス様とアザゼルとミカエルの決定よ。禍の団に関する情報をすべて開示した上、リアス・グレモリーの眷属にして監視下に置くという条件で転生させるに至ったわ。幸い、彼女以外にも禍の団への内偵がいるらしいのよ」

「俺はエセとはいえ忍者だからにゃー。間者として潜ってたと御託を並べとけば上層部も納得するしね」

そう言いながらカラカラと面白そうに笑う斬。

「彼女の速度と防御力は一度刃を交えているイッセーとヴァーリなら理解してると思うけど、そう簡単には倒れないタフさと悪薙剣という名刀もあるわ。それに加えて『戦車』の剛力……非常に頼もしいオールラウンダーで、更には忍術を使えるためテクニック面でも不足なし。おまけに病が治ったから“息切れ”することもない。遠距離攻撃が使えないのが珠に傷、といったところかしら」

悪薙剣(アクナギノツルギ)。アザゼル先生によれば、『この世でもっとも(タチ)の悪い刀』。神代の日本で、文字通り悪を薙ぐ為に造り出した、最古の名刀らしい。性質や性格、感情が『悪』と呼ぶべき存在と、それらがやることなすことすべてに絶対の力を発揮し、相手の『悪』が強ければ強いほど相対するように悪薙剣の力も強まる。相手が悪でなくとも刀として純粋に優秀で、頑丈で粘り強く切れ味も抜群。

アザゼル先生が言うにはここまでくれば概念兵装クラス、らしい。概念兵装ってなんだろうな。名前の通りものすごく強いのか。まぁ、ロキの魔術を完全に破壊していたあたり、強いのに違いはないが。……洒落にならん。

「御剣か……一人の剣士として、一度は手合わせ願いたいものだ」

そう呟くのは白夜さん。と、その言葉に反応した斬がおちゃらけたように言う。

「おろ? ふた○りちゃんが俺にフォーリンラヴ? 困るなぁ、俺にはそんな趣味ないにゃー」

「……このチビが何を申すか」

「……あ? 斬るぞ」

「その気もない癖に良く言う、『侍かぶれ(ミス)』」

「おとと、こりゃ手厳しい」

「性別のことにあまり触れるな。……吹っ切れたとはいえ、(ワタシ)も少しは気にしてるんだ」

「あー……すまないにゃー、白夜ちん」

「謝る気無いだろ」

「チビの点を謝ってないからだ、OK?」

「OK」

……なんだろコイツら。つうかあの仲ってやつか? 仲いいな。

「さぁ、今日はもう遅いわ。もうすぐ文化祭よ、気合いいれていくわよ!」

リアスの声に皆が、オー! と声をあげた。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

 

『ロセ、箪笥はこの辺でいいか?』

「ええ、大丈夫ですよ?」

日本の何処かにある村、いつも湯煙が雲のように上がっているから、湯雲村。知る人ぞ知る秘湯の地であり、わざわざその湯を求めて世界各地から温泉好きが集まってくる。

渓流の付近に村があるため、漁業や農業も盛んであり、この村の米は幻の米とまでされている。

その地に、銀の着流しを来た男と、銀髪の女性が移り住んでいた。

『カカッ、これでちったぁマシになったな』

男は特徴的な笑い方をする。かつて暴れまわりあらゆる神話を恐怖させた魔獣だとは、この穏和な笑みをみれば下手な冗談だと笑うだろう。

少女が男の腕にしなだれかかる。

「これからは倹約ですから、お酒も煙草もなしですよ?」

『え゛』

少女の言葉はいかにも主婦らしい台詞だった。

「ロタンさんが『せっかく引っ越すならいいものを』って買い込みすぎたせいですよ。もう……」

がくりと肩を落とす男。しかし、少女が真っ赤になりながらも、言葉を紡ぐ。

「で、でも、ほら、その……わ、私が、その……あぅぅ……」

少女がわたわたと真っ赤になりながら慌てる姿に思わずにやける男。

『まぁ、こんなかわいい嫁さんがいるんだし、酒も煙草もいいかなぁ』

「よ、嫁っ……! ……きゅぅ」

『ん? ちょ、ロセーッ!?』

あまりの恥ずかしさに顔を真っ赤にして気絶してしまう少女。当然だ――村長含む村人がニヤニヤしながらそのやり取りをみているのだから。

『ッッ!? あー、くそ……顔が(あち)ぃぜ……』

男は頬を朱に染め、逃げるように新築へと少女を抱えて逃げ込んだ。

「ん……えへ、ロタンさん……」

『……ま、いっか』

恋をした怪物と恋を成し遂げた戦乙女は、これからも平和で暖かい毎日を送るだろう。

仮に選択肢を間違えていたら、枯死をしていたかもしれない。

それでも彼らは、今を生きている。

 

いつか終焉の訪れるその日まで、永遠に。





地蔵菩薩さんが一時的にとはいえいませんが、きちんとこの話で『三大怪物シリーズ』とのコラボを一応の終了とさせていただきます。彼らは今後の本編で登場することは滅多にないでしょう。

最後に……お嬢、本当にコラボありがとうございました。

それでは、次回予告。

稲荷神社は、全国に分社が三万以上あり、最も勢力のある商売繁盛のご利益がある神社なんですよ。
次回は、『修学旅行のリトルフォックス』。
あなたにご利益がありますように……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。