なにもんだあの男……。
突然現れた謎の男……。味方なのか敵なのか?
『カカッ、久しいなアザ坊』
男がそう言うと肩の力をぬくアザゼル先生。
「ハァ……ったく、おっさんは変わらねぇな」
『カカカッ! そう簡単に変われるもんでもねぇよ』
この男……アザゼル先生を坊主扱いって……マジ何者。
それに気づいたのかアザゼル先生が説明を始めた。
「このおっさんはロタン・ベルフォルマー。希代の天然ジゴロであり、かつて世界中の神話群を怯えさせた“三大怪物”の一角。旧約聖書にも記されるその名は、『
……とんでもない大物じゃないか……っ!
「ロタンさんッ、私、私……」
『っとと、泣くなよロセ』
そのロタンさん……でいいのか?
ロタンさんはロスヴァイセさんをあやすように撫でている。愛しそうに、目を細めていた。
「……おっさんがあそこまで惚れ込むとはなぁ。いやぁ、世の中どうなるか分かったもんじゃねぇな」
……。
『なぁアルビオンよ。あれが大海龍か?』
『かつて我らすら凌駕し、恐怖させていた最強の怪物とまで呼ばれたリヴァイアサンがあれか……ドライグよ、我は泣きたくなってきた』
『同感だ』
……アルビオンとドライグを越えた存在とかマジ最強じゃんか。
「……リヴァイアサンよ、貴様は神々には手を出せないという
『んぁ? 俺はたまたま通りがかったら大切な人がワンコに襲われてたから助けただけだっつーの。ほれフェンたん、おすわり』
「わんっ」
……いやいや、フェンリルをワンコ扱いとか強すぎじゃねぇか。しかも服従してんじゃねぇか。しかも大切な人、のくだりでロスヴァイセさん真っ赤っかだ……。
なんというか、もはやすごい通りすぎてギャグの領域だわこれ。
ロタンさんはロスヴァイセさんの頭を撫でながら続ける。
『それによぉ、色々根回ししたから多少は自由度が増えたのさ。それにお前は神というよりはカテゴリー的に巨人に属する存在だからな。ギリセーフってやつだ』
「クッ……我をなめるなぁぁ!!」
突如魔方陣をいくつも展開したロキが魔法のフルバーストを放つ!
『ったく、飽きねぇやつだなお前もよ』
その魔法をみてため息をついたあと、ロタンさんはロスヴァイセさんを撫でていない左腕を自身の胸へと近づける。
そして、それを“適当に軽く”振り抜く。
次の瞬間、拳圧だけで“魔方陣ごと魔法が消し飛ばされた”。
……む、無茶苦茶だろ……。
『んー……軽くあしらうつもりだったんだがな……ちと力んじまった』
あしらってない消し去ってる!
そして拳圧で気絶するロキ。えー……俺たちの今までの努力は一体……?
「ロタンさん……」
『すまないなロセ。遅くなって』
「いいんです。私、ロタンさんのこと信じてましたから。さぁ、おばあちゃんと両親へ挨拶にいきましょ?」
『その前にこのごたごたを解決してからだ。な?』
「……そうですね。もう、あせる必要もないですよね?」
甘い。なんだこれ。一気にラブコメ空間になっちまった。
本気で来てたロキがかわいそうに思えてしまうほどの、呆気ない幕引きだった。
―★☆★―
『カカッ、改めて自己紹介するぜ。俺の名はロタン・ベルフォルマー。ちょっくら昔色々とやらかしてた奴だ』
――三大怪物。
神が作った最高傑作。神獣ではなく、神造魔獣というたぐいの存在で、その三人が集まれば神話を容易く滅ぼすという存在で、“禁忌”……。名前すら出すことを憚られる存在だとか。
「ミカの奴は運がないな、おっさんに一番会いたがってたやつだろうに」
『そうか?』
「……おっさん、まだ自覚ないんだな……」
『俺が天然ジゴロとか言う話か? そんなはずはないだろ……
……とてもそうには見えないけどなぁ。ジゴロのくだりでもロスヴァイセさんの顔色をうかがってたし。当のロスヴァイセさんはにこにこしながらロタンさんの手を握っているが。
『んで? 今代の赤白は争わねぇのか?』
「うん、私がイッセー君大好きだから♪」
と、そういいながら俺に抱きつくヴァーリ。
「ず、ずるいですヴァーリさん! わ、わたしも!」
「王としては今はこらえるべき、よね……?」
「……むぅ」
「あらあら、私も混ぜてください?」
……なにこれ。部員の皆が抱きついてきておっぱいに埋もれるぅぅー!?
『カカカカッ! ……大変だな、赤龍帝』
ロスヴァイセさんはにこにこしながらロタンさんの手を握っているが、逆にその笑顔が怖い。
「……いえいえ、そちらこそ」
ロタンさんと目があって、つい苦笑いしてしまった。
「これは混ざるべきなの? それとも止めるべき? ああ、神様ミカエル様お教えください……!」
すっとんきょうな事を言っているイリナに思わずため息が出た。
「まぁ、とりあえず無事に終わってよかっ……グッ!?」
安堵したかのようにそういった斬が、突如苦しみ出す。
「くそ……ごふっ……!」
吐血をして、神器が解除され彼女が墜ちていく。
「斬っ!」
あわてて黒歌が彼女を助けにいく。
……不味くないか? これ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
『ああ匙君、君の龍王の姿もまたそそるね……っ。何故僕の心を君は乱すんだい……?』
『いくぞ、翠。我らがいつまでもこんなところで野次馬をやっているわけにはいかん……嫁が心配する』
『そうだね。僕も匙君観察日記をつけなきゃいけないし』
『……なんだそれは』
『匙君の呼吸とか心拍数とか行動とかを0.01秒単位で記述したデータを元に感想を書き連ねていくだけの日記さ』
『……我もつけてみようか。
『なら意見交換とかする?』
『断る。嫁の情報すべてが我のものだ』
『言うと思った。まぁ、紅の嫁の話は僕にとってはどうでもい……冗談だからその脚を納めぎゃん!?』
『嫁を侮辱するなど冗談でも許さん……っ!』
『わかった、わかったから! 蹴らないで! 内臓が飛び出るよ!?』
『飛び出ろ』
『酷いっ! もう媚薬分けてやんないからね!?』
『……むぅ、それは困る』
『ほっ……』
・紅
嫁(誤字にあらず)を溺愛してるあの女帝。わかる人にはわかる。
・翠
わかる人には(ry。匙君に恋するあの魔法幼女。匙死すべし慈悲はな『そうら、塩酸をプレゼントだ』ああ、窓に、窓に!