Muv-Luv Alternative ~take back the sky~   作:◯岳◯

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今回は1万文字づつ、二つの話になります。

ちなみに私的には和服+うなじか、ポニテ+シャツ+うなじが良いかと。
あるいは健康的な太もも。
濃い色のスカートとストッキングの間に白く輝く腿はァァァ!


30話 : Under the ground zero-Ⅴ

●旧交と

 

 

ただ、沈黙が在った。電灯だけが明かりとなる、横浜基地の地下の一室。そこに、茶髪の男と黒髪の女と、金髪の男のような女のような物体が視線を交錯させていた。

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

誰も、何も言わない。驚愕に、気不味さに、また別の理由に。色々あれど、全員が声帯を失ったかのように沈黙を保っていた。

 

そうして、ダムが決壊するかのように。

 

「………姉様?」

 

「ぶほっ!」

 

「――殺す」

 

 

数秒後、呟きを聞いてたまらずと吹き出した茶髪の男が殴り倒された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……久しぶりだな」

 

「はい。兄様も元気そうで」

 

「兄様は止めてくれ。なんていうか、その、すげえモヤモヤする」

 

仕切り直しと、兄妹は―――かつらを外したユウヤと、それを見なかったことにした唯依は再会の言葉を交わしていた。美しい光景だった。その隣ではボコボコにされた武が床に転がっていたが。

 

それから、ユウヤは篁家に対するスタンスを唯依に説明した。積極的には素性をバラすつもりはなく、今後もそうする予定はないという事を。

 

「……それは、篁家の事情を考慮して?」

 

「それはオマケだ。弐型を含めて、多方面に悪影響しか及ぼさない。俺たちも含めてな……あと、母さんも」

 

「母さん、とは……まさか!?」

 

「死亡は偽装だった。ヨロイって諜報員に、ブリッジスの叔父貴が協力してくれた結果だ……少し前に会った。今は大東亜連合で働いてる」

 

ユウヤはまだ信じられないせいか、困ったような、それでいて誇らしく喜んでいるような顔をしていた。それを見た唯依は、複雑な表情をした。ユウヤの事を考えれば、生きていたという事実は嬉しいものだが、父の事を思えば、申し訳のなさと、母以外に愛した人が、という考えが同時に浮かんでしまうためだった。

 

何を言おうとしても、誰かを庇い、責める形になってしまう。唯依は苦しそうな顔で―――それも卑怯だとは自分で分かっていたが―――黙り込み、そこに横から声が飛び込んだ。

 

「痛てて……手加減なしかよ、ユウヤ」

 

頭をさすりながら武が立ち上がった。それを見たユウヤが、自業自得だと武の主張を切って捨てた。

 

「わざわざ女物の変装用具集めやがって。お陰でいらん恥をかいたじゃねえか」

 

「は? いや、違うって。女装の提案したのは夕呼先生だぞ」

 

「……じゃあさっき、“来客があるけど微妙な立場の人だから一応女装しといてくれ”って俺を騙したのは?」

 

「―――俺だな」

 

「胸張って……照れるな、褒めてる訳ねえだろうか!」

 

ぎゃーぎゃーと子供のような言葉で二人は言い合いを重ねた。それを唖然とした表情で見ていた唯依が、恐る恐る尋ねた。

 

「あの……仲良くなりましたね」

 

「けっ、誰がこんな奴と」

 

「ああ、分かる? なんせ戦友だからな……昨日は宇宙戦艦Г標的の撃破まであとちょっとだったのに」

 

2機連携で挑んだ結果、何とか有効射程範囲まで進むことが出来たのだ。数多の光線をやり過ごし、幾多の触手を掻い潜って。だが、最後に全方位無差別乱射光線を受けてあえなく蒸発してしまう結果となった。

 

「……ああ、シミュレーターでの事ですか。しかし、そのような化け物が存在するとは思えないので、訓練の意味が……あの、どうしてそんな顔を? え、嘘か冗談ですよね、って何で眼を逸らすんでしょうか」

 

だんだんと顔を青くする唯依に、武はとても優しい表情を見せた。隣に居るユウヤもぎょっとして、まさか実在するのかと戦慄していた。

 

「……まあ、なにはともあれ」

 

「いや、はっきりしといて欲しいんだが。俺たちの心労のために」

 

「いずれ話すって。それで、ユーコンで起きた事だけど……っと、来たな」

 

武の言葉に振り返った唯依とユウヤは、ノックの音を聞いた。入って、という武の声と共に扉が開かれ、現れた人物を見た唯依とユウヤが驚きの声を出した。

 

「……クズネツォワ中尉と、マナンダル少尉?」

 

「今は昇進したから中尉だ。久しぶりだな、ご兄妹」

 

いきなりの発言に、向けられた二人がぎょっとした表情で武を見た。まさか、という視線に武は慌てて否定した。

 

「俺じゃない、自分で気づいてたんだって。あっちの孤児院にはミラさんも居たらしいから」

 

「あとは連想ゲームだ。答え合わせの相手が元帥閣下になるとは思わなかったけどな」

 

疲れた表情で、タリサがため息をついた。その後、気にするなと腕を振って軽く答えた。

 

「ステラとVGが聞いたら驚くだろうけど、言い触らすつもりはないって。アタシも弐型のテストをした一人なんだから」

 

「……開発という軍務の成果を無駄にするつもりはないと?」

 

「その通り。あと、大東亜連合と日本との関係に罅を入れでもしたら、おっかない鉄拳閣下に制裁されちまうし」

 

それこそ、文字通りの鉄拳で。そこは軍法会議とかじゃあ、と指摘を入れるより先に、本気で怖がっているタリサの姿を見た二人は、そんなにか、と逆に恐怖を感じた。

 

「……外交関係にまで頭が回るなんて、成長したね」

 

「へっ、あの頃のあたしとは……その眼はやめろ、バカサーシャ」

 

成長した悪ガキを見る近所の人のような眼で見るサーシャに、タリサが噛み付いた。その様子を見ていた唯依が、浮かんだ疑問を言葉にして問いかけた。子供の頃に交流があった事は推測できるが、どのような場でそれが。質問に、タリサが武も指差しながら答えた。

 

「アンダマンに居た頃にな。パルサ・キャンプで、同期の同じ部屋だったんだ。まだひよこ未満だったアタシと違って、こいつらは亜大陸で実戦を経験した後の再訓練……だったか?」

 

「俺はリハビリも兼ねてだな。撤退戦終わって入院した後だったから」

 

「私も、体力不足を感じてたから一緒についていった」

 

頷き、答える二人の横でタリサが「そういう事だ」と告げた。唯依とユウヤの兄妹は仲良く、どういう事だと真顔になった。特に武について。

 

「え……っと。元クラッカー中隊とは聞いていましたけど、亜大陸に居た頃から?」

 

「むしろ古参組。生き残っている面々で、順番で言えば……ラーマ隊長、ターラー副隊長、バカ、私、リーサ、アルフまでが亜大陸で。アンダマン島で樹、アーサー、フランツ、マハディオ、胤凰が。タンガイルの後に玉玲、グエン、最後にクリスかな」

 

サーシャの説明に、ユウヤがクレイジーと呟きを返した。それを聞いた唯依とタリサも、深く頷いていたが。

 

「で、マンダレー・ハイヴを落とした後の帰路の途中にね。影行が誘拐されたって連絡があって、それを助けようとして……色々あって、私と武がソ連の諜報員に攫われて。で、なんやかんやとあって今に至る、と」

 

さっくりとした説明に、唯依は口元をひきつらせながら答えた。

 

「き、気になり過ぎる情報をさらりと言わないで欲しいのですが」

 

「面白くもない過去だし、聞いても疲れるだけだと思うから。ちなみに武の事なら説明できるけど」

 

サーシャは掌を広げ、一つづつ指折りしながら答えた。

 

「女の子にちょっかいかける、女の子にいらない気を持たせる、いっそストレートに女の子を虐める。あと、女の子と守れない約束をする、女の子を良い意味でも悪い意味でも笑わせる」

 

「……えっと、サーシャ? 俺がなんかすげえ外道な奴みたいに聞こえるんだが―――バカなっ!?」

 

武は深く頷いている唯依とタリサを見て、驚愕した。だが、主張する間もなく追撃が入った。

 

「……ユーコンで、吹雪の中ステルス機で一対一になって……アレほどまでに死を感じたのは初めてだった」

 

ぼそりと、唯依が呟く。Ex-00の性能を知っている3人は、唯依に深く同情した。ステルスで、白銀武を相手に、視界の悪い場所で、レーダーにも捉えられない状況。まな板の上の鯉どころか、炭火焼きにされている肉も同然だった。

 

そして、その時の恐怖を思い出した唯依は、若干子供っぽくなった声で呟いた。

 

「最後まで蚊帳の外で、間抜け扱いどころか道化みたいに終わって……」

 

開発を頑張った、テロ鎮圧に奮闘したと思ったら撃たれて、戻った後で疑いをかけられ、ユウヤを信じると更に頑張っても最後には置いてけぼり。最後には弐型開発の成果を認められたものの、頭の硬い斯衛の保守派にからまれて、扱き下ろされて昇進は不可とされた。

 

武は、だんだんと落ち込んでいく唯依を前に、うっと言葉に詰まった。改めて起きた事を並べると、不憫以外のなにものでもなかったからだ。狙撃の件は、言えない。昇進の件も崇継、御堂両家の仕込みの意味もあると聞いてはいるが、ここで言えるような内容でもなかった。ただ、流石にこのままではと思い、励ましの言葉を告げた。

 

「いや、唯依は凄かったって。見ている奴は見てるから……そ、そうだ。俺に出来ることならなんでもするから、って痛え?! 二人とも何すんだよ!」

 

頭と腹に、サーシャとタリサからの二連撃が入るも一足遅かった。すぐに笑顔になった唯依の表情が、それを物語っていた。

 

「えっと……もしかして、今のは演技とか?」

 

「気持ち程度には―――というのは冗談です。兄様を助けて頂いた恩もありますので」

 

何も要求するつもりはないと、唯依は笑顔で答えた。上総の件もある。ただ、黙っているだけでは収まらないものもあった。

 

「それよりも、純夏は元気ですか? 京都で別れて以来、連絡も取れていなかったので……」

 

「理不尽なまでに元気……ていうか、あの模擬戦に参加してたぞ」

 

「……え?」

 

驚く唯依に、武は参加メンバーを伝えようとしたが、それよりも来客の方が先になった。玉玲と亦菲が促されるまま部屋に入った後、話を戻すけど、と武がB分隊の名前を告げた。唯依は榊、彩峰という流れで嫌な予感がして、鎧衣、珠瀬という姓が続いた所で確信に至り、御剣という名前を聞いて、考え込んだ。

 

「……御剣といえば、煌武院家の」

 

「ついでに言えば、俺が亜大陸に行くことになった理由だな。もうじき知れるだろうからここで説明しておくけど―――まあ、殿下の双子の妹だよ」

 

さらりと告げた武に、唯依が硬直した。その後、よろめくも、隣に居たユウヤが慌てて支えた。唯依は照れと共に少し頬を赤くするも、少し考え込んだ後、答えた。

 

「いずれも異なる立場ですが、親は重要人物ばかり。つまり、意図的に集められた……人質の類ですか」

 

武家の唯依は、すぐに答えにたどり着いた。過去には多く存在した事例だ。その後にもうすぐ任官だという情報を聞いた後、訝しげに尋ねた。

 

「よく認められましたね。万が一にも戦死したら、関係は御破算に……いえ、そうとも限りませんが」

 

「本人達が希望して、条件を出したけどクリアしたから。まあ、6対1で俺に勝てたらっていう条件だけど……」

 

武はそこで黙り込んだ。事情を知らないタリサ、玉玲、亦菲から珍獣を見るような眼で見られたからだ。その後、更に細かく説明を聞いた3人は、声を揃えて言った。

 

これはひどい、と。

 

「どうりで任官前なのに、あんなに強く……ああ、ツェルベルスの変則的な動きをする方の衛士についていけたのも、その地獄を見せられたからか」

 

「これは、隊長夫婦に報告するべき案件だね。流石に……無理難題過ぎるから」

 

「それでも戦場で死なないか、って言われても首を傾げるだけになるけど……限度があるでしょうに」

 

同情、叱咤、呆れ。三者三様だが、責める空気は変わらず。武は顔をひきつらせながらも、自分の失敗だからと甘んじて受け入れることにした。こういう時に言い訳をしても、更に事態を悪化させるだけだと、これまでの経験から学び取った成果とも言うが。

 

その後、ユーコンでの面々が集まったからと、サーシャ以外の者達はユウヤが亡命をした後の報告をしあった。

 

武も大体の情報を入手はしているが、衛士にしか分からない、現場からの観点による情報が欲しかったのだ。そして機体の開発の情報から、米国とソ連に対する現場の感情に移った所で武は大きく反応した。

 

「それじゃあ、F-22はあの後すぐに帰国を?」

 

「ああ。何が起きたかは分からねえけど、さっさと帰って行った。まるであの事件こそが本命だった―――っていう噂も流れてたな」

 

「こっちも同じね。訳が分からない内にやってきて、同じように帰っていった。テロが起きる前後だ、っていうのもね。こっちの現場指揮官も訝しんでたわ。あいつら、ユーコンでテロが起きることを予め知ってたんじゃないかって」

 

「確証はない……けど、疑わしきはっていうレベルでもないから」

 

プロミネンス計画にそぐわないステルスという性能を持った機体、基地に来たタイミングに、あまりに杜撰だった基地内の警備体制。テロにより開発衛士という貴重な人員を失う事になった東欧連合などは、特に米国に対して大きな疑念を抱いているらしいと、玉玲が告げた。

 

「―――で、真相は?」

 

「………百聞は一見にしかず、ってな」

 

武は資料を取り出し、渡した。ソ連の施設を急襲しているF-22、インフィニティーズが映っている写真を。そしてG元素からG弾の事を説明すると、既に情報を聞かされていたユウヤまで怒りのあまり震え始めた。

 

テロの時に死んだ開発衛士達と、親交が深かった訳ではない。だが、それぞれに志は違えども、BETA打倒という目的のために計画に参加した一員だったのだ。外交戦略だろうが、政治的な意図があろうが、頭から踏み躙られて良い筈がなかった。

 

「でも、アンタも知ってたのよね。テロが起きることは」

 

「ああ。そのためにユーコンに行った」

 

「……だったら、止められた筈じゃない?」

 

「かもしれない。目的を犠牲にする事が前提になるけど」

 

亦菲の問いに、武は答えた。主な目的は3つ。レッド・シフトを防ぐため、ユウヤとクリスカを助けるため、XM3の性能の喧伝。それらを聞いた亦菲は、玉玲を横目で見ながら、再度尋ねた。

 

――元クラッカー中隊、家族のようだと思っている仲間を守るのは含まれていないのね、と問い詰める風に。武は、迷わず頷いた。

 

「目的と救出、両立できないなら目的の方を選ぶ」

 

「……助けて欲しいと、そう思われていても?」

 

「ああ。生きてさえいれば、なんていうのは違うと思うから」

 

目的を二の次にした結果、途方もない数の人が死ぬ。それならば殺す、と武は答えた。見捨てる事を選択して、俺が家族を殺すと。その言葉に、玉玲も迷いなく頷いた。

 

「死ねば悲しいし、殺すのも悲しいけど……約束、したから。タンガイルの後に、ビルマ作戦が始まる前に」

 

―――かつての時の願いを、誓いをずっと。それこそがクラッカー中隊の根源。地獄のような世界で結ばれた、互いを結ぶ一筋の糸だった。それを汚す事は、大元からの関係を崩すことになるのだと玉玲が答え、武とサーシャが頷いた。

 

「家族だから、困った時には助け合う。だけど、殺されそうになったら殺す……色々と嘘にしたくない事が増えすぎちまったから」

 

「うん。でも、細いから頼りすぎると切れる。だから、在ることだけ意識してる。時には、こうして」

 

サーシャは中隊内で作られたサインをした。自分の心臓を指差し、相手の心臓にも指を。一方的に助けるのではなく、自分で立つことを前提とした。

 

互いの想いを聞かされた亦菲達は、その言葉に頷かなかった。大切であるなら、失いたくないと思うのが当たり前だからだ。見捨てること、辛くない訳がないのだ。だが、否定する事もできなかった。助けたい人だけを助けた後に待っているのが、軍人だけでは収まらない、民間人の屍の山だと分かっているから。

 

(……答えのない疑問か。正しいかどうかは主観による。人の正義、その正当を問いかける事に似た)

 

命を数字だけで表して比較するのか、名前を付けて大切にするのか。軍では、よくある話だ。いずれも正解はない。好みによる違いがあるだけ。両立はできない。その中で、中隊の面々は両立をしようとしている。

 

それは矛盾だ。亦菲の中にも存在する、相反する想いが生み出す心の齟齬。故郷を愛して憎み、両親を怒るも愛している。

 

それらを考えた亦菲は、静かに告げた。

 

「……意地の悪い事を聞いたわ。忘れてちょうだい」

 

「いや、覚悟してた事だからな……責められた方が楽ってのもある」

 

自嘲する武に、タリサが告げた。

 

「それでも、楽になりたくはないんだろ?」

 

「そうだな……一人だけ先に、っていうのはズルいし」

 

武はベルナデットの言葉を聞いた後、思い浮かんだ言葉を口にした。

 

「死んでもいいから、っていうのは卑怯だ。そういう意味じゃあ、死んで楽になんて言ったら拳骨をくらっちまう」

 

怖がる武に、唯依は苦笑しながら答えた。

 

「やる事をやれていない立場で、あまり多くは責められません。ならお前はどうなんだ、と問われればそれまでになるので」

 

白銀武は香月夕呼と手を組み、自らが持つ情報と力を武器にして、このBETA大戦を勝ち抜いていく道筋を見出した上で前に進んでいる。一方で、情報が揃えられていないため、上層部に言われるがままにするしかない自分達が何を言えるのか。代案を出せない以上は、何かを言う資格もない。

 

そうして、場の空気が暗くなっていこうとする中で、武の柏手が響いた。

 

「と、暗い話はここまで。疲れるけど、明るい未来を話そうぜ」

 

むしろ逃がさないとばかりに、G弾炸裂後の未来と、ベルナデットがその記憶を持っていた事を説明した。明るい口調で絶望の世界を初めて聞かされた面々が、天を仰いだ。

 

「改めて聞いてもひでえ……」

 

「だから理論が確立されていない兵器を使うなと……」

 

唯依とユウヤが、兄妹仲良く遠い目になって。

 

「元帥閣下が白髪になった理由が痛い程に分かった……」

 

タリサは深入りしない方が、とアルシンハから告げられた時の事を思い出して。

 

「どうしてそんなに明るい口調で語れるのよ……」

 

「……リヴィエール少尉と仲が良さそうだけど」

 

亦菲と玉玲は武をジト目で睨んだ。秘密を打ち明けた武は、うんうんと頷いた。

 

「重たいものは、分かち合わなきゃな……あ、知ってるのは元クラッカー中隊の全員と、崇継様に介さん、あとは腹黒元帥と夕呼先生だけだから」

 

「……斑鳩公が?」

 

「京都の防衛戦の時に、ちょっとな。俺からキーワードを告げたら、思い出した。リヴィエール少尉は自力で思い出したみたいだけど」

 

その原因はG弾で、元凶もG弾である。それらを聞いた全員が、認識を共有した。BETAもそうだが、米国を何とかしなければこの星に明るい未来は訪れないという事を。

 

そこから計画を聞かされた面々は驚きながらも頷き、その中で唯依が呟いた。

 

「来月、有事が起きた際には……ですか」

 

「ああ……納得はできないと思うけど、従ってもらうしかない」

 

「……いえ。放置する方が危険だという理屈は分かるつもりです」

 

しかし、という言葉を唯依は呑み込んだ。別の解決方法は、と考えた所で良い方法が思い浮かばなかったからだ。誰も死ななくて済む、夢のような解法。それも失敗すれば、絶望の未来が口を開けて待っていると聞かされては試す気にもならなくなる。

 

同時に、武と夕呼が、事情を知っている人達の抱えているものの重さを痛感し、その一端を味わった。矛盾を抱えたままでも、走り続けなければならない辛さを。そして力不足のため方法を生み出すことができない、自分の未熟さを憎んだ。

 

それは唯依だけではなく、亦菲、タリサも同じで。3人は武の強さの根幹を見た気がした。10歳の頃からずっと、この気持ちを抱いていたのならば強くならない方がおかしい、と。それだけではない、ユーコンで垣間見た死の闇を。自分が“殺した”と思うような、仲間の屍を背負ってきたのならば。

 

それでも明るく笑おうとするのは、誰のためか。唯依はそう思ったが、直接言葉には出来ず、苦し紛れに問いかけた。

 

「……ところで、リヴィエール少尉が中佐に“押し倒される”と言っていた件について聞きたい事が」

 

「いや、そんな事言ってねえぞ!? そりゃあ会話の流れで口説くだなんだと答えたけど、あれは冗談の範疇で……」

 

武は途中で言葉を止めた。サーシャの眼が、誰が見ても分かるぐらいに危険なものになっていたからだ。ごくり、と誰かが生唾を飲む音と共にサーシャは口を開いた。

 

「へえ……人の胸揉みたいだの言ってたのにねえ。あ、違った。誰の胸でも揉めるのならばそれで良いとか言ってたんだっけ」

 

「人聞きが悪過ぎる!? いや、それは違うんだって」

 

武はすかさずとユウヤに助けを求めようとしたが、その姿はこつ然と消えていた。気づけば、出口の扉が少しだけ開いていた。

 

「あの野郎、逃げやがったな……!」

 

「正しい判断だね。流石、学習能力は随一というか……玉玲、ごめんだけど」

 

「ん」

 

サーシャの意図を察した玉玲が、開いていた扉に向かった。武は、それを見ながらも首を傾げていた。

 

「というか、なんでみんなが怒ってるんだ? 正直、俺がどの女性の胸を揉もうが、みんなには関係ないような」

 

「―――ああ」

 

「―――へえ」

 

「―――ふうん」

 

「―――そう」

 

「―――ですね」

 

呟かれたのは単語だけだが、いずれも冷たいものが含まれ。武は経験より、察した。自分は窮地に晒されているのだと。このままでは死ぬ。そう思った武は、脳味噌をフル回転させた後に、必死で告げた。

 

「だって、そうだろ!? こんなに隠し事をして、裏で動き回って、嘘までついて……自分勝手で」

 

先程の矛盾も、最終的には主観に集約される。誰かを殺し、活かす。どんな正当性があろうと、それは自分が決めたこと。自分の都合が主要成分となるエゴそのものだ。

 

過去の記憶から、自分が誰かを好きになった事、好かれた事を武は既に思い出している。一方で、その時と同じ事にはならないと、武は確信していた。

 

咄嗟に出た言葉は、その一端だ。それらを聞いた女性陣は、言葉の意味を考え。更には武の表情を見て、思い出した。

 

白銀武が、来月で18歳の誕生日を迎える、法律的には酒もタバコも許されていない男なのだと。

 

「―――でも」

 

一言、挟んだのはサーシャだった。横目で他の4人を見ながら、告げた。

 

「仲間だから、武が死んだら泣くよ?」

 

本当は後追いで死ぬつもりだが、あえて柔らかい表現に留めて。その言葉に、玉玲が続いた。

 

「うん。それで……誰の胸でも良い、っていうのは、その」

 

玉玲の言葉に、亦菲が続いた。

 

「誘っているみたいだから止めなさいよ、隊長。で、やっぱり良い女を自負する私とかは、良い気はしない訳で」

 

亦菲の視線を察したタリサが、睨み返しながら答えた。

 

「ケルプは置いといて、デリカシーが無いよな。まあ、どうでもいい奴なら放っておくけど」

 

タリサの意味ありげな言葉に、ようやく察した唯依が続いた。

 

「放っておけないから、怒る。まあ……重荷を分け合う間柄だから」

 

―――それを仲間というんじゃないのか。言外に告げられた内容に、武は眼を丸くした。その表情を見た5人が、そうか、と何か腑に落ちたような表情になっていた。

 

戦闘に関しては大人顔負けだ。目的を達成するための手腕も、色々な大人から学び取ってきたのだろう。それでも、万能では有り得ない。

 

10歳までは子供で。そこから8年、戦いの最中、生き延びる術を学び、ようやく生きてこれたに過ぎない、18歳はそれ以上でも以外でもない。ある筈がなかった。

 

(……情操教育とか、常識とかは何時学んだのか、っていう疑問はあるけど)

 

亦菲は、武がまだ何かを隠していることに気づいた。戦い漬けだった8年、軍という一種異様な世界でもそれらを失わずに来れたのは、もっと別の要因がある筈だと。

 

「と、どうでも良いことは置いといて……まあ、ようするに仲間だからよ。だから、一発殴らせてちょうだい、っていうか殴るけど」

 

「いや、それこそなんで!?」

 

「ムカつくからよ!」

 

「ええ……」

 

理不尽過ぎる物言い。だが、武は怒ってはいなかった。

 

「……まあ、どうでも良いやつなら殴りはしなさそうだよな」

 

「そうよ。手が痛くなるだけだし」

 

「痛くなるぐらいに殴られるのも嫌なんだけどな……でもまあ、仕方ないか」

 

それでもまあ、と武は降参の両手を挙げた。アルフレード曰くの、『女性が怒ったら謝る以上にスマートな解決方法はない』という教えに従って。

 

そうして、亦菲が冗談混じりに軽く殴りかかり。

 

―――武はサッとそれを回避してから、ひょっとこ口で告げた。

 

「なんて思うかバーカ。相変わらず功夫が足りてねーな、ボッチ」

 

「……いい度胸してんじゃない」

 

亦菲は最初に怒り、そして思い出して、笑い。武もそれに応えて、笑った。

 

「成長した証を見せてやるわ。アンタが根暗バカだった頃とは違うってね」

 

「そ、それは言うな! 思い出すだけで悶絶しそうになるから!」

 

亦菲が殴りかかり、義勇軍になってから日本に来てしばらくの間の自分はあまり思い出したくなかった武は、顔を赤くしながら抵抗した。

 

他の4人はじゃんけんをしながら、暴れまわる二人を見ていた。

 

「……一気に、という訳にもいかないのは分かってたけど」

 

「再会したからには、って思うのは当然だと思うよ玉玲。まあ……私はキスしてもらったけど」

 

「はあ?! ちょっ、おまっ、そんな事一言も……!」

 

タリサが詰め寄り、唯依が冷静に告げた。

 

「家族というからには、親愛の情を示すとか……ず、図星か?」

 

「………………いやでも王子様なやり方で、って霞が言ってたし、顔を赤くしていたのもあるから………」

 

「そのあたり、詳しく」

 

「アタシも。思ったより強敵……っていうか曲者っていうか」

 

「ああ……目を離したら、危険だ」

 

食いついた玉玲とタリサの後、唯依が呟き、全員が頷いた。

 

所属を転々とした背景や、交流。全てではないが、過去を考えると、眼を離している間にどこか遠い所まで行かれかねない危うさがあると感じたのだ。

 

強くはある。その姿には、憧れさえ抱ける。ただ、想う心を伝えるよりも先に、心配が勝ってしまう程に弱い部分も持っている。それを母性と言うのだが、疎い4人はそれに気づかなかった。

 

 

「………鈍感なのは、生まれ持っての事だと思うけど」

 

 

影行を例に出された言葉に、タリサと唯依、玉玲が深く頷きを返した。

 

 

―――目を逸らしているだけなのか、それとも、という言葉はそれぞれの内心だけに留められたままに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●ツェルベルスと

 

 

「酷い目にあった………いや、やっぱり拙いのは分かるけど」

 

武は亦菲の猛攻を回避しきった後の、どうしてか勃発したタリサとの格闘戦を振り返っていた。最後には押し倒すどころか、胸を揉んでしまった後のことを。

 

「タリサは顔赤くして女の子みたいだったし、サーシャの怒りは倍増するし……」

 

あんな時には、どう解決すれば良いのか。武はひとしきり悩んだ後、そういう方面の師であるアルフレードを訪ねたが、会えたのはズタボロになった背中だけだった。

 

「何やらかしたんだろうな……樹が発端とは聞いていたけど」

 

そこに居た仲間に聞くも、原因は教えられないと言われた。ただ、『殿下までもが』という樹の呟きは聞こえていた。リーサが爆笑しているのも、訳が分からなかった。

 

「マハディオはマハディオで、プルティウィは違うよな、とか聞いてくるし……何がだよ、述語が足んねえよ。基地に行った時にアードヴァニー少尉と一緒に居た所は見たし話した、って言ったら少し考えた後に、お前かーって言って殴りかかってくるし」

 

思わずとカウンターを決めてしまい、マハディオをノックアウトしてしまった武は、このままではよからぬ事に巻き込まれそうと思い、その場から逃げてきたのだ。

 

最初は、自分の機体へ。整備班長から報告を受けた後、EF-2000があるハンガーへ目的地を変えた。落ち着いた場所では見たことがなかった機体を後学のために、と思っての行動だった。

 

そうして目的地にたどり着いた武は、機密保持のためだからと整備兵から言われた線より先には入らず、遠くからEF-2000を眺めていた。

 

EF-2000(タイフーン)……色々と紆余曲折を経て開発された、とは聞いていたけど」

 

BETAへの対抗が急務となった欧州で1980年から開始された、ECTSF計画。その結晶とも言える機体の一つでもあり、世界でも有数の第三世代機として名を馳せる名機だが、配備年数は昨年の2000年となったため、一部では遅すぎた風と揶揄する声もあった。

 

パレオロゴスの戦訓を元に1985年に向け、第二世代戦術機としての実用化を目標にするも、欧州各国を襲うBETAの脅威、フランスが計画途中に脱退など、様々な要因が絡んだ結果、開発は遅れるに遅れてしまった。遂にはF-15Cに先を越され、その売り込みが加速し、西ドイツまでもが―――という中で当時主要国となっていたイギリスが方向転換を決定。1994年に技術実証機を試作、設計思想を一新しながら高い実戦能力を模索され続けて、ようやく1998年に先行量産型が引き渡されたのだ。

 

そこから完成までに2年。計画開始から正式に配備されるまでは、20年。

 

「……日本に徴兵制が復活したのが20年前だったよな。そこから今は女性まで徴兵されるように、って考えると短いやら長いやら……ん?」

 

呟いていた武は、背後に足音を感じて、振り返った。そこには、欧州連合の軍服を身にまとう2名の衛士の姿があった。

 

「―――敬礼はいい、ブラウアー中尉に、ヴィッツレーベン少尉。あと、敬語もいらない」

 

「へえ……それじゃあ、お言葉に甘えるが」

 

「……良いんですの、ブラウアー中尉」

 

「あっちが良いって言ったんだ。それにヴァレンティーノ大尉の話を聞くに……そういうのを気にしそうなタマじゃねえだろ」

 

ヴォルフガングの試すような口調に、武は素直に頷いた。そもそも年下ですし、と苦笑と共に答えながら。

 

「それで、俺らの機体に何のようだ? ただの見学、って訳でもなさそうだが」

 

「いや、ただの見学だ。色々と興味深い機体だから」

 

色々な変遷を辿ろうとも、EF-2000の性能は本物だ。戦術機によるハイヴ攻略を原則として開発されたコンセプトだけを言えば、不知火と同じ。近接格闘も視野に入れられている機体だ。そんな戦術機にXM3がどのような影響を及ぼすのかは未知数な部分もあるが、不知火に搭載した後の戦闘力増強を考えると、決して小さな影響で終わる筈もない。

 

「……まあ、俺たちが考案したOSでどれだけ強くなるのか。それを知りたいから、っていうのもある―――ってヴィッツレーベン少尉、目が怖いんですけど」

 

何かスイッチが入ったような。そんな空気を感じ、視線の色が変わったのを感じ取った武は思わずと一歩下がるも、ルナテレジアはその一歩を前進によって詰めた。

 

「開発されたのは白銀中佐だとお聞きしましたが……経緯などをお聞きしてもよろしいでしょうか」

 

「ああ、別に問題はない。まあ、単純な話なんだけど」

 

要約すると、自分の思い通りに動かせるようなOSを。それも、平行世界では有用だと保証されたものを作り上げただけ。夕呼や霞、イーニァなど、人類でトップクラスの頭脳が関わったという点は普通ではないが、コンセプト自体は単純なものだった。

 

「素早く、絶え間なく、単純に。旧OSでも出来ないことは無かったんだけど……ほら、時間がかかるだろ?」

 

「……ですわね。そして、訓練の時間が十分に取れない場合も多い」

 

「だから、と改善方法を本格的に考え始めたのは、亜大陸撤退戦の後からなんだけど」

 

基本理念は出来ていた。それをターラーに伝えた事もある。そして改善点について、主にコンボで有用な場面はどれかと、話し始めたのがタンガイルの後から。それは今の最新型XM3に活かされていて、衛士にとってはより使いやすくなっている。

 

「それでも、CPUの処理能力不足の壁を越えられなくて……今になってようやく。遅刻も遅刻、大遅刻になってようやく完成にこぎつけた」

 

「……ですが、性能は十分なものに仕上がった。そういう表情をしていますわ」

 

ルナテレジアの言葉に、武は頷きを返した。中途半端な仕様で、衛士を殺すようなOSを出したつもりはない。なにせ夕呼、霞にイーニァが作り上げたんだから、という思いもあった。

 

「そういう意味では、EF-2000と同じだな。目的の達成に十分な性能になるように作られたって点は」

 

「……遅すぎた、とは言わないんですの?」

 

「お互い様なので、言えないかな……何も終わった訳じゃないし」

 

衛士なら、言う筈だ。まだ戦えるなら、遅すぎたなんていうのは言い訳であると。それを聞いたヴォルフガングが、「2歳でここまで違うのか」と呟いた後、武に尋ねた。

 

「色々と戦歴は聞いたが……訓練半年に実戦7年、っていうのは冗談の類か?」

 

「あー……まあ、冗談であって欲しかった類だけど、当時衛士だった人達なら噂を耳にした事があるそうで」

 

大陸で、衛士として戦っている子供が居る。まりもも耳にしていたという話で、冗談の類として流れていたものだ。武にとっては、どっちでも良かった。今更、それでやる事が変わる訳でもなかったからだ。

 

武は嘘をつかずに答え、それよりもOSの事を薦めた。背景はどうでもいい。使えるか、使えないかは、衛士として判断して欲しいと。

 

「ヴィッツレーベン少尉が言われたように、欠点もある。ただ、それを補える利点があるかどうか……ここに着目して欲しい」

 

「分かりましたわ―――背景で判断するような無能であってくれるな、とそういう事ですわね?」

 

「ははは、まさか。ただ……あの時にこれがあればアイツらは―――、なんて思う機会が減ってくれればと、そう思ってるだけだ」

 

亜大陸の時に、タンガイルの時に。後悔は募っていくばかりだ。

 

(……マンダレー・ハイヴ攻略作戦の時にこれがあれば、なんてな)

 

同期の皆は自爆しなくて済んだだろうか。無理だとしても思い浮かんでしまう。EF-2000を見上げながら考える武は、その顔を観察するヴォルフガングに気づかなかった。数秒後、ヴォルフガングはため息と共に問いかけた。

 

「怪しいことこの上ないんだが。有用ならどうして自国で独占しないのか、という点も含めて説明が欲しいぐらいには、な」

 

「その怪しさがあるからだけど」

 

「……は?」

 

武は自分を指差しながら、告げた。

 

「10歳から衛士で今までに死なずに済んだ? そんなのおかしいですよね。まあ、それにも原因があるんですよ……という事を説明する意味でもあります。この怪しさの原因を放置すると、俺らまでヤバイんで」

 

変な自分こそが、説得力の一部だ。そう告げる武は、地面を指差した。

 

「その一部がこの横浜基地。もっとも、1998年から特に変になったんだけど」

 

「……それは、リヴィエール少尉とも関連のある?」

 

ルナテレジアの躊躇いながらの指摘を聞いた武は、驚きながら頷いた。

 

「鋭すぎだと思うんだけど……フォイルナー少尉から聞いているとか……あるいは、才能があるのか」

 

より良い未来を常に掴み取れる、00ユニットとしての才能。それは量子脳とされる以前にも発揮される。リーサが最たる例だった。尋常の理屈では説明できない、勘と呼ばれるもの。その正しさと鋭さは、常識とされる範囲を越えて発揮されるものだ。

 

「ひょっとして乙女の勘、って奴ですか」

 

「そんな所ですわ……勘だけで確証に至れるほど、軍は甘くもないですけれど」

 

「まあ、根拠を提示しろとか言われるよなー知らねえけど」

 

ルナテレジアと武はふふふはははと笑い合った。その後、どうであれ、とルナテレジアがため息をついた。

 

「性能に関しては、何も文句が付けられませんわ……あのシミュレーターに関しても、導入されればどれほどの衛士が救われるのか」

 

ユーコン組も言っていた事だった。高性能かつデータが十分になった、BETAの動きもリアルに再現できるシミュレーターは、驚くほどに見事だと。8分で死ぬ衛士は劇的に減る、というのが総じての見解だった。

 

「その成果が、あの6名……それなりにあった自負が、粉々に砕かれましたわ」

 

「……そうだな。俺は落とされなかったが、危うい場面もあった。俺らがあの年の頃にあれだけ戦えたか、と言われるとな」

 

負けるとはいえないが、勝てるとも言い難い。ヴォルフガングの言葉に、ルナテレジアが頷きながら呟いた。

 

「どんな顔をして帰ればいいのか……訓練兵が乗った不知火を相手に遅れを取ったのは事実……それも年下を相手にして」

 

「……勝負は時の運でした、って訳にはいかないか。当たり前だけど」

 

B分隊に才能があった、というのも説明にならない。人は事実だけを見るからだ。その点は欧州に帰った後にアルフレードがフォローに入ると武は聞いていたが、励ましのために明るい展望を話した。

 

「OSの性能を見せつけた上で説明すれば大丈夫だ。思うに、ヴィッツレーベン少尉は特に新OSによる戦闘能力向上の度合いが大きそうだし」

 

「ほう……でまかせじゃなさそうだが、その理由は?」

 

「思い描く機動に、機体が追いついてくれるから。少尉の操縦は荒っぽいけど、原因は操縦と機体反応の差だろ?」

 

操縦者の反射と機体の反応に差があるから、各部関節や電磁伸縮炭素帯(カーボニックアクチュエーター)が設計者が意図しなかった動きをしてしまう。理想の機動が頭の中にあるのに、機体の性能を十全に活かそうとしているのに、あちらこちらで齟齬が出てしまう。その結果から、ルナテレジアの機体には負荷が余計にかかるのだと武は自分なりの推測を話した。

 

「新OSは、その補正もしてくれる。初日に比べて各関節部の負担は減った、って整備兵から聞かされてないか?」

 

「……ええ、昨日に報告を受けましたけれど」

 

「それが証拠。蓄積データと機体の各部品の連動、そこに明確な食い違いがある場合は、自動的に補正されるようになってんだ。いや、元からそういうのはあるんだけど、更に補正を加える感じで」

 

武は、あちらの世界のイーニァが組み立てたOS補助機能を説明した。あちらの世界のルナテレジアの動きを見たユウヤが提案し、武が理論を補正した結果から生まれたもの。それは衛士それぞれが持つ独特の癖による機体の負担を、可能な限り低減する仕組みだった。夕呼特製のCPUがあって初めて使えるようになるぐらいに容量を食うが、一部の衛士には特に有用となる機能である。効果が無い衛士が居ることや、効果がキャンセル、コンボに比べれば地味なため、説明会では省略されていた。

 

まさか、と思うツェルベルスの二人だが、武は自信満々に答えた。

 

「今日の少尉の動きを見た所、損耗率はこの程度だろ? 最初から比べたら……恐らくだけど、10%は下がってる筈だけど」

 

「……少し、聞いてきますわ」

 

ルナテレジアは駆け足で自分の機体の近くに居た整備兵の元に行った後、興奮した様子で帰ってきた。

 

「―――ブラウアー中尉!」

 

「お、おう」

 

「これは画期的な発明ですわ! 急いで導入するよう、上層部に掛け合わなければ!」

 

「待て、ルナテレジア。その興奮振りを見ると、まさか………?」

 

「班長が、珍しくも上機嫌でした!」

 

「いや、どれだけ迷惑かけてんだ」

 

思わずツッコンだ武だが、無理もないかな、とも思っていた。第三世代機は高機動な分、関節部に負担がかかる。まだベテランの域にないイルフリーデ、ヘルガローゼからも荒っぽいと言われているルナテレジアの機体を担当する整備班の苦労を考えると、この成長は毎日の食事が1段階グレードアップするに等しいものと受け止められてもおかしくはないからだ。

 

「負担、か。でも、そっちもかなり機体をぶん回してたけど」

 

「ああ……よく言われるけど、アレはアレで考えてるから」

 

武は自身の部品の損耗速度を告げると、ヴォルフガングは驚き、まさかと答え。ルナテレジアは、冗談はおよしなさって、と変な言葉で笑顔を返した。

 

「いや、こんな事で嘘ついても仕方ないし……そういや、さっき受け取った報告書だけど」

 

武は見せても問題がない部分だけを開示した。それを見た二人が、信じられないものを見た目を武に向けた。武は、自信満々に答えた。

 

「タンガイルの少し前に、F-5に乗せられてたせいでな。機体に負担をかけないの、癖になってるんだ」

 

何故かというと、あの時は下手をすれば戦闘中に機体が壊れかねなかったから。それでも戦わざるを得ないという状況が続いた結果、いつの間にか脳味噌がそうした操縦をするように自動的に動くようになった、という武の答えに、ヴォルフガングはそう言えばとアルフレードから聞いた話を思い出していた。

 

「整備の状態は生身でも見ておけ、って言われた事があったが……」

 

「それは別口。アルフは元居た場所で、整備兵の手抜かりがあって死にかけた事があったみたいだ。で、悪い状態のF-5に乗り続けた結果、トラウマが悪化したみたいだな」

 

アルフレードの事は置いても、F-15Jが来た時には全員で拝んだなぁ、と遠い目をする武にはスゴ味があった。末期的状態の機体を何度も操縦した衛士にしか出せないものが。

 

「それにしても、機体に関する深い造詣がなければここまでの負担低減は不可能ですわ……中佐は、戦術機開発に関する知識にも?」

 

「ああ、親父とかクリスの影響で。10歳ぐらいから徹底的に叩き込まれたし、並以上にはあると思う」

 

開発などの発展する形には無理だが、既存機体の知識に関しては最も記憶力が高くなる時期に色々と叩き込まれた。整備にも自発的に参加する事があったし、平行世界では整備兵が足りない場面もあり、色々と学ぶ機会もあった。そのため、それなりには分かると武が答え、ルナテレジアが視線を更に輝かせ、ヴォルフガングがぎょっとした表情になった。

「……あ」

 

「……その顔は、知ってるな」

 

「……ブラウアー中尉、お助けをば」

 

「無力な俺を許せ」

 

ちゃっ、と手を挙げて去っていくヴォルフガング。武も同じように手を挙げてさり気なく去ろうとするが、ルナテレジアに思いっきり掴まれてしまった。

 

「―――何処へ行こうというのですか、中佐?」

 

「いや、その、ちょっとそこまで………あ」

 

武はそこで、こちらに歩いてくる清十郎の姿を発見すると、手招きで誘き寄せた。清十郎は嫌な予感がする、といった風な表情をしながらも武達が居る場所までやってくると、ルナの表情を見て顔をひきつらせた。

 

「……どうやらお取り込み中のようなので、自分は失礼させて頂きたいのですが」

 

生真面目な清十郎は中佐である武に言葉を向けた。無断で姿を消さない、若さ故の行動だった。武はにやりと笑い、清十郎に告げた。

 

「いや、積もる話もあるようだしな。欧州で研修中に会ったんだろ? 成長具合とか、色々とお世話になった相手に報告するのは義務じゃないかと思うんだが」

 

「……それは、そうですが」

 

清十郎は答えながらも、ルナテレジアの視線を近くで見て確信した。これあかんやつや、と。具体的には徹夜寸前まで戦術機の事を語られた時に似ているが、それ以上に“嵌って”居ると見抜いた。

 

武は、清十郎の観察結果を見て、自分の戦慄が勘違いでないことを知った。そして、脱出するための行動に出た。清十郎を更に近づかせ、耳打ちをしたのだ。

 

『おっぱいのおっきいおねーさんと一対一だぞ、青少年。何を躊躇うことがある』

 

『その手には乗りませんよ、中佐。介六郎兄より聞いておりますので』

 

不測の事態が重なった結果、介六郎から連絡が来たという。具体的には武の経歴とか。その後、色々と世の理不尽を学んだ清十郎は、訓練の日々の後、悟った。割と全員、普通の枠では捉えきれない人物ばかりだと。

 

『故に、油断は禁物。旨い話には裏があると古来より……というか自分、欧州で一度経験していますので』

 

『なら助けてくれたっていいじゃないか。つーかこの鳥肌を見ろ。今回はマジでやばそうだぞ』

 

『日本語で言って下さい、中佐……たしかに、以前より破壊力は増してそうですが』

 

『分かってるよ。掴まれた腕がめっちゃ痛いしな……』

 

ひそひそと話し合う二人だが、タイムリミットが訪れた。

 

ルナテレジアが笑顔のまま告げたのだ。

 

―――お話は済みましたか、と。その声を聞いた武は、この手は外せそうにないな、と思い観念しながら答えた。

 

「部屋を用意させます」

 

そうして、手が離れたと同時に武は答えた。

 

「真壁少尉もお話があるようなので、椅子を三つと机を一つ」

 

「ちゅ、中佐―――むぐっ!?」

 

武は離れた手を含め、両手で清十郎を拘束した。サーシャの動きを模した関節技に、清十郎は完全に動きを止められた。口も押さえられて言葉を発せない清十郎はそれでも抗議をするが、むーむーと言うだけで、それを聞いたルナテレジアが首を傾げた。

 

「白銀中佐、清十郎君が何か言いたそうにしていますわ」

 

「少尉と再会できた事に、改めて感激しているんでしょうきっと」

 

しれっと答える武。それを聞いたルナテレジアが、笑顔とともに喜んだ。

 

「それは嬉しいですわ……私も、イルフィに関してお話したい事がありましたの」

 

ルナテレジアの言葉に、清十郎が硬直した。それを見た武が拘束を解くと、清十郎は武に対して恨めしげな顔をしながらも、小さく頷いた。

 

「はい……お供します。中佐には、後で色々とお話がありますが」

 

「互いに生き残っていたら、な」

 

武は笑顔で親指を立てた。清十郎は今までの人生で三番目ぐらいに苛立ちを覚えたが、イルフリーデの顔を思い浮かべると、ため息を零した。

 

―――30分後。武が用意した部屋で3人が言葉を交わしたが、既に二人になってしまっていた。具体的には、清十郎が机に突っ伏したまま、白くなっていた。

 

原因は、欧州で最後に別れた後にルナテレジア、ヘルガローゼと話していた内容を少しだけ清十郎に教えたから。イルフリーデが清十郎の年齢を勘違いし、10歳やそこらと思っていた事などを伝えると、少年は呆然とした後、ぶつぶつと呟いた後、硬直して倒れ込んだのだ。

 

武は、そのままだと風に乗ってどこかに飛んでいきそうな清十郎を見て、呟いた。

 

これはひどい、と。

 

「……どこかで、お前が言うなと聞こえた気がしましたわ」

 

「幻聴ですね。で、既に脱落者が一名出たんだけど」

 

「本番はこれからですわ、中佐」

 

「ですよね」

 

武は諦めて、ルナテレジアの話を聞いた。XM3の有用性から、各国の機体にどのように反映していけば良いのかという討論、そして新機能の応用範囲まで。内容は充実したもので、武にとってもプラスになるものが多かった。

 

武は途中から、「どうせ発見されたらどうしてか怒られそうだし」という言い訳で自分を誤魔化し、夕呼に連絡を入れた後、徹底的に討論する事にした。いつの間にか、清十郎がヴォルフガングに連れられて退室した事にも気づかないまま。

 

そこまで熱中したのは、政治的なものが含まれない、純粋な技術畑の話だったから。そうして食事の時間になった後は、食堂に場所を移して討論は続けられた。

 

そうして、夜中になって一通りを話し終わった後、それまでに交わした言葉から、武はルナテレジアがどういった目で戦術機を見ているのか、分かったような気がしていた。

 

「……ユーコン基地でも、色々と見たけど」

 

「え?」

 

「作り上げられた戦術機。あれは、各国の技術の結晶だった」

 

開発者、経緯、コンセプトに出来上がった造形、塗装に至るまで様々種類があった。武はブルーフラッグに出ていた機体を、戦い振りを思い出し、告げた。

 

「涙と汗だけじゃない、血と臓物まで捧げられて精錬された、国民の希望たる刃。その国の歴史まで反映された、国旗に等しい誇りある巨人……だから、少尉は戦術機が好きなんですね」

 

クリスティーネは言っていた。この星を壊す異星の怪物を倒すために、鍛え上げた技術に魂さえ捧げることを求められている。これ以上の誉があるか、と。

 

同じ想いか、似たような決意を皆が持っているのだろう。唯依が、祐唯が、ユウヤが、父・影行が、それだけじゃない、参加した全員が守りたいものを守るために、自分の中にある想いやセンス、知識を惜しむことなく開発に注いだ。

 

―――故に、心を奪われた。心血を注がれた日本刀を見た者と同じで、ルナテレジア・ヴィッツレーベンは戦う機能が組み込まれた芸術品として、戦術機を見ている。それも、世界規模に膨れ上がった、開発の競争が進んでいる日進月歩のものとして。端的に告げられた内容に、ルナテレジアは一瞬だけ言葉に詰まった後、徐に答えた。

 

「……そうですわね。国が、人が、全てを出し尽くした上で生み出されるもの。その結晶は―――戦術機は、宝石よりも尊く美しいと、そう思いますわ」

 

あくまで主観的に、されど心の底を抜けて魂までそう思っている。ルナテレジアは答えながら、笑顔を武に返した。

 

「後学までに聞いておきたいのですが、それに気づかれた理由は? やはり、肉親に開発者が居るから、でしょうか」

 

「それもあるけど……ターラー教官が古銭を集めていたから、かな。コレクターじゃないけど、古い硬貨とかを収集する理由とか」

 

武に芸術は分からない。だが、芸術に似たものに何かを見出している人は知っていた。その人の言葉も覚えていた。硬貨、貨幣とは、経済が発展した事を報せる“狼煙”である。人が、経済を発展させるための試みである。

 

経済とは、即ち生活環境を整えていかんとするための考えであり―――生きていく上で、より水準を高く、上を目指そうとして作られたものの証であると、武はターラーから教えられていた。

 

「飢饉、疫病や戦争……色々あったけど、諦めない。更に上へ、上へと賢くなるために、多くの人が死ななくて済むようにと誰か考えた事の証明になる……その一端を学び取ることができるから、集めるんだって」

 

いくつもの国が蹂躙され、歴史的なものが失われたとしても、私達はここに残っている。その証が欲しかったから、とも言っていた。

 

「とんでもない失政をするか、他の国に滅ぼされたりもして……なんて国もあるとは冗談でも言ってたけどな。それを思うのも一興だって笑ってたから」

 

物に見出す価値や想いは、人それぞれによって異なる。ルナテレジアは、戦術機を元に技術者達の誇りや歴史、工夫の見事さや開発経緯、その背景までを想い、楽しんでいるような。武は思ったとおりの事を告げると、ルナテレジアは少し黙り込んだ後に、尋ねた。

 

「……中佐は、道楽だと思われますでしょうか。貴族の傲慢として」

 

「それこそ言うよ。まさか、ってな」

 

途方もない試験や工夫、時間と苦労を費やしても、熱意が無ければ駄作に成り下がる。それらの背景を、生み出された経緯さえも忘れて、一方的に偉ぶる衛士が居るのに比べれば、逆に喜ばしいくらいだった。

 

「親父の背中を見てきているのもあるし……むしろ好きだ、少尉みたいな人は―――ってどうしたんだ、顔を赤くして。あ、話に疲れたからとか?」

 

「……いえ。人によっては嫌われると、そういう覚悟もしていましたから」

 

赤くなるのは別として、まさかそういう答えが返ってくるとは思わなかったルナテレジアは、小さくため息をついた。

 

「人の心血と叡智が集結し、魂がこめられている芸術品。その部品に至るまで、考え抜かれたものが使われています」

 

異星より現れた暴虐から世界を救うために、と。かつて、これほどまでに世界で共通して願われ、作られたものがあるだろうか。ルナテレジアは、否、と思っていた。

 

「だからこそ、心惹かれるのです。人と機体が一緒になり、戦うその姿に見惚れてしまう……美しく、雄々しい勇姿に」

 

だからこそ、憧れた。戦術機というものに、込められている美しいものに。武は、その言葉に深く頷いた。作っている者達の想いを、夢を間近で見てきたからだ。

 

「俺も、そうだ。そして、その期待を裏切りたくないと思っている。馬を機に変えて、古くに言う人機一体。全力で、BETAを潰すために」

 

武の言葉に、ルナテレジアも頷きを返した。そして、と操縦について語った。

 

「だからこそ、自由に……能力の限界まで機体を振り回したくなるのですわ。その十全を、更に向こうを見たくて」

 

「あ、そこは駄目だと思います」

 

はっきりと、武は告げた。空気が凍る中、場の流れってなにそれ食べられるの、とばかりに無視して告げた。

 

「ぶん回しても壊さない工夫が必要かと。それで機体を壊すか、損耗させるのは下手くその言い訳だ、って言われた事ない?」

 

「……ありますけれど」

 

「整備兵に負担をかけるのもなー。そういう点で言えば、貴族の傲慢っていうか……あ、これはあくまで主観的な話だけど」

 

怒ったかな、と告げる武に、ルナテレジアは笑顔のままいいえと答えた。あくまで優雅に、穏やかに、内面の炎は包んで隠したまま。

 

「……そう言う中佐も、ご自分の機体に大層な負担をかけられているように見えるのですけれど?」

 

あのデータは嘘でしょう、と言外にルナテレジアが告げるが、武は肩を竦めながら大げさな仕草で答えた。

 

「あれが真実であると信じられないとは、人間は悲しい生き物だな。でも、少尉を騙して俺に何の得が?」

 

少尉程度を騙した所で利益があるのか、そもそもそんな手間をかける必要があるのか、と武が言外に示した。

 

そうして、二人の間に見えぬ火花が咲き誇り。

 

どちらともなく立ち上がると、告げた。

 

「この後、お時間は?」

 

「問題ない。30分もあれば終わるからな」

 

うふふふげはははと笑顔をかわし合う二人は、真顔になりながら告げた。

 

「―――上等ですわ、受けて立ちます」

 

「おやおや、お汚い言葉をお使いになっていいのですか、ヴィッツレーベン少尉」

 

「ええ―――下手な敬語を聞くよりかは」

 

「……上等だ。一定コースを全力走破、そのタイムと部品の負担率を競う勝負で?」

 

「異論、ありません……ああ、ハンデは要りまして?」

 

「こっちの台詞だっての」

 

 

互いに慇懃無礼に、少しの言葉の汚さは味付けして。決闘の手順を済ませた二人は、シミュレーターに向かった。

 

―――30分後、シミュレーターの前で崩れ落ちて落ち込んだルナテレジアと、勝ち誇る武が発見された。

 

その後、勘違いをした清十郎が斯衛の誇りを取り戻すためにと、武に向けて徒手空拳で挑んだ戦いは、斯衛16大隊に語り草になったという。

 

 

 




取り敢えず、集合編はこれでおしまい。
次回から、また事態は動き始めます。

ルナの戦術機好きの理由とかは、原作の一文から連想してます。
コレクター的な要素と一部拘り(馬の血統とか、骨董品の歴史的価値と背景とか)も含まれていそうだな、と思って。

●あとがきの1

武「いや、徹夜で戦術機話をするよりはマシかと思って。嘘は言ってないし」

樹「スナック感覚で衛士のプライドを折るのはやめろ。ほんとに」

武「いや、折られて煮られても立ち上がれるような人にしかやらないし」


●あとがきの2

真耶「……殿下?」

殿下「真耶……何やら、出遅れたような感じがします」

●あとがきの3

光「……雨音様?」

雨音「光さま……今すぐ横浜基地に行かなければ、という声が聞こえるのですが」


●あとがきの4

介六郎「……魔境の住人は全て魔神です、か」

崇継「楽しそうだな、介六郎」

介六郎「閣下は行かないで下さいよ、フリじゃないですからね」


●あとがきの5

リーサ「あー、またオッズが変更かー」

アルフ(ボロボロ)「確定するまでは待った方がいいと思うぞ(ニヤリ」

リーサ「……懲りてねえな」

●あとがきの6

千鶴「ねえ、純夏……部屋にサンドバッグのような袋があるのは今さら聞かないけど、何をしたらこんなにボロボロになるの?」




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