私が殺した彼女の話   作:猫毛布

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短め。そして駄文回。
場面の設定甘すぎです。読みにくすぎ。いいえ、読み憎すぎ。醜悪です。

書きたい事はあるけれど挟めない……いや、鈴ちゃんの胸の話はしてません。


77.殺意の波動に目覚めた装飾品

「"ブローバック"」

「なんですか、売女。生憎その腐った股座を舐める舌も口も持ち合わせていませんが?」

「あぁ、あぁ、テメェが私に喧嘩を売ってる事はよくわかった」

 

 某所にて鋭い目つきで茶髪を流した女性が苛立たしげに頭を掻いた。その視線の先には赤目白髪の美女が涼しい顔で茶髪の女性を見ている。

 

「スコールが呼んでるぞ」

「ああ、そうですか。適当にあしらっといてください」

「……テメェ、雇われの分際で」

「アナタも怒られるついでにお仕置きされるじゃありませんか。一石二鳥、さっさとご主人様に尻尾でも振ってきなさいな。駄犬」

「…………」

「あぁ、それとも餌を与えられないと餓死する糞蜘蛛と呼びましょうか? あぁ、可哀想です。人に与えられなければ餓死してしまうなんて! 可哀想なオータム! アハッ」

 

 バツンッと何かが切れた音がオータムの耳に響き、歯を鳴らす。

 同時に自分の手を何者かが掴み振り返る。美しい金髪が揺れ、素晴らしいバストを併せ持った、好き勝手に美貌を集めた様な女だ。

 

「駄目よ、オータム」

「あぁ、土砂降りさん。駄目ですよ、オータムをワタクシの所に寄越したら。勢いに任せて殺します」

「ハッ! テメェに私が殺せるのかよ?」

「試しますか? あぁ一度しか試せないのが残念です。何度も何度もグチャグチャに潰したいですが。アナタの命は一つですもの。たった一度で我慢してあげます」

「上等だ!」

「オータム」

 

 スコールと呼ばれた美女の一声にオータムが止まる。そのまま自身の怒りに蓋をして、"ブローバック"を睨みつけている。

 それに対しても"ブローバック"は涼しい顔をして無視を決め込んでいる。対して抑えたスコールは呆れた顔をしている訳でもなく、クスクスと面白そうに笑んでいる。

 

「彼女、怒りっぽいの」

「ええ、知ってますよ。だからこうして弄くり回しているんです」

「テメェ……」

「駄目よ。それは私だけの特権だもの」

「あぁ、あぁ、そうですか。趣味の悪いことで」

 

 ため息を吐きだした"ブローバック"はスコールから視線を外す。外した所でスコールが笑みを深くして口を開いた。

 

「そういえば、"ルアナ・バーネット"の事だけれど」

 

 瞬間にスコールの頬に風が当たる。喉元突き付けられるエストック。それを辿れば真っ赤な瞳がスコールを貫いている。

 

「その名前を言わないで貰えますか? 雇い主でも壊してしまいそうです」

「……失礼。では、彼女の事だけれど。どうして生きているのかしら?」

「……」

 

 "ブローバック"はエストックを消して溜め息を吐きだす。スコールは重ねるように言葉を続ける。

 

「元々、依頼としては彼女を消す事だった筈でしょ? それがどうして生きているのかしら?」

「ワタクシはルアナ・バーネットの消去を依頼されただけですが?」

「……どういう事か説明してもらいましょうか?」

「元々、ルアナ・バーネットという人格など存在していなかったのです。あれはお姉様が作り上げた幻想でしかないのです。

 そもそもお姉様がそこにいる蜘蛛程度に負ける訳がありません」

「あぁ!? 言いやがったな!」

「ええ、何度でも言ってあげましょう。手前程度の雑魚にお姉様が殺される訳ないでしょう? ルアナは殺せてもお姉様は殺せませんよ」

「あー、あー……いいかしら?」

「何か?」

「アナタの中でルアナという人物と彼女は別物なのかしら?」

「ええ。当然です。 お姉様があのクソビッチから来る名前を名乗ってる事すら忌まわしいのに……あぁ! お姉様! 早くワタクシと愛し合いましょう! 今度こそお姉様に殺されてあげます! 今度こそお姉様を愛してあげます! あぁん! アハッハハハハハハ!!」

「あぁあ、始まった……いいのか? スコール」

「止めても意味ないから放っておきなさい」

 

 スコールは頭を抱えて溜め息を吐きだしてオータムは疲れたように声を出した。高笑いの声が聞こえる部屋から出てしっかりと声の漏れない様に二人は扉を閉めた。

 閉めて数秒ほどして、笑い声が止む。

 

「……ワタクシが殺してあげます。お姉様」

 

 

 

 

 

◆◇

 

 

 

 織斑一夏はげっそりとしていた。

 寮の門限ギリギリまで師事しているお姉様に甚振られ、更に自分よりも後に出ている筈なのに寮の自室に待機しているお姉様が裸エプロンでお出迎えしてくれる。もっと言えばお姉様が準備した栄養バランスの素晴らしい夕食に舌鼓を打ち、お姉様がマッサージしてくれと強請る物だからその柔らかい臀部へと手を這わせ、青少年的には気が気でないそんな生活を送っていた。

 決して生気を……セイキを吸われた訳ではない。この小説はあくまで健全な小説なのだからそういった描写は入らないのである。

 そもそも鬼畜……水色の素敵な学園最強のお姉様の裸エプロンはエプロンの下に下着を着けているのだ。アリである。いや、誠に正統ではないのだ。誠に遺憾である。

 

「大丈夫……?」

 

 そんな一夏の隣を確保していた更識簪はげっそりとしていた一夏へと声を掛けた。

 一夏の視界は瞬く間に輝きを取り戻し、思わず天使が舞い降りたのかと錯覚した。このご時世の軟派男でもそこまでのポテンシャルは秘めていないだろう。

 

「あら、一夏クン。マダ元気ソウネ!」

 

 ジーザス、クライスト! 一夏は叫びそうになった。ガッデム、天使は鬼の愛妹なのだ!

 

 

 冗談はさておき。

 ともあれ、一夏はげっそりとしていた。

 隣にいる簪とペアを組むと発表して数日。まるで針の筵に座っているようだった。

 度重なる冷遇。事あるごとに竹刀で自分を叩く幼馴染。自分に殴りかかってくる幼馴染。挙句に常識人と思っていた友人からは冷たい視線を浴びせられる。自分の事を嫁と呼び慕ってくれる人物も何処か警戒している。

 

 あれ? いつもと変わらないのではなかろうか。

 ふと疑問に感じたがきっとそんな事はないだろう。そうである。自分の普段がこの様に苛烈な訳がないのだ。

 

「そう、そんな訳ない!」

「ッ!? お、織斑君……?」

「あ、悪い。なんでもない」

 

 突然声を出した一夏に怯えた簪。一夏も一夏でよく分からない電波でも受信したのか、今となってはどうして自分が叫んだのかを忘れてしまっている。ソチラの方が幸せであるのだから仕方が無い。

 

 一夏と簪はペアになったのだ。

 決して愛する二人になった訳ではない。そうなったならば一夏にはお姉様が簪には幼馴染達が寄ってくるのだ。ありえはしない。

 先に控えるタッグマッチでの共闘者として二人は名前を連ねているのだ。

 戦いに置いて相手よりも自分を知るのは定石であり、加えて言うなら共闘するのだから仲間の行動を知る事もこれまた定石なのだ。

 そう呟いたのは一夏であり、一夏もどこか照れくさそうに「ルアナの教えだけどな」と呟いて二人して落ち込むという事件があったけれど、ソレはどうでもいい。

 そんな二人の出来る事だ。

 更識簪の駆る【打鉄(ウチガネ)弐式(ニシキ)】。まず特筆すべきは独立稼動型誘導ミサイル、通称《山嵐》だろう。六機、八門、計四十八機のミサイル達が搭載されたマルチ・ロックオン・システムにより相手を狙い打つ事が可能だ。

 更に連射型荷電粒子砲、《春雷》が二門。こちらは彼女のお姉ちゃんが頑張ったのか実働データも込みで中々素晴らしいスペックである。はっきりお姉ちゃん頑張りすぎである。

 そして近接も劣る事はない。対複合装甲用超振動薙刀《夢現》。

 ミサイルの嵐と荷電粒子砲の雷を抜けたとしてもソコは果たして夢か、現か。

 

 ともあれ、元と成っている【打鉄】よりも防御面で劣っているがその分速度へと変換されている【打鉄弐式】。全距離対応出来、必殺となる一撃も牽制用の武装もある。

 

 

 対してペアである織斑一夏駆る【白式】。

 武装など最早言わずとも良いだろう。彼の出来る事など金輪際変わる事などないのである。

 荷電粒子砲など誰が積んでやるモノか。零落白夜付きのBIT兵器など誰が積むモノか!

 

 そうして二人の出来る事を羅列した結果、一夏は泣いた。

 俺の出来る事少なすぎ! なんて口元を押さえて驚いた。何を今更だ。

 それでも一夏には誰も捕らえられない速度がある。ソレがあるのだけれど、実際タッグマッチとなるとソレはある種の重しだ。

 想像して見てほしい。相手へと向かう勇ましい一夏の姿を。あぁ、なんと格好の良いコトか! その速度は音も光も置き去りにして、唯一自身の極光の刃だけが色を持ち、相手へと滑らせるのだ!

 そしてその一夏の後ろからはミサイルが迫るのだ。なんという事か、一夏は格好いいだけではなく、恰好の的へと変化したのだ。

 

 ミサイルを先に持ってきても大差は無い。どの道一夏は爆煙に突っ込むか、或いは奇襲に専念しなくてはいけない。

 けれど一夏の能力は既に知られているのだから警戒もされる。決して姿を消せる訳ではないのだから、回避もされるだろう。

 ドコかの金髪少女もやったが一夏はハッキリ言えば最高の囮になるのだ。必殺の剣? 敵に情報知られた時点で一夏の腕では触れる事も難しいだろう。

 

 結論。

 

「もう簪一人でいいんじゃないかな?」

「ぐっ!」

「しゃ、シャルロット……ダメ、だよ……ホントの事言っちゃ」

「…………俺って簪さんに嫌われてるのか……そっか、そうだよな」

「ぇぇ!? そ、そんな事…………ない、よ?」

「…………」

 

 全ては間が物語っていた。更に言えば目を背けた簪が全てを語っていた。

 一言だけ言いに来ただけなのか、シャルロットは満面の笑みでペアであるラウラの元へと戻っていく。ラウラは呆れた顔をしていたが相方の素晴らしい笑顔を見て、余計にその気持ちが強くなった。

 

 四つん這いになって落ち込んでいる一夏に影が差す。

 見上げれば紫銀の髪がライトに透かされて、一夏を心配そうに見つめるバーネットの姿。

 

「だいじょーぶ?」

「あ、あぁ……」

 

 心配された事が分かり、一夏は腹に力を入れて立ち上がる。

 バーネットちゃんに心配させてはいけない。紳士である一夏はなんとか笑顔を作り、バーネットを安心させようとする。尤も、顔色は悪いのだけれど。

 

「問題ないさ。受け継ぐ代紋も無いしな」

「ふぇ……」

「一夏くん、面白くないわよ」

 

 一夏の言葉にポカンと口を開けてしまうバーネット。そしてしっかりと面白くない、と忠告する更識楯無は呆れた顔である。

 ポカンとした顔は満面の笑みへと変換させるバーネット。決して面白かったとかそういう訳ではない。

 

「頑張ってね! お兄ちゃん!」

 

 一夏の目にはバーネットの笑みに花が咲いた。タンポポとか、暖色系の花が笑顔の周りに咲いていく。

 なんと、なんと素晴らしい事なのか! やはり天使はこの世界に居たのだ!!

 思わず両手を広げた一夏の目の前に薙刀が振り下ろされた。輝く刀身に一夏の顔が映る。

 刀身を辿ればいつものオドオドとした表情はドコへ消えたのだろうか。笑みを携えている更識簪が存在する。コチラは花ではなくて、何か鬼の様なものが幻視するが。

 

「あ、あの、簪さん?」

「織斑君。早く訓練に移ろうか?」

「え? ど、どうしてミサイルを構えてらっしゃるんで?」

「的は狙うモノだから?」

「あ、ァァ、荷電粒子砲まで充填して……ちょいと待ちなさいな更識さんや」

「ほら、訓練を始めましょう。織斑君。今ナラドンナ早イ的デモ打チ落トセソウ」

「アッハイ」

 

 後に一夏は「簪さんは怒るとヤバイ。切れた時のシャルロットよりも怖い」などと口走るのだけれど、それは数十分後の話になる。




>>遅刻の理由
 風邪が書き手を襲い、頭痛が書き手を蝕み、書き手が狩人生活に勤しんでいたから。最後が大体悪い。

>>殺意の波動に目覚めた簪
 その後、一夏の姿を見たものは誰もいない。

>>そういった描写は入らない!
 入れた事は無い。イイネ?

>>後背位パンチ「ワタクシが殺してあげますわ(真顔」
 タッグ戦で詰め込む予定。全て書くのは一夏編までの繋ぎですかね。

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