色々錯誤してコレです。救い様が無いネ。
そして短めだというグダグダさ。
……ま、まあテンプレだから読まなくても問題は無いんじゃナインデスカネ?
ケーキを持って戻ってきたルアナが見たのは、随分とごった返しになってしまった『ご奉仕喫茶』であった。
面倒そうにソレを見て、素知らぬ顔でまた簡易調理場へと引きこもろうとした所、ちょんまげ娘こと篠ノ之箒に捕まったのだ。
腕をしっかりと掴まれ、それはそれは面倒そうに箒の顔を見たルアナは以前の箒にもわかりやすいように溜め息を吐き出した。吐き出した溜め息に対しての箒はサボっていた事に激昂する訳でも、咎める訳でも無く、「わかっている。わかっているのだ」と態々呟いた。
「まあ、聞いてくれ、ルアナ」
「絶対、嫌」
「では見てくれ、ルアナ」
「ちょんまげ娘が割烹着じゃなくてメイド服を着てる」
「いいや、そっちじゃない。状況だ」
「………………私は仕事をした」
「ああ、そうだ。お前は仕事をした。ソレは知っている。知っているが、頼みがある」
「………………」
それこそルアナは掴んでいる手を取り、そのまま相手を転ばせてしまおう。そう考えたが、生憎相手は『篠ノ之』である。恐らく、リミッターが作動するだろう。
そんな事を知ってか知らずか、篠ノ之箒は真っ直ぐとルアナを見つめて、口を開く。
「接客を手伝ってくれ」
ついに出てしまった言葉にルアナは深い溜め息を吐き出した。掴まれていない手で額を抑えて、瞼を伏せた。
色々と言いたい事はある。
仕事をした事を了承している点は……まあ、いい。そもそも、接客態度どころか人間的に欠損していると自称も他称もされている自分にどうして接客を頼むんだ。ハッキリ言って、正気じゃない。
そう考えてから目の前の存在を改めてみれば、なんてことはない。篠ノ之箒なのだ。そう、篠ノ之である。あの奇天烈怪奇な
ルアナは口をへの字に歪め、眉尻を下げた。ジト目を少しばかり鋭くして、もう一度溜め息を吐き出した。
どのみち、篠ノ之からの頼みなのだから断り様がないのである。けれど、少しでも利点を増やしておくことに越したことは無い。
「購買のパンを一ヶ月分」
「……半月ではだめか?」
「じゃあソレで」
コレで契約として扱う事が出来る。ルアナはそう考えて心の中で悪そうな笑みを浮かべる。当然、表情には不機嫌そうな顔を貼り付けてはいるが。
腕を離され、淡々と簡易調理場へと戻っていくルアナを見ながら、ホッと安堵の息を吐き出した箒。一ヶ月が半月になったことに油断しているが、そもそもルアナの消費量を考えると、彼女の未来は随分と財布の軽い未来になってしまうだろう。
尤も、気付いてはいないけれど。
「やはり、そういった格好が似合うのだな」
「黙れ、ちょんまげ娘」
箒の前に姿を現したルアナはしっかりとメイド服を着込んでいた。調理場に居たフランス出身の誰かがきっと用意していたに違いない。
人形の様に整った顔にメイド服を着せれば随分と絵になってしまい、まるで絵本か何かから飛び出てきた美少女の様だ。尤も、その瞳は至極面倒そうにジト目であることを除けばだが。
しっかりと箒の目の前で溜め息を吐き出したルアナはもう一度辺りを確認する。
一夏は休憩で消えていて、加えて同時に休憩と取ってるクラスメイト達が増えてしまい、結果として客に対しての奉仕者が少ない、という状況である。
もう少し考えて休憩を組めばいいモノを……。改めて溜め息を吐き出してルアナは不機嫌な顔に笑顔を貼り付けていく。
ルアナの正規の休憩時間は『灰被り姫』が始まる少し前だ。そこまでは一夏に対しての面倒も起こらないだろう。起こったとしても、付近にセシリアやラウラが恐らく居る筈だろう。
『灰被り姫』が始まれば、楯無と共闘し襲撃者を捕縛。襲撃者は一人であるらしいし、仕事としては簡単なモノだろう。
頭の中でしっかりと予定を立てたルアナは表情に笑顔をしっかりと貼り付ける。
本性さえ知らなければ天使とも見紛う綺麗な笑顔を浮かべて、ルアナは今しがた入ってきた客に対して頭を垂れる。
「おかえりなさいませ、御主人様」
◆◆
「……チッ」
メイド姿のルアナは舌打ちをしながら廊下を歩いていた。時間にしてそろそろ『灰被り姫』は始まってしまう。
接客メンバーが戻ってきて、早々に立ち去ろうとしていたルアナ。そのルアナを止めたのは調理班のメンバーである。人数が足りないので少しだけ手伝ってほしい。という頼まれ事であり、正直な話を言えば、ルアナはソレに応える必要など無かったし、必須という事でもなかった。
無視すれば終っていた話だったけれど、ルアナの肩書きは一応『調理班筆頭』である。本当に名ばかりではあるけれど。
強引に逃げ出す手段もルアナは選択できた。ソレを
すれば余計に面倒になる事も予想は出来た。
ルアナはわかりやすく溜め息を吐き出して、休憩時間を十数分程削りフライパンを握り、時間は今に至る。
着替える時間も惜しいが、学園祭に訪問した一般客を抜けて走る事も難しく、結果としてルアナは廊下を歩くという選択を選ばざるを得ない。
ルアナが走り、誰かに一寸でもぶつかれば【ルアナ・バーネット】としての責任が掛かり面倒なのだ。歩けば間に合う時間であることが幸いし、窓から飛び降りるなんて行動もしなくていい。
「…………?」
そう考えたルアナがふと足を止める。
誰かに髪を引かれた様に、違和感を覚えて後ろを振り向く。当然、誰も居なければルアナの髪を引っ張った手も無い。
違和感は疑問になり、先ほどの感覚を思い出す。
ネットリとした何かが首筋に当たる様な、髪を引っ張るような、不快感。
ロシアン・ルーレットの当たりを感じる時に似ている。そう判断したルアナは更に疑問に思う。
言ってしまえば、命に関わる様な『嫌な予感』。予感は予感でしかなく、けれどルアナにしてみれば確信にも似た予感だ。
けれど、自分の命に関わる、なんて今に起こる事なのだろうか。コレだけ周囲に人間が居て、ハイパーセンサーを用いてもルアナを見ている存在など『メイド服を着た美少女』を見ている好奇の視線だ。
では、この予感は何だと言うのだ。
ルアナは疑問に思いながらも、『灰被り姫』の為に一歩、足を進める。不快感が強くなる。
不快感を確かめる為に、それこそ自分の勘に従いソチラに向かえば済む話ではあるが、ソレに費やす時間は最早無い。
一夏か、それとも不快感か。
不快感を確かめに行くならば、一夏への危害は確実に増えるだろう。わかっている危害を減らさないという事でリミッターが発動してしまうだろう。
一夏を助けに行けばリミッターは発動しない。けれど、確実に何かを失う。それこそ、ルアナにとって命にも等しい何かだ。
ルアナは瞼を伏せて、深呼吸をする。
何を迷う必要があるのだ。単なる予感ではないか。勘に近い何かではないか。
コインの裏表の様に、単なる確率論。
ルアナは瞼を上げて、今回の作戦での相棒へと通信を開く。
『ハーイ? ルアナちゃん。そろそろ始まるわよ』
「そっちには行かないわ」
『どうしてかしら?』
「嫌な予感がするの」
『一夏君のこと? 大丈夫だと思うけれど』
「違うの……上手く説明出来ないけれど、コレを否定する事なんて私には出来ないわ」
『ジンクス的な何かかしら?』
「……いいえ。本当に、上手く説明出来ないけれど……
コレは私の因果みたいなモノなの」
◆◆
空になった薬莢が地面に弾け、高い音を立てる。
白い髪にアルビノの瞳の女性が硝煙を吹き出す銃を持ちながら、ニタリと顔を歪めた。
更識簪の前にはメイドがいた。
紫銀の髪が風に揺らされ、深い青の瞳が鋭く女性を睨みつける。
銃弾の盾に使った左腕から淡い緑色の粒子を撒き散らし、ナイフを握り締め、後ろにいる簪を庇うように腕を伸ばした。
「る、アナ?」
「お久しぶりです、お姉様。けれど、少し退いてください。そこのお姉様を汚す物体を殺せません」
「……」
ルアナはちらりと後ろを見て、簪の姿を確認する。どうやら銃弾は彼女へと届かなかったらしい。
リミッターの所為で痛覚が剥かれた様に痛みがルアナを刺激する。ある程度慣れてしまった痛み、けれど決して慣れてはいない痛み。
「その物体がお好きですか? お姉様。 守る程大切な物ですか?」
「大切じゃなければ、守らないわよ」
喉を震わせ、ルアナは意外にもすんなりと出た言葉に驚いた。驚いて、自分を笑ってしまう。
そう、簪は大切なのだ。大切だから、守る。
ルアナは笑顔を簪に向けて、呼吸を正す。
リミッターでの痛みは走り続ける。今でも叫んで、苦しんで、悲鳴を上げたい。
けれど、それ以上にルアナ自身を動かす感情があるのだ。
逆手に握られていたナイフを順手へと握り直し、女性を睨む。
「"ブローバック"。何故ここに居る、なんて問答はしないわ。だって、死人に口は無いモノでしょう?」
>>"ブローバック"
白髪赤目の美女のお名前。正規的な名前ではないけれど、そう呼んでいたのでそう呼んだ。
>>大切だから、守る
ルアナにとっての簪。ルアナ自身気付いてなかった好意に気付きました。
文章でも出てますが、ある種の一蓮托生の一夏のお守りを放棄してまで助けに向かってます。
>>アトガク
この話をカットして、簪ちゃんの前にルアナ登場から書いてもソレほど違和感なかったかもしれません。
でも、ルアナが一夏を放置する場面は書かなければいけない事ではあったし。
どのみちテンプレです。テンプレ。
ここからルアナさんが"ブローバック"を倒して、簪ちゃんに好意を伝えて、簪ちゃんもルアナに好意を伝えて、一夏との問題を解決して、ルアナと簪とシャルロットのちょっとオカシナ歪な日常書いて、それでハッピーエンドです。
いやぁ、テンプレですね。
くひっ