私が殺した彼女の話   作:猫毛布

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デュノア編終了。二話で編っていうのもどうかと思うけれど。


48.しゃるろっと

 シャルロットは目を覚ました。

 上半身を起こし、ぼんやりとした視界で部屋の暗さから今が夜であることを理解した。ぼーっと部屋の壁を眺めながら寝癖の付いた髪を撫で付ける。

 ここは、どこだろうか。

 光の無い部屋であっても、自分に宛てがわれている寮の部屋なら分かる。けれどもここはその部屋ではない。シャルロットはその事を理解して、やはりぼんやりとした視界で周りを見渡した。何度見ても部屋に覚えなど無い。どちらかと言えば質素や素朴である事を好んでいるシャルロットからすれば、ある程度目が慣れて見えてくる壁の模様や自分の座っているこのベッドの意匠などは豪華だと言える。そんな部屋に常日頃住んでいる訳でもない。そもそも彼女の同室であるラウラ・ボーデヴィッヒが絶対に眉間に皺を寄せるだろう。

 色々と考えた所で答えは出なかったのか、それとも考える事が億劫になったのか、シャルロットは音を立てて柔らかい枕に頭を包まれた。

 瞼を下ろして、遠ざかっていた微睡みをもう一度呼び戻す。柔らかい布団に包まれ、体がまるで沈んでいく様な感覚。僅かに鼻腔を擽る花の香水が実に安らぐ。

 これで、先ほど眠った時の様に抱き枕があったならば更に質のいい睡眠が取れるだろう。そんな朧ろ気な記憶と思考でシャルロットの手は布団の中を彷徨う。

 幾分か彷徨い、そこに先の抱き枕が喪失している事に気付いた。無いならば、仕方ない。大きく鼻息を吐きだしたシャルロットは少しばかり顔を顰めてゆっくりと睡魔に身を任せた。

 

 任せて数秒。睡魔はシャルロットによって撃退される。

 

 慌てた様に身を起こしたシャルロットはもう一度自分の隣を確認した。そこには自分の使用していた形跡のある凹んだ枕ではなく、僅かに凹んだだけの枕が存在していた。

 急速に、まるでココが戦場だと言わんばかりに回転するシャルロットの脳内。まずは改めて状況の確認をする。豪華な調度品の数々。自分の眠っていたベッドはシルクの様な手触りで実体験から高級な物である事は確かだ。そしてそのベッドで眠っていた自分。あった筈の高級抱き枕。

 心が冷える。何処かへ突き落とされた様に背筋に何かが這う。

 何かを求める様にシャルロットはベッドから降りて、部屋に存在する唯一の扉へと歩きだす。ふらふらと揺れる体をどうにか支え、ドアノブへと手を掛けた。あっさりと捻られたドアノブ。開かれた扉と開いた空間。

 やはり、と言うべきなのか、扉の先も人工的な光はなかった。けれども月明かりと星の光だけで部屋全体は見渡せる。

 部屋はやはり豪華な造りであり、座り心地の良さそうなソファと机が存在し、大きな窓の近くには椅子が置かれ座っていた存在は扉が開く音に反応したのか読んでいた新聞からシャルロットへと視線を向けた。

 高級な人形の様に整った顔と月明かりに照らされた紫銀の髪が一層に現実離れした物に見えてしまう。加えて、妙な抱き心地の良さがあるのだ。寝惚けていたシャルロットの思考で言うなら高級抱き枕である彼女はシャルロットの姿を確認して苦笑する。

 

「髪、大変な事になってるわよ」

 

 クスクスと笑った高級抱き枕(ルアナ)はふわりと身を宙へと浮かせてシャルロットへと近付いた。余計に現実離れした存在にシャルロットは驚いてしまう。

 もしかすると、まだ夢の中なのかもしれない。

 そう思える程に高級抱き枕は幻想的で、現実味が感じられなかった。地面に足を付ける事なく、ルアナはシャルロットと目線の高さを合わせて髪を撫でていく。

 

「えっと、ルアナ?」

「何かしら?」

「ルアナ、だよね? あれ? 夢?」

「誰と勘違いしてるのかしら。残念ながら夢でも無いのだけれど」

「でも、浮いてるし……」

「PICで制御しているだけで……、とにかくシャワーでも浴びてきたら?」

 

 ふぅ、と息を吐きだしたルアナは床に足を付けてシャルロットの鼻を軽く指で押した。押された鼻を指で軽く摩ったシャルロットは何もわからないままにシャワーへと頭を捻らせながら向かう。彼女にしてみれば未だに何も思い出せない状態なのだから、仕方ないといえば仕方ないのだろうか。

 ルアナはそんなシャルロットの背中を見送って深い溜息を吐き出す。きっとすごすごと恥ずかしがりながら出てくるだろう彼女を迎える為に準備をしなくてはいけない。

 

 

 

 

 頭からお湯を浴びながらシャルロットは鏡を見つめた。そこには何ら変わりない自分の顔が写っている。

 熱いお湯が体に当たり、タイルへと流れ落ちていく様を見ながらシャルロットはどうにか頭を順調に回転させることに至れた。

 

「…………」

 

 お湯によって温められた血液が顔に集まった気がする。彼女自身がそう言うのだから、きっとそうなのだ。

 決して、デュノア本社から出て、タクシーの中で泣いてしまった自分を思い出したり。それを慰めるようにルアナに抱きしめてもらったり。どこか高級感溢れるホテルに一緒に入ってルアナにチェックインさせたり、そのルアナを抱きしめて泣きながら眠った、なんて事実は無いのだ。無いのである。

 

「なんてことを…………」

 

 そんな無かった筈の事実を思い出してシャルロットは顔を真っ赤にさせる。

 問題は抱きしめられた事、抱きしめた事。抱きしめてる間かなり甘えていた事である。特に最後がシャルロットの精神衛生的に拙かったらしい。

 髪を撫でられながら胸に顔を埋めてボロボロと泣いた記憶が沸々と羞恥心と一緒に浮かび出てくる。ルアナもルアナで普段の様に冷たく毒でも吐いてくれればいいものを決して彼女はソレをせずにただただシャルロットを受け入れたのである。そのことが余計にシャルロットを追い詰めていたりするのだけれど。

 

「それにしても」

 

 そう言葉に出して先ほどの事を思い出す。勿論、それ以前の事はしっかりと心の奥深くに鍵付きの箱の中にしまってからだが。

 窓から差し込む月光を反射する紫銀の髪。整いすぎた顔立ちであるルアナはそれこそ一枚の絵画と言っても過言ではなかったし、ふわりと浮いていた彼女はあたかも幼い女神の様でもあった。シャツを羽織っただけの姿と随分俗っぽい女神ではあったけれど、そこにはしっかりと慈愛を感じる事も出来た。

 

 そもそもシャルロットはその幼い慈愛の女神を高級抱き枕と称して抱いていたのだけれど、そんな事実は彼女の心の中に深く深く封印されてしまったのだ。

 そんな事実を自ら掘り返すという愚行をしでかすシャルロットは抱かれていた時を思い出してやはり顔を赤くさせた。抱かれていた、と言っても性的な行動は一切無く、それこそ本当に抱きしめられていただけなのだが。

 

 色々と思い出してみれば、自分は絶望の淵に立っていたのだろう。なんて随分とシャルロットは他人事の様に思い出す。親から売られた、というよりは自分よりも会社を選んだ親に捨てられた、と言えばいいのだろうか。

 ようやく落ち着いて考えてみれば、シャルロットはあまり父親……元父親の事をそれほど恨んではいないことに行き着く。それこそ、彼女の中で捨てられた事は許されない事だったけれど、『会社』と『娘』という選択肢で『会社』を選んだあの人は正しいと考えれる。その選択されなかった『娘』としては色々思うところはあるけれど、元を正せば自分の選択なのだからソコは恨むべきではない。

 

 大きく息を吸い込んで、肩に入っていた力を抜くように深くゆっくりと息を吐きだした。

 数秒ほど瞼を下ろし、呼吸を止める。

 頭から止めどなく流れるお湯を受け止めて起こった出来事を纏めていく。どれもこれも、既に終わった事で、今からは先を考えなくてはいけない。

 息を吸い込み、細く長く吐いていく。

 

「よし」

 

 シャワーを止めて、タオルで体の水気を奪う。ある程度拭き取り、大きな鏡に顔を近づけて頬を叩く。頬を引っ張り、無理に笑顔を作り出す。満面、とは言えないがまずまずの笑みは浮かぶ。問題はないだろう。

 沈んだ顔をすればきっとルアナは心配してしまうだろう。そんなことは今に至るまでにわかっている。

 バスローブを羽織い、改めて鏡で自分の顔を確認する。先ほどよりもちゃんと笑えている。そのことを確認して、シャルロットは脱衣室から身を出した。

 

「ルアナ・バーネットさん、この度は重ね重ねご迷惑をお掛け致しました。この通り、もう大丈夫ですので」

「はいはい。髪を乾かし忘れる程物思いにふけているのだから、さっさとここに座ってココアでも飲んでなさい」

「…………」

 

 呆れた様に、わかっていた様にルアナは溜息を吐き出してシャルロットを椅子に座るよう指示した。シャルロットは呆気に取られて、というよりはバツの悪そうな顔をしていそいそとルアナの前にある椅子に座った。目の前に机に置かれた焦げ茶色の液体は湯気が立ち上り、甘い香りをシャルロットへと届けている。

 カップを両手で包むように持ち上げ、口へと運べば、予想した通りの甘い味が舌いっぱいに広がる。その間に後ろからは暖かい風と櫛でとくような感触が当たっている。

 

 

 無言の空間にドライヤーの音とココアの啜る音が響く。

 

「ねえ、ルアナ」

「何?」

「どうして私を助けたの?」

「…………助けた、というよりは買った、という方が正しいけれど?」

「それでも私は助けられたよ」

 

 その一言でドライヤーの音は止まり、ルアナの溜め息が響いた。チラリとルアナを確認すれば不満そうな顔をしていた。

 

「……そうね。まずは最初から説明した方がいいのね」

 

 そう一言呟いたルアナはシャルロットの前へと回って、対面に座る。珍しく真面目な顔をしたルアナは静かに頭を下げる。

 

「ごめんなさい、シャルロット」

「へ?」

 

 シャルロットにしてみれば、まさか謝られるとは思わなかった。自分が謝らなくてはいけない、と思っていたシャルロットは疑問符を頭に浮かべて口を開く。

 

「どうしてルアナが謝るの?」

「私がアナタを買ったからよ」

「それは私が選択した事で、」

「そこが間違っているのよ。

 

 そもそも、どうしてその選択がシャルロットの頭に浮かんだのか。どうしてその選択にしなくてはいけなかったか。どうしてその選択を選んだのか」

 

 ルアナは顔を上げて淡々と言葉を吐き出していく。

 

「まずは、そうね。あの時、私はアナタの事が欲しかった」

「ふぇ? そ、それは」

「あぁ、言い方が悪かったわね。一夏の為にアナタが必要だと感じた。そこに私の好みなんて話は無いし、あの時のシャルロットを性対象に見るなんて私はしないわ」

「あ、うん……」

「男装をしたアナタはきっと一夏の心を動かすに至る存在であると思った。バレた後も含んでアナタには十二分に一夏にいい影響を与える筈だと私は……いいえ、『ルアナ』は考えた」

「ルアナ?」

「擬似ISとしての『ルアナ・バーネット』。尤も、意思も意識もないわ。ただ一夏の為に尽くす、そういうモノだと思ってくれればそれでいいわ。

 その『ルアナ』がアナタを必要だと考えた。だからこそ、私は一夏とアナタの会話に参加して選択肢を提示したの。そうしないと、きっとアナタを手に入れる事が出来ないと思ったから」

「えっと、ちょっと待って……。つまり、ルアナが居たから私はお父さんから、捨てられた?」

「そう思ってもいいわ。アナタの性格を考えればきっともっと上手く立ち回れたと思うもの。実際、デュノアとアナタが話そうとした時、私は徹底して止めた訳だし」

「……でも、ルアナは何度も引き返すか聞いたじゃない」

「そうすればアナタは自分から身を差し出すでしょう」

 

 シャルロットは鈍器で頭を殴られた様に意識が揺れる。つまり、つまりである。

 この目の前の少女が全て企み、全て予想して、全て実行し、父との関係を断ったのか。シャルロットの中にあった泣いていた自分を慰めていたルアナが音を立てて崩れていく。慰めているルアナの顔が醜く歪んでいく。

 頭を抑えてシャルロットは息を吐き出す。

 

 

 違う。

 そう、決定的に、確定して言える。

 

「ルアナは悪くないよ」

 

 それは確かに言えた。シャルロットは大きく息を吸い込んで、自分を支える。どうしてか、色々と崩れてしまったけれどシャルロットはルアナを恨む事ができなかった。

 慰められた、という事もあるのだろうか。いいや、違う。とシャルロットは自分を否定する。

 吐きだした言葉に何も答えないルアナをしっかりと見据えて、シャルロットは改めて口を開く。

 

「ルアナは優しいよ」

 

 そう口にして、ストンと心の中に何かが落ち着いた。

 目の前の少女は優しい。シャルロットから言わせれば、優しすぎるとも言える。だからこそ恨まれる様な事を吐き出して、勝手に恨まれて、そこで全てを完結させようとしている。

 実際、シャルロットがルアナを恨む事は容易いし、恨んでしまえば父親を恨む気持ちも全てルアナに向ければいい。なんて、単純な事なのだろう。

 だからこそシャルロットはこの申し出を断らなくてはいけない。

 

「ねえ、ルアナ。ルアナに私の選択を……責任を奪う権利はないよ」

 

 例え、用意されていたとしても、選択したのは自分である。だからこそシャルロットはルアナを恨むこともしないし、父親を恨む事を諦めた。

 ルアナはシャルロットの顔を見ながら呆れた様に溜め息を吐き出す。

 

「改めるけど、本当にいいのね?」

「私が選択した事だから、責任は私だけの物だよ。これは他の誰にもあげられないよ」

「なら、いいわ。 買い手としては喜ばしい事なのかしら」

「あ、そうか。じゃあ、これからルアナは私のご主人様なのか……呼び方をご主人様にしたほうがいいのかな?」

「やめなさい。冗談でも怖気が走るわ」

「それはそれで酷いと思うんだけど?」

「どこの世界にご主人様と自分を呼んでくる存在に抱きつかれたり可愛がられたりするご主人がいるのよ」

「メイド服を着れば問題ないかなぁ」

「ちょっと、シャルロット。聞きなさい。そういう問題じゃないわよ」

「よしじゃあ、ルアナにメイド服を着せれば大丈夫だね!」

 

 ルアナはその一言を聞いた瞬間に目の前が真っ暗になった。きっとバトルに負けたのだろう。有り金の半額をシャルロットに渡さなくてはいけない。

 

 冗談はさておき。

 自分の責任が、なんて言っていたシャルロットはどうルアナにメイド服を着せるかを考えている様で時折「簪に頼めば」なんて呟いている。それを見てルアナは溜め息を吐き出した。元気が出すにしても方向を大きく間違えてしまった。

 口をへの字に変えてそっぽ向いているルアナを苦笑して眺めているシャルロット。こうして冗談でも言わなければルアナがまた自分を心配してしまうだろう。しかもソレを打算だと言うのだ。

 利害的に言えば、きっと自分は一夏の助けにならない。いいや『ルアナ』から判断すれば助けになるのかも知れない。

 けれど、そうであったとしてもデュノアと自分を切り離す事はしなくてもいい筈だ。ソレを選択したのはシャルロット自身であった。それが事実だ。そこにルアナの関与があったとしても、選択したのは自分である、そのことだけが事実だ。

 

「ところで、ルアナ。ここってどこ?」

「? デュノア社近くのホテルよ」

 

 淡々と言われた言葉にシャルロットの頭は必死でデュノア社の立地を思い出して、近隣のホテルを探す。ビル街に存在するホテルはあるにはあるが、それ相応の金額を要する筈だ。

 

「あとここの他にも部屋は取ってるわよ」

「……ち、ちなみにどうして?」

「一応、売り物に出したとは言え、私は無人ISと言っても過言では無いし、それにアナタもいる事だし」

「ご、ごめんなさい?」

「どうして謝るのよ……当然の措置よ。その為に態々高いスイートルームも取ったのだから」

「ス!?」

「いいわね、ここの従業員。ある程度教育がなってるのかしら。チップさえ渡してやればちゃんと秘匿する所なんて最高ね」

 

 クツクツと意地悪い笑みを浮かべているルアナにシャルロットは絶句する。目の前の少女は一体何なのだろうか。いったいどこからそんなお金が発生するのだ。湧き出てくるのだろうか。

 

「ば、売春とかいけません!」

「してないわよ。第一、体を売って入る金額なんて高々知れてるわ」

「そ、それじゃあ」

「昔にしていた仕事のお金よ。私、正義の味方をしていたの。いいえ、悪の使者だったかしら。まあ、私にとってどちらでもいいのだけれど」

「正義の? 悪の? …………ルアナって何者?」

「私はルアナ・バーネット。それ以下であっても、それ以上ではないわ」

 

 少し意味深な言葉を吐きだしたルアナはフフンと胸を張って言い放った。少しだけ膨らんだ胸から二つの突起がシャツを押し上げているのを見てシャルロットは思わず顔を赤くする。

 

「ルアナ! ブラして!」

「嫌よ。簪も一夏もいないのだから自由にさせてちょうだいな」

「ダメ! 絶対ダメ!」

「何よ。少し前までは私の胸に縋り付いて泣いてたクセに」

「ッ! それとこれとは別問題です!」

「あらそう。ならアナタが顔を赤くしてようが、私には関係ないわ」

「ぐ、ぐぬぬ」

「それに、仮にもご主人様に口答えだなんて……どちらが偉いのか、身を持って教えてあげようかしら?」

 

 どこか色の含んだ言葉にシャルロットは余計に顔を赤くする。違う、自分にそんな趣味は無いのだ。確かに可愛い物を愛でるという趣味はあるけれど、決してソッチでは無いのだ。

 

「ル、ルアナ。さっき私を性的対象に見ないって言ってなかった?」

「言ったわよ。前のアナタは男装をしていたし、デュノアとことを構えるつもりは無かったし」

「じゃ、じゃあ」

「そのデュノアからは買取、今のアナタはどこからどう見ても女の子じゃない。問題ないわ」

「あるよ! 何!? ルアナってそういう人なの?」

「レズビアン、という訳ではないわ。それなら簪を真っ先に…………あ。 まあアナタは私にとって魅力的に映ってるの」

「簪に何したの!? 簪逃げて!? もう手遅れかもしれないけど早く逃げて!」

「嫌ね。まだ何もしてないわよ」

「まだ!? お父さんとの商談の時も同性愛者じゃないって言ってたのに!?」

「同性愛者じゃないわよ。ただ求めてる相手が女性なだけで、男性も好きよ」

「れっきとした同性愛者だ!」

「そうね、こういう時はどう言うのだったのかしら。天井の木目でも数えていればすぐに終わる、だったかしら?」

「天井板は洋風だよ!」

「まあ、数える余裕なんて与える気もないけれど」

 

 ニタリと笑ったルアナは体を浮かしてシャルロットへ迫る。椅子に躓いて地面を這いながら後ずさりをするシャルロットに嗤いながら迫るルアナ。

 涙目のシャルロットを見てルアナは唇を舐めた。少しだけ熱を孕んだ息を吐き出して口角を歪めて目を蕩けさせる。

 

「まあ犬に噛まれると思いなさい」

「貞操が犬に喰いちぎられる!?」

「そうね、しっかりと契ってあげるわ」

 

 シャルロットの言葉をしっかりと違えてルアナはシャルロットへと襲いかかる。

 

 

 

 翌昼。どうしてかツヤツヤとしたルアナとげっそりしたシャルロットが同じ食卓でパンとスープを食べているのだけれど。ソレは語られる事はないだろう。




>>さくばんは、おたのしみでしたね!
 ルアナはタチだと思うんだ。いや、何が、とは言わないですけど。

>>浮いて迫るルアナ
 瞬獄殺みたいに、こう、スィーッと

>>高級抱き枕
 寝心地抜群。程よく暖かく、抱きしめると優しく抱きしめてくれる反応付き。甘ったるい匂いもする。

>>シャルロットを買うに至り
 実際、ルアナが提案しなければシャルロットは上手く立ち回ってたと思います。父親と話し合い、継母との仲もそれなりにはなったと思います。
 ソレをしなかった理由? ヤダナー。マトモな人助けなんてできるわけ無いじゃないですかー。

>>選択の責任
 ルアナが持っていこうとしたけれど、シャルロットの責任。デュノアさんはあの選択肢が出た時点で詰んでます。
 取引相手がアレですし。弱みがありすぎます。尤も、ママゴトみたいな商談でしたけどね

>>全ては一夏の為
 『ルアナ』としてのルアナの選択。一夏至上主義とは言わないけれど、思考は一夏を常に考えていたりする。

>>「ご主人様(はぁと」
 言われたい(切実

>>ノーブラルアナ
 もういつもの事。簪がいない、と言ってはいるけれど、簪がいてもノーブラ。

>>正義の味方で悪の使者
 どちらにでも転がれる中立組織

>>シャルロット・なにがし
 一応、意識して、この話ではシャルロットの事をシャルロットとして扱ってます。前の話ではしっかりとデュノアを付属してたような気がしないでもない。
 IS学園の方では色々と書類処理とかが面倒なのでしっかりデュノア姓で通る。

>>レズ?
 男も好き。女も好き。但し性的とは言ってない。



>>あとがき
 これでシャルロット編は終わりです。
 あとは、放棄さんを箒さんに戻して……一夏とルアナの事を書いて。夏休みは終わりですかね。
 夏休みってこんなに長いのか……(困惑

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