私が殺した彼女の話   作:猫毛布

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遅れてスマナイ。テンプレ展開。
戦闘描写と終了?テキトーですよ、ごめんなさい!


誤字訂正
光彩→虹彩


25.戦闘惨禍

「バーネットさん?」

 

 落ちていたルアナがゆらりと立ち上がった。

 それに気づいたシャルルは彼女に寄ろうとした。けれどもソレは隣にいた一夏の腕によって防がれた。

 防がれて、思わずシャルルは一夏を見た。

 先ほどの笑顔など消え去っている。まるで戦闘時と同じほど真面目な顔をした一夏を。

 

「……久しぶり(・・・・)だな、()()()()()

「…………クヒッ。ヒヒヒヒァ、ヒャハッハッハッハッハッハッハッハ!!」

 

 一夏の声を聞いて、バーネットは嗤う。自らの顔を両手で覆い、歪んだ口元を見せながら嗤った。

 一頻り嗤ったのか、ヒーヒーと呼吸を落ち着けてバーネットは両手を顔から外した。

 

「久しぶり、そう久しぶりなのね。 私はまったくそうは思えないんだけど?」

「お前と俺たちの時間軸を一緒にするんじゃねぇよ。お前はルアナの中で眠ってるからそう感じるんだろ?」

「そうかしら……? クヒッ、でもソレはどうでもイイ事じゃない」

「ねえ、一夏……バーネットさんって」

「簡単に言うと、あれはルアナじゃない」

「いやね。私はルアナよ。ルアナ・バーネット。それが私の唯一の名前よ」

「お前がそうやって名乗るんじゃねぇよ、バーネット」

「あら、辛辣ねぇ」

 

 またクヒリと嗤い、バーネットは纏っていた深緑の機体【ラファール・リヴァイヴ】を脱ぎ捨てた。

 両足でしっかりとアリーナの地面を踏み、肩口で切り揃えられた紫銀の髪を揺らす。表情は愉悦に歪み、何が面白いのかまた嗤いが溢れている。

 

「ああ、素敵。本当に素敵っ。 偽物だったけれど、まさか織斑千冬を倒すだなんて」

「シャルル」

「どうしたの?」

「ボーデヴィッヒさんを頼む」

「え? 一夏は?」

「俺はルアナを取り戻す」

「ああ、素敵ッ。フフ、ヒッヒッヒヒ、クヒヒ。本当に、美味しそうになった……嗚呼、美味しそう。美味しそうよ、とっても」

 

 バーネットは空を仰いで盛大に笑ってみせる。

 その間に一夏は抱き込んでいたラウラをシャルルへと渡し、【白式】のエネルギー残量を確認する。少ないエネルギー。

 

「時間はないけれど、時間をあげるわ。織斑一夏。そこにいるシャルル・デュノアの機体からエネルギーを渡して貰いなさい」

「随分なサービスじゃねぇか」

「当たり前よ。何の為に全弾を盾にぶち込んだと思ってるのかしら? 万全の状態でヤリましょう」

「…………シャルル、頼めるか?」

「大丈夫……だけど、いいの?」

 

 シャルルはチラリとバーネットを確認する。そこにはISスーツしか着ていない少女がいるだけだ。

 愉快そうに口角を歪め、いつものジト目なんかそこには無く、目尻が垂れ下がり、薬でもキメているのかケラケラとおかしな嗤いが溢れるばかりだ。

 アレが襲ってきたところでISを着用している自分たちは防ぐことはできる。それに時間を稼げば救護班も来る。それに任せる方が安全だ。

 

「頼む」

「…………はぁ、ホント。男の子ってヤツはわからないなぁ」

「こういう生き物なんだよ」

 

 肩を竦めて言ってのけた一夏。それに苦笑と呆れを混ぜたシャルル。

 コアバイパスが接続され、【白式】にエネルギーが補充されていく。幸いなことか不幸なのか、ほぼエネルギー消費のなかったシャルルから八割程エネルギーが補充される。

 エネルギーを得た事で【白式】は喜ぶように、迫る戦闘に備えるように《雪片弐型》から白い粒子を零す。

 

「ホントウに、素敵よ。一夏……」

 

 恍惚に染まった顔が愉悦へと歪んでいく。地面に着いていた筈の両足がフワリと宙へ浮いた。

 バーネットの紺色のISスーツが溶けて彼女の体を滑り落ちる。胸部と局部だけを隠した紺色、そして地面へと溜まった紺色の液体。

 その液体がゆっくりと地面から伸びバーネットを侵食する。グニャグニャと蠢きながら、バーネットの白い肌を蹂躙していく。顔までしっかりと、まるで繭のように紺色の塊となったバーネット。

 その繭にヒビが入る。

 何かを求めるように右腕が繭から飛び出る。純白には程遠い、黒い右手。その指先から赤黒い液体が滴り、地面に落ちた。

 赤黒い右手が紺色の繭を掴む。ベキリ、ベキリと乱暴に音を立てて繭が剥がれていく。

 赤黒い液体で濡れた円錐の先端を切り落としたような腕装甲。現れた腕が乱暴に振るわれたことで繭が音を立てて崩れ落ちた。

 

 そこには、異形が在った。

 いいや、異形と言うには随分と人間らしすぎる。

 ただ、ソレを直視してしまったシャルルと一夏は素直にそう思ってしまった。

 

 表情などありはしない。ただ虚空を見つめてルアナ・バーネットは立っていた。

 赤黒い液体に塗れている。ただ虚空を眺めてルアナ・バーネットは直立していた。

 紫銀だった髪はその輝きを液体の合間から魅せている。

 そして目を引いたのはルアナ・バーネットの肩部と背中。肘の部分で切れている腕装甲を辿れば、肩部にまた装甲がある。三角錐を真っ二つに落とし、先を外へと向けた肩装甲。

 ソレよりも目を引いてしまったのは背部。非固定浮遊武装などではない。しっかりと背中から伸びたアームで固定された大型の何か。少なからず、一見しただけの一夏とシャルルにはソレが『ルアナの体躯の半分ほどの大きさを持った蒲鉾型の武装が二基ある』としか見えなかった。

 けれど、その考えは払拭される。

 

 何かを確認するように肩装甲と背部の武装が開く。

 肩装甲が赤黒い糸を引いて開き、先に液体を滴らせながらその中身を見せる。ソコには二段に重ねられたバーニアが見える。

 背部武装の底面が開き、ソコには大型のバーニアが一基。蒲鉾型が左右に開き、合わせて二基のバーニアが姿を現す。

 左右合わせて合計十基のバーニア。それが蒼く光、その光を収める。

 

「ふー…………」

 

 天を仰いでいたルアナ・バーネットが息を吐きだしその瞼を落とす。

 顔を地面へと向けて、開いていた箇所をすべて閉じていく。

 

「くひっ……ヒヒ、あは、ヒヒャハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 そして盛大に肩を揺らし、嗤い出した。

 バーネットは嗤い、深い青の瞳を二人に見せた。狂気に浸されたその瞳は開かれた。ジト目ではなく、しっかりと開かれた瞳で二人をしっかりと視界に収めた。

 

「さあ! イキましょう、一夏! 私とイッショに! イキましょう!! 全部どうでもよくなるぐらい! イキましょう! 誰も届かない所へ!」

 

 バーネットが手首を外へと捻る。腕装甲の袖の部分から鈍色のナイフが飛び出て、ソレはバーネットの手に収められた。

 順手で持たれたナイフの鋒を一夏へと向けて、ゆったりと腕ごと外へと向けた。

 一夏は剣を正眼に構えた。

 バーネットの背部装甲が開く。各バーニアに青白い光が灯り、ソレがバーニア内部へと収縮していく。

 完全に青白い光が収まった瞬間に一夏は剣を握り直し、バーネットを見失わない様にただ一直線に彼女を睨んだ。

 けれどソレは虚しく終わる。

 

「え?」

 

 赤黒い液体達が置き去りにされたのか、べちゃりと音を立てて地面へと叩きつけられる。

 同時に赤黒い液体を落とし、淡い緑の装甲を纏ったバーネットが一夏の目と鼻の先に現れる。自身の持つナイフと《雪片弐型》がかち合い、バーネットの速度に一夏が耐え切れずに後方へと押しやられた。

 

「アハッ! ほら! もっとちゃんと握らないと!」

「クッ?!」

 

 金属同士が勢いよく当たり、甲高い音がアリーナに響く。超近距離という一夏の得意とする距離。けれど、今回ばかりは近すぎるのだ。

 刃渡りの長い《雪片弐型》と短いナイフとでは攻撃に至るまでの速度が圧倒的に違いすぎる。

 一夏が攻撃をしようとした所で、バーネットはその隙を縫うことができる。ハイパーセンサーによって辛くも防ぐことは出来る一夏。そんな一夏が攻撃に転じることなど不可能に近い。

 

 頭の中で理解したその事実。それから逃げるために一夏は少し距離を開けるために後ろへと加速する。

 

「あら、どこへ行くのかしらぁ?」

「?!」

 

 速度的には重畳。けれどもソレは一般的なISでの話だ。

 一夏の加速から一瞬置いて、バーネットもソレを追いかける。一夏を上回る速度で。

 すぐに距離は詰められ、一夏はまたナイフを《雪片弐型》で防いだ。

 

「クヒッ、残念(ざーんねん)!」

「クソッ!」

 

 一夏はナイフを弾き、小さな動作で手首を返す。同時に刀を極光へと変化させた。

 バーネットの武装にラウラのようなAICなどない。けれども刀を小さな動作で返した所で回避は十二分に可能であった。

 大きく下がったバーネットは容易く極光を回避する。回避して横へと動いた。

 銃声が響き、先ほどまでバーネットがいた場所に銃痕が出来る。

 

「こっちも残念ね」

「くっ」

 

 腕だけにISを纏ったシャルルからの攻撃も容易く回避したバーネットはその顔をつまらなさそうに顰めて見せる。

 

「残念、本当に残念よ。一夏。ようやく楽しめる程度に強くなったと思ったのに、まだこの程度だったなんて……やっぱり今すぐに死んで頂戴な」

「俺はまだ死ぬわけにはいかないんだよ」

「あらそう。でも死ぬわ。私が殺すもの」

「それでも、俺は死ねないんだ」

「けれど、弱いでしょう?」

「ソレはこの戦いが終わってから判断しろよ!」

「……そうするわ。きっと、つまらない答えね」

 

 バーネットは呆れた様にため息を吐き出して、頭を掻く。

 ナイフを握っていない左手首を外へと返し、左手にもナイフを握る。

 

「つまらないけれど、やっぱり殺し合いは楽しいわぁ……ねえ、一夏。私と一緒にイキましょう?」

「……ああ、一緒に生き(イキ)てやるよ、ルアナ」

「クヒッ」

 

 瞬間にバーネットがまた加速をする。両手で握ったナイフが一夏の《雪片弐型》に当たった。

 連撃。息のつく暇など無い連撃が《雪片弐型》から一夏に伝わる。

 衝撃を受けながら、一夏はソレに一定のリズムがある事に気づいてしまう。

 二度打ち込まれ、軽い一撃の後に重い一撃が加わる。素早い速度で丁寧にリズムが刻んでいくバーネットの攻撃。

 変則的にだが、けれどもその攻撃は周期的にやってくる。

 パターンが分かれば、落ち着いてソレに対処すればいい。幸い、バーネットは《雪片弐型》に攻撃を加えている。ソレは折らんばかりの連撃ではあるが、【白式】に攻撃は加えられていない。

―落ち着け、落ち着くんだ。

 そう心で唱える一夏。二度《雪片弐型》に衝撃が与えられ、軽い一撃が加わった。

 重い一撃を加えるべく、バーネットは軽くナイフを振りかぶっている。

 ソレを見逃せる程、一夏に余裕など無い。

 

「見えた!」

 

 ナイフが振り下ろされるのと同時に一夏は《雪片弐型》を振るう。速度は負けていようが関係無い。しっかりと遠心力を有した刀がバーネットの持つナイフを叩き切った。

 驚きを顔に出したバーネットを一夏はしっかり視界に収めていた。そして極光が刀を包む。

 

「俺の勝ちだ! バーネット!!」

 

 逆胴に振られた極光。

 振っている一夏は見てしまった。嗤うバーネットの顔を。

 バーネットに《零落白夜》を防ぐ術はない。そう、ソレは当然である。この極光は防ぐことの出来ない至高なのだ。

 けれども、ソレを止める方法はあるのだ。

 バーネットは右手を伸ばす。あろうことか、《雪片弐型》に向けてだ。

 

「なっ!?」

 

 伸ばした手は《雪片弐型》を握った。握る場所は刃ではない。一夏の握っている柄の部分。極光に包まれる事のない、絶対安全領域。 

 極光はバーネットに触れる前にその動きを停止させてしまう。支点を押さえれば止まるのだ。

 何も極光に触れなくてもいい。織斑一夏の手を止めれば、それだけで話は終わるのだ。

 

「どうやら、私の勝ちみたいね。一夏」

「くっ」

 

 ナイフを握っている左手が高々と天に向けられる。

 このまま振り下ろせばISの絶対防御と気絶効果が発動するまで嬲られ続けられるのだろう。

 

「さようなら、一夏。……死になさい!」

 

 狂人の腕が振るわれて凶刃は容易くも一夏を襲う。

 けれどソレは許される事はない。ここには一夏の味方がもう一人いるのだ。

 銃声が響き、バーネットの手に衝撃が走る。

 ブレた腕はそのままの勢いで一夏を通りすぎる。けれども凶刃は一夏に触れる事すらなかった。

 

「僕を、忘れてもらっちゃ困るよ」

「デュノア……!!」

「事情は知らないけれど、君を倒せばバーネットさん……ルアナさんは戻ってくるんでしょ? なら選択は決まってる」

「私と、一夏の関係に入り込むつもりかしら?」

「別にそんな事はないよ。けれど、ルアナさんには借りがあるんだ」

 

 その言葉に訝しげに眉間に皺を寄せたバーネット。ため息を吐き出して、一夏の掴んでいた腕をパッと離して、テクテクと歩く。

 歩くたびに纏った装甲がガシャガシャと音を立てている。

 

「一夏、アナタはまだ弱いわ。決定的に、弱い。 それでも、まだアナタは吠えなきゃいけない。分かるわね?」

 

 バーネットは淡々と、一夏に背を向けて呟いた。

 

「けれど、私を倒せなくてはいけない。矜持を掲げるのもいいけれど、もっと大切な事があるでしょう。もっとアナタは望んだモノがあるでしょう? 私はアナタを殺すわ。織斑一夏。だって、私はアナタを恨んでるもの。当然でしょ? 私にはアナタを殺す理由がある。だって、私の大切なモノがアナタに奪われたもの。だから、アナタは殺すわ、絶対に」

「……知ってるよ。知ってるから、俺はお前に殺される訳にはいかないんだよ、バーネット」

「一夏……」

「悪い、シャルル。あいつを止めたいんだ。力を貸してくれ」

「ま、このままだとルアナさんに迫られた選択も出来なさそうだし」

「助かる」

「僕は僕のために戦うんだ。一夏も一夏の為に戦ってる、今はそれでいいよ」

 

 一夏は深呼吸をする。

 大きく息を吸い込み、少しだけ止めて、細く吐き出す。

 ようやく視界が広くなった。《零落白夜》を防がれた理由を思い返し、対処方法を適当に作成する。

 完璧とは言えないけれど、それでも現段階では十分だ。

 

「くひっ……二対一だなんて」

「卑怯とでも言うのかい?」

「そんな冗談! ようやく面白くなってきたのよ?! フフッ、本当に素敵。そうして仲間がいると余計に素敵よ、一夏!!」

「安心しろよ。俺たちが、倒してやるからな!」

「ええ、安心しなさいな! 私が殺してあげるわ! 殺し尽くして、刻んであげる!クヒッ、フヒッ、ヒヒ、ヒャハハハッハハハ!!」

 

 バーネットが嗤い、バーニアに火が灯る。

 手首を返して、バーネットの手にナイフが収まる。一つは順手、もう一つは逆手に持たれたナイフ達。

 順手に持たれたナイフが振るわれ、バーネットの手から放たれた。

 銀色の軌跡を残しながら、ソレはシャルルの眼前へと投げられる。ハイパーセンサーでソレを捉えたシャルルは容易くソレを打ち落とす。そのままトリガーを引いたまま銃身を滑らせて一夏へと向けていく。

 バーネットから一直線上に銃弾がばらまかれたけれど、ソレは虚しく壁に当たり、《雪片弐型》とナイフがまた金属音を鳴らして出会う。

 押される事もなく一夏は踏ん張ってその場へと留まった。そしてそのまま《零落白夜》を発動させて、極光を出現させた。

 

 ナイフにピシリと罅が入り、ガラスを割った様に音でナイフが砕けた。

 

「なっ?!」

「うぉぉおおおおおおお!!」

「……

 

 なんてね」

 

 一夏の視界からバーネットがブレる。青白い光が軌跡が一夏の視界に残った。

 ハイパーセンサーで捉えられない速度。けれどバーネットの場所はスグに判明する。自身の背後である。

 

「ここなら彼女は銃撃が出来ない」

 

 ソレは仲間に当たるからだ。身長的にもバーネットよりも一夏の方が大きい。故にシャルルから見れば、バーネットはすっぽりと一夏の体に隠れている。

 

「たとえハイパーセンサーで捉えても、行動は人間がするのよ。動けなければ見えていても意味が無い」

 

 たとえ分かっていても、人間の行動にはラグが生じてしまう。ソレはたとえコンマ数秒の世界だったとしても決定的な隙になってしまう。

 朗々と説教をしているバーネット。ソレに対して振り向き様に極光を振るう一夏。バーネットは手首を返す事なくナイフを出してその極光を阻む為に腕を伸ばす。

 

「武器の出し方に意味は無い。手首を返していたのは必要だと思わせる為……それと、忘れていると思うから言っておくわ」

 

 キィィと高音が鳴り、極光とナイフが当たる。極光がナイフを切断し、バーネットに襲いかかることはない。ソコで、停止しているのだ。

 呆気にとられてしまった一夏。《雪片弐型》を握る腕に下からの衝撃が加わる。

 見えたのは淡い緑色の装甲と黒い足の裏の装甲。

 

「バリアーを貫ける武器……もっと言えばエネルギーがあれば、ソレを止める事は可能よ。一瞬だけだけれど」

「あ、あ……」

「一夏!」

「まあ、それも意味のない情報ね。さようなら、織斑一夏……楽しかったわ」

 

 腕の上がった情けない一夏。ナイフを持ったバーネットが一夏の首へ腕を伸ばす。

 ゆっくりと腕は伸ばされ、ソレは唐突に停止する。

 ナイフの持っていない左手で頭を抑える。突然痛み出したかの様に、乱暴に髪を掴んだ。

 

「ァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 持っていたナイフを落とし、両手で頭を抱え込む様に押さえ込む。

 カラン、と鳴ったナイフ。その1拍を置いて一夏がバーネットを押さえ込もうと手を伸ばす。

 

「ルアナ!」

「離せッ! ッ……アァァぁああAAAaaaaaAAAAあああああああああああああああ!」

 

 伸ばした手を振り払うも、弱々しく振り払った結果容易く腕は掴まれ引き寄せられ抱き寄せられる。

 頭を抱えながらもバーネットは荒々しく抵抗するが、一夏の腕からは逃れられない。

 次第にバーネットの体は静かになり、顔を一夏へと向ける。

 

「一夏ぁ……痛いよ、痛いよぉ……」

「ああ、ゴメンな。ルアナ」

「痛い……痛い……」

 

 涙目になりながら一夏に擦り寄り、まるで何かに飢えている様に一夏へと凭れている。

 ルアナの体に装着されていた緑色の装甲が剥がれていく。緑色の粒子が空へと飛んで消えていく。

 

「……悪いな、ルアナ……俺は、まだお前を守りたいんだ」

 

 その言葉を聞いたからか、ルアナは微笑み、そして瞼をゆっくりと落とした。

 

「……一夏」

「…………悪いな、シャルル。巻き込んだ」

「………………ソレは、いいよ」

 

 シャルルは何かを言いたいようで、けれどもとても言いにくそうに少し視線を別の方向へと向ける。

 

「えっと……その、感動の瞬間なのはわかるんだ。わかるんだけどさ」

「ん?」

「ルアナさんの格好……」

 

 一夏は視線を落とした。抱いているのは確かにルアナ・バーネットだ。

 胸部と局部を紺色のISスーツで隠しているだけの、言ってしまえば、スポーツブラとショーツだけの姿のルアナ・バーネットがいる。

 

「……」

「……一夏のえっち」

「いや、違う、違わないけど、今の状態でいう言葉じゃないと思うんだ!」

「違わないのかぁ……そっかぁ……」

「あれ? シャルルさん? あれ、虹彩がなくなってるんですけど?!」

 

 ガチャリと重厚な音を立てて織斑一夏に盾先が向けられた。当然、その盾に付いているのは《灰色の鱗殻》。

 ニッコリと笑うこともないシャルル。そういえばラウラ・ボーデヴィッヒも全裸で抱えていたな、この変態は。

 そう思い出し、頭の中で打ち込む数を一つ増やす事になる。

 もちろん、そんな事一夏は知る事はないし、知る必要もない。

 

 

 後味の悪い戦闘は、茶番で濁して終わらせるのである。




>>ルアナ・バーネット
 戦闘行為=性的興奮を覚えるとっても奇特な存在。実際変態。イイネ?
 悦んでる時って狂うモノ。急に覚めたのは思ったよりも一夏くんが弱かったから。

>>俺の、勝ちだ!
 負けフラグ

>>バーネットという存在
 彼女自身が言った通りです。

>>バーネットの機体
 スピード重視の極端機です。円錐の先を切り落とした腕装甲と丸みを帯びた脚装甲。肩は三角錐を大胆にもよっこいしょ。ワンポイントとして背中にはアームで固定されたバーニアがついてます。あと、足装甲の横からもバーニアが出ます。
 やったねルアナ! 距離が詰めれるよ!
 実際、危険。やっぱり直線距離最速が考えやすいです。左右回避ように肩にバーニア付けましたし。急停止様に足にもバーニアありますし。
 重力を考えなければ最高ですね!武装はナイフだけで量子変換で武器の出せない第一世代機ですけど……。

>>頭痛
 ナンデデショーネ。とりあえず、おそらく今現在読者様の頭に浮かんでいる事……ではないと思います。思ってます。思わせてください。
 テンプレ展開は物語だけでいいんですよー。

>>《零落白夜》VSナイフ
 アレってバリアー無効化効果のエネルギー刃って勝手に考察してます。実際は物理刃もありそうですけど。
 触れるとアウトなのでラウラもAICで防いだ訳ですし……。AIC解除出来るって事はエネルギー消失系なのか? と考えた結果
 ならその消失量以上のエネルギーで防げるな(白目
 した結果です。なお適当考察なので穴しかないです……考察にも穴はあるんだよなぁ……。
 バリアーエネルギーよりも上のエネルギーなら誤差は出るだろ。流石に
 バリアーエネルギー*0=消失。やったねタエちゃん!
 している訳ではあるまいし……大丈夫だよ……ね?エネルギー消し飛ばすにしてもどこかにその消し飛んだエネルギーが逝ってるはずですし、
 エネルギーの運び的にはアレなんですかね
 相手のバリアー→《零落白夜》→【白式】にて発散
 なんですかね……。まあ、至極どうでもいい考察です。アトガキに書く事じゃねえぞ!

>>茶番終了
 後味が悪かったので。というか収まりが悪かったのでこういう形に収めました。実際ラストの部分はイラナイ。



>>アトガキ
 イヤー、バーネットは強敵でしたね!
 そんなこんなで、次を書いた辺りでたぶん一段落かなぁと思います。
 色々と謎を残したバーネットと色々な事を隠しているルアナ。本当に狂ってるのは誰なんでしょうね。
 こうしてど真面目な回を挟んだあとはゆっくりと日常回を挟みたいモノなのです。まあ、そんな事展開が許してはくれないんですけどね!
 残念な事に、戦闘回で発散した何かは、シリアスな回収回だろう次回に持ってくるのですよ。

 本当に……。

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