バカとギンガと召喚獣   作:ザルバ

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今回は思いっきり長いです。


不意打ちと神童と不器用

 明久が再び前戦に戻ると大分前に進行していた。

「結構進んだから行動範囲が広げられるね。」

「ですが同時に奇襲させられる可能性も高まりますがね。」

 明久と友也が会話している中Fクラスの生徒は三年生の女子に向けウィンクをしていた。

「ねえあの人たち、こっちにウィンクして無い?」

「き、気のせいだよね・・・・・・」

 それを聞いた明久は友也に手を差し出す。すると友也は何処からかガスエアガンのP/90を明久に私自身も同じのを持ってFクラス生徒の背中に集中砲火した。

『ぎゃあああああああ!』

「それする暇あるなら戦え!」

「それにそんなことしたら自分らで作った異端審問会に裁かれますよ。」

 明久と友也が話していると周囲から近衛部隊が襲ってきた。

「くそっ!」

「予想していましたけどマズイですね。」

「「試獣召喚!」」

「二年Fクラス 吉井明久 & 一条寺友也

 地理     3012点   2745点  」

『何じゃそら!』

 三年生のみならず二年生も驚きを隠せなかった。

「いくよ、友也!」

「ええ。ジャンボット。」

「わかった。」

 明久は召喚獣にスパークドールを渡しギンガスパークにライブサインを読み込ませる。

〈ウルトライブ!ゾイガー!〉

 明久の召喚獣はゾイガーにウルトライブする。

「Come on! Jean bird!」

 友也の懐からジャンバードが出てくると友也はガンパッドを操作しジャンバードを操作する。ゾイガーも翼を広げ飛翔する。

 ジャンバードはミサイルを放ち召喚獣を攻撃し、ゾイガーはすれ違い様に翼で召喚獣を攻撃する。

「なんだあいつらの召喚獣!」

「とてもじゃないが捕まえられないぞ!」

 ゾイガーは高速移動しながら光弾を召喚獣に放つ。

「やりますね。ではこちらも。」

「JEAN FIGHT!」

 ジャンバードは変形しジャンボットになると床に着地する。

「こっちも!」

 明久はゾイガーを床に着地させる。

「床に着いたぞ!」

「この機を逃すな!」

 三年生の召喚獣がジャンボットとゾイガーに襲い掛かる。

「Jean blade!」

 ジャンボットはジャンブレードを展開し三年生の召喚獣を斬る。

「そんなのアリかよ!」

 ゾイガーは迫り来る召喚獣の武器を片手で掴むとそのまま握力で破壊し召喚獣を掴むとそのまま背負い投げをする。

「すっごい握力。ここまでとは思わなかった。」

 明久と友也の連携により三年生の先ほどまでの威勢は衰えた。しかしそんな中点数の差が仲間同士の連携を崩し始めていた。

「すまん、こっちの応援頼む!」

「ん?そっちはついさっき補充から戻ってきたばっかりだろ。やられるの早すぎるだろ。もうちょっとしっかりしろよ!」

「うっせえ!お前たちは俺達と違って高い点数使って攻め込んでいるから消耗が激しいんだよ!お前らみたいな時間稼ぎしか能がないバカどもと一緒にすんな!」

 内輪もめしている声が聞こえた明久は召喚獣をライブアウトさせる。

「友也、少しの間だけ僕の召喚獣守ってくれる?」

「わかりました。流石にこの状況での仲間割れは響きます。」

 明久は歩きながら内輪もめをしている方へ向かった。

「何してるの!」

「おお吉井!聞いてくれよ。こいつら俺らを道具としか見ていないんだ!」

「ふん、バカにバカと言ってなにが悪い。」

 明久は深く深呼吸をして、大声で叫んだ。

 

「ふざぁけるなぁああああああ!」

 

 明久の声に一血どう静まり返った。

「くだらない内輪もめをして連携に支障をきたすのなら一人で戦え!人間誰しも欠点がある。それを互いに補うために班編成したはずなのに全く理解していないじゃないか!第一、自分が他者より優れているからって頭に乗るな!」

 明久の言葉にただ聞くしかなかった生徒はその場に立っていた。

「明久君、ナイススピーチです。それとこの状況をおおいに利用させていただきます。」

「Jean missile!」

 ジャンボットは三年生の召喚獣に向けジャンミサイルを放つ。

「ひ、卑怯だぞ!」

「戦闘中に余所見をしているのが悪いんですよ。」

 友也はガンパッドのボタンを押す。

「Jean knuckle !」

 友也の召喚獣は三年生の召喚獣にジャンナックルを喰らわせる。

「明久君!」

「分かってるけどなんだか気が惹けるよ。」

〈ウルトライブ!キングジョーブラック!〉

 明久の召喚獣はウルトライブする。

「クソッ!油断してた!」

「状況を上手く利用しやがって!」

「だが敵ながら天晴れだ。」

『感心するな!』

 そんなことお構いなく明久は召喚獣に右腕の銃器を放つ。

「こっちも飛び道具かよ!」

「あの力ほしいわ。」

『分かる!』

 キングジョーブラックは合体を解除し四方に光線を放つ。

「少し押したらあなたたちに代わって貰います。先ほど君たちは高い点数をつぎ込んでいるといいましたがその分操作技量が低いです。自分の短所を理解して戦うことにしてください。」

「わ、わかった・・・・」

「あなたたちも操作技量でカバーをお願いします。」

「お、おう・・・」

 友也が召喚獣を操作しながら先ほどまで喧嘩をていた二年生生徒に指令を出した。

「流石は明久君ですね。言うべき事を簡潔且つ明確に伝えましたね。」

「そんなことないよ・・・・・・・ん?」

 明久は奥にいる生徒が気になった。

「どうしたのですか明久君?」

「あそこの奥にいる人、何か気になる。」

「ん?・・・・・・・確かにそうですね。戦わずこっちを見ているだけです。」

「友也、ちょっと頼める?」

「ええ。」

 明久の召喚獣はライブアウトし明久から渡されたスパークドールのライブサインを読み込ませる。

〈ウルトライブ!Uキラーザウルス!〉

 明久の召喚獣はUキラーザウルスにウルトライブする。

「道をこじ開ける!」

 Uキラーザウルスは奥にいる生徒のほうに向かい触手から光線を放ちながら三年生の召喚獣を蹴散らしていく。奥にいた三年生は逃げようと後ろを振り向いた瞬間友也が勝負を申し込んだ。

「そこの三年生の先輩に試召戦争を申し込みます。」

「くっ!試獣召喚!」

 三年生の生徒が召喚獣を召喚した瞬間、友也はガンパッドを操作する。

「Jean ax!」

 ジャンボットはジャンアックスを展開するとそのまま召喚獣を真っ二つに切った。

「油断大敵ですね。」

 友也がそう言うと昼休みを知らせるチャイムが鳴った。

「お疲れ友也。」

「明久君も。」

 

 昼休みになって明久たちは屋上で昼食を取っていた。

「明久君のおかげで内輪もめを最小限に抑えられたわね。」

「そんなことないよ優子さん。」

 食事を取りながら優子が明久を褒める。

「でもさ、ムッツリーニ君らも頑張ってたよね。」

「・・・・そんなことは無い。」

「またまた謙遜しちゃって。ボク見てたよ。」

 工藤はムッツリーニを褒める。

(ん?さっき工藤さんはムッツリーニの戦いを見ていたって言ってたけど・・・・・・本当にムッツリーニのこと好きだったりして。)

 明久は頭の中で考える。

(そういやムッツリーニが工藤さんの写真は撮ったところ見たことないな。前にムッツリーニの家に遊びに言ったときに机に伏せてた写真は水泳部用のユニフォーム着ている姿だったし・・・・・・工藤さんもムッツリーニにチョッカイばっかり出している。脈アリなのかな?)

 明久がそんなことを考えていると姫路が話し掛けてきた。

「どうかしたんですか、明久君?」

「ん?いやちょっと・・・・・上手く行きすぎて無いかな~なんて思って。」

「・・・・吉井の言うこともわかる。」

 明久の言葉に霧島も共感する。

「・・・・でも私、頑張る。」

「霧島さんはカッコイイね。」

「・・・・それに見てもらいたいし。」

 その言葉を聞いて明久は少し心配になった。

(霧島さん雄二に見てもらいたいから頑張っているんだろうけどよくよく考えたら霧島さんに頼りっきり、というか押し付けてる。全ての情報をいっぺんに処理して戦況に応じて人員の編成を行うなんてとてもじゃないが無理だ。雄二のように先の展開を読む能力に長けていたら出来るけど・・・・・・・そういや雄二、なんでAクラスを狙おうとしたんだろう?Dクラスでもいいのをなんで?相手が霧島さんだと知っているなら・・・・・・・あ、そっか。簡単なことだったんだ、雄二がAクラスを狙った理由。)

 明久は自分自身の中で納得した。そんな様子を見ていたタロウは念話で明久に話し掛ける。

(どうしたんだ明久?)

(ん?なんで雄二がAクラスを狙ってたのかって理由が分かったんだ。)

(それは設備への不備からではないのか?)

(それよりももっと単純だったんだよ。)

(なるほど。今の状況を考えるとそういうことになるわけか。)

(タロウにも分かったの?)

(ああ。坂本はただ単に霧島と・・・・これ以上は言うまでも無いな。)

(うん。)

 

 昼休みが終わり明久たちは三年生Bクラスのいる教室の前で待機していた。

「ねえ雄二、何時出るの?」

「もう少しだ。Bクラスがペースを作るまでもう少し待て。」

 今回の作戦は二年Bクラスが高い戦力を削り道を作ったところを一気に攻め込み敵の体制を崩すというシンプルな作戦である。

「今更なんだけどさ、こうして僕らが戦って無くて他のクラスの戦っているところを見ているだけだなんて初めてじゃない?」

「言われてみればそうじゃのう。」

明久の言葉に秀吉が共感する。

「ウチらいつも試召戦争に参加しているもんね。」

「・・・・確かに。」

「参加している分何処にも負けていないのが売りです。」

 友也の言葉を聞いて明久て気付いた。

「・・・・そういえばウチのクラスは特殊部隊の異名のようなものをつけられている。」

「どんなんだ?」

 雄二がムッツリーニに聞くとムッツリーニはこう返した。

「・・・・蛮族。」

「すごい言われよう。でも戦国時代の島津のほうがすごいよ。」

『(・・・・)と言うと?』

「うろ覚えなんだけど江戸幕府約1万に対して島津は300の戦力で戦ったんだけどどんな先方かわかる?」

 明久の言葉に一同首を横に振る。

「中央突破。」

『無謀すぎるだろ!』

「でも60~80は生き残ったんだよ。」

『すごっ!』

 そんな時雄二が戦況の変化に気付いた。

「お前ら、おしゃべりはそこまでだ。出るぞ。」

 雄二の言葉に一同気を引き締める。

「いいかお前ら!今からに二年Bクラスの連中がいる場所に突っ込むがあいつらと戦っている三年Eクラスは相手にするな!ヤツらの相手は二年Bクラスに任せておけばいい!わかったな!」

『おうっ!』

「最初の先頭は明久と一条寺で行く!途中で二年Bクラスの敵を見つけたら支持した順で足止めをしてくれ!いくぞ!」

「は、はいっ!」

『っっしゃぁ!』

 雄二の言葉に従い明久と友也は先頭に立ち待機場から戦場に向かった。前戦に出るとすぐ目の前で二年BクラスVS三年Bクラスの戦闘が行われていた。

「来た!三年Bクラスだ!」

 誰かの声が上がった。押され始めた三年Eクラスを援護しようと三年Bクラスが動き出してきた。

「お前ら!アレが俺たちの相手だ!三年Eクラスは無視して突き進め!」

 二年Bクラスと三年Eクラスの勝負を背に肯定で三年Bクラスと相対するFクラス。

「友也!」

「行きます!」

「Come on! Jean star!」

友也はガンパッドを操作し懐からジャンスターを出す。

「試獣召喚!」

 明久は召喚獣を召喚するとスパークドールを召喚獣に渡しギンガスパークにライブサインを読み込ませる。

〈ウルトライブ!ブラックキング!〉

 明久の召喚獣はブラックキングにウルトライブする。

 友也はガンパッドを操作し召喚獣を牽制するとブラックキングが突っ込み召喚獣を次々と倒す。他の召喚獣もブラックキングに続き三年Bクラスの召喚獣を倒していく。

「坂本!数人だが三年Aクラスも来たぞ!」

「秀吉、須川!加勢して倒せ!」

「「わかった!」」

 秀吉と須川も明久に加勢する。

「「試獣召喚!」」

 明久を加えて三人に対し三年Aクラスも三人であり人数差では互角である。

「二年Fクラス 吉井明久 VS 三年Aクラス生徒×3

 国語     3058点     平均452点

        木下秀吉    

        351点   

        須川亮

        155点                 」

「ねえ、大事な大学入試の前にこんなヤツらと戦ってバカ伝染らない?」

「心配だよな・・・・」

「先輩方、そんなこと言っていると「そうだ!俺たちバカに勝ったら馬鹿が伝染るぞ!」黙って寝てろ!」

 明久は須川の首に反転エルボを喰らわせ気絶させた。

「明久よ・・・・・やりすぎなのじゃ。意識を失っておるぞ。」

「大丈夫でしょ。それより先輩方、触って伝染るのなら天才に触った人は皆頭いいですよ。でも実際そうじゃないでしょ?第一そんなこと言っている時点で馬鹿だし人間皆バカだから!」

 ブラックキングは三年生の祖父間中に向かい突っ込む。

「ガルムよ、頼むのじゃ。」

「あいよ。ま、明久の言い分も分かるんだがな。」

 ガルムは秀吉の召喚獣に向かい飛び、試召フィールドに立った。ガルムはクロスショットを三年生の召喚獣に放った。三年生の召換獣は回避しようと試みるが掠ってしまう。

「そこ!」

 ブラックキングは特攻し三年生の召喚獣に接近するとラリアットを喰らわせる。

「なんの!」

 三年生の召喚獣がブラックキングを頭上から襲おうと武器を振り下ろしてくるがそれをガルムのクロスショットが三年生の召喚獣を打ち抜いた。

「ありがと秀吉、ガルム!」

 ブラックキングは三年生の召喚獣を両手で捕まえると至近距離で光線技を放った。光線を喰らった三年生の召喚獣は消滅する。

 ガルムは分身すると三年生の召喚獣を挟んでクロスショットを放ち消滅させた。

「後一体じゃ!」

「よし秀吉、合体技だ!」

 ブラックキングは右腕を横に伸ばすと一体に戻ったガルムが乗る。

「即席合体技、ガッツ星人砲!」

 ブラックキングが三年生の召喚獣に向けガルムを投げる。ガルムはもう片方の手にミニクロスショットを持つとダブルバレッドで三年生の召喚獣に乱れ撃ちをし消滅させる。

「明久!秀吉!後退しろ!」

「「わかった!」」

 秀吉と明久は交代して雄二と合流する。すると側にいた友也があることに気づいた。

「坂本君!マズイ状況です!」

「なんだ一条寺?」

「僕らは縦の陣形で攻めていたはずなのにいつの間にか一ヶ所に固まっています。」

「っ!してやられた!」

 雄二はこの時あることに気付いた。

 敵の作戦はいたってシンプルであり二年Bクラスと戦っていたのは一部のEクラス、その中に三年Aクラスの生徒を紛れ込ませていた。

「このままじゃと潰されるのも時間も問題じゃ!」

「分かっている!Bクラスと合流して――「坂本!」根本?」

「僕らは撤退する!殿は任せたぞ!」

「ちょっと待ってよ!それじゃあここで戦っているウチ等は?」

「しっかり引きつけておけよ!」

 根本はそう言うと逃げて行った。

「雄二、別のルートで僕らは生きのびよう!」

「それしかねぇ・・・・・・明久、もっかい戦っておいてくれ。」

「どうしてなのじゃ?Bクラスに続いて逃げたほうが良いのではないかの?」

「それをやったら俺たちは敵の格好の獲物だ。」

「?」

 秀吉は雄二の言うことがわからなかった?友也がフォローを入れる。

「押され始めたら僕らは逃げようとします。そこを敵の伏兵が一網打尽にするというのが相手の作戦です。」

「成程のう・・・・・しかしどう切り抜けるのじゃ?」

 雄二は顎に手を当て必死に考える。

「・・・・・あそこに逃げるぞ。」

 雄二が指差した方向は新校舎の方であった。

「こういう状況での雄二の判断は間違っていない。それにこの状況だとそれ以外方法が無いから雄二の言葉に従うよ。殿は僕と友也がするから瑞希ちゃんと美波が先頭に立って点数が少ないのを引き連れて教室に逃げ込んで!」

「わかったわ!」

「任せてください!」

 明久と友也が殿になって敵を足止めしていた。

「この状況ではこれを使った方がいいね。」

 明久の召喚獣はギンガスパークのクローを開きウルトラマンギンガのスパークドールを出すと明久の召喚獣は掴んでライブサインを読み込ませる。

〈ウルトラーイブ!ウルトラマンギンガ!〉

 明久の召喚獣は銀河に包まれウルトラマンギンガにウルトライブする。

「友也!」

「上昇させます!」

 友也はガンパッドを操作しジャンナインを上昇させるとギンガは飛翔し空中で静止すると胸の前で腕を伸ばししたまま十字に組む。するとギンガの水晶体が赤く染まりギンガの周りに隕石が浮遊する。ギンガは地上に向かい飛び、技を放った。

「ギンガファイヤーボール!」

 ギンガファイヤーボールがその場にいた三年生の召喚獣を一掃する。しかし全てではなかった。そこを逃す友也ではない。

「いきます!」

「Jean Stardust!」

ジャンナインのジャンスターダストを召喚獣に向け放った。ジャンナインはブースターを吹かせジャンスターダストを操作する。

「一時的に一掃しましたので合流しましょう。」

「賛成!」

 明久と友也はその場を走って後にした。

 

「明久、一条寺!こっちだ!」

 明久と友也は雄二たちが逃げ込んだ教室に入った。

「お疲れ。」

「雄二、感謝の言葉よりこの状況を何とかする策をお願い。このままだと犬死だから。」

「わかってっよ!」

 雄二は策を必死に考える。

「美波、状況は?」

「えっと・・・・さっき坂本が言ってたんだけどBクラスが抜けただけで戦力が二割、ここまで来るのに残った戦力の三割を失ったって。」

「あっちゃ~。」

「更にここに立てこもってからウチと瑞希が六割ほど失ったから戦力がほとんど一条寺とアキしかない。」

「つまり・・・・・」

「・・・・・・・五分の一以下だ。」

 雄二の言葉に明久と友也は驚きを隠せなかった。

「流石に計算違いじゃないかって僕も思うよ。」

「確かに疑いたくなるほどの戦力ですね。」

「うるせぇ・・・・・・」

 そんな時明久があることに気付いた。

「ねえ雄二、僕らが相手していたのって三年のB、Eクラスだったよね?結構な数いなかった?」

「ああ、それが?」

「今攻め込んできている敵は少なすぎないと思うんだけど。」

「何ッ!?」

 策士と称される雄二でさえ気付かなかった。いや、今の状況を冷静に対処できていなかった。そんな時タロウがあることに気付く。

「明久、もしや三年Aクラスは各クラスに分散されているのではないのか?」

「どういうこと?」

「考えても見ろ。君たちより上位のクラスである二年Bクラスは三年Eクラスに押されている。多少君たちより試召戦争の経験が少ないとは言えども召喚獣の操作技術はある。それなのに押されているとなると・・・・・」

「三年のAクラスが混じっていると考えられるというわけだね。・・・・・・・・っ!」

「どうした明久?」

「今この状況で孤立しているところに大きな戦力で責められてたら勝機は無いよね?」

「そうだが・・・・・・そうか!」

「・・・・・成程。」

 明久の考えをタロウと友也は理解した。

「なんなのアキ?」

「何か分かったんですか?」

 雄二たちはまだ分かっていないためタロウが説明する。

「この試召戦争で一番落されてはいけないのは?」

「それは言うまでも無いのう。」

「・・・・・霧島sh・・・・・・・っ!」

『っ!?』

 一同気付くと明久は首を縦に振る。

「この状況で一番狙われているのは霧島さんだよ。」

 その言葉に雄二の今まで保っていたものが壊れた。

「・・・・・・・・コイツはもうお手上げだな。」

 その言葉を聞いた明久は雄二の胸ぐらを掴んだ。

「おいなんだよ明h―――」

「歯ぁ喰いしばれ!」

「グヘェ!」

 明久は雄二の顔を思いっきり殴った。

「な、何しやがる明久!」

「雄二、なんでそんなすぐ諦めるの?」

「だってそうだろ!圧倒的戦力差にこの背水の陣!どう見たって勝てえる見込みはねぇ!」

「だからって諦めるなんておかしいよ!ピンチはチャンスでもある!」

「チャンス?この状況がか?」

「逆転の発想だよ!三年Aクラスの戦力が今分散しているということは最小限の防御しかないと考えてもおかしくない!そこを一気につけこむんだよ!」

「三年Bクラスを突破できるか怪しいこの状況でか?ふざけるのも大概にしろ!」

「・・・・・・・・じゃあ近くで見ればいいじゃないか。」

「なに?」

「僕が出来るか出来ないか近くれ見ればいいじゃないか!」

「お前・・・・・・分かったよ。どうせ行く先絶望しかないんだったらお前に着いていって殺られて方がましだしな。」

「その絶望を僕が希望に変えてやる!」

 明久はスパークドールの入った鞄から数体出した。

「明久、いかん!それは危険だ!」

「危険でも何でもやるしかない!」

 

 明久はBクラスと戦闘を行っている場所の前に立つと召喚獣を召喚する。

「試獣召喚!」

 明久は召喚獣にいくつかのスパークドールを渡す。

〈ウルトライブ!Uキラーザウルス!ヤプール!テンペラー星人!ザラブ星人!ガッツ星人!ナックル成人!〉

 明久の召喚獣は光の弾をギンガスパークの先端に宿しながら三年生のいる場の上空を跳んだ。

「吉井だ!」

「コイツを倒せば俺たちは勝ったも同然だ!」

「そうは問屋がおろしませんよ、先輩!」

〈合体!Uキラーザウルス・ネオ!〉

 突如出現したUキラーザウルス・ネオに三年生一同驚きを隠せずにいいた。またそれと同時に動けなくなった。Uキラーザウルス・ネオによって三年生の召喚獣は踏み潰される。

「一気に蹴散らしていくよ!」

 Uキラーザウルス・ネオはトゲミサイルを全弾発射し回りを一掃すると下腹部の顔にエネルギーを溜め込み大きな光線を放った。光線が放った後には召喚獣は残っていなかった。

「皆続いて!」

 明久にFクラス一同続いた。

(明久の奴・・・・・・・・・・ずげぇじゃねえか。スパークドールあるとはいえ無茶で一歩間違えば自分が負けちまうのに恐怖しないでやりやがった。・・・・・・・・恐怖してないのか?あいつはいつも戦っているが恐怖している姿なんて一度も見た事が無い。それどころか自分から突っ込んでばっかだ。アイツは・・・・・・・・・・恐怖しているからこそそれに立ち向かってんじゃないのか?なのに俺は・・・・・・俺の方が馬鹿だな。何事にも自分を守ることばっかに執着して結局大事なモンを守ろうとしていねぇじゃねぇか。ありがとよ、明久。)

 雄二は明久の背中を見ながらそう思った。明久は肩で息をしながら走る。

(やはり無茶が過ぎた。いつもよりも連戦のこの状況、ただでさえUキラーザウルスは他のスパークドールと違い負担が多きにもかかわらず明久はUキラーザウルス・ネオにまで手を出した。後出来るのは一回だけと考えたらいい。)

 タロウは明久の負担を考え小声で明久に忠告した。

「わかったよ、タロウ。でも僕は限界は超えるくらい頑張るから。」

 

 明久たちはしばらく走ると高城の姿が見え、高城が三年Cクラスの教室に身を隠している姿が見えた。明久は三年Cクラスの教室の前に立った。

「ようこそ姫路瑞希嬢とその他方々。歓迎いたします。」

教室の奥から聞こえてきた高城の声が響いた。

「・・・・・・・・高城先輩、アナタはこうすることを全て予想してたんでしょ?」

「ええ。その通りですよ吉井明久君。ですが今アナタに話したわけではありません。姫路瑞希嬢、アナタと話がしたいのです。君も分かっているでしょう。」

「・・・・・・・・僕らを逃がさないということですか?」

「すばらしい。良くぞそこまで考えてくれましたね。」

 高城は部屋の奥で拍手をする。

「どうでしょう姫路瑞希嬢、お話を聞いてくれませんか?」

「・・・・・・・・・何のお話ですか、高城先輩。」

「ありがとうございます。ですが顔を直接拝めないのが少々心苦しいですがこの際そういうことは気にしないことにしましょう。姫路瑞希嬢、私は貴女のことが好きです。」

 皆が聞いている前で堂々と高城は言った。

「私について来てください。私ならアナタを幸せに出来ます。アナタをあの古くて汚れた教室から解放して上げられます。」

「わ、私には好きな人がいますから・・・・・」

「ですがその方はアナタを幸せに出来ますか?あなたに最高の環境を整えてあげることが出来るんですか?」

「あとちょっとで私達だってAクラスにいけそうでした!今だってこうしてがんばって――」

「頑張って、身体の弱いアナタにこんな無理をさせていますね。」

 その高城の言葉に明久が口を挟んだ。

「すみません高城先輩、これ以上の会話は無意味に見えますので切り上げてもらっても構いませんか?」

「おや吉井明久君、何故アナタが口を挟むのでしょう?」

「確かに口を挟むとじゃないかもしれません。でも瑞希ちゃんは自分が負担になったいるのがいやだからこうして頑張っている。そんながんばっている瑞希ちゃんをあなたがとやかく言うことじゃなありませんよ。」

「ですが彼女の身体は――」

「そうやって甘やかすだけでしたら人は強く慣れない。時に自分から危険に挑むからこそ人は強くなっていくんです。」

「君は何者ですか?」

「文月学園二年Fクラス兼観察処分の吉井明久です。それ以上でもそれ以下でもありませんよ。」

「・・・・・・・・・・いいでしょう。今日はここまでとします。どうぞお帰りください。」

「・・・・・いきましょう、皆さん。」

 姫路の言葉に一同その場を去っていくが明久だけが残っていた。

「おや、どうかしましたか?」

「一つだけ、いい忘れていたことがあります。」

 明久は扉越しに高城を指差した。

「あなたは絶対に僕が倒す!」

「・・・・・楽しみにしていますよ、吉井明久君。いや、ウルトラマンギンガ。」

「っ!?」

 明久は驚愕した。

「ふふふ、早くしないと一人だけ狙われますよ。」

「・・・・・・」

 明久は無言でその場を後にした。

「明久、遅かったじゃねえか。」

 明久が姫路達に合流すると雄二が壁に背もたれをしていた。

「やっと戻ったよ。全く手が痛かったんだから。」

「悪いな。身体は頑丈だから仕方ねぇんだ。」

「・・・・・ウルトラ念力喰らいたい?」

「よせ。今は喰らいたくねぇ。それよりここを斬りぬけっぞ!」

 雄二の目には曇りは無く、闘志があった。

「野郎ども!さっきの騒ぎは終わっちゃいねぇ!この気を逃さず校舎から脱出だ!」

『おっしゃ―――っ!』

「姫路と島田と明久は最後尾にいろ。一条寺!ムッツリーニ!秀吉!頼んだぜ!」

『わかった!試獣召喚!』

 友也はジャンナイン、ムッツリーニはバレル、秀吉はガルムで突っ込み皆の退路を切り開いた。

 

 信仰者から脱出した明久たちは保健体育フィールドに向か一直線に走っていた。

「ありました!」

「おしっ!ムッツリーニ、頼んだぞ!」

「・・・・・わかった。」

 試召フィールドに入ると同時にムッツリーニは「・・・試獣召喚」と呟くように召喚獣を呼び出した。

「・・・任せろ。」

 バレルがムッツリーニの召喚獣と一つになり敵を見据えて切りかかろうとした瞬間的の陣形が突然崩れた。

「な、なんじゃ!」

 崩れ落ちる敵の奥から工藤が姿を表した。

「見つけたよ、ムッツリーニ君!」

「・・・・・・・・工藤愛子!」

「坂本君!早くこっちに!」

「工藤!どうしてお前がここにいる?」

「説明は後、急いで!」

 明久たちは工藤に続いた。

「無事で何よりだよ、吉井君たち。」

「ほらっ!さっさと抜けるわよ!」

「久保君!優子さん!」

 Aクラスでも屈指の点数を誇る三人が助けに来てくれた。

「さあいくよムッツリーニ君!」

「・・・心得た!」

 ムッツリーニと工藤の域のあったプレーによって敵を蜘蛛の子を散らすように次々と倒していく。

「ところで優子さんなんでこっちに?」

「そうだった!助けて欲しいのよ!」

「どういうこと?」

「代表が『私が囮になるからFクラスを助けに行って』っての一点張りで聞かなくて!」

「っ!ゴメン、ちょっと走ってくる!」

 明久は身体が悲鳴を上げているのにも関わらず霧島の元まで走った。

 

「大分削ったな。」

「コイツさえ倒さばこの勝負も終わりだ!」

「もう一押しね!試獣召喚!」

 三年Aクラス二人と三年Cクラス二人が霧島の止めを刺そうと霧島に迫る。

「私は・・・・・・・負け・・・・・・られない・・・・・」

 霧島に止めを刺そうと迫ったときであった。

「霧島さん!」

「・・・・・っ!吉井!」

「なに!」

「吉井だと!」

「試獣召喚!」

「二年Fクラス 吉井明久 VS 三年Aクラス生徒×二

 社会     3312点     平均151点

                三年Cクラス生徒×二

                 平均110点     」

 明久の召喚獣はギンガスパークのクローを開きウルトラマンギンガのスパークドールを出すと掴み、ライブサインを読み込ませる。

〈ウルトラーイブ!ウルトラマンギンガ!〉

明久はウルトラマンギンガにウルトライブする。

「今日最後のウルトライブ!ど派手にいくよ!」

 ギンガは腕を胸の前で従事に組み、身体の水晶体を黄色に輝かせ左手を天に上げるとギンガの頭上に黄色い銀河が現れる。

「ギンガサンダーボルト!」

 ギンガは三年Cクラスの召喚獣にギンガサンダーボルトを喰らわせる。喰らった召喚獣は消滅する。ギンガは再び胸の前で腕を十字に組む。

「させるか!」

 三年Aクラスの召喚獣がギンガに攻撃しようとする。ギンガは身体の水晶体を白に輝かせると右腕に光の刃を形成し、三年Aクラスの召喚獣を切り裂いた。

「ギンガセイバー!」

「まだだ!」

 長槍を手にしている三年Cクラスの召喚獣がギンガを突こうとしてくる。ギンガは胸の前で腕を十字に組むとギンガの水晶体が桃色に輝く。ギンガは三年Cクラスの召喚獣に両腕を突き出す。

「ギンガサンシャイン!」

 ギンガは三年Cクラスの召喚獣にギンガサンシャインを直撃させ召喚獣を消滅させる。

「くそっ!ここは撤退して―――」

「させない!」

 ギンガは胸の前で腕を十字に組むと身体の水晶体を青に輝かせる。ギンガは両腕をSを描くように左右に大きく広げるとL字に腕を組む。

「ギンガクロスシュート!」

 ギンガクロスシュートが三年Aクラスの召喚獣に直撃し、消滅した。

「霧島さん、こっちに!」

「・・・・私はまだ・・・・」

「早く!」

 明久は霧島の腕を引っ張り雄二たちのいる旧校舎まで引き返した。

「よくやったぞ明久!」

「お疲れ、明久君。」

 雄二と優子から明久への感謝の言葉が送られた。

「・・・・・今からでも遅くないから戦ってくる。」

「代表!いい加減に――――」

 優子の堪忍袋の緒が切れ、激怒が飛んだ。

「・・・・そうでもしないと、雄二に見てもらえないから。」

 その時の霧島の声が何故か響いた。

「・・・・雄二は、小山への返事を試召戦争が終わった後でと言ってた・・・・・私との約束が無くなってからって。」

 そういう霧島の目には大粒の涙を溜めていた。

「・・・・雄二が私じゃなくて、小山を選んだのが分かったから・・・・・・・せめて一回でも好きって言って欲しくて・・・・・」

 そんな言葉を言っている内に霧島は涙を流していた。一同の視線が雄二に集まった。雄二は霧島の前まで歩いて近づきこう言った

「・・・・・翔子、俺に指揮権をくれ。」

「「「なっ!?」」」

 雄二の言葉に明久、一条寺、タロウ以外のみんなが目を剥いた。

「ちょっと坂本!アンタいい加減にしなさいよ!」

「そうよ!代表が可哀想だわ!」

「坂本君!あんまりです!信じられません!」

「今のはボクでも許せないよ!」

 女子陣の怒りの声が雄二に向けられた。そんな言葉を受けている雄二を見て明久は溜息を吐いた。

「雄二、頭はいいけでど不器用だね。ま、そこに霧島さんが惹かれたんだろうけど。」

「ですね。」

「どういうことよアキ?」

「どういう言うことなんですか、一条寺君?」

 美波と姫路は二人の言葉に疑問を抱く。

「坂本君は霧島さんが全体の状況を把握していながら戦っていることを知っています。」

「でもそれって霧島さんに大きな負担を掛けているんだよね?だから雄二はそんな霧島さんの負担をなくそうと思って指揮権を欲しているんだよ。つまり・・・・・」

「「雄二はきり島さんが好きだからあえて不器用な言葉でそう言ったんだよ。」」

 その言葉に一堂唖然とする中雄二は頭を抱えた。

「たく・・・・・・お前ら糧に言うんじゃねえよ。もう六年も待たせたんだから計画通りにさせろよ。」

「回りくどいんだよ、雄二は。」

「そうですね。どうせ坂本君のことですからそうんな事だろうと思ってましたけど。」

 明久、雄二、友也が話している中女子一同顔を赤くする。

「たく、泣くなよ。」

 雄二は霧島の涙を拭う。

「雄二、明日は巻き返すんだよね?」

「当たり前だろ。俺を誰だと思ってんだ?」

「二年Fクラス代表坂本雄二、元神童と称され悪知恵も働いて、タロウのウルトラ念力を喰らう男。」

「そういえば今日はまだやっていなかったな。ウルトラ念力!」

「やらんでいいわ~~~~~~~~!」

 皆はそんな雄二の姿を見て笑い、この日の試召戦争の終わりを告げるチャイムが鳴った。

 


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