イズマエルの一軒から三日が経ち、明久たちはDクラスがあった教室にいた。
「しっかし、ややこしいよね。」
「そうですね。」
椅子に座っている明久に友也も共感する。今の状況を簡単に整理しよう。
Aクラス教室―Aクラス
Bクラス教室―Bクラス
Cクラス教室―Dクラス
Dクラス教室―Fクラス
Eクラス教室―Eクラス
Fクラス教室―Cクラス
「確かにそうだな。だがAとBの教室だとすぐにこっちが消耗するからな。」
雄二の言葉に一同理解する。最近成績が上がってきた二年Fクラスだが伸びる人は指で数えるほどしかおらずほとんどは種に芽が生えた程度、目が茎になるとまではいかないのである。
「それにしても・・・・・・・姫路は今日も遅いのう。」
秀吉が教室内を見渡すが姫路の姿は見当たらない。最近HRぎりぎりになった時間帯に姫路が登校してくることが多い。
(タロウ、もしかして・・・・・)
(おそらく学園長が言っていたあの事だろうな。)
明久とタロウには心当たりがあった。だが本人がそう思っているかもわからないしうかつには言えないため二人は黙っている。友也のなんとなくだが分かっていた。
一方その頃姫路は廊下を歩きながら考えていた。
(学園長からの海外留学のお話・・・・・・・・確かにいいのかもしれませんがそれで明久君と離れるのは嫌です。明久君のことを私は好きですし・・・・何より明久君は私が好きなのかどうか分かりません。学校を卒業してからも会えるかもしれませんが・・・・・でも・・・・)
姫路は複雑な心境のままFクラスに入る。
「おはようございます。」
姫路が挨拶をすると皆も挨拶で返す。
「さて姫路がきたところで明久、Cクラスにこれを持って言ってくれ。」
雄二はそう言うと明久に紙を渡す。
「はいはい。」
明久は雄二の言葉に従いCクラスに向かう。が、明久は廊下で髪の中身を確認すると
『 ←あぶり出し。』
(・・・・・・・・・・これは僕が殺されるパターンだな。)
明久はポケットからペンを取り出し雄二が書いた部分をなぶり書きして消し、この教室で上手く過ごす方法を書いた。そんなところに工藤と優子が来た。
「あれ、吉井君?」
「あ、工藤さんに優子さん。」
「明久君怪我は大丈夫?」
「うん、ありがとう優子さん。」
明久のことを気に掛けてくれた優子二明久は笑顔でお礼を言うと優子は顔を赤くする。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫!?問題ないわ!」
「そう?ならいいけど・・・・」
気付かない明久に工藤は溜息を吐いた。
「それより吉井君、その紙は?」
「雄二がCクラスにこれを渡してくる様にって言ってたんだけどあぶり出しって書かれてて・・・・・・」
『あ~。』
二人は明久の言いたいことがなんとなく分かった。
「それで今別のに書き直したんだよ。一緒に行く?」
明久の提案に二人は乗った。
三人がCクラス(Fクラス教室)の前に来ると自棄に物音がした。明久は手鏡で窓から中の様子を観る。
金属バットを持ってる人、胴着に着替え構えてる人、ナイフを持っている人などどうぞ頃に行きますから来てくださいといわんばかりの人が多い。
「とりあえず普通に入ったら怪我ではすまないかもね。」
二人は首を縦に振り頷いた。明久はドアをノックすると紙を廊下に置き、その場からすぐさま去った。二人も明久に続き逃げる。
そして数秒後
『アンニャロウ共がぁあああああああああああ!ふざけたこと書きやがって!でも貰っておく!』
「「「貰うんかい!?」」」
と多くから聞こえてくる小山の声に三人は思わずツッコミを入れた。
「まあFクラスが勝利のために入念な計画を立ててから実行するのは分かるわ。でも巻ける気は無いから。」
「そうだよ吉井君。僕も負けるつもり無いからね。」
二人はそう言うとAクラスに戻って行った。
「雄二、戻ったよ。それと一発殴らせて。」
「おい明久、かえって着せ第一声がそれか?」
「紙にあぶり出しと書かれててそれを私に言ったらっぼくは確実に重症だったよ。」
「お前なら切り抜けるだろ。それに気を詰めすぎると負けるだろ。」
「それって雄二にも言えるよね。いろんな言い訳し僕に嫌がらせをしたいだけでしょ。」
「ああ。」
「ウルトラ念力!」
「ぎゃあああああ!」
タロウがウルトラ念力で制裁する。
「全く雄二は、学習しなよ。」
「お前なぁ!」
そんな時西村先生が教室に入ってきた。
「よーしお前ら、席に付け。坂本、さっさと起き上がれ。」
西村先生の指示に従い席に座る。
「よーしお前ら、今日はAクラスとの試召戦争があるな。俺から言うことはただ一つ、全力でやって来い。坂本も何か一言言え。」
「うぃーす。」
雄二は席から立ち上がると教卓の方まで行く。
「・・・・・・・・」
『・・・・・・・・』
何も言わずただみんなの前でたっている雄二。クラスメイトもそれを黙って待っている。
「さて、それじゃお前ら待たせたな。このメンバーが揃ってから半年、色々なことがあった。俺たち箱とあるごとに散々馬鹿にされてきた。そこにいる明久も観察処分という看板を背負っているがこの半年間、本当に馬鹿だったか?確かに俺らは馬鹿をやらかしたが俺らを軽視していたヤツらをことごとく倒してきた。いいかお前ら。俺たちは――――Fクラスは最強だ!」
その時試召戦争の始まりを告げるチャイムが鳴った。
「全員実力を示せ!学年最高位、獲りに行くぞ!」
『っっっしゃぁぁあ―――っ!』
廊下でFクラス生徒とAクラス生徒とFクラス生徒の試召戦争が繰り広げられていた。
「二年Aクラス生徒×10人 VS 二年Fクラス生徒×5人
化学 平均244点 平均114点 」
「Fクラスのヤツら成績上げてきたな!」
「だがこっちも負けられん!長物班―――突撃!」
今いる敵部隊の召喚獣は全て長物を武浮きとする召喚獣で構成されている。それに対しFクラスはそれが無く接近戦の武器ばかり。
こんな話がある。信長が幼少期に当時にしては長すぎる竹槍と当時では当たり前の長さの竹槍を持った部隊を対峙させた。結果は長すぎる竹槍部隊が狩った。何故か。それはリーチの差を利用したから他ならない。槍は基本突撃に使用することが多いがおそらく信長は槍の他の使い方を考えたのであろう。長い武器の短所は間合いを詰められれば殺られる。そこで逆転の発想が生まれることがある。詰められる前に打って出ればいいのであると。理屈は簡単である。誰もそれをしようとしなかったが信長はそれをやってのけた。
長物部隊がFクラスの召喚獣に接近しようとしたとき明久が入ってきた。
「試獣召喚!」
「二年Fクラス 吉井明久
化学 2031点」
「ちょっと取れなかったか。」
明久は召喚獣にスパークドールを投げ渡すと召喚獣はギンガスパークにライブサインを読み込ませる。
〈ウルトライブ!スノーゴン!〉
明久の召喚獣はスノーゴンにウルトライブする。スノーゴンは手と口からスノーブリザーを放った。一部の召喚獣は回避運動を取りスノーブリザーを回避したが直撃した召喚獣は動かなくなった。スノーゴンは氷付けになった召喚獣に接近すると召喚授受をフィールド外に投げ飛ばす。それによって召喚獣は消滅する。スノーゴンが投げ飛ばしている間にFクラスの召喚獣がAクラスの召喚獣一体を囲み一斉攻撃、召喚獣は消滅する。
明久の召喚獣はライブアウトすると次のスパークドールを渡した。
〈ウルトライブ!ネオガイガレード!〉
ネオガイガレードは召喚獣に向かって飛行形態で特攻する。ネオ外ガードのスピードは彗星の様に速い。故に避けることは出来ない。直撃した召喚獣は身体の上半身を消して消滅する。ネオガイガレードは左の爪を召喚獣に伸ばし自身に引き付けると右腕の刃で召喚獣を斬った。
「後退!」
Aクラスの生徒は階段近くまで交代する。それを追うFクラス生徒達。その行動の意味に気付いた明久が声を掛ける。
「戻れ!」
しかし時既に遅く、待ち伏せしていたAクラスの召喚獣がFクラス召喚獣を襲い、突撃したFクラスの召喚獣は消滅する。
「明久君、援護に来ました。」
「助かるよ友也。」
明久は召喚獣にスパークドールを渡し、ギンガスパークにライブサインを読み込ませる。
〈ウルトライブ!アリブンダ!〉
明久の召喚獣はアリブンダにウルトライブする。
「なんか虫みたいだな。」
「蟻?」
「蟻地獄じゃない?」
Aクラスの生徒がアリブンダに視線を集めている内に友也はガンパッドを操作する。
「OK! Come on! Jean star!」
ジャンスターが試召フィールドに現れる。
「JEAN FIGHT!」
ジャンスターはジャンナインに変形する。
「お~。あれ久々に見たわ。」
「やっぱカッコイイ。」
「敵が腑抜けている内に倒す!」
アリブンダは召喚獣に火炎放射をし、ジャンナインは射撃を行い召喚獣に攻撃を仕掛ける。
「しまった!敵の召喚獣の姿にうつつを抜かした!」
「チクショー!」
Aクラスの召喚獣が次々と消滅していく。Aクラスの生徒が後退して行くと明久と友也は後方の部隊と交代した。