バカとギンガと召喚獣   作:ザルバ

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大分遅くなりましたが新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。


球技大会 その三

 三年Aクラスとの球技対決が終わり時間は昼休み。明久は姫路達と食事を追え、お手洗いから姫路達の元に戻ろうとしたとき頬に赤い紅葉の跡がくっきりと残っている雄二が歩いてきた。

「いって~なぁ~。翔子の奴あんなもの持っててもしょうがないだろ・・・・」

 一人事を言っている雄二に明久は話し掛ける。

「どうしたの雄二その頬の紅葉。なんかのオシャレ?」

「ああ、これか?これは翔子の奴が・・・」

 雄二は頬の紅葉の経緯を話した。

 雄二が言うには姫路達と一緒に食事しようと霧島が来て二回戦で負けてしまったことを報告したとこと雄二が婚姻届と勘違いし「いらないだろ、そんな物」と言った途端に霧島がビンタ、同時に霧島は涙を流してその場から去った。

「・・・・・」

 明久は呆れて溜息は吐いた。

「おい明久、なんだその溜息は?」

「雄二、君は勘違いしているよ。」

「は?」

 雄二は頭を傾げる。

「霧島さんが没収されたのは婚姻届じゃなくて如月ハイランドで貰ったブーケだよ。」

「なっ!?」

 雄二は驚く。

「第一、 婚姻届は桐嶋さんの部屋で徹底的に管理されているんでしょ?それをわざわ

ざ取り出したらメンドクサイじゃん。」

「・・・・・たく、メンドクサイんだよアイツは・・・・」

 雄二はそういいながら頭を掻く。

(全く、雄二は素直じゃないね。)

 明久は思った子を口にしなかったが、少なくとも鈍感な明久には思われたくは無いだろう。

 雄二が去った後明久はある人に電話した。電話の相手にある交渉をし、向こうは受諾。明久は電話を切るとある人の下へ向かった。

 向かっている最中明久にタロウは話し掛ける。

「明久、君は優しいな。」

「そんなんじゃ無いよ。それより雄二はいい加減正直になるべきだと僕は思うよ。」

「どういうことだ?」

「雄二は婚姻届と勘違いしてた。普通はそう思わないよね。」

「ああ。だがそれは霧島本人が持っているものではないのか?」

「でもなんでそんな事を予想したのだと思う?」

「それは幼馴染で・・・・ん?でも幼馴染がそんな物をいつも持ち歩くと思うか?何時も目にしていないといけない。鞄の中にあるなら鞄の中を見なくてはならない。だが彼は一緒に登校するとき以外は・・・・・成程。」

 タロウも明久の言いたいことが分かった。

「明久、察しがいいのは悪く無いがもう少し自分のことにも気付いてはどうだ?」

「何のこと?」

「いや、なんでもない。(明久の場合、気付いたとしても誰を選ぶか迷う方だな。)」

 タロウは気付いた先の明久の反応を少し楽しみにしている。

 

 時間は流れ決勝戦。対戦相手は教師人チーム。明久が観察処分になるまでは教師達が召喚獣を使い雑用をしていた。そのため教師人の召喚獣の扱いは長けている方だ。

「こうなったら最初っから本気で行くぞ!マグナ!お前もこっからは参加しろ!」

「おうよ!さっきの野球って奴を見てたらやりたくてうずうずしてたぜ!」

「ガルムよ、頼めるかの?」

「別にいいぜ。で、銃は使っていいのか?」

「ダメなのじゃ。」

「・・・バレル。」

「・・・皆まで言うな。分かっていることだ。ハンティング以外にも娯楽として楽しませてもらう。」

 ラッシュハンターズも加わると勝てる可能性が広がってきた。

 そして試合が開始された。先攻は2年Fクラス、トップバッターは雄二とマグナ。

「おっしゃー!ぶっ飛ばしてやらぁ!」

 マグナが喋っている光景は何度も見かけているため皆はもうなれたものだが一部教師人は見慣れていないため少し戸惑っている。

「プレイ!」

 審判の指示の下試合が開始された。ピッチャーから投げられてボールをマグナはバットで打とうとするがボールが来る前にマグナはバットを振ってしまいボールは先端にかすって内野ゴロになった。アウトと思われたがマグナの素振りによりとてつもない爆風が起こり召喚獣を吹っ飛ばした。これによってマグナは一塁に出れた。

「なんとかなったな。」

「けどこっからはあんな馬鹿な真似は出来ないぞ。」

「・・・わかっている。バレル。」

「任せておけ。一塁打者が出たらバントと言うのをやればいいのだろ?」

 バレルの言葉にムッツリーニは頷いた。

「陽動役と言うなら任せろ。ところでベースは一つ一つ踏まないといけないのか?」

 バレルがそう言うとコクリと頷く。

「・・・陰分身とかの技での陽動もダメだぞ。色々と反則になる。」

「・・・了解した。」

 バレルはバッターボックスに立つと左手でバットを握り、右のハサミで支え構える。

「なんとも異様な光景じゃのう。」

「そうだね。」

 秀吉の言葉に明久は共感する。左手は支えるだけとよくある言葉だが今回は右手と言いたい。しかしバットは両手で振らないと片手にすっごい負担が掛かってしばらく痛い。これは経験上から。

 ピッチャーが投げたボールをバレルはバントする。典型的な戦法で普通に対処すればワンアウトであるが相手が悪かった。バレルの足は速くセーフになりランナー一・二塁かと思われたが・・・・

「アウト!」

 二塁にボールが投げられアウトになるマグナ。言うまでもないかと思うがマグナが二塁を走り抜けたからである。

「なにやってんだヒヨッコ!」

「だって一塁でも走り抜けてOKだったんだから二塁でも大丈夫だって思ったんだよ。」

「試合をちゃんと見やがれ!」

 その後に続く打者二人は見事に三振してチェンジ。

「あっけなかったな。」

「マグナ、次はへましないでよ。」

「わ、わかってるよ・・・・」

 タロウが言うと明久はジト目でマグナを見た。マグナは返事をするがいささか不安がある。

 そんな不安の中教師陣の攻撃。一番バッターがダイナのボールを打ちライト方向を抜けた。ランナーは二塁の方へと向かおうと走る。しかしセンターを守っていたガルムが駆けつけるとボールを手に持ち―――

「ホークショット!」

 思いっきり二塁に向け投げる。二塁にはダイナがいた。鳥類の体は投擲に適しているため結構遠距離に投げることが可能である。そして見事にアウト。続く打者も内野ゴロになるとバレルが活躍したりクラスメイトが活躍してチェンジ。しばらくこの攻防戦が続いた。

 そして八回表。ここまで高橋先生の珍プレイがあった。いきなり二塁に向かって走ったり前のランナーを抜いたりなどルールを知らないと言うか抜けている点がある。

 バッターはダイナ。ピッチャーから投げられた球を打ち二塁打。続くバッターはガルム。

(よし、防御体制は既に把握している。ここで勝負を仕掛ける。)

 ガルムはバットを手に試行錯誤、そして勝てる可能性の高い戦法を使う。

 ピッチャーが場オールを投げガルムの目がボールを捕らえバットの慎に当てる。

(ドンピシャ!)

 ガルムが打った打球を伸び、ホームランになる。

『よっしゃ!』

 二点を先制し歓喜が沸く二年Fクラス。教師陣の目の色が変わった。

「中々やるようだな。ピッチャー交代、私が行く。」

 そう言ったのは西村先生であった。その言葉に歓喜は止んだ。

 西村先生のピッチングに三者凡退し八階裏には三点取られた。

何とか押さえ九回表、二年Fクラスの攻撃。バッターはマグナ。

「一回目の借りはここで返してやるぜ!」

 マグナは初回の攻撃以降九番バッターの補佐としてバントをする機会ばかりが多かった。本人はかっ飛ばしたいと言う思いが強かったが初回での失態もありそんなことはしなかった。

(ここで三振したらゼッテー後悔する。なんとしても打ってやるんだ!)

 マグナは一所懸命に闘志を燃やす。西村先生の初球、ガルムですら追いつくのがやっとの剛速球が投げられた。

(な、なんて球だ!だが俺とてハンターだ!一度決めた獲物は是が非でも取ってやる!けど・・・・どーしたら・・・・ん?あるじゃねえか俺にしかで気無い技が!)

 マグナは意識を集中させバーサクを発動させる。

「なんだか知らないがこのまま三振を取らせてもらうぞ坂本!」

 西村先生がボールを投げる。だがこの時西村先生は三つ間違いを犯していた。

 一つ、マグナの変化を軽視し、勝てると慢心していたこと。

 二つ、マグナのバーサクがミサイルをも止まって見えるほどの身体能力向上効果があること。

 そして三つ、相手がハンターであることである。

「うぉおおおおおおおおおおお!」

 マグナは雄叫びを上げながらバットを振る。ボールはマグナのバットに当たり吹っ飛ぶと同時にとてつもない爆風を生んだ。爆風によって守備の召喚獣は点数が削られ吹っ飛ばされる。打球は場外ホームランになった。

「よっしゃ!これで最初の借りは返してやったぜ!」

 マグナは塁を回る。

「中々やるようだな、だがここからはそうはいかんぞ。」

 西村先生が闘志に燃える中キャッチャーをしている先生が話し掛ける。

「すみません、西村先生。投げる球の速度をもう少し抑えてもらっても構いませんか?」

「どうしてですか?何か問題でも?」

「ええ。さっきの暴風でかなり点数を削られてマトモにあの西村先生の球を受けられないんです。」

「なっ!?」

 予想外の出来事に西村先生は驚く。その後はバレルの足の速さに対応できず四点目を取られ形勢逆転し、迎えた九回裏。バッターは西村先生。2O2S0B。ダイナが最後の一球を投げFクラスの勝利となった。

 


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