「はぁ~~~~~~。」
長い溜息を吐きながら自宅のソファーに座っていた。
「どーしたらいいのよ。」
優子は頭を抱えていた。学校のPR用に撮影が明日行われることになっているのだが優子自体は歌が下手である。勉強面では秀吉より優れているが歌などの身体を使った表現では秀吉より劣っている。学校でのイメージを守りたいが故に優子は悩む。
「姉上、今戻ったのじゃ。」
そんな時丁度帰宅した秀吉がリビングにが入って来る。
「む?どうしたのじゃ姉上?」
「なんだか悩んでいるみたいだな。」
秀吉もガルムも優子の異変に気付く。優子は事情を話す。
「成程のう。それは問題じゃのう。」
「お前さんにも苦手なモンがあるとは驚いたぜ。まぁ、あって当然か。」
「で、何かいい案は無いの秀吉?」
「そう言われてものう・・・・わしらは二卵性双生児じゃし・・・・」
「ん!いいこと思いついた。」
ガルムが思い立ったことを提案する。
「入れ替わるってのはどうだ?」
『はい?』
「お前らはそっくりだ。優子は・・・・晒を巻かないといけないな。そうすりゃあ優子は名誉を守れるってモンだ。」
「成程のう・・・・それはいい案じゃ。」
「晒はいいわ。キツイから。」
こうして入れ替わり作戦が行われることになった。
「秀吉、おはよ。」
「お、おはようなのじゃ明久。」
優子は断層姿で明久に挨拶をする。
(よ、よく考えたら明久君と至近距離で接することを忘れてたわ////)
優子は顔尾を紅くする。
「大丈夫秀吉?熱でもあるの?」
明久はそう言うと優子のおでこに自身のおでこを当て体温を計る。
(あ、明久君が////////)
優子は一気に茹蛸の様に紅くなる。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫なのじゃ明久よ。それより今日は何をするのかのう?」
「ああ、補修の事?それだったらここにあるプリントを終わらせたらいいだけの話だから大丈夫だよ。」
「そ、そうか。分ったのじゃ。」
秀吉の演技をする優子。秀吉に似せようと努力はしているが何処かぎこちない感じがするきもしない。
「・・・・・」
そんな優子に明久は疑問を抱く。
「・・・・よし、終わった。」
「も、もう終わったのかのう!?」
「うん。80が教えてくれていた範囲が出てたからね。」
「確か・・・・地球では大和先生じゃったかのう?」
「うん。すごいよねー。ウルトラマンで地球防衛チームの一員で学校の教師なんて。西村先生の場合教師で補習担当で鉄の男だけど。」
「そ、そうじゃのう。(明久君の場合はウルトラマンギンガで頭良くて唐変木だけどね。)」
優子は言葉では相槌を打つも内心は違っていた。
「西村先生は終わったら提出して帰っていいって言ってたから帰ろっか。」
「そ、そうじゃな。」
明久と優子は一緒に2-Fを出る。
(よくよく考えてみたら明久君と一緒に二人っきりで帰るなんて今までなかったわ・・・・・・・ふ、二人っきり!?)
優子は冷静に状況は分析した瞬間に顔が紅くなった。
「ん?この声・・・・」
明久は優子と廊下を歩いているとある教室から歌声が聞こえてきた。
「ちょっと覗いてみよっか。」
明久はそう言うと優子の手を引っ張り2-Aクラスを覗いた。そこにはAクラスの生徒に混じって校歌を合唱している秀吉の姿があった。
(やっぱり秀吉は上手い。勉強面じゃああたしの方が上でもこういう面じゃあ・・・・・)
「秀吉の歌っている姿を見て憂鬱になっているの、優子さん?」
「ふぇっ!?」
優子は明久の言葉を聞いて驚いた。
「バレバレだったよ。ぎこちない仕草だったから。」
「うぅ~//////」
「もしかして優子さんって・・・・・歌が苦手な方?」
「・・・・・・ええ、そうよ。」
優子はそう言うと溜息を吐く。
「だったら勉強と同じように頑張ればいいじゃん。」
「でも・・・・」
「僕も秀吉も手伝うからさ。」
「えぇっ!?」
優子は明久の思いもよらぬ言葉に驚きを隠せなかった。
「苦手なら上手じゃなくても出来るかぎり頑張ればいい。自分の限界を超えちゃったら面白いでしょ?」
明久は無邪気な笑顔で言う言葉に優子は見惚れてしまう。
「大丈夫?」
明久はおでこを当て体温を測る。その瞬間優子の体温は一気に上昇し顔から湯気を出しながら気を失った。
「ゆ、優子さん!?」
「ん・・・・・」
優子が目を覚ますとそこには見慣れた天井があった。自身の家である。
「あれ・・・・私・・・・・」
優子は徐々に何があったか思い出すと顔を紅くし手で顔を覆う。
「あ、あんなに近づかれたら渡しでも気を失うよ~//////////」
優子がそう言った途端に扉が開く。
「姉上~、起きておるかの~。」
秀吉の声が聞こえてきたが優子は顔を見せずに話す。
「ひ、秀吉。私どうやって家に?」
「おおそのことかのう。実はPR用の撮影が終わった後で姉上をおんぶしている明久と会ってのう。そのまま姉上を明久がおんぶして家まで送ってくれたのじゃ。」
「そ、そう・・・(あ~!アタシなんでそんな美味しい思いをしているときに気を失ってんのよ――――――――――!!)」
優子は心の中で凄く後悔をする。
「あ、伝言があるのじゃ。明久から。」
「な、なに?」
「気が向いたら電話をしてくれじゃそうじゃ。わしには何のことかわからんが姉上は知っておるかのう?」
「え、ええ・・・・・・・」
そして秀吉が自室に戻った今では優子は覆っていた手を離し天井を見た。
「ほんとに・・・・・・・明久君には敵わないわね。」
優子がそう言っている顔は何処か微笑んでいるように見えた。