期末テストを三日前に控えた明久は自宅で勉強をしていた。集中して勉強しているので時間はもう夜の七時。明久はそれに気付き晩御飯の準備をしようと立ち上がる。
「どうしましたかアキ君?」
「こんな時間だから晩御飯の準備をしようと思って。」
「いけません。仮にもアキ君は勉強しなければ行けない状況なのですから座っていて下さい。」
「でも・・・」
「でもじゃありません。」
玲の言葉にしぶしぶ明久は座る。そんな明久を見てタロウが話し掛ける。
「どうした明久?」
「タロウ・・・・・・実は姉さんの事でね。」
「玲さんがどうかしたのか?」
「気を使ってくれているのはいいけどちょっと・・・・」
「やりすぎかな?」
タロウがそう言うと明久は頭を縦に振る。
「明久、何故あそこまで玲さんがするのか。それは冷蔵庫に秘密がある。明日は玲さんは仕事で明久が帰る時間にはいないから見て見るといい。」
「冷蔵庫?」
「そうだ。それより間は目の前のことに集中しろ。でないと・・・・」
「ウルトラ念力はもうゴメン!」
明久は目の前のことに集中した。
翌日、明久は玲がいないことを見計らって冷蔵庫の中を覗いた。すると冷蔵庫の中にはラッピングされている失敗パエリアがあった。
「成程ね。そういう事か。」
明久は何もなかったかのように冷蔵庫を閉じた。
その日の夜。
「ねえ姉さん。」
「なんですか、アキ君?」
「料理を美味しくする調味料って何か分かる?」
玲は明久の問いに考える。
「やはりお塩でしょうか。」
「塩か。成程、姉さんらしいね。」
「?」
「なんでもないよ。」
玲は明久の問いの答えが分からないまましばらく考えた。
期末テストも問題なく終わった。結果はまだ本人達は見ていないが過去最高であったと思うほどである。美波や秀吉に関しては太郎のウルトラ念力をもう喰らいたくない一心で一所懸命に頑張った。
「やっと終わったのじゃ。」
「そうですね。」
秀吉の言葉に友也が相槌を打つ。
「ホントよ。ウチは今回死ぬ気で頑張ったわ。」
「美波ちゃんタロウさんのウルトラ念力喰らっていましたもんね。」
「アレを思い出させないで!」
姫路の言葉に美波は恐怖しながら自身を抱きしめる。ムッツリーニがその様子をカメラに収めていた。
「僕も今回は今まで以上に自信があるよ。ムッツリーニ君に点数で勝ってるかも。」
「・・・・そんな事は無い工藤愛子。俺の方が上だ。」
「そんなことないよ!」
工藤はそういいながらスカートの丈を少し上に上げてムッツリーニに足を見せる。ムッツリーニは鼻血を噴く。
「愛子、それ以上やったらハレンチよ。」
「・・・・・雄二は見ちゃダメ。」
「のわぁあああああああ!催涙スプレイがぁああああああああ~~~~~~~~~~~~!」
愛子に対し優子は注意をし、霧島は雄二の目に至近距離で催涙スプレーを掛ける。
「代表、それは危ないかと・・・・」
佐藤が助言をする。
そんな事をしながら文月学園から出ようとした途端、突如地震が起きた。一同突然の自身に体制を崩しそうになるが何とか保つ。
「大丈夫、皆?」
明久がそう言うと各々返事をする。
「明久!」
鞄の中からタロウが姿を出す。
「どうしたのタロウ?」
「闇の波動が裏山で起きている。」
「もしかして!」
「うむ。」
タロウの言葉を聞くと明久はスパークドールを一体手に取り裏山に向かった。
裏山に向かうとそこにいたのはケムラーであった。
「ケムラーだと!」
「確か毒ガスを吐くんだっけ?」
「そうだ。今の内に倒しておかなければ二次災害が発生する。」
明久はギンガスパークを左手に持ちスパークドールのライブサインを読み込ませる。
〈ウルトライブ!バキシム!〉
「はぁ!」
明久はバキシムにウルトライブする。明久は誰がライブしているか投資するが誰の姿も映らなかった。
『誰もライブしていないよ、タロウ!』
「まさか闇の支配者はスパークドールを意のままにに操れるとでも言うのか!」
明久もタロウも驚いていた。
ケムラーがバキシムに向かい体を上げ体当りをしてくる。バキシムはケムラーを受け止めるとそのまま押し倒し両手のバルカンでケムラーを撃とうとする。しかしケムラーは口から黒煙を吐き、目くらましをする。
『これじゃあ撃てない!』
バキシムは警戒する。するとバキシムの後ろからケムラーが体当りする。バキシムは前に倒れる。
『こんの!』
バキシムは立ち上がり反転するとスパイクの手をケムラーに振り下ろす。
その光景を見ていた雄二たちは疑問に思った。
「おいタロウ。」
「なんだ雄二?」
「なんで明久は武器を使わないんだ?バキシムって確か超獣って奴なんだろ?」
「その通りだ。バキシムの身体には銃火器が備え付けられている。だがケムラーは言わばガス怪獣。引火する恐れがある。」
「あんのバカ!もうちょっと考えなかったのか!」
「明久の選択は間違っていないぞ!近接格闘遠距離攻撃対応している超獣の中でバキシムは最もだ。ベロクロンでは攻撃力が違う。」
タロウは明久をフォローする。
「だがよ、確かケムラーって甲羅の中にある弱点を突かないと倒せないんじゃなかったか?」
マグナの言葉にガルムは感心する。
「ヒヨッコのクセによく憶えているじゃねぇか。で?どうすんだ?」」
「わしは明久の助けになりたいのじゃ!」
ガルムの言葉に秀吉は意思を示す。
「危険だと分っていてもか?」
「それでもじゃ!」
その時であった。秀吉の意思に反応してか秀吉の手にはギンガライトズパークが握られていた。
「これは・・・・!」
「どうやらお前の覚悟に反応したようだな。」
「秀吉だけじゃ不安だからな。俺も行く。」
「・・・・・大事な被写体に傷を付けるわけにはいかない。」
雄二は秀吉の覚悟に連れられ意思を示し、ムッツリーニは欲望を示した。すると二人の手にもギンガライトスパークが握られていた。
「これで俺たちも戦えるのか・・・・・・ちょっと恐いな。」
「・・・・だが明久はこれを何度も繰り返している。」
「うむ、そうじゃな。」
三人は自分のパートナーを握り、ギンガライトスパークにライブサインを読み込ませる。
〈ウルトライブ!バルタンバトラー・バレル!〉
〈ウルトライブ!マグママスター・マグナ!〉
〈ウルトライブ!ガッツガンナー・ガルム!〉
三人はウルトライブし、バレル、マグナ、ガルムの姿になるが決して巨大化ではない。背は180cmほどしかない。
「どういうことなのじゃこれは?」
「秀吉、俺達は元々このサイズでハンティングしていたんだ。」
ウルトライブしていながらもガルムたちとの会話が出来ることに一同驚くが場邑ーの雄叫びによってその場の空気を切り替える。
『こんのぉ~~~~~~~!』
バキシムはケムラーにスパイクラッシュをするがケムラーは怯む様子を見せない。
「いいか。秀吉が今回の戦いの要だ。俺とムッツリーニは奴の弱点を強引にでも開くんだぞ。」
「・・・・分っている。」
マグナ、ガルム、バレスは闘志を燃やす。
「ミッション、スタート!」
雄二の合図で一同走り出す。
「いいか秀吉、高台を探すんだ。」
「高台と言っても・・・・あの電柱はどうじゃ?」
「上出来だ。」
ガルムは電柱を登る。
「おいマグナ、お前フックかなんか引っ掛ける武器はないのか?」
「俺はアレが得意じゃねぇ。だが壊すのは得意だ!」
「なら、そうするまでか!」
マグナはケムラーの後ろに向かい走る。
「・・・・俺たちも続くぞ。」
「・・・・ああ。このマフラーは伸びるか?」
「・・・・ああ。」
バレルマグナの後に続き飛ぶ。
『あれ?雄二どうしたの?』
「お前を助けに来たんだよ!」
明久が雄二に気づく。
「いいか明久。俺たちがこいつの背中の甲羅を無理やり開く。そこに弱点があってだな、秀吉がそこを撃つからお前は撃ち易い様にしろ!」
『わかった!』
バキシムはケムラーの身体を上に挙げ身動きが取れないようにする。そこへマグナが走りながら接近する。
「スティンガ~・・・サーベル!」
マグナはスティンガーサーベルを展開するとケムラーの背中の左甲羅を斬る。
「「おっしゃ!」」
「・・・・こっちも行くぞ。」
「・・・・ああ。」
バレルはマフラーをケムラーの右甲羅に巻きつけるとその状態から陰分身を行い引っ張る。甲羅の中からケムラーの脳が姿を表す。
「秀吉、準備はいいか?」
「大丈夫なのじゃ。」
「いくぞ!」
電柱の上からガルムはクロスショットのスコープを覗いてケムラーに照準を合わせる。
「「ホークアイ・・ショット!」」
ガルムから放たれたホークアイショットがケムラーの脳に命中すると三人はすぐさまケムラーの側から離れる。そしてケムラーは爆発した。
「まさか三人ともウルトライブするなんて思ってもみなかったよ。」
戦闘を終え、ライブアウトした明久は雄二たちのウルトライブに驚いた。
「で、どうだった?」
「なんか自分じゃねぇ感じだったな。」
「うむ。ガルムになりきるのはちと苦労しそうじゃ。」
「・・・・俺は丁度いい具合だった。」
三者三様の返事をした。そんなとき雄二がある事に気付いた。
「なあタロウ、さっきのアレでマグナたちにウルトライブ出来るのならほかのスパークドールにも出来るんじゃないのか?」
「うむ。それは可能であるがその分解銃の特性をよく理解しないといけないぞ。と言うわけで今から明久の家でスパークドールの勉強会を行う。」
タロウの言葉に明久たちは賛成した。
時間は経ちテスト結果が出た。明久の点数は問題なく玲も認めた。が、住む所と生活面、何より職業の問題から明久の家で同居する事になった。明久としては特に問題は無い。
明久はふと家の窓から空を見上げると梅雨明けの空が広がっていた。