テストまで後九日になった日、明久たちは霧島の家で勉強会をしようとしていた。提案者は霧島本人からである。明久は待ち合わせの場所で三人を待っていた。
「しかし明久、霧島の家には初めて行くのか?」
「うん。霧島さんと交流があるのは今年からだからね。雄二が幼馴染であったって事も知らなかったよ。」
「そうか。」
タロウと明久が話していると友也が来た。やはり迅速かつ無駄の無い行動をするのは友也の売りである。
「待たせてすみません、明久君。」
「いや、集合の十分前だからね。それに僕もさっき来たばっかだし。」
集合時間より早く来ることに関しては二人とも大人である。だが少しずれているところがしばしば。そんな時姫路と美波が来た。
「お待たせしました吉井君、一条寺君。」
「待たせてゴメンねアキ、一条寺。」
「そんなに待って無いよ二人とも。」
「ええ。僕らもさっき来たばっかりですので。では行きましょか。」
友也がそう言うと一同返事をした。
しばらく歩くと霧島の家が見え、明久がインターホンを押す。しばらくして霧島が玄関から顔を出す。
「・・・・いらっしゃい。」
「こんにちは。霧島さん。」
『こんにちは。』
「霧島さん、他の皆は?」
「・・・・・もう来てる。吉井たちが最後。」
「そっか。じゃあお邪魔するね。」
『お邪魔します。』
明久たちは霧島に案内されながら皆の方へと向かう。霧島の家に入るとたくさんの部屋があるのが目に入った。
「結構たくさん部屋があるんだね。霧島さん、あの部屋は?」
「・・・・・あそこは書斎。」
「翔子ちゃん、あの部屋は?」
「・・・・・お父さんの部屋。」
「霧島、あの部屋は?」
「・・・・・思い出のものを収めている部屋。」
「霧島さん、あの部屋は?」
「雄二を監禁しておくための部屋。」
(今のは聞かなかった事にしておこう。)
一同そう思った。霧島が勉強部屋まで案内し、扉を開けるとそこにはいつもの面子が揃っていた。
「おう、遅かったな明久。」
「雄二、そう言いながらも顔に生気がないのは気のせいかな?」
明久たちに離しかけてきた雄二は見るからに生気を失っている顔であった。
「逃げようとしたらスタンガンで気を失わされ再び目を覚ましたときには監禁されていたんだ。」
「雄二、霧島さんの愛は重いね。」
「愛じゃないだろ!」
雄二が叫ぶが戯言と明久は思い「戯言じゃねぇ!」・・・・何かが聞こえたがその元を霧島が目潰しで無くし、対価として悲鳴が響き渡った。
「じゃ、始めよっか。」
こんな感じで勉強会が始まった。
時間がたち夕食を撮った後は男女別に泊まる部屋に集まった。
「おいお前ら、ちょっと耳を貸せ。」
雄二が明久たちに小声で声をかける。
「女子は今入浴中だ。その好きに翔子の部屋に侵入するぞ。」
「理由は?」
「翔子のやつに同意と言う名の強制で書かされた婚姻届をダッシュするためだ。」
その言葉を聞いた瞬間明久と友也は頭を抱える。
「雄二。」
「坂本君。」
『止めた方がいい。絶対ワンパターンな展開が待っているから。』
「お前ら!それって俺が翔子に制裁を受けると確定しているもんじゃねえか!」
「だって毎度のことだから分かるでしょ。」
「そんなはずは無い!今から実証してやる!ムッツリーニ!秀吉!行くぞ!」
「・・・・・わかった。」
「わしは姉上がおるので遠慮しておくのじゃ。」
雄二とムッツリーニだけが霧島の部屋に向かった。
「明久君、そろそろ僕らも風呂に向かいませんか?」
「そうだね。行こうか。」
「うむ、そうじゃな。」
三人が風呂に向かう途中雄二の断末魔の悲鳴が聞こえたのを三人は子犬の鳴き声と自分に暗示を掛け、聞かなかった事にした。
「ア゛~・・・・・酷い目に合った。」
「自業自得だよ雄二。」
「全くじゃのう。」
「諦めましょ。諦めましょ。」
「ヴぉおい!一条寺!」
雄二が友也の言葉に反応する。
「・・・・・まぁいい。俺もただで戻ってきたわけじゃねぇ。」
そう言うと雄二はポケットからウサギの髪止めを取り出した。
「あれ?これって姫路さんのじゃないの。雄二。」
「そうだ明久。」
「つまり坂本君は姫路さんが本命だと。」
「一条寺チゲェ!」
雄二は全力で否定をした。その時明久友也は雄二の本命は姫路で無いと確信した。
「今から大富豪をやって大貧民の奴がこれを女子の部屋まで行って返してくる。もちろんこれは全員参加だ。」
雄二の強引な押しで始まった大富豪。結果、今回の生贄に明久がなってしまった。
「じゃ、明久。逝って来い。」
「雄二、ボクはまだ天に召されるつもりは無いから。じゃ、行ってくるね。」
そう言うと明久はすんなりと女子の部屋に向かった。
明久がゆっくりと扉を開けると女子全員眠っていた。
(よし、大丈夫。)
明久は安全を確認するとゆっくりと移動する。明久は姫路の下まで来るとうザギの髪止めをそっと置こうとする。するといきなり明久の手を誰かが掴んだ。それも一人ではなく三人であった。
「何をしているんですか吉井君?」
「なにをしているの、明久君?」
「何をしてるんですか吉井君?」
手を掴んできたのは姫路、優子、佐藤の三人であった。明久は小声で事情を説明する。
「はぁ~、坂本君も坂本君ね。」
「あはは・・・」
「男子というのはこういうものなのでしょうか?」
優子は頭を抱え、姫路は乾いた笑いをし、佐藤は呆れた。その時であった。
「う~ん、アキィ~・・・」
『っ!?』
突然美波が明久の名を呼ぶので三人は咄嗟に明久の腕を引っ張り明久を自身の身体で隠した。
(び、びっくりした!三人ともこんな俊敏な動きが出来るなんて思わなかった!で、でも・・・・・三人とも無意識なのか分からないけどあ、当たっているんだよね!未知なる物が!)
明久は恥ずかしさのあまり顔が紅くなる。
「アキのバカぁ~・・・・ZZZ・・・・・・・」
美波は寝言を言うと静かに眠る。三人安堵を吐き一安心する。
「あ、あの~・・・・・」
『?』
「三人とも庇ってくれているのはいいけどその・・・・えっと・・・・早く退いてくれないと当たっているところが//////」
明久の言葉を聞いた瞬間三人は顔を紅くする。三人は俊敏な動きで離れる。
「よ、吉井君はえっちぃです/////」
「ホントよ/////」
「全く/////」
三人は顔を紅くする。
(いや、健全な男子だったら普通の反応だと思うけど/////)
明久までも顔を紅くする。
「じゃ、じゃあボクはここでおいとまするね。」
明久はそう言うと音を立てずその場を去っていった。
明久が去った後の女子の部屋。
「明久君って以外にウブなのね。」
「吉井君は昔から優しいですから。」
「姫路さんは吉井君の事を小さい頃から知っているんですか?」
佐藤の言葉に姫路は答える。
「はい////私、小さい頃から身体が弱くて病院と学校を行き来していたんです。たまたま同じクラスになった吉井君と飼育委員になってウサギの世話をしていた頃、一匹の病気のウサギがいたんです。その頃私はそのウサギが病気だなんて思いませんでした。病気だと知ったのはお母さんから買ってもらったウサギの本を見たときです。私は夜の病院を抜け出して飼育小屋に向かいましたがその時にはもう死んでいました。吉井君もその時一緒にいました。私はなきながら病院に帰って、病院のベットでまた泣きました。」
姫路はウサギの髪止めを手に取る。
「そんな私に会いに吉井君は夜遅く、病室近くに生えていた気に登ってきたんです。その時に吉井君は私にこれをくれたんです。」
その時二人は何故姫路が明久を好きになったのかわかった。明久は純粋な心で優しさを持っている。その心は誰にでも平等に優しいお人よしである。だがそれは彼の誇るべき長所。今もその優しさを彼は失っていなかった。
「あの時吉井君が来てくれなかったら私はあのまま泣いていました。その時から私は////」
姫路は顔を赤らめる。その話を美波は静かに聞いていた。
(・・・・・・・・・そっか。アキは誰にでも優しいんだ。でも・・・・・一人に絞りなさいよね。アキのバカ。)
ちょっと生き抜き作品でも書こうかなっと思ってます。でもあんまり連載はしないつもりです。