清涼祭からだいぶ時間が経った文月学園玄関前。明久は空をふと見ていた。
「おはようございます、明久君。」
「おはようなのじゃ明久。」
そんな明久に後ろから友也と秀吉が声をかけて来た。
「あはよう、友也、秀吉。」
「どうしたのですか明久君、空なんか見上げて?」
「ああ、ちょっとね。」
「なにかあったのかの?」
「実は最近闇のものが何もしてこないから少し心配をしてたんだ。」
「確かにのう。あの常夏コンビの心を利用してダークダミースパークを使ってこっちに来てもおかしくないはずなのに来ないのは何か策でも煉っているとしか思えんのう。」
「ですが今秀吉君たちにはラッシュハンターズ、僕にはジャンナインにジャンボット、そして明久君にはスパークドールズとギンガスパークがあります。今のところ何も問題はありません。」
「・・・・・・そうだね。なんか心配するのが馬鹿みたいだよ。」
明久たちが靴箱の方へ歩き、明久が靴箱を空けた瞬間明久は固まってしまった 。
「どうしたのじゃ明久?」
「何か靴箱に入っていたんですか?」
明久は靴箱の中にあったものを二人に見せるとそれは手紙であった。
「手紙・・・・・ですか?」
「手紙じゃのう・・・・・。明久よ、中身を見てみるのじゃ。」
「うん。」
秀吉に促され明久は手紙の封を開けると一枚の文章の書かれた紙と写真が一枚入っていた。
「写真と・・・・・・・手紙?」
「刑事ものによく出てくる脅しみたいな展開じゃのう。」
「ははは、まさか。」
明久は笑いながら手紙の中に見ると脅迫文が書かれていた。
『吉井明久様へ、これ以上貴女が異性に近づくことをすればこれを学園中にばら撒きます。』
「本当に脅迫文だったよ。」
「・・・・・・・・ドラマみたいな展開もあるんですね。」
「明久よ、写真は何なのじゃ?」
「えっと・・・・・清涼祭のときの女装途中の写真。」
『え゛!?』
どんな人がそんな写真を好むだろうか?同性愛者くらいではないだろうかと思ってしまう。何故そんな写真を撮られているのか少し分からなかった。
そんな三人にガルムが話しかけてくる。
「おい明久。」
「ガルム、どうかしたの?」
「その着替えって何処で着替えたんだ?」
「どこって・・・・・・Aクラスの女子更衣室。姫路さんたちが化粧セットを置いてあるからってそこで・・・・・・っ!」
「明久君も気付きましたか?」
「どういうことなのじゃ?」
「女子更衣室を盗撮するってことは少なくとも女子ってことです。」
「じゃが男子が仕掛けたものではないかと考えないのかの?」
「それはありません。Aクラスの警備は厳重です。男子では入れるのはムッツリーニ君ですが、彼はそんなことをするような人ではないでしょう。それ男子ならこんな写真より最近はパソコンで出来る合成写真の方が脅迫できますからね。最も、この写真、結構撮り方が雑です。」
「じゃがそれでどうして女性と思うのじゃ?」
「さっき文章の中に『異性』と書かれていた文章がありました。普通脅迫文をする際はその人と反対の異性、または特定の人物の名前を出します。ですがこれは異性と書かれていますから自分が男性か女性か特定されないように書いています。可能性として女性のほうが高いです。」
「それに秀吉、この字をよく見てよ。」
秀吉は明久に言われ手紙の文字を見る。
「丸文字・・・・・・じゃのう。」
「そ。丸文字は女性の特徴的な形だからね。更に言うとこの人は男性に対しての嫌悪感を持っており、過去に男性に対して嫌な事があったことが分かるよ。」
「そこまで!」
秀吉が驚いているところにガルムが話し掛けてくる。
「あ~、話しているところすまないがそろそろ教室に行ったほうがいいぞ。」
『あ・・・・・・!』
ガルムに言われ三人は教室の方へ向かった。
「あれ?雄二、どうしたの?」
明久たちが教室に着くと雄二がムッツリーニに頼みごとをしている様子が見えた。
「おお明久か。実は翔子の奴がこんなもん持ってたんだ。」
そう言うと雄二は明久に音楽プレイヤーを見せた。
「それが?」
「実はこの中に俺の声を合成して作られた告白が入ってたんだ。」
「へ~、雄二は幸せ者だね。」
「なんでだ!なんでそういう結論になる!これは脅迫だぞ。」
「何を言っているんですか坂本君。結婚相手が先に決まっているのは良い事ではありませんか。最も、霧島さんは良くても坂本君は法的年齢基準に達していませんが。」
「一条寺もか!・・・・・・・まあいい。翔子のやつは機械音痴だ。ケータイがやっと出来る程度の奴だからこの手の物は第三者が関わっているとしか思えない。」
「それで土屋君に頼んでいたのですか。丁度明久君も土屋君に頼みたいものがあるので同時進行でやってもらっても構いませんか?」
「・・・・なにを調べるのだ?」
「ムッツリーニ、僕にこの脅迫状を送りつけてきた女性を探して欲しいんだ。」
「おい明久、なんで女性と決め付けるんだ?」
「字が丸文字だから。」
「よくわからんが・・・・・・・・まあ、お前も似たような境遇に当てんだな。そこはわかった。」
「ムッツリーニ、頼み聞いてくれる?」
「・・・・いいだろう。」
明久たちが話していると西村先生が教室に入ってきた。
「よーしお前ら、座れー。SHRを始める。」
西村先生の言葉を合図に明久たちは自分の席に座った。
「まず明日から始まる強化合宿についてだが・・・・・・・・Fクラスは現地集合だ。」
『案内すらないのかよ!!』
Fクラス一同ツッコミを入れた。
「落ち着け!幸いにも地図はここにある。一人一枚ずつあるから各自行き方を調べて置くように。以上!」
そう言って西村先生は教室から出て行った。
その日明久が家に帰って夕食を食べ終えると電話が掛かってきた。
「もしもし?」
『おお、明久よ。夜分にすまないのじゃ。』
「秀吉!どうかしたの?」
『実は明日の強化合宿での話があるのじゃ。』
「話?」
『うむ。実は明日姉上も一緒に電車で行くと言っているのじゃ。』
「優子さんが?まあいいけど・・・・・・なんで?」
『そ、そこに関してはわしは何も知らないのじゃ。』
なんだか怪しい息もするけど・・・・・・まあいっか。
「わかったよ。じゃあまた明日。」
『また明日なのじゃ。』
そう聞いて明久は電話を切った。
「おい、明久。」
「グレンファイヤー、どうしたの?」
「な~に、ただちょ~いと話したくてな。お前さんって、頭はいいけど馬鹿な奴か?」
「はい?」
「おらぁ!」
「ごぎゃあ!」
グレンファイヤーに向かってゼロがキックを食らわしてきた。
「ゼロテメェ、何しやがる!」
「うっせえ!テメェがバカ呼ばわり出来る立場じゃないだろ!」
「うっせえ!」
「二人とも、ご近所迷惑ですよ。」
ミラーナイトが話し掛けてくるが二人は聞こうとしない。
「・・・・・・・タロウさん。」
「わかった。ウルトラ念力!」
「「ぎゃああああああああああああ!!!」」
二人はタロウのウルトラ念力を喰らう。
「二人とも、五月蝿いぞ。」
「タロウ教官、だからってウルトラ念力はやめて下さい!」
「そうだぜ!」
「あのさ、二人とも。僕が頼んだんだよ。」
「「え゛!」」
「だからもう寝よ。明日から四日間、強化合宿なんだから。」
明久がそう言うと二人は聞き分けよく「わかった。」と言ってその場を解散した。
この日明久は知らなかった。今までやったことの無いウルトライブが起こると。