「おい明久、ちょっとこれを見てくれないか?」
「なに?」
僕は雄二から渡されたチラシを見るとそこにはバイト募集の内容が書かれていた。しかも結構額がいい。でも一日だけのバイトだ。なんだか嫌な予感がするな。
「どうして雄二がこんなものを見るの?」
「な~に、ちょっと金が欲しくてな。」
「で本音は?」
「翔子のやつとデートと言う名の強制連行に付き合っていたら欲しい物を買えなくなってしまうほど使わされているんだ。」
なるほど。雄二も苦労しているんだね。
「いいけどこの内容に四人ほどって書かれているよ。後の二人はどうするつもり?」
「それに関しては心配は無い。ムッツリーニと秀吉を助っ人として頼んでいる。」
「秀吉はともかくムッツリーニはどうやって?」
「秀吉のバイト姿がいい金になるとほのめかしたら案の定乗ってくれた。」
「相変わらず策士だね。」
「まあそういうことで頼むわ。場所と日時はここに書いてあるからな。」
「わかった。」
こうして僕は土曜日に臨時バイトをすることになったけど・・・・・・・大丈夫かなこの店?
そしてバイト当日。バイトをする店に来て皆ではいると生気の抜けている店長がそこにいた。
「こ、こんにちは・・・・・」
「ああ・・・・・・君たち誰?」
「臨時バイトの者です。」
「ああ、すまない。」
大丈夫かなこの人?不安しかないよ。
「じゃあ君たちの制服これね。サイズはそれでいいよね?」
『全然違います。』
「え?」
いや!明らかにおかしいよね!僕のサイズがSSだよ!雄二のサイズがSだよ!ムッツリーニがMだよ!秀吉がLだよ!
「あれ?おかしいな。君がドSで、君がS,君はMで、君がLだったはずのような気がするけど。」
ダメだ!何があったか知らないけどこの人は今冷静な判断が全く出気無い状況だ。開店まではまだ少しあるけどこの人を何とかしないとまずい!
「とりあえずムッツリーニの服を僕にちょうだい。秀吉は雄二に。」
「分かったのじゃ。」
「・・・・俺はMサイズで。」
「でもムッツリーニって何かとMっ気が強そうだよね。」
「・・・・・・(ブンブン)」
あ、図星だ。となると工藤さんあたりがいい線かな?
「何考えてんだ明久?」
「ん?いや店長が当てたのってみんなの本性かなって?」
「おいおい、そうなるとお前が相当S度が強いぞ。」
「ははは、雄二じゃあるまいしそんなこと無いよ。」
「だがムッツリーニはMじゃないよな。」
「・・・・・・」
「おい・・・・・まさか・・・・・」
「・・・・・(プイ)」
「嘘だろ!お前がSじゃなかったらマズイだろ!」
「でもFFF団も意外とMが多いかもしれないよ。」
「・・・・・・確かに。」
「お主ら、早く着替えるぞ!」
あ、いけない忘れてた。
「そうだね。じゃあ更衣室を借ります。」
「ああ、いいよ・・・・」
生気の無い店長さんの返事を聞いて僕たちは更衣室で着替えた。
「結構雄二も様になってるね。」
「何言ってんだ明久。こんな姿が似合っていても誰も好みじゃないだろ。」
「・・・・・そんなことない。以外に買い手がいる。」
「おいムッツリーニ、写真撮っている最中に悪いがそれって翔子じゃないだろうな。」
「・・・・・企業秘密。」
「おい!」
営業用の制服に着替えた僕たちは秀吉を待ちながら話していたけど・・・・・結構遅いな秀吉。」
「待たせてすまないのじゃ。」
「あ、ひでよ・・・・・・何でメイド服?」
更衣室から出てきた秀吉は何故かメイド服を着ていた。
「うむ、どういうわけかワシが男性用の征服を着ようとしたら店長がこれを押してきてのう・・・・・」
・・・・・同情を今だったら買える気がするよ秀吉。
「あ・・・・ああ・・・・・」
な、なんだか店長の目に生気が篭もって・・・・・・いや!違う!これは明らかに逝ってしまっている!
「ディアマイヅゥ~~~~~~タァ~~~~~~~~~~~!」
店長がいいきなり飛び上がって秀吉に襲いかかろうとしてくる。
「ウルトラ念力!」
いきなり店長が宙を舞い壁に何回か打ち付けられると気を失った。でも今のって・・・・
「明久、大丈夫か?」
「タロウ!なんでここに?」
「うむ。少し心配になって様子を見に来ようと思ったらこの状況であったからな。助けた。」
「ありがとおう、タロウ。」
よかった。もしタロウが助けてくれなかったら純情な秀吉が傷物にされるところだった。
「明久よ、お主わしをどんな目で見ておるのじゃ?」
「普通に男性としてだよ。秀吉だってこれから来いとかするかもしれないんだから。」
「・・・・・・お主と坂本くらいじゃ。ワシを男としてみてくれるのは。」
「・・・・・どんまい、秀吉。」
「あ~、お前らいいか?」
雄二が話し掛けてきたけどなんかな?
「そろそろ開店する時間みたいだ。接客は明久がやれ。それと秀吉は着替えて明久の援護に回れ。」
「わかったのじゃ。」
そう言って秀吉は更衣室に向かった。さて、接客しないといけないね。あ!
「雄二、念のために冷蔵庫の中を確認しておいたら?」
「ん?そうだな。何か足らなかったら店長に請求書でも渡すか。」
「うん、それがいいね。」
そして開店時間が来て僕たちのバイトがスタートした。
店の入り口に取り付けられている鈴が鳴り響き女性のお客さん三人が店内に入ってきた。
「いらっしゃいませ。三名様でよろしいでしょか?」
「あ、はい/////」
女性の一人が顔を赤らめる。雄二はフロアの方から溜息を吐く。
(全く、あいつは本当にジゴロータなんだな。感心するよ。)
雄二は皮肉を言う。
そんな雄二を余所に明久は三人を席へ促す。
「ご注文がお決まりになりましたらこちらのベルを鳴らしてください。」
「は、はい/////」
明久がそう言うとその場から去っると女性たちは小声で話し始めた。
「ねえ、今の子結構よくない?」
「うんうん、可愛いしんだけどなんかかっこいいんだよね。」
「でも臨時って名札のところにあったよ。」
「えー、なんか少し残念。」
「うんうん。あれでここのバイトだったらいいのにね。」
そんな声を雄二はフロアから聞いていた。
「おい明久、人気で出してるぞ。」
「雄二、そんなどうでもいいことはいいから冷蔵庫の中は見たの?」
「ん?ああ大丈夫だ。さっき秀吉に買いに行かせた。」
「何が足りなかったの?」
「牛乳。そんでムッツリーニが鼻血を出した。」
「どんな想像をしたら出すのだろう・・・・・」
そのときベルが鳴った。
「あ、お呼ばれだ。」
明久は紙とボールペンを持ってお客様のところへ向かった。
「はい、ご注文がお決まりになられましたか?」
「はい。私はチョコケーキとコーヒーを。」
「私はチーズケーキと紅茶を。」
「私も同じのとミルクティーを。」
「はい。ではご注文を繰り返させていただきます。チョコケーキが一つ、チーズケーキが二つ、コーヒー、紅茶、ミルクティーが各一つずつでよろしいでしょうか?」
「はい。」
「ではご注文の品が出来るまで少々お待ちくださいませ。」
そう言って明久は軽くお辞儀をして厨房の方に向かった。
「はい雄二。」
「おう。確かこれ冷蔵庫にあったから後はコーヒーをフィルターに掛けてっと。」
「牛乳は少し残ってる?」
「ん?残ってるがどうした?」
「ちょっと。」
明久はそう言うと厨房に入り手を洗い、小鍋に牛乳を入れるとコンロに置き火を掛け、牛乳を温める。明久はその間に紅茶の葉が入ったポットにお湯を注ぎ紅茶の葉をポットの中で泳がせる。牛乳が温まると明久は皿の上にカップを取り出しカップを皿の上に置くと皿を持ちながらポットを持ち、ポットを上に上げながら紅茶をカップに注ぐ。それを終えると明久は温めた牛乳を紅茶の入ったカップに注ぐ。
「完成っと。」
「慣れているな。」
「まあね。冷たい牛乳を入れたらせっかく美味しい温度で飲めるものがダメになるからね。」
「そうか。ほれ、盆に載せて運べ。」
雄二は明久にチョコケーキとチーズケーキ二つが載った盆を渡してくる。明久は盆を片手で持ちコーヒー、紅茶、ミルクティーも載せてお客様のところへと歩く。
「お待たせしました。」
明久はちゃんと一人一人にオーダーされたケーキと飲み物を置く。
「ごゆっくりどうぞ。」
明久は軽くお辞儀をしてその場を去る。
しばらく時間が経つと店に客が徐々に入ってくる。この場所は人通りの多いところに立てられているから結構経済的にも有利な場所と言える。
「段々人が増えてきたのう。」
「そうだね。秀吉、もう一回冷蔵庫の中を確認して。」
「分かったのじゃ。」
秀吉が冷蔵庫を確認しに向かっていると次のお客様が二名が入店してきた。
「いらっしゃいませ。」
「げ!吉井かよ・・・・」
「なんでここにいんだよ。」
入店してきたのは夏川と常村であった。
「お客様、今は仕事中でございますゆえ私のことはただの店員と見ていてください。」
「ふんっ、こういうときにいたぶれないのが残念だな。」
「だな。さっさと案内しろ。」
「ではこちらへ。」
明久はしぶしぶ二人を席へ案内する。
「ご注文が決まりましたらどうぞ。」
「おれはカフェオレ。砂糖はスプーン一杯だ。」
「じゃあ俺はアイスコーヒー。ミルクと砂糖は無しだ。」
「かしこまりました。ご注文を繰り返させていただきます。カフェオレが一つとアイスコーヒーがお一つでよろしいでしょうか?」
「そう言ってんだろ。」
「お客様、この場で確認せず勝手にことを進めた場合クレームと言ういちゃもんを付ける人が時にいますので確認事項なのでごさいます。」
「んなんなら仕方ねぇか。」
明久は厨房の方へと向かい雄二に紙を見せる。
「おお明久、どうかしたか?」
「あの先輩がいるからね。」
「あいつらが!なんかされたらどうする?」
「大丈夫。その時は経験を活かして対応するよ。」
「どんなバイトしたんだ・・・・・・お前。」
「・・・・・・・ちょっと。」
「待て!今の間はなんだ!」
「・・・・・二人とも、手を動かせ。それと明久、出来たぞ。」
「ありがと、ムッツリーニ。砂糖は一杯入れた?」
「・・・・・当たり前だ。」
「よかった。雄二だったら“いっぱい”ってしそうだから。」
明久はムッツリーニから盆の上に載ったカフェオレとアイスコーヒーを持ち夏川と常村の方へと足を進める。
「お待たせしました。」
「おう。」
明久はコーヒーとカフェオレを二人の前に置く。
「おい、店員。エスプレッソとフィルターの違いってなんだ?」
「フィルターの方は少しずつお湯を流し込んでコーヒーを抽出します。一般家庭でも簡単に出来る方法です。
一方エスプレッソは高温高音質を抽出するエスプレッソマシンを用いたコーヒーです。一般的コーヒーとは違い豆を微細にしているため濃厚な風味のあるものに仕上がっています。なお、結構濃いのでとても苦いです。」
明久がそういい終えると周りから明久に向けての拍手が送られる。
「な、なかなかやるじゃねーか。」
「ふ、ふん。」
夏川と常村は負け惜しみを言う。そこへ新たなお客様が入って来る。
「いらっしゃいませ。」
「アキ!」
「「明久君!」」
入ってきたのは美波と姫路さんと優子さんだった。
「お客様、今はここの店員ですゆえそこのところはよろしくお願いします。」
明久は冷静に対処する。
「お席へご案内致します。」
明久は三人を席へ案内する。
「ご注文がお決まりになりましたらこちらのベルを鳴らしてください。」
明久は冷静に対処してその場を去った。三人は明久のウェイター姿を見て少し顔を紅くする。
「ねえ、アキのあの姿どう思う?」
「か、かっこいいです。」
「写メ撮っておきたいわ。女装姿もいいけどあんな姿もいいわ。」
「今度執事姿とかのコスプレをしてもらいたいわね。」
「その時は土屋君にツーショットをお願いしませんか?」
「いいわね!」
そんな三人を余所に明久は雄二と話していた。
「ねえ雄二、一つ聞いてもいい?」
「なんだ?」
「このことは霧島さんは知っているの?」
「・・・・・・・・・明久、何か言ったか?」
「教えてないんだね・・・・・・」
「翔子に知られたら何しでかすか分からないからな。」
そんな時Dクラス同性愛者の美春が入店してきた。
「お姉さま!」
「美春!なんであんたここにいるのよ!」
「ここは私の家でもあるんですから当然です。それよりもお姉さま、美春に愛にここまで来てくれたのですね!」
「んなわけないでしょ!普通にここで休憩をとりたかったのよ!」
「それなら私の部屋のベッドで一緒に休息をとりましょう!」
「イヤよ!あんたと一緒に寝たりでもしたら絶対ロクなことにならないわ!」
わー、これは営業妨害極まりないな。
「ああ、君たち。ひどいじゃないか。僕を殴るなんて。」
「あ、店長。すみません。でも乱心した店長をあのままにしたら結構危なかったですよ。」
「それでも・・・・・美春?」
「げっ!お父さん・・・・・・」
あれ?そういやさっき清水さん――――
『ここは私の家でもあるんですから当然です。』
あっ!そっか!
「おい明久、なんか嫌な予感しかしないのは気のせいか?」
「雄二、奇遇だね。僕も思っていたところだよ。」
明久たちがそう思った瞬間、店長が乱心した。
「ディアマイドゥ~~~~~~~~~~タ~~~~~~~~~~~!」
「ギャ――――――!」
これじゃあ他のお客様に迷惑だ。
「タロウ!僕がふろしきで二人を上手く隠すからその間に!」
「わかった!」
「おい明久、何をする気だ?」
「まあ見てて。」
明久は乱心する店長と美春の下へ駆け寄ると二人にふろしきを被せる。
「な、なんだこれは!」
「何をしたのです豚野郎!」
(タロウ!)
(分かっている。)
(私も手伝う。)
タロウとウルトラマンがそれぞれに付き、同時にウルトラテレポートをする。一見すればマジックのような展開だ。客は一瞬何が起こったのかわからなくなり沈黙するが明久は床に落ちているふろしきを持つと一気に上に上げる。同時に秀吉とムッツリーニが姿を表した。
今の作戦は騒がしくなった店内を沈めるために明久がとっさに思いついた一芝居である。客は拍手を送る。秀吉とムッツリーニは何が起こったかわからなかったがとりあえず客に手を振って応えた。
そして時間は過ぎ閉店時間を過ぎて店内清掃をしていた。
「しかし明久よ、あの時は流石に驚いたぞ。」
「・・・・・びっくりした。」
「ゴメンゴメン。でもあの状況ああする以外他に方法があったと思う?」
『(・・・・)ないな。』
「でしょ?店長は今落ち着いているから大丈夫だし店には迷惑かからなかったし結果オーライってことになったでしょ。」
「まあ明久の言う通りだな。ところで店長は今何処だ?」
「そろそろタロウが・・・・・」
明久がいい掛けた瞬間にタロウが店長をウルトラテレポートで連れてくる。
「おお!いきなり店に戻ってきた。ああ、君たち。今日はありがとう。」
「いえ、気にしないで下さい。」
「今日は助かったよ。何か問題は起きなかったかい?」
「いえ、特には。」
あんたが問題だってのは心の中に留めておこう。
「店長、すまぬがこれを給料と一緒に支払って欲しいのじゃ。」
「ん?ああ、牛乳代ね。給料と一緒に払っておくよ。ちょっと待ってね。」
そう言って店長は店の奥に入り、しばらくすると封筒を持って明久たちの下に戻ってきた。
「はいこれ。今日はありがとうね。」
四人はそれぞれ給料袋を貰う。秀吉のだけは小銭の音が大きかったがそれは牛乳代であることは言うまでも無い。
こうして長い長いバイトは終わった。
その日の帰り道。
雄二の場合
「ふう、今日のバイトは例外だったな。」
雄二がそう呟いていると道に人形が落ちているのを見つけた。
「ん?人形か?」
雄二はふとその人形を手にとってみて足裏を見るとライブサインがあった。
「これって!」
秀吉の場合
「しかし清水の店だったとは驚いたのう。」
「秀吉。」
「姉上!なんでここに!?」
「まああんたがちゃんと働いているか見てたのよ。それより今日のバイトってアレが普通なの?」
「いや、アレは例外と思うのじゃ。ん?」
「どうしたの?」
秀吉は気に引っかかっている人形を手にとって足裏を見るとライブさんがあった。
「これは!」
「なになに?て・・・それ!」
ムッツリーニの場合
「・・・・・今日はいい写真が手に入った。」
むっつり商会を経営しているムッツリーニにとって明久と秀吉の写真は結構な稼ぎ頭である。ムッツリーニはカメラを懐に入れ道を歩いていると道に落ちている人形を見つける。
「・・・・・人形か?」
ムッツリーニはその人形の足裏を見るとライブサインがあった。
「・・・・・これは・・・・・・」
『スパークドールズ!』
このとき雄二が拾ったのは赤髪と大きいサーベルが特徴的な人形、秀吉は蒼い体に白い頭の人形、ムッツリーニは青と金の体に片腕がハサミの人形を拾った。
名高いハンターの人形であることはその時誰も知ることはなかった。