皆に打ち明けてからだいぶ経ち、今は清涼祭の時期。Fクラスの教室には僕と友也、姫路さんに美波、そして秀吉とタロウ達と一緒にクラスの出し物について話し合っていた。
え、雄二たちはどうしているかって?外で野球しているよ。
「明久、他のクラスの者は何処にいるんだ?」
「外で野球をしてるよ。」
「すまない明久、ちょっと外の空気を吸ってくる。」
タロウはそう言うと雄二たちの方へと飛んで行った。そして数分してFクラスの叫び声が聞こえてきたのは言うまでも無い。
「酷い目にあった。」
「雄二が野球なんかしているからだよ。急いで店の出し物を決めないと西村先生の補習室送りか霧島さんの店の手伝いだよ。」
「冗談でも無いこと言うな。どっちも死んでもゴメンだ。」
「で?本音は?」
「翔子の店の手伝いじゃなく婚姻届のサインを書かされそうで恐いんだよ。」
「ははは、良かったじゃないか雄二。」
「お前な!人の気も知らないでよく言うな!」
「だって他人事だもん。」
「ムカつくぞおい!」
そんなことを雄二としていると友也が割って入ってくる。
「二人とも、そんなことはしなくていいので早く決めましょう。誰か意見はありますか?」
何時の間にか教卓に立ってたんだい、友也?そして何処でそのチョークを入手したのかな?
「・・・・・はい。」
「何でしょう、土屋君?」
「・・・・写真館。」
「土屋君の場合何かいかがわしい物があるので却下です。」
友也がそう言うとムッツリーニは両手両膝を突く。相当ショックだったんだね、ムッツリーニ。
「はい。」
「なんでしょう、姫路さん?」
「中華喫茶と言うのはどうでしょう?」
「いいですね。姫路さんの意見に意義のある方はいますか?」
辺りを見回すが意義のある人は何処にもいない。
「それではFクラスは中華喫茶にします。土屋君、裁縫は得意ですか?」
「・・・・任せろ。」
「では男子の衣装は制服でよいとして女子はチャイナ服にしてもらいます。秀吉君は演劇の練習も兼ねてチャイナ服を着てもらいます。」
「待つのじゃ!何故わしだけ着る様になっているのじゃ!」
「店のキャラクター的存在として最近は男の娘が流行っているとネットであったので。」
よく拾うな~。僕は最近ネットを使わないから知らないよ。てかそれどこからの情報?
こうして僕らのクラスは中華喫茶になった。
放課後になってからも僕らは少し大変だった。西村先生への長机及びパイプ椅子の貸し出し許可の申請、出し物のレシピ、その他もろもろ。正直疲れた。僕がFクラスで休んでいると美波が話し掛けてきた。
「アキ、ちょっといい?」
「どうしたの美波?」
「あのさ、清涼祭の日に召喚大会に出てくれない?」
「え?どうして?」
「実は瑞希の口からは言わないでって言われていたんだけど・・・・・・瑞希、このままだと転校しちゃうかもしれないの。」
「えええ!?!?」
姫路さんが転校!?ん!でもよくよく考えたら・・・・・・・あっ!そっか。
「美波、もしかしてその原因ってこのクラス?」
「そ、そうよ。よくわかったわね。」
「よくよく考えたらこのクラスって姫路さんの健康には最も不条件極まりないもん。」
「そうなのよ。瑞希のお父さんが今のこのクラスは健康に悪いから転校させるって話したんだけど瑞希はそれがいやで・・・・・・」
「そっか。でも待てよ。ペアは誰にしたらいいのさ!」
「あ・・・・・・」
「『あ』じゃないよ『あ』じゃ!雄二は協力してくれそうに無いし・・・・・・友也は・・・・・いやダメだ。もしこの清涼祭の時に誰かがダークライブしたらいけないし・・・・・」
僕が話していると放送が流れてきた。
〈2-Fの吉井明久君、並びに坂本雄二君。至急学園長室まで来てください。〉
「あっ!ゴメン美波、美波は姫路さんと組んで試召大会に出て。僕は僕で何とかするから。」
そう言って僕は学園長室に向かった。
「おう、明久。」
「雄二、ちゃんと来るんだね。」
「おいおい、流石の俺もちゃんとここに来るぜ。」
僕が学園長室前に来ると雄二も着ていた。
「でもさ、本来雄二がするべきことを僕がしたんだよ。そこに関してはどうなのかな?」
「邪魔するぞ、ババア!」
「雄二!」
僕の言葉を無視して雄二が学園長室の扉を開けた。僕が見るかぎりでは学園長と教頭先生が言い争っていた。
「なんだいガキども、礼儀を知らないのかい。教頭先生、今日はここまでで。」
「仕方ありませんね。では失礼します。」
教頭先生は僕たちとすれ違いざまに学園長室を後にした。
「すみません、学園長。」
「おや、坂本と違ってちゃんと吉井はお辞儀をするんだね。感心するよ。」
「それで、なんだ話「待て!」」
突然タロウが姿を表すといきなりウルトラ念力をして何かの機械を破壊した。
「ど、どうしたのタロウ?」
「明久、さっき機会が壊れた場所を探ってみろ。」
僕はタロウに言われるがままにその場所に向かうと何か小型の黒い物があった。あれ?これって防犯の店にあった・・・・・
「盗聴器!?」
「そうだ。いきなり驚かしてすまない。」
「なに、いいさね。」
あれ?タロウが喋っているのを見ても驚かない。どうしてだ?
「学園長、どうして驚かないんですか?」
「ああ、それはね。」
学園長は机の引き出しを開けると中から角の生えたウルトラマンと女性のようなウルトラマン(?)が現れた。
「父さん!母さん!」
「久しぶりだな、タロウ。」
「元気だったようね。」
嘘!なんで学園長がタロウのお母さんとお父さんを持ってるの!
「驚いたかい?実は学園裏の神社が燃えた際にその場を立ち寄ったらたまたま二人を見つけてね。最初は驚いたがこの二人から聞かされた話や先日の出来事があったら信じるさね。」
なるほど。どんな大人でも事実があったら信じざるを得ないと言うわけか。
「じゃあ少し話を戻すがアンタ達、試召大会は知っているね。」
「はい。でもそれが何か?」
「実はそれの優勝景品に少し問題があってね。」
「問題?それはなんだ?」
タロウが学園長に問う。
「優勝者にはトロフィーと腕輪、そして如月ハイランドへのペアチケット。でも腕輪と如月ハイランドに問題があるんだよ。」
「どんな問題だ?」
「腕輪はまだ未完成品でね。一定点数を超えると暴走する恐れがあるんだよ。」
「じゃあなんでそれを優勝商品に?今からでも取り消しにしたらいいじゃないですか。」
「吉井、あんたの言うことは最もだ。でもね、これを見な。」
学園長は机の引き出しから一枚のプリントを取り出した。学校でも見慣れている試召大会のポスターだ。えーと、優勝商品にトロフィーと腕輪と如月ハイランドのチケット。・・・・・・・あ!
「そっか。これにもう出してしまっているから今さら無かった事には出来ないんだ。」
「そのとおり。それと如月ハイランドの方はスポンサーでね。圧力的にこれを押し付けられたんだよ。」
「なんでですか?普通遊園地のチケットならカップルとかが喜ぶじゃないですか?」
「確かに何も知らずに聞けば美味しい話かもしれない。だがね、そうじゃないんだよ。」
「何か裏がありそうだな。」
雄二が何か感づいている。
「実はそこでカップルがいくと結婚できるジンクスを作ろうとしているんだよ。」
「なんだとっ!?」
雄二の顔全体に冷や汗が垂れる。結構汗掻いていてもいける顔だな。写真撮ろ。
「おい明久、そのカメラで何を撮った?」
「今の雄二の顔。霧島さんにあげようと思って。」
「お前は俺を殺す気か!?」
「何を言うのさ雄二。結婚すれば人生の墓場に行くじゃないか。」
「俺はまだ行きたくねえ!」
「あ~、あんたら。話に戻ってもいいかい?」
「あ、すいません。要するにそれらを未然に防ぐために僕たちを使うってことですね。」
「そういうことだよ。方法としては試召大会に優勝してゲットして欲しいんだよ。」
「あくまで正攻法で獲得しろってワケですね。卑怯な方法だと教頭先生に何をいわれるか分からないから。」
「そういうことだよ。後余談だがウルトラの父と母にはまだ少し一緒にいてもらうが・・・・・いいかい、タロウ?」
「父と母の安心が確認できたのなら構いません。それにあなたは信用の出来る人です。」
「そらありがたい。じゃあそういうことだから解散さね。」
こうして僕と雄二は試召大会に出ることになった。
ちなみに余談だけど一回戦から一般公開されることになった。ムッツリーニに少し頼んでおかないと。