ペルソナ4→3   作:第7サーバー

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再投稿。
コミュは番長とハム子で共有してたり、オリジナルだったりします。
ちなみに原作のコミュキャラは一応全員登場予定です。
ただ、一つのコミュで二人まとめて攻略したりするのは番長クオリティとしか。
ハム子側でしかコミュが出ない人たちはほぼ出番ないですけど。


4月21日(火)~26日(日):コミュ

2009年4月21日(火)

 

その日の放課後、悠と湊の二人は明彦によってポロニアンモールの交番前に呼び出されていた。

 

「お。来たな」

「真田先輩。こんなところで何の用です?」

「会わせたい人がいる。俺たちの活動に協力してくれてる人だ」

 

それだけ言うと、明彦は交番の中に入っていった。

 

「協力者ってお巡りさん?」

「そうみたいだ」

「――黒沢さん。話した二人を連れて来ました」

「おう。そいつらがそうか」

 

交番の中には目つきの鋭い警官が一人いた。

 

「この人は“黒沢巡査”。影時間に対する適性はないが、俺たちに協力してくれてる」

「……君たちのことは聞いてる。俺の仕事は街の治安を守ることだ。たとえそれがどんな事情であってもな。力などなくても俺にはこの街の異変が分かる。俺は俺が正しいと信じることをする。……それだけだ」

 

黒沢は揺るぎない信念を持って動く人物のようだ。

自分の目で確認できない非日常に対して協力するというのはそうできることではない。

だが、黒沢はこうして協力すると言う。

その口振りからも街のことを想っているのが伝わってきた。

 

「黒沢さんは戦闘で使うような武器や防具――装備品を扱っている店と繋がりを持っている。黒沢さんに頼めば、それらを入手することができる。もっとも、タダにはしてくれないけどな」

「当たり前だ。世の中にタダの物などない」

 

「分かってますよ。――有里。現場のリーダーはお前だ。これからは探索資金もお前が管理することになる。お前が必要だと思う物を買って、みんなに渡せ。鳴上はその補佐役だ。何でもかんでも有里だけに押し付け任せるわけには行かないからな」

 

「私が選んじゃっていいんですかっ?」

「あ、ああ。あまり変な物を買うなよ。鳴上とよく相談するんだ」

「はーいっ!」

「……鳴上。あるいはお前が頼りかもしれん。後は任せたぞ」

「分かりました……」

 

目をキラキラさせている湊に嫌な予感を感じたのか、明彦は悠の肩を叩いてそう言うと、黒沢に挨拶をして、その場を後にした。

 

「えっへっへ~、何買おっかな~! っていうか、これって横流し?」

「……違う。あくまで君たちの要望に合いそうな物を、俺が店から用意するだけだ。まぁ、職務中にやることではないかもしれないが、このことがバレたとしても君たちが捕まるようなことはないから安心しろ」

「仲介人ってことですか」

「ああ、そういうことだな」

 

とは言うものの、街中で剣とか持ってたら普通に銃刀法違反なのではと悠は思い、何故かリアルに自分がパトカーに乗せられる姿まで想像できてしまったが、そこら辺は桐条財閥が上手くやってくれるのだろうと自分を納得させた。

もっともそれなら装備品も桐条財閥が用意してくれればいいのではと思わなくもなかったが。

 

「うーん。なんかこれって物がないかな~」

「今回はあくまで顔見せみたいなものだ。君たちがそれに見合いそうだと思えばより良い物を調達して来よう。だから、たまに顔を出すようにするといい。俺の機嫌の良い時は、少しくらいは割引もしてやる」

「今日の機嫌はっ?」

「……今日は普通だな。割引はなしだ」

「えーっ!」

 

黒沢のそんな言葉に湊がさっそくと尋ねるが、黒沢は平静な顔でそう言い、湊はわかり易く頬を膨らませた。

 

「そんな顔してもダメなものはダメだ。一応は商売だからな。世の中そんな甘い話はない」

「ちぇー、ケチ! ……鳴上くんは剣だよねー? この“キシドーブレード”ってヤツ欲しい?」

 

湊が名前の通り西洋の騎士剣のような武器を示すが、悠はそれに視線を向けて少し考える素振りを見せた後、静かに首を振った。

 

「……いや、俺はどちらかと言うと日本刀系統の方が良いな。それは順平に買ってやったらどうだ?」

「ふうん、そっかー。刀は置いてないし、じゃあ、鳴上くんはしばらく模造刀のままだね」

「ああ」

「代わりに鳴上くんには、この“サバイバルガード”をプレゼント! これなら制服の下に着れるよね?」

「そうだな」

「あとは私の薙刀とー、ゆかりの弓とー、――あぅ。もうお金がない。他は我慢かなー……。順平の剣は要らないかなー……。うーん、バイトでもするべきかな?」

 

湊は自分の財布の中身とにらめっこをして唸る。

タルタロスで降ってきたお金は問題がないとすでに湊に渡されているはずだが、それもあっさりと尽きてしまったようだ。

 

「今はそこまで悩まなくていいんじゃないか? それほど性能に差があるわけでもなさそうだ。相手の弱点を突くように戦えば、まだ余裕はあると思う」

「……そうだね。じゃあ、コレで決定ー!」

 

二人は買い物を済ませて交番の外に出た。

さらにその日から、タルタロスへの準備を理由に寮の門限が美鶴によって解除され、夜行動が許可された。

それに対して湊は嬉々として外に遊びに行った。

悠も同じく外へと出掛ける。

どこへ行こうかと考えたところで、放課後の湊の言葉を思い出した。

そして、悠は登録制のアルバイトに登録して、“喫茶シャガール”にヘルプのような形で入ることになった。

 

「「あれ?」」

 

奇しくもそこには遊びに行ったと思われた湊もいて、一緒にアルバイトをすることになるのだった。

 

 

2009年4月22日(水)

 

この日から再びタルタロスへと挑む日々が始まった。

湊からゆかりに買った新装備が手渡され、何もなかった順平は不満を漏らしたが、「順平のペルソナは強いっぽいから大丈夫!」と湊がフォローするとすぐに機嫌を良くした。

まだ探索を始めたばかりだということもあり、タルタロスに慣れるためにも比較的安全な低階層をウロウロする四人。

しかし――。

 

『この反応は――マズイ! 死神タイプのシャドウだ! 今のお前たちが勝てる相手じゃない、逃げろ!』

「は? 死神タイプ?」

『いいから逃げろ! 死にたいのか!』

「――行くよ!」

 

突然の美鶴の指示に順平が呆けたような声を上げるが、湊は危険を感じてその場から駆け出す。

悠がそれに並走すると、ゆかりも慌ててその後に続いて走り出した。

 

「えっ……ちょっ!」

 

一人微妙に取り残された形になる順平。

その背後からは鎖の擦れるような音と異様な気配が近付いて来るのが確かに感じられる。

順平もそれに気付き、ごくりと唾を飲んで振り返った。

 

そして現れたのは――これまでのシャドウとは一線を駕す存在感を持ったナニカ。

 

血に染まったボロキレのようなコートに、顔を覆う布袋から覗くギラギラとした目。

銃身の異様に長い銃を両手に構え、ふわりと中空に浮かぶそのナニカは、滑るように順平に近付いてくる。

 

「……!」

 

順平の足は凍りついたように動かない。

そんな順平という獲物の姿を捉えたナニカは、順平へとその両手の銃口を向けた。

すると両者の間の空間に光が集まる。

順平はその光景に死を覚悟――することすらもできずに、ただ突っ立っていた。

不意にその襟首が掴まれ、ぐんっと後ろに引きずり飛ばされる。

順平のその目に映ったのは誰かの後姿――誰かも何も男子の制服をこの場でまとっているのは順平と後はもう一人だけなのだから、それが誰かはすぐに分かった。

 

「鳴上――!」

 

悠は順平の身代わりとなって光に包まれる。

光は弾け、爆風が周囲へと吹き荒び、順平はさらに転がった。

それは彼らにはいまだ未知の領域の力――万能属性の魔法スキル“メギドラ”。

それをマトモに喰らってしまえば、今の彼らはそれはもうあっさりと全滅することだろう。

だから彼もまた消し飛んでいなければおかしい。

 

しかし彼は――鳴上悠はその爆発の中心地でゆっくりと立ち上がった。

 

身体はふらついていたが、食いしばったようで、その目に燃える闘志が消えることはない。

悠とそのナニカの視線がバチッと正面からぶつかり合う。

瞬間、わずかにだが、そのナニカが気圧されるように後ずさったように見えた。

けれど、その状況で背中を向けたのは悠のほうだ。

足に渾身の力を籠めて駆け出すと、尻餅をついていた順平の腕を掴み、そのまま引きずるようにして逃げる。

湊とゆかりが手を振り声を上げている“ターミナル”――脱出ポイントに転がるように駆け込むと、そのままエントランスへと戻り、息を吐いた。

 

「だ、大丈夫!!? 鳴上くん!」

「ああ……大丈夫だ」

 

二人の心配する声、美鶴と明彦も駆け寄ってくる。

そして我を取り戻した順平もヨロヨロと立ち上がると頭を下げた。

 

「悪ぃ、鳴上……助かった」

「突然のことだったんだ。次に活かせればそれでいい」

「あ、ああ……」

 

そう言いながら、悠もまた先程の存在を思い出す。

思い出して――いずれは、何度も戦うことになるのだろうなとなんとなく思った。

 

……鳴上悠、その時の記憶はなくとも、未来でそのナニカ――“刈り取る者”ならぬ“刈り取るもの”からレアアイテムを刈り取りまくっていた男である。

 

だからあえて言おう。

 

今なら間に合う、逃げろ――刈り取る者。

 

 

2009年4月23日(木)

 

学園が終わり、帰る準備を始めた悠の下にゆかりが寄ってくる。

 

「ねえ、たまには一緒に帰らない?」

「それは構わないが、有里とかとはいいのか?」

「湊は今日順平とラーメン食べて帰るんだってさ。さすがに付き合えないかなーって」

「そうか」

「あの子って普通にラーメン屋とかに入れるみたい。女子としてどーなのって思わなくもないけど、それがあの子の魅力なのかな」

「そうかもな」

「うん……じゃあ、行こっか?」

 

二人はただ帰るのもあれなのでポロニアンモールに寄ることにした。

 

「あー、なんか色々見たねーっ。……散財もしたけど。そういえば、鳴上くんって湊と同じでそこの喫茶店でバイト始めたんでしょ?」

 

そしていくつかの店を見て回った後、ポロニアンモールの中心にある噴水広場のベンチに、ちょっと休憩と並んで座る。

 

「時間が空いた時だけな」

 

ゆかりの言葉に悠が頷くと、ゆかりはうへーと顔を顰めた。

 

「湊もだけど、タルタロスもあるのによくやろうって思えたよねー……」

「岳羽が部活で弓道やってるのとあまり変わらないと思うが」

「え、変わるって。ってか、鳴上くんは部活やろうとかは思わないの?」

 

悠の言葉にゆかりはそれとこれとは全然別だと言い、話は部活のことに移った。

 

「そうだな。興味はあるかな。今からでも入れそうなところがあれば入るかもしれない」

「鳴上くんは戦ってんのとか見ても、運動得意そうだよね。何かやってた?」

「……サッカーとバスケはやってたかな?」

 

少し記憶がぼやけているような気もしたが、悠はそれについて特に考えることもなく、自分のスポーツ経験を口にした。

 

「あー、なんとなく分かる。花形スポーツって感じ。でも、そこら辺は2年から入るのは難しそうかなー?」

「そうか」

「団体競技だしね。陸上とかテニスとか、個人でもできるのは再募集をかけてたっぽいよ」

「考えておく」

「うん」

 

そんな感じで話題が一段落した会話の切れ目、ゆかりは少し目を伏せると、口を開いた。

 

「……あの、さ。湊には話したんだけど、鳴上くんも聞いてくれる、かな?」

「ああ」

 

不意に神妙な雰囲気になったゆかりに、悠もまた真摯な気持ちで頷いた。

 

「うん……。ちょっと暗くなるかもだけど、私の戦う理由。……昔さ。この辺りで大きな爆発事故があったの」

「爆発事故?」

「うん。10年前……。私の父さんその事故で死んじゃってさ。それから母さんとも距離が開いてて……父さんが務めてたの桐条グループの研究所だったの。だからここにいれば父さんのこと、何か分かるかもって思って……」

 

それがゆかりの戦う理由。

桐条財閥――桐条グループの裏の顔がそれに繋がっていると考えているということだろうか。

前に美鶴に対して若干思うような部分がある様子を見せたのも、それが関わっているのだろう。

 

「そうか」

「……うん、そう」

「なんで俺に話してくれたんだ?」

 

悠の言葉に、ゆかりは伏せていた視線をちらりと悠に向けた。

 

「鳴上くんの力……」

「俺の力?」

「湊も凄いって思うけど、鳴上くんって召喚器を使わないで、ペルソナを呼べるでしょ?」

「ああ」

「それって、凄く心が強いってことなんだって。自分の弱さとか、嫌なところから目を背けないことで初めてできること……。私、結構ぐらぐらしてるところあってさ。……だから、私もそうなれたらなーって思って。……えっと、決意表明みたいな感じ?」

「――なれるさ」

 

悠はそう思った。

だから素直にそう言ったのだが、ゆかりは目を少し見開いて驚いたような顔をする。

 

「あ、ははっ……なんか、やっぱ鳴上くんって凄いよね。……うん。頑張る。頑張るから……その、鳴上くんもちゃんと見ててよね!」

「ああ」

「ならよし! ――さっ、それじゃあ、休憩終わりっ! ポロニアンモール、もう一周行っとく?」

「望むところだ」

 

>ゆかりとの間にほのかな絆の芽生えを感じる…

>ゆかりのことが少し分かった気がした…

 

我は汝…、汝は我…汝、新たなる絆を見出したり…絆は即ちまことを知る一歩なり。汝、“恋愛”のペルソナを呼び出せし時、我ら、失われた力を解放せん…

 

>“恋愛”属性のコミュニティである“岳羽ゆかり”のコミュを手に入れた!

>鳴上悠の失われた力“恋愛”属性のペルソナの一部が解放された!

 

頭の中に直接囁くような不思議な声に、悠はペルソナ全書を見る。

確かに絵柄が追加されている。

だが、その絵柄は影になっていてはっきりしない。

どうやら今の悠の力では、それを召喚するまでには至らないようだ。

しかし、これがあの誰かが言っていた絆の力なのだろうか。

他者との絆が自分の力を強くする……。

悠はそのことについて想いを巡らせながら、ゆかりの後を歩いた。

 

 

2009年4月24日(金)

 

悠はゆかりとの会話から、運動部に入ることにした。

再募集を掛けている運動部は、陸上、水泳、剣道の三つだった。

テニスは女子だけで、女子は他にも団体競技であるバレー部も再募集を掛けているようだ。

悠は普段から戦っているので剣道は避け、走るという意味でサッカーやバスケに一番近い陸上部に入ることにした。

 

「――みんな、集まれ! 2年の転入生の鳴上が今日から陸上部に入ることになった。はははっ、強力なライバルの登場だな! ……とはいえ、部活の仲間でもあるんだから、ちゃんと面倒見てやれよ!」

「よろしく」

 

その日の部活はトラックを走り回って終わった……。

 

「――よう。鳴上。俺、お前と同じクラスの“宮本一志”。顔、覚えてくれてっか?」

「ああ」

 

練習が終わるとクラスメイトの一志が声を掛けてきた。

一志は普段の学生生活からジャージで過ごしている短髪の少年だ。

そのためクラスメイトの中でも特に目に留まり易い一人だった。

まぁ、ピンク色のカーディガンを着ていたり、キャップを被っている二人のほうが目に留まりもするが、それはそれだろう。

 

「そうか。これからは部活仲間だからな。よろしく頼むぜ」

「こちらこそ」

「おう。――それはそうと、親睦を深める意味でどっか寄ってかね。部活後って腹減るよな?」

 

>一志との間にほのかな絆の芽生えを感じる…

>一志のことが少し分かった気がした…

 

我は汝…、汝は我…汝、新たなる絆を見出したり…絆は即ちまことを知る一歩なり。汝、“戦車”のペルソナを呼び出せし時、我ら、失われた力を解放せん…

 

>“戦車”属性のコミュニティである“運動部”のコミュを手に入れた!

>鳴上悠の失われた力“戦車”属性のペルソナの一部が解放された!

 

ペルソナ全書を見ると、“スライム”というペルソナが追加されている。

物理に耐性を持ち、スキルは8個全部埋まっているが、LVは2だ。

やはり、今の悠が制御できるLVのペルソナしか使えないということだろう。

だが、スキルを多く覚えているのは助かる。

もっとも、だからと使いまくれば悠自身がバテてしまうだろうから注意は必要だが。

 

悠は一志の提案に乗って巌戸台駅の近くにある“定食わかつ”で食事をした。

 

 

2009年4月25日(土)

 

学園で聞いた噂を元に、悠はリニューアルしたという古本屋に行ってみた。

――すると、中には湊がいて、店の主人であろう老夫婦と思われる二人と仲良さそうに喋っていた。

どうにも悠は湊と行動先が被る傾向があるようだった。

 

「あ、鳴上くんっ。鳴上くんも来たんだね。そういえば読書も趣味だっけ?」

「ああ」

 

悠の姿に気付いた湊に、悠は軽く手を上げて応える。

 

「おやおや、湊ちゃんのお友達かの?」

「うんっ。鳴上くんって言うんだよっ!」

「鳴上悠です」

「じゃあ、悠ちゃんじゃな」

 

悠が頭を下げて名前を告げると、店主であるだろう老人は人の良さそうな笑顔でそう言った。

 

「悠ちゃん……」

「あ、それいいっ! 私も今度からそう呼ぼっかな?」

「やめてくれ……」

「えーっ」

 

悠は湊の不満そうな声をスルーする。

さすがに同年代の女子に、名前呼びな上にちゃん付けされたら、急にどうしたとそういう噂になるのは間違いがなかった。

 

「悠ちゃん。悠ちゃんは身体が大きいからこれを食べなさい。お近付きの印じゃ」

 

悠は“かにぱん”を貰った。

 

「ありがとうございます。えっと……」

「お爺ちゃんは“文吉”さんって言うんだよっ。お婆ちゃんの方は“光子”さんっ」

「そうか。ありがとうございます。文吉さん」

「いいんじゃよ。たくさんあまっておるからの」

 

悠はその後、本棚に目を向けた。

“はじまりの漢”という名の本が悠の目に留まる。

何故だか、凄く気になるタイトルだった。

悠の頭の中に漢シリーズ、幻の初版本という言葉が急に浮かんだ。

その本を買うことにした……。

 

自室に帰ってその本を読んだ。

これ以上は上がるはずのない勇気が上がった気がした。(勇気UP!)。

 

 

2009年4月26日(日)

 

休日だ。

先週は順平が入寮して、先々週は湊が退院してと、色々あったので、悠にとって予定のない休日はここに来て初めてだった。

何をしようかと考えながら部屋を出ると、ちょうど隣の部屋から順平も出てきた。

 

「お。鳴上。そうだ。これから友近とポロニアンモールで遊ぶんだけど、お前も来ねえ?」

 

友近というのはクラスメイトの“友近健二”のことだ。

 

「いいのか?」

「おー、いいよ。あいつも別にそういうこと気にしねえだろうしな」

「そうか。なら行くよ」

「おお、そう来なくっちゃな! じゃあ、行こうぜ~」

 

頷き、順平と一緒に寮を出た。

ポロニアンモールの噴水前で健二と合流する。

 

「お? 鳴上も一緒なのか。そういや、お前ら一緒の寮になったんだっけ?」

「そうだぜ~、部屋もお隣同士なわけよ。これが」

「ふーん。お前らの寮って確か男女同寮なんだよな?」

 

健二はいかにもといった男子学生で、そっちの話題に興味があるようだ。

 

「ああ、女子は三階。オレらは二階だ」

「誰がいるんだっけ?」

「ゆかりッチと有里、それと桐条先輩だな」

「なるほどねー。そん中だとやっぱ、桐条先輩かな~、でも、年上っていうほどじゃないからな~」

「友近の狙いは“叶先生”だろ?」

「そうねー。やっぱ大人の女って感じが良いよな~。お前、そういうのどう思う?」

 

健二はどうやら年上好きのようだ。

悠は年齢に対するこだわりは特になかったので頷き同意する。

 

「悪くないな」

「おっ、分かってんじゃん! 同年代の女はガキっぽ過ぎてさ。理想は高く年上にってな!」

「頑張れ」

「ああ、サンキュー。……お前とこうして話すのは初めてだけど、意外に話が合いそうだな。これからよろしくな。鳴上」

「こちらこそ」

 

>健二との間にほのかな絆の芽生えを感じる…

>健二のことが少し分かった気がした…

 

我は汝…、汝は我…汝、新たなる絆を見出したり…絆は即ちまことを知る一歩なり。汝、“魔術師”のペルソナを呼び出せし時、我ら、失われた力を解放せん…

 

>“魔術師”属性のコミュニティである“クラスメイト”のコミュを手に入れた!

>鳴上悠の失われた力“魔術師”属性のペルソナの一部が解放された!

 

ペルソナ全書を見ると、ピクシーのアルカナが“魔術師”に変化している。

耐性が疾風に変わり、しかも、パラメータとスキルが増えている。

悠の失われた力とやらのピクシーは“魔術師”のアルカナだったということなのだろうか。

そして、これが最初にピクシーを見た時に感じた違和感の原因かと悠は考える。

人は見たいものを見たいように見る――というのは、いったい誰の言葉だったか……。

これは人との関わり方によっては、そのアルカナが変わることもあり得るという一例なのかもしれなかった。

 

その後――三人はゲームセンターやカラオケで休日を満喫したのだった。

 

 

同日 -影時間-【タルタロス-14F-世俗の庭テベル】

 

『フロア中央に反応が一体! かなり強い、気を付けろ!』

 

タルタロスの探索は順調に進んでいた。

そんな折に美鶴が発見したのがその反応だ。

四人は顔を見合わせると、不覚を取らないために、その反応に接触する前に辺りを探索する。

 

「あった」

 

四人の前にあるのはエントランスへと戻ることができるワープ装置――ターミナル。

しかし、その形状は普段のものと違い、アーチ状になっていた。

 

『――どうやら、5Fと10Fにあったものと同じ、双方向のターミナルを見つけたようだな。前に鳴上が言っていたエレベーターの役目を果たすもの。やはり何階層かごとにあるようだ。本当にあるとは運が良い。一度戻って来たらどうだ?』

 

美鶴の言葉に四人は一度エントランスに戻る。

そしてエントランスに備え付けられているアンティークの“置時計”に探索資金を払う事で体力や精神力を回復させる。

どういう原理か――そして、何故こんな物があるのかは分からないが、この機能は重宝していた。

もっとも、その回復量に応じてお金が掛かるということだけは、どうにかして欲しいのが全員の総意だったが。

とにかく万全の状態になった四人は再び14Fへと戻り、先程の反応のシャドウと向かい合う。

 

『アルカナは“戦車”。ここの番人のようだ……用心しろ』

 

5Fと10Fにもいた番人タイプ。

5Fは“ヴィーナスイーグル”という鳥型で、10Fは“ダンシングハンド”という手の形をしたシャドウだった。

そして現在、目の前にいるシャドウは個体名を“バスタードライブ”といい、尖った両腕と四本の脚を持つ、機械的な姿のシャドウである。

 

「どわっ、こいつ、物理攻撃効かねえ……っ!」

「弱点らしい弱点もないみたいだ」

「うん。みんな、魔法スキルで攻撃して!」

 

それぞれが魔法スキルで攻撃をする中、悠はバスタードライブの身体が帯電するのを見て取った。

 

「マズイ――岳羽! 防御しろ!」

「えっ?」

「間に合えっ――イザナギ!」

 

雷が周囲に落ちる。

バスタードライブの“マハジオ”だ。

 

「きゃぁあああっ!!?」

 

ゆかりはその身に宿すペルソナの特性上、電撃に弱い。

ゆかりがダウンすると、バスタードライブはすぐに“アサルトダイブ”による追撃を仕掛けた。

それだけ喰らえば意識を失ってもおかしくないほどの攻撃だったが、悠が咄嗟に掛けた“ラクカジャ”の効果によって防御力が上がっていたゆかりは、どうにかその攻撃に耐えた。

 

「ゆかりっ!」

「岳羽!」

 

湊と悠が続けてゆかりに“ディア”を掛ける。

ゆかりは何とか持ち直した。

 

「っつー……ごめん、ありがとっ!」

 

ゆかりがお返しとばかりに疾風属性の魔法スキル“ガル”で攻撃する。

その後も戦闘は続き――……。

 

「相手は力を溜めてる! でも、あと一息だ! 攻撃される前に押し切ろう!」

「うんっ! みんな、ラストスパート!」

 

湊の言葉にそれぞれが精神力を振り絞りペルソナを呼び出す。

 

「イザナギ!」

「“ジャックフロスト”!」

「ヘルメス!」

「イオ!」

 

それぞれ属性の違う怒涛の四連続攻撃に、遂にバスタードライブは力尽き、消滅していく。

 

「やったな!」

「うん、やったねっ!」

「ヤバかったけど、勝てばオッケー! ってな」

「私は良くないわよ。――ったく、あいつ、ピンポイントで私を狙って来るんだから……」

 

一番の被害を受けたゆかりが愚痴る。

 

「それで、どうする? 今日はこれで切り上げるか?」

「そうだね。この階層だけ探索したら戻ろうか。桐条先輩、この階層に他のシャドウはいないんですよね?」

『ああ。シャドウの反応はない』

「んじゃ、もう一頑張りしますかー」

「そだねー。あー、とっとと終わらせて、シャワー浴びたい」

 

四人はそのフロアを見て回る。

 

「お。アイテム発見!」

『それは“ソーマ”に“反魂香”だな。ソーマはエントランスの置時計と同じ効果があるアイテムだ。金が掛からない上、携帯できるのだから、いざという時に使うべきだな』

「反魂香は意識を失った時に使うアイテムか。あまり世話にはなりたくないな」

「だね。えっと、これでこのフロアは見て回ったかな?じゃあ、帰る?」

「賛成ー。それじゃ、帰ろ帰ろ」

 

そして、その日の探索は終わった。

 

――……影時間が終わる。




前に投稿した時にも書きましたがもう一度。
かつての番長のペルソナはLVは初期のままだけど、スキルは全部埋まっているという設定です。
だから弱点とかはスキルで消えてて、コミュで解放されるとお得な感じとなっています。
LVは全部99とかで完全に無双状態だと展開的に困るための制限です。
とはいえベルベットルームに入れないので合体はできないけど、ペルソナチェンジは自由自在。
制限数がないので、好きなペルソナを好きに使えるというチート仕様です。
まぁ番長のLVが追い付いてないと、コミュランクが上がってもペルソナは解放されませんが。

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