ストライク・ザ・ブラッド 〜同族殺しの不死の王〜   作:國靜 繋

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聖者の右腕 2

 吸血鬼と獣人の二人組が魔族狩りに遭い死亡した事件があった日の夜。

 

「あれ、どこ行くの那月ちゃん」

 

「ここ最近、魔族狩りが頻発しているからな、生活指導の為も含めて見回りの仕事だ。後、ちゃん付けはやめろ」

 

攻魔官も大変だな~と思いつつどうせ暇だから、着いて行くことにした。

それにしても、見た目幼女に生活指導されるとか、される方はほんと災難だよなと、思ったら、黒いレース張りの扇子で眉間を撃たれた。

思っただけなのに、と若干不平を漏らしながら、那月の影の中に入った。

影の中に入ってしまえば、後はこちらのものだ。

向こうから干渉される事はなく、尚且つこっちは動かなくて済むからとても快適だ。

それに、影の中から外の様子もバッチリ見える。

ただ、この方法で覗きをしようとは思わない。

覗きとは、見に行くまでにバレルかバレないかのハラハラドキドキ感をも楽しんでこそであり、そこから見る桃源郷こそ浪漫と達成感を得られるのだ。

ダアトの凄い熱意だけは感じられるが、これに共感できるのは思春期の男の子位だろう。

 

 

っと、那月の影の中でのんびりしていたら、如何やらゲームセンターの前で彩海学園の生徒を見つけたようだ。

だんだん、那月のドS精神に火が付き那月が良い顔をしていた。

そんな那月も可愛いな~と思いつつ、被害に遭った生徒に対して内心合掌し、成り行きを見守っていた時だった。

ズン、と鈍い音が人工島全体を揺らし、一瞬遅れて、爆発音が響いた。

攻魔師である那月が異様な雰囲気を感じ振り返った。

尚も続く爆発音常人にも感知できるレベル強力な魔力の波動、那月の注意が完全にそちらに向いている間に那月に呼び止められていた生徒は、走って逃げだした。

無論、那月も咄嗟に結界を展開したが、女の子の方に壊された。

完全に虚を突かれてしまったが、那月には追いかける手段がない訳では無いが、今はそれどころではないので、せめてと那月は捨て台詞の様な言葉を吐いた。

その言葉が夜の街に木霊した。

が、それ以上に断続的に続く爆発音に遮られた。

 

「あ~あ、逃げられてやんの」

 

「煩い」

 

那月の影から出ている途中の俺に那月は無情にも扇子で叩いて来た。

 

「それにしても、咄嗟に張り巡らせた結界とは言え破られるとはね」

 

「あの娘が、獅子王機関の剣巫だ。咄嗟に展開した結界なんだ、あれくらいはやってのけるだろ」

 

意外に評価が高かったのに驚いたが、相手を過小評価していないだけマシだろと思った。

 

「それで、どうするの那月ちゃん。向かうんだろ」

 

「当たり前だ。お前はどうするんだダアト、お前の性格からして行きたがるだろ」

 

「もしかして、これが以心伝心手奴か。遂にここまで流石俺の那月ちゃんだ」

 

背後から抱きつこうとしたら、いつもの様に肘鉄が飛んできたが、何時までも学習しない俺ではない。

那月の幼児体型からして射程距離はそこまで広くない、寧ろ小さいと言ってもいい。

つまり、一歩下がれば普通に安全なんだ。

 

「甘いな」

 

が、読みが甘かったのは俺の方だったらしい。

空振りに為ったおかげで正面から抱きつけると思ったら、扇子で顎を撃ち抜かれたのだ。

 

「くぅうううう」

 

俺が那月にハグで来るのはいつに為るのだろうか。

 

 

 

 

那月に許可を貰い爆発が連続している場所へ向かっていたら、途中から爆発音が止んでしまった。

既に決着がついたのかと思い、急いで向かったら、先ほど那月に補導されかかった女の子が人工生命体(ホムンクルス)の背後から伸びている虹色の巨大な腕と戦っていたのだ。

どうやら、先客がいたらしく今回は大人しく、爆発の被害を被ったらしいモノレールの線路の上から悠々自適に暫くは傍観させて貰う事にした。

 

人工生命体(ホムンクルス)が、眷獣をね~」

 

面白い事を考える奴がいたもんだと、戦況を把握しようと戦闘が会っている所を良く見ると、人工生命体(ホムンクルス)の後ろには、半月斧(バルディッシュ)の刃と、装甲強化服の上に法衣が、鮮血で紅く濡れいている、片眼鏡(モノクロ)を掛けた巨躯の男がいる。

どうやら、アイツが魔族狩りの正体であり、人工生命体(ホムンクルス)に眷獣を植え付けた張本人みたいだ。

助けてやるべきか、若干悩んでいると、女の子が、どうしてもかわせない一撃を喰らいそうになった。

流石に那月が教師をしている所の学生が死ぬのは忍びないと思い、助けに入ろうとしたら、横を凄い勢いで通り過ぎるパーカーを被った青年が割って入ったのだ。

そして、割って入った少年が何と虹色の巨大な腕を殴り飛ばしたのだ。

その衝撃は、眷獣の宿主である幼女(ホムンクルス)にもおよび、転倒してしまったのだ。

立ちなおした幼女(ホムンクルス)は、法衣を纏った男の前に立ち、もう一度眷獣を出し攻撃を仕掛けた。

 

「仕方ないか」

 

高みの見物を辞め、そろそろ止めに入る事にした。

 

 

 

 

いきなり知らない男が、割って入った事に古城たちは焦っていた。

それも、人工生命体(ホムンクルス)の眷獣の拳を片手で完全に封殺しているからだ。

 

「えっと、確か那月ちゃんは、暁古城って、言ってたな。あってるか?」

 

「あ、ああ」

 

「じゃあ、古城さっさと、どこかに行った方がいいよ、そろそろ、那月ちゃんと警察と特区警備隊(アイランドガード)が、来るからね。」

 

「しかし、あんたを置いて行くわけには」

 

「俺を舐めたらいけないよ。この程度の相手余裕だから、それに特区警備隊(アイランドガード)

 

そういい、一拍置いて

「こい、怠惰なる辺獄烈火(ベルフェゴール)

 

ダアトが、そう言うと、ダアトの背後から闇色の炎を纏い豪華な王冠を被った巨大な骸骨が現れたのだ。

 

「燃やし尽くせ」

 

ダアトの命令を聞くと、怠惰なる辺獄烈火(ベルフェゴール)も纏っている炎が、幼女(ホムンクルス)から伸びている虹色の巨大な腕の眷獣を燃やし出したのだ。

 

「ぁあああああああ」

 

眷獣の受けているダメージが幼女(ホムンクルス)にフィードバックしているようで、苦しそうに叫びだした。

怠惰なる辺獄烈火(ベルフェゴール)の炎では、幼女(ホムンクルス)へダメージを与える事が出来ないが、眷獣を当す事によって間接的にダメージを与えてしまったようだ。

 

「仕方ない、引きますよアスタルテ」

 

ダアトの眷獣と幼女(ホムンクルス)の相性が悪いと気づいたのか、法衣を纏った男は、袖口から出した閃光弾(スタングレネード)を地面に投げ捨てた。

 

「ちっ、逃がしたか」

 

閃光弾(スタングレネード)の光が収まった時には、既に法衣を纏った男と幼女(ホムンクルス)の姿はなかった。

 

「ほら、お前らもさっさと逃げた方がいいぞ。そろそろ那月ちゃんたちが来るからね」

 

「あんたは、いったい」

 

「まあ、何れ教えてやるよ。それより良いのか、那月ちゃんが来たらゲームセンターの事も含め叱られるぞ」

 

ニヤケ顔で茶化すようにいったら、思いのほか効いたようで、特に女の子の方は青い顔をしていた。

どうも、見た目通りの優等生だからだろう。

 

「行くぞ、姫柊」

 

「分かりました。先輩」

二人の背中を見ながら、若いっていいな~と思ってしまった。




ベルフェゴールの性能は、コードブレイカーの時の異能のみを燃え散らす炎だったのを、眷獣や、魔法など、異質な力を燃え散らす能力に為っております
何てチート
詰まる所、幻想殺しを炎にした感じ
自分で言っても十分チートだと改めて思った。
寧ろ、ベルフェゴールだけで十分やっていける気が……

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