ストライク・ザ・ブラッド 〜同族殺しの不死の王〜   作:國靜 繋

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聖者の右腕

「幾らなんでも酷くね?スカートの中が、”不可抗力”で見えた事位」

 

ダアトにとっては、あくまでも不可抗力で見えてしまった物であって、望んで見た訳では無い。

寧ろ見るなら、堂々と脱がせて見る方だと自認している。

 

「しかし、黒かぁ~見た目はあのままなのに中身は、育つからなぁ~」

 

己の主人を貶しているのか、褒めているのか中々分からない独り言だが、その表情はとても生き生きとしているから、本人としては褒めている心算なのだろう。

まあ、那月が聞いたらまた、肘鉄なり物を投げられたりするだろうが。

 

 

暫くして、授業と言う名の生徒の補習から帰って来た那月はしかめっ面で帰って来た。

 

「どうした、那月ちゃん?」

 

「那月ちゃん言うな!!」

 

器用に補習で使ったのであろう教科書の角を顔面にぶつけて来た。

 

「で、如何したの御主人(マスター)?」

 

「最初から、そう呼べ。まあ、今回はこの程度で許してやる。で、どうしたかだと言うとだ、獅子王機関の剣巫が古城を監視すると言う名目で送って来るんだ。それもこの学校の中等部に編入して来るんだ」

 

ふんっ!!と、自分専用に特別に用意させたビロード張りの豪華な椅子に踏ん反り返って座り足を込んだ。

ゴスロリのロングスカートじゃなければ見えるか、見えないかのいい感じのチラリズムなのにと邪な考えをしていたら、また分厚いハードカバーの本が飛んできた。

無論、この程度のものは余裕でかわせるが、那月からのものは如何なるモノでも受け入れる(愛する)と自称しているダアトはかわさず受けた。

 

「だから、そんなに不機嫌なんだね」

 

あ~納得といった具合にうんうんと、ハードカバーの本が直撃した鼻を摩りながら、何度も首を縦に振った。

何せ、那月のもう一つの肩書が国家攻魔官だからだ。

そりゃあ、商売敵のエージェントが近くにいられたら誰でも快く思わないだろう。

それも相手が、あの獅子王機関と為ると尚更だ。

 

「大変だね~那月ちゃんも」

 

と、言って後ろから抱き着いて那月の慎ましい胸を揉もうとしたら、とてもいい肘鉄を喰らってしまった。

相変わらず学習せず那月にセクハラしようとし、肘鉄を喰らい悶絶するダアトだった。

 

 

 

その日の夜、那月の入浴を覗きに行こうとした時いきなり電話がかかって来た。

面倒だと思いつつ電話の受話器を取ると、受話器の向こう側からかなり焦った声で話しかけてきた。

 

『夜分遅くすみません教官。実は、例の魔族狩りがありまして、それも吸血鬼と獣人の二人組が何者かに殺されたようで、お叱りは後で聞きますので直ぐに来てもらって良いですか。場所は、アイランド・ウエストの繁華街です』

 

「あ、ちょ!?」

 

それだけ言い終わると、有無も言わさず電話を一方的に切られてしまった。

 

「どうした、ダアト?」

 

「いや~吸血鬼と獣人が殺されたから那月ちゃんに来てほしいって、特区警備隊(アイランド・ガード)から電話が」

 

「またか、場所は」

 

「アイランド・ウエストの繁華街だって」

 

「分かった、行くぞダアト。あと、那月ちゃん言うな」

 

そう言って、手近なところに投げても問題なさそうな物が無かったから、黒いレース張りの扇子で常人なら頭蓋骨陥没するほどの威力で叩かれた。

 

 

 

「全くあんなに酷くしなくてもいいのに」

 

「お前が、学習しないのがいけない」

 

そう言いながら、事件があった場所に那月の魔法で一瞬で付いた。

そこには、ほぼ一撃でやられた二人の死体があった。

周りの惨状も酷いもので何か凄い力で物理的に破壊された後もあった。

俺達が来た時には既に、特区警備隊(アイランド・ガード)と警察が現場検証をしていた。

 

「教官お疲れ様です!!」

 

出迎えたのは、特区警備隊(アイランド・ガード)のそれもフル装備をした奴だった。

フルフェイスヘルメットを被っているから、顔は見えないが、視線を感じているから間違いなく睨んでいると推測できる。

どうも、特区警備隊(アイランド・ガード)の奴らは、魔族、それも吸血鬼である俺が、那月と同棲しているのが気に喰わないらしい。

しかし、こればかりはいろんな意味でどうしようもない事なのだから、仕方ないと割り切って欲しいものだ。

それに、こちらは那月との付き合いはそれこそ、20年位はあるのだから、今更文句を言われる筋合いはない。

 

「それで、何か分かった那月ちゃん」

 

「お前に教える筋合いはないだろ」

 

御尤も、寧ろ俺が勝手に行動しない様にと言う意味合いが強いだろうけどね。

そんなこんなで、現場検証していたら朝日が射してきた。

 

「はい、那月ちゃん」

 

そう言って、どこからともなく那月の愛用している日傘を差しだした。

 

「だから、那月ちゃん言うな言っているだろ。だが、今回はその気遣いに免じて許してやる」

 

「遂に、那月ちゃんがデレt」

 

最後まで言い終わる前に、日傘の先端で眉間を文字通り貫かれた。

 

「お前の所為で私の日傘が汚れただろ!!」

 

「いや、酷くね!?寧ろ俺被害者だから、と言うか、警察の皆さんここで傷害事件起きてますよ!!」

 

良くも悪くもそう言う認識を持たれているダアトだった。


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