ストライク・ザ・ブラッド 〜同族殺しの不死の王〜   作:國靜 繋

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早くて土曜日と言いながら、やっぱり日曜日に為ってしまいました。
申し訳ないです。


天使炎上5

翌日――土曜

昨夜の現れた二体の内の捕縛した”仮面憑き”の一体を特区警備隊(アイランドガード)に引き渡した後、電波塔を消滅した件について、特区警備隊(アイランドガード)に言及されたが、”仮面憑き”がしたことにして、何を逃れたダアトは、朝から那月の影の中に入って休眠していた。

那月に、叶瀬が”仮面憑き”である事は未だ教えていない。

教えてもいいが、教えない方が面白くなると直感が訴えて来るので黙っている。

間違いなく、ばれた時は那月に説教されるだろうが、今はそんな事どうでも良い事だ。

’面白い’ただそれだけ、それだけが重要なのだ。

悠久に等しい年月を過ごし、これからも過ごす存在であるダアトにとって、’面白い’事はそれだけ重要な事だ。

 

「おい、起きろ」

 

那月がいきなり起こしてきた。

幾ら那月でも、影の中に直接干渉する事は出来ないが、声は聞こえるのだ。

そして、ダアトが那月に起こされて、起きない訳がない。

例え、久々に力の一部を使って僅かばかりとはいえ疲労していたとしてもだ。

 

「那月ちゃんが、起こしてくれるとか、遂に嫁の自覚が」

 

「面白いことを言うな、ダアト」

 

表面上は、笑っていたが、那月の目は笑ってはおらず寧ろ、獲物に狙いを定めた猛禽類の様だった。

 

「酷っ!!小さい頃言ってくれたのに……あっ、今もか」

 

ほぼ回復しているため、ダアトに疲労の色は見えない。

だが、久々に拘束術式を一部とはいえ解放されたため、調子に乗ったダアトは、解放された力以上の力を使ったため疲労が完全には抜け切れてはいなかった。

 

「まあ、それよりも俺を起こしたってことは、何か用があったからだよね」

 

「ああ、昨日の事を聞きたくてな。暁古城たちを呼びに行かせようと思ってな」

 

「ただのパシリっ」

 

日の高い睡眠時に叩き起こされたかと思えば、理由がパシリとか理不尽すぎる。

それに呼びに行かせると言われても、ダアトは古城たちの居場所を知らない。

それなのに呼びに行けって、無理過ぎるだろ。とダアトは内心毒づいた。

 

「どうせお前の事だから、暁古城たちの場所を知らないだ」

 

那月は、そう言うと執務机の一番下の引き出しを開くと一つのファイルを取り出した。

パラパラっとファイルをめくり、一つのページを開くとダアトに見せた。

 

「って、これ生徒の個人情報!!」

 

那月が見せたのは、生徒の名前、生年月日に住所、家族構成、更には成績までが事細かに記入されていたものだった。

 

「かまわん」

 

「いや、かまえよ」

 

とっさに、ツッコミを入れたのは仕方ないと思う。

 

「これで、分かったろ。じゃあ、行って来い」

 

それだけを言うと、那月に部屋から叩き出された。

 

「絶対、那月ちゃんが跳んだ方が早いと思うけど」

 

分厚い扉に阻まれ、いつもの事ながら、那月にダアトの呟きは聞こえなかった。

 

 

 

 

日差しの強い中、ダアトは那月に見せられた古城の住んでいる、マンションの部屋の前まで来ていた。

はぁ~と一つため息を吐くと、ピンポーンっと、チャイムを鳴らした。

 

「はぁーい」

 

部屋の中から声が聴こえ、扉の前でガチャガチャと言う音が聞こえた。

 

「えっと~どちら様ですか?」

 

「那月ちゃんのお使い(パシリ)で、ちょっと古城を呼んでくるように言われたんだけど、古城はいる?」

 

「那月さんの?でもごめんなさい。古城君昨日から帰ってないの」

 

「なにっ!?」

 

ダアトは、急に険しい顔に為った。

昨日から、つまり”仮面憑き”と戦った後から帰っていない事に為る。

そして、夏音と言う少女。

”仮面憑き”であり、彩海学園の生徒でもある彼女が、古城たちと仲がいいのは昨日の戦闘と、放課後で見当はついている。

仮説を立てるなら、アイツらだけで夏音の元へと向かった可能性が高い。

 

「そうか、すまなかったな」

 

「古城君何かしたんですか?」

 

「何、ちょっと成績の事について那月ちゃんが話したい事があるって言ってただけだよ」

 

とっさに嘘を吐いたが、見せて貰った一覧の成績から考えてあながち嘘とも言い切れない気がしてきた。

 

「やっぱり、古城君成績悪いんですね」

 

全く古城君は、と那月に見せて貰ったファイルの家族構成の欄に書いて、妹の凪沙は頬を膨らませていた。

 

「それじゃあ、これで古城はいないようだし、他を当ってみるよ」

 

ダアトは、そう告げると急いで那月の元へと戻っていった。

 

 

 

「どうした。暁古城はいないようだが」

 

「昨日から帰っていないそうだ。それよりも叶瀬夏音と言う中等部の子の家を教えてくれ」

 

「何!?それで、どうして叶瀬夏音になるんだ」

 

「いや~面白くなりそうだから黙っておこうと思ったけど、実は”仮面憑き”の一体が叶瀬夏音だったんだよ」

 

「何故それをもっと早く言わなかった」

 

那月に鳩尾に良い拳を一発貰ったダアトは、脂汗を掻きながら、辛うじて立っていた。

確かにダアトにとって’面白い’は、重要な事柄だが、それ以上に那月は優先されるべきだった。

 

「何を突っ立っている。さっさと暁古城を探して来い」

 

「せめて、叶瀬夏音の住んでいる所教えて」

 

「ちょっと、待ってろ」

 

那月は、先ほどと同じ引き出しを開くと、別のファイルを取り出した。

もしかしたら、那月の引き出しの中にあるファイルって、彩海学園全員分の事がプロファイルされているのでは、と疑いたくなってしまう。

 

「ほら、ここだ」

 

そう言って、渡されたファイルの中に書かれていた夏音の住所は、絃神島北地区(アイランド・ノース)の北地区第二層、研究所街(マギア・バレー)にあるメイガスクラフト社の社宅だった。

 

「また面倒な場所だな。最悪強行突破して良いよね」

 

それだけを言うと、面倒だなーと言いつつも全身を無数の蝙蝠へと変化させ、窓から飛び立っていった。

 

 

 

 

 

メイガスクラフト社の社宅前で、元の人の形へと戻った。

玄関をくぐると、受付にいた若い女性が声を掛けてくる。

 

「叶瀬夏音はいるか?」

 

ダアトが、簡潔に用件だけ伝えた。

受付係は、無感動な瞳でダアトを見つめた。

所詮は、ロボット、人を模した造られた機械人形。

 

「二〇四号室の叶瀬夏音は、外出中です」

 

手元の端末を操作するふりをしながら、受付係は淡々と答える。

 

「じゃあ、暁古城と姫柊雪菜は、ここに来たか?」

 

「はい、参られました。しかし、既に移動なされた後です」

 

古城たちが来ただと、ダアトの顔が一瞬顰めた。

既に移動した後と、この受付は言うと為ると。

そこから、導き出される事は。

ダアトは、舌打ちしながら、社宅の外へと出ると、那月に事前に渡されたスマホを操作し、那月を呼び出した。

 

『どうした、ダアト。緊急時以外掛けるなと言っただろ』

 

電話を取った那月は、嫌々とったと言うのが多分に含まれた声で応えた。

 

「たしかにそうだけど、どうも古城たち、俺らに黙って叶瀬夏音に会いに来ていたみたいだ。そして、既に移動した後と受付は言って来てるけど――」

 

『何!?あいつら勝手な事しやがって!!』

 

「それで、どうする。俺は今すぐにでもあいつらを探すけど」

 

『なら、さっさとそうしろ!!』

 

那月は、それだけを言うと一方的に電話を切って来た。

ダアトは、やれやれと思いつつも面白くなってきたな、と内心喜んでいた。

 

「さて、行きますか」

 

ダアトは、体を無数の蝙蝠へと変化させると、全ての蝙蝠を絃神島全体へと散って行った。

 

「ちっ!!あいつらどこ行きやがった」

 

古城の事だ、絶対碌な事に巻き込まれていない。

それに移動した後という事は、どこかに自主的に着いて行ったという事だ。

なら、まだ絃神島内に居るはずだ。

だが、最悪の場合島の外に行く可能性もある。

そうなってしまえば、今のダアトは手が出せない。

そう、今の、拘束術式が働いているダアトは手が出せない。

拘束術式は、その字の通りダアトの力を著しく低下させ、眷獣の力さえも弱らせ、または召喚できない様にしている。

前回の様に、那月に拘束術式を解除してもらうか、那月の血を飲むしか解除する方法がない。

あと一つ、裏ワザ的なものもない事もないが、もしそうなった場合、その原因はダアトの手によって、この世の地獄を行きながら味わうことになる。

下手をしたら、あの戦争がもう一度繰り返えされる事に為る。

それは、誰も望むところではない。

一部を除いては、だが。

ダアトの変化した無数の蝙蝠が、絃神島全体を捜索して十分が経過した時だった。

蝙蝠の一体が、空港で一機の旧式のプロペラ機に乗り込んでいる古城たちを見つけたのだ。

急いで、他の蝙蝠たちをその空港に集めたが、流石に絃神島全体に散らばっていた為、間に合わなかった。

ならばと思い、空港のフライトを管理している場所へと向かった。

 

「何だね君は、これ以上は関係者以外立ち入り禁止だ」

 

警備員に対して、目を見ながら

 

「何も問題ない」

 

警備員の目を合わせる事で、軽い暗示をかけた。

これで、警備員に対しては問題はなくなった。

暫く進むと、パスワードに指紋認証、網膜認証にカード認証と小さいながらも空港だけあって、管制室の入り口は厳重なセキュリティが掛けられていた。

しかし、ダアトにとってこの程度のセキュリティなどあってない様な物だ。

幾ら頑丈にしたところで、対人用、対登録魔族用でしかない。

ダアトは、そのセキュリティをすり抜ける事で攻略し、管制室へと入って行った。

牽制室への階段を上り管制室へと入ると

 

「何だね君は、ここは関係者以外立ち入り禁止のはず。それに警備員がいたはずだ」

 

管制官の一人が侵入してきたダアトに気づき警告してきた。

 

「少し聞きたい事があってね。先ほど出発した旧式のプロペラ機、あれの行先を知りたくてね」

 

「そんなこと言えるわけないだろ」

 

「まあ、そうだろうね。しかし、管理公社の許可が有ったらどうする」

 

「確かに、それなら知らせない訳にはいかないが、あったらの話だ。お前の様な不審者に教えるわけにはいかない」

 

確かに正論。

だが、そんな正義感面やマニュアル道理の対応が出来るのは、本当の意味で命の危険を知らないからこそだ。

実際に、強盗や身の危険を感じたら、警察や警報ボタンを押せと、どのような企業や店の従業員に徹底させるだろうが、目の前に拳銃を突きつけられた状態でそんな事出来るだろうか。

普通は、無理だ。

そんなことできるはずがない、事実先ほどまで、勇んでダアトに口答えしていた管制官は、ガタガタと震えていた。

それもその筈、窓の外から、ダアトの眷獣『憤怒の煉獄(サタン)』が覗き込んでいたからだ。

 

「貴様、み、未登録、魔族か。ア、特区警備隊(アイランドガード)が、く、来るぞ」

 

「で、俺は、さっきのの行先を知りたいだけ何だけど」

 

見下すように言い放つダアト。

管制官は、震えてまともにダアトの対応が出来ていないようだ。

そんな中、一人の管制官が、ヘッドフォンマイクで、何かを言っているのにダアトが、気が付いた。

 

「お前何してる」

 

ダアトが、一足飛びで、その管制官の元へと向かいマイクを握りつぶした。

 

「ひっ!!」

 

何を言っていたか聞こえなかったが、間違いなくさっきのプロペラ機にこの事を言ったはずだ。

なら、間違いなくこの空港には戻ってこず、他の空港の方で着陸する筈だ。

しくじった、ダアトは内心毒を吐きながら、此奴らから全て吐かせることにした。

 

 

 

 

 

管制官全員から一通り暗示をかけ強制的に話を聞いたところ、向かった所が、メイガスクラフトのの子会社が所有している無人島だという事が分かった。

それも”魔族特区”の管理区域外だ。

距離もそれほど離れていないが、それは、飛行機でと言う話だ。

とてもではないが、泳いで帰れる距離ではない。

それに管理区域外となると、完全にダアトは手が出せない範囲だ。

那月の許可を貰い、拘束術式を解除してもらう必要がある。

時間帯的には、まだまだ余裕があるが、足が無い。

最悪適当な航空機を(無断で)拝借すればいいかと思い、那月に再度連絡した。

 

『ダアトか、暁古城たちは見つけたか?』

 

「見つけたよ。正確にはもういなくなってたけど」

 

『どういうことだ?詳しく説明しろ』

 

「はいはい。古城たちは、メイガスクラフト社の子会社が所有している無人島へと向かったらしいよ。しかも、管理区域外のね」

 

管理区域外と聞いて、那月は押し黙った。

古城が、第四真祖と知っているのは、本当に一部の人間だけだ。

もし、古城が第四真祖とばれたら世界中から古城が狙われる事に為る。

それでも、那月の庇護下にあるのだ。

つまり、自動的にダアトの庇護下にあるともいえる。

最悪の事態は、それだけで防げるが、どんな所にも馬鹿な奴らはいる。

殺せないなら、利用すればいい。

古城の大切に思っている人を人質に取るなりなんなりすればいい。

それだけで、古城なら簡単に利用できる。

 

『分かった。今回に限り拘束術式を一部解除してやる。』

 

那月がそう言うと、ダアトの中から鎖が一本ボロボロに崩れ落ちながら出てきた。

 

「そう言えば、オシアナス・グレイブって、沈没してたよね。あれ引き上げて使ってもいいかな?」

 

『勝手にしろ』

 

それだけを言うと、ダアトは通話を切った。

 

「さて、行きますか」

 

力が一部とはいえ戻ったダアトは、無数の蝙蝠へと変化すると、那月に以前教えて貰ったオシアナス・グレイブの沈没場所へと向かった。

 

 

 

 

 

「確かこの辺だったかな」

 

吸血鬼は、流水や聖水に弱いとされているが、ダアトは基本的に吸血鬼の弱点を克服しているため、弱点とはなり得ず苦手や嫌いなだけなのだ。

空中で蝙蝠たちが一点に集まり、人の形へと戻ったダアトは、空中で空気を大きく吸って、海中へと潜って行った。

オシアナス・グレイブを発見し、その船頭へと足を着け、全身から何かでオシアナス・グレイブを包み込み、無理矢理海中から出した。

 

「ふう~疲れた」

 

一切疲労の色が見えないダアトは、オシアナス・グレイブの船頭に座り古城たちがいる無人島へ向けて出発した。




最近、評価下がり気味だ。
直したらいいところがあるなら、出来るだけオブラートに包んで、更に手心を加えた文書で教えてくれたら嬉しいです。

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