ストライク・ザ・ブラッド 〜同族殺しの不死の王〜   作:國靜 繋

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やっぱり、アニメが放送された後は、アクセス数が伸びる。
それと、那月ちゃんのデレとバトルシーンの要望があったのですが、中々そこまでたどり着けない自分の技量が情けないです。
次の話では、バトルシーン入れられたらと思っています。


天使炎上2

「面白いものが観れたね、那月ちゃん」

 

管理公社からの帰り道、徐にダアトが呟いた。

 

「私は、あの蛇遣いの所為で不機嫌だがな」

 

「まあまあ、落ち着いて那月ちゃん。どうせ、嫌がらせ籠めて古城巻き込むんでしょ」

 

「何を当たり前な事を言っている。私が奴の嫌がる事をやらない訳ないだろ」

 

当たり前なんだ。

ダアトは、そう思ったが、決して口には出さなかった。

 

「それで、ダアト貴様はどうする気だ。今まで行かせていなかったが」

 

「それこそ何を当たり前な事を」

 

「きちんと手加減出来るんだろうな」

 

「えっと……無理かな」

 

「だろうと思ったよ。お前に手加減が出来れば私も苦労しないのだがな」

 

那月は、手で頭を押さえる様にため息を吐いた。

ダアトが手加減を覚えるだけで、どれだけ那月の負担が減るか、それを考えたら当たり前な事だ。

事実、那月はダアトの能力制限の為だけに力の一部を裂いて拘束術式為るものを常にダアトにかけ続けている。

そうでもしないと、常にダアトが全力で力が発揮されるからだ。

そんな事に為ったら、並みの存在では太刀打ちできなくなってしまう。

それこそ、過去のダアトが封印される(眠らされる)事に為った、あの戦争を繰り返す事に為るからだ。

文字通りの一対全世界。

一人の力が世界に抗える事の証明となった、あの戦争。

正式名称は、きちんとあるが、一部の戦場と為って直接被害に遭った国は、その名称を忌み名とし国民に緘口令を敷くほどだ。

それ程凄惨な戦いだったのだ。

しかし、世界が、3つの夜の帝国(ドミニオン)が初めて、一つの目的の為に一つに為った戦いでもあった。

そうでもしないと止まらなかったとも言えるが。

だからこそ、ダアトは常に那月の手によって力を拘束され続けているのだ。

 

「まあ、手加減できなくても那月ちゃんが抑えてくれてるから大丈夫だよ」

 

「お前な、人の苦労を少しは知っていおけよ」

 

ダアトは、笑って答えたが、那月はやれやれと疲れ切った顔をしていた。

 

 

 

 

翌日の放課後。

 

「で、そろそろ古城を誘いに行く?」

 

「ああ、そうだな。蛇遣いの嫌がる顔が目に浮かぶ」

 

那月が悪い顔をしながら言った。

ダアトは、一応彩海学園の教員でもなければ生徒でも、事務員でもない部外者である以上、堂々と出歩くことは出来ない。

なので、那月の影に入って、ダアトは古城の元へと向かった。

放課後である以上まだ、教室にいる可能性もあるので古城の教室に向かったが、既に帰った後だったようで、古城の姿はなかった。

 

「どうする?電話で古城を呼び出す?」

 

「今日無理に連れ出す必要もないからな、私としては明日でも構わん」

 

「まあ、そうだよね~つまり、今日奴らが出たら俺が出ていいんだよね」

 

「さて、暁古城を探しに行くか」

 

どうやら、手加減知らずのダアトを出したくはないらしい。

幾ら拘束術式で、大幅に能力制限を掛けているとはいえ、ダアトが並外れた力を持っているのは確かだ。

下手をしたら、ダアトの所為で被害が増す可能性もある。

それなら、未だ力を十全に発揮できていない第四真祖の方がまだましだと那月は考えた。

 

「え~別に良いじゃん眷獣使わなかったら」

 

「そういう訳にもいくまい。お前下手したら腕力だけで相手をボロ雑巾にするだろ」

 

確かにボロ雑巾にしたりするけども、流石に相手にもよる気がする。

特に気に喰わなかった奴らを、そうして来たが敬意を払うべき相手には、苦しむ間もなく殺してきた。

むしろ、今までの中で殺せなかったのは4人の真祖とあいつだけだ。

真祖の方は、一対一ではなかったものの殺せなかったのも事実だ。

 

「お、あれ古城じゃね?」

 

「何――」

 

校庭樹の陰で見づらいが、こんな暑苦しい場所でパーカーを常に来ているのは古城位なものだ。

そうなると、必然的にパーカー=古城となるのだ。

関係ない事を言うと、幼女+ゴスロリ衣装=南宮那月が絃神島の常識だったりしなかったりする。

 

「これでお前の出番はなくなったな」

 

「へいへい。どうせ俺は、まともに手加減できませんよ~だ」

 

ダアトは拗ねたように言った。

 

 

 

「あれは、猫か」

 

古城たちが集まっており、その中心に一人の少女が子猫を毛布に包んで抱いていた。

飼い猫をこんな所まで持ってくるわけがない。

それも子猫と為ればなおさらだ。

ならば、この子猫は捨て猫を拾ってきた可能性が高い事に為る。

捨て猫一匹拾ってくるだけでかなりの負担となるのに、それを猫を抱いている子は、負担と思っていない様だった。

それは、その子の優しさの成せることだろう。

那月は、そんな事一切考えないだろうがな。

 

「――ほう、美味そうな子猫だな」

 

古城たちを横合いから覗き込むように顔を出して、言ったセリフがこれだ。

流石のダアトも、如何かと思うところがあった。

 

「那月ちゃん」

 

「担任教師をちゃん付けで呼ぶな」

 

脇腹に強烈な肘打ち喰らって、古城は苦悶の声を漏らした。

脇腹程度で苦悶を漏らすなんて脆弱な、俺は常に鳩尾に喰らっているのだぞ、ダアトはそう思ったが、実際一般人が鳩尾に喰らったら苦悶程度では済まない。

那月は、苦悶に悶えている古城や、思うところがあったダアトを涼しげな顔で見返して(ダアトに至っては、完全にスルー扱い)、

「知っていたか、暁古城。学校内への生き物の持ち込みは禁止だ。と言う訳で、その子猫は、私が没収する。ちょうど今夜は鍋の予定だしな」

 

夕食が鍋と言うのも初耳だが、その中に猫が入っているとか、いやすぎる。

そんなダアトの思いは、那月に伝わる事無く、下舐めずりするように那月は笑った。

怖かったのだろう、毛布を包んだ子猫を抱いて、想所はおびえたように後ずさり、

 

「――すみませんでした、お兄さん。私は逃げます」

 

「お、おう」

 

銀髪を揺らし駆けだす少女を、古城は安どの域を吐きながら見送った。

那月は心なしか傷ついたように口をとがらせていた。

 

「ふん。冗談の通じないやつだ。何も本気で逃げなくてもいいだろうに」

 

余りの那月の可愛さに、ダアトは鼻から()が溢れて来るのを精一杯抑え込んでいた。

せめて、せめて何かしらの形に残さなくてはダアトの思いとは裏腹に、那月の表情はいつもの天上天下唯我独尊なものへと戻ってしまった。

どうも、今日はダアトの思いが那月にも世界にも、そして神にも通じない日の様だ。

 

「ところで今の小娘は誰だ?」

 

「自分の学校の生徒に向って小娘はないだろう。中等部三年だよ。叶瀬夏音」

 

「中々気合いの入った髪だな。反抗期か?」

 

「いやいや、違うだろ。父親が外国人みたいなことを言っていたから、そのせいじゃないか?親父さんの国籍とか、詳しい事は本人も知らないみたいだけど」

 

「そうか」

 

ふむ、と那月は少し思案するような表情を浮かべたが、直ぐに顔を上げて古城を見た。

 

「まあいい、暁古城。おまえ、今夜、私に付き合え」

 

「何ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」

 

那月のあまりの発言に、ダアトが周りの目も気にせず絶叫しながら、那月の影から出てきた。

 

「さあ暁古城、戦争だ。戦争をしよう。一世一代の大戦争をしようじゃないか。何大丈夫、大陸の一つや二つ消し飛んだ所でどうという事はないだろう」

 

ダアトは瞳孔が開き切った目をしながら、現状持てる限りの魔力を解放しながら第四真祖(暁古城)に宣戦布告した。

 

「何を馬鹿な事をしている。私の副業(しごと)を手伝ってもらうだけだ」

 

皮肉な事にも、原因である那月の手によって、第四真祖と最悪の吸血鬼による戦争は回避された。

 

「何だ。そうならそうと言ってくれよ。俺はてっきり古城に、那月ちゃんの初めてをあげるとb」

 

「余計なことを言うな」

 

ダアトは、那月の手によって鎖で雁字搦めにされた挙句強制的に影の中に戻された。

 

「那月ちゃん初めてって、まさかs」

 

古城が何かを言おうとした時、那月の眼力によって強制的に口を紡がされた。

 

「いえ、俺は何も聞いていません」

 

「そうか」

 

古城は背中に嫌な汗を掻きながらも今日の事は絶対忘れよう、そう心に誓った。

 

「さて、話を戻すが、二、三日前に西地区(ウエスト)の市街地で戦闘があった事は知っているな」

 

「……ああ。なんか、未登録魔族が暴れたって話を、クラスの奴らに聞いたけど……」

 

古城は、曖昧に頷いた。

 

「暴れていたのは未登録魔族じゃない。あまり大っぴらには出来ない情報だがな」

 

「魔族じゃない……?じゃあ、いったい誰が?」

 

「知らん。容疑者の片割れは確保したが、そいつの正体はまだ不明だ」

 

那月は乱暴な口調で言った。

 

「ああ、古城の気がかりなのは、片割れって所だろ。もう一人はまだ逃走中だよ。回数で言ったら五件だったかな?」

 

那月の影からダアトが、鎖を引きちぎって出てきた。

 

「五件……!?」

 

マジか、と古城が顎を落とした。

ダアトの言う事が事実なら、三日に一度くらいのハイペースで謎の市街戦が起きている事に為る。

 

「じゃあ、また今夜あたり似たような事件が起きるかもしれない訳か……」

 

「察しが良いな、暁古城」

 

フリルまみれの日傘を優雅に傾けて、那月は満足そうに微笑んだ。

 

「――というわけで、お前には私の助手として犯人確保に協力してもらう。いくら私でも、一人で複数の犯人を捕らえるのは難儀だからな」

 

「いやいやいやいやいや……!」

 

古城は必至で首を振る。

那月は、古城の正体を知る数少ない大人の一人である(見た目は幼女だが)。

未登録魔族の古城が普通の高校生を夜て行けるのも、攻魔官である彼女が、裏から手を回してくれたおかげだ。

その際、ダアトが面白半分で、うんか、はいか、yes以外の返答だったら即戦争だねっ、と笑顔で言ったがそんな事実は形としては残っていない。

が、交渉した相手の心には未だ深く残っている。

だから、古城は代償として、時折那月の副業の手伝いを要求(脅迫)してくるさい、肯定しか選択肢を与えられていないのだ。

そのたび、古城は死にそうな目に合わされており、その間ダアトは意図的に一人留守番させられていたのだ。

眷獣を一体も扱えていなかった頃の古城では、ダアトと交戦する破目になった際、抵抗できずに殺されてしまうと那月は確信していたからだ。

しかし、ダアトは意外と古城に対して友好的で、那月の不安が杞憂であった。

那月は、初めての会合の際は、特にヒヤヒヤしていたが、即戦闘とならず内心安堵していた。

 

「事情は分かったけど、何で俺が那月ちゃんの助手なんだよ?他に誰かいないのか!?」

 

「アスタルテはまだ調整中だ。この馬鹿(ダアト)によって、完全に吸血鬼にされたからな。人工生命体(ホムンクルス)の吸血鬼。さらに人工的に眷獣を埋め込まれていると為るといろいろとあるんだ。そして、当の馬鹿(ダアト)は、手加減を知らんからな。殲滅戦ならいざ知らず、捉える事には此奴は不向きなんだよ。……しかし、お前が協力を拒むなと言うのなら、アイツに手伝ってもらうしかないが?」

 

那月は、彼女が保護観察を担当している、人工生命体(ホムンクルス)の少女の名前を挙げた。

まるで怪我人を人質に取るような那月の卑劣な交渉手口に、古城は戦慄せざるを得ない。

 

「それにディミトリエ・ヴァトラーに忠告されてな。お前を今回の事件に巻き込むな、とな」

 

「何だよそれ!?アイツの忠告完全にスルーかよ!?」

 

「あの男が嫌がるような事を、私がしないはずがないだろう」

 

那月は堂々と慎ましく御淑やかな胸を張って情けない事を言い切った。

 

「今夜九時にテティスモール駅前で合流だ。遅刻するなよ。一秒でも遅れたら、お前と藍羽が美術室で生着替えしている写真をクラス全員の携帯に送りつけるぞ」

 

「――何であんたがそんなもの持っているんだよ!?」

 

那月のとんでもない宣言(脅迫)に、古城はたまらず悲鳴を上げた。

 

「担任だからな」

 

ふふん、と得意げにほほ笑む那月。

その那月を見て何故この場にカメラが無いのだと絶望し嘆いているダアト。

 

「……勘弁してくれ」

 

疲れ切った様子の古城、まさに場は混沌としていた。




設定資料集とか乗せてほしいですか?
要望があれば乗せようと思います。

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