校内一の変人のせいで憂鬱   作:魚乃眼

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校内一の変人が退屈
第八話


 

 

涼宮ハルヒについて語る上で欠かせないのは彼女の特異性などではない。

だいたいからして願望を実現するだなんて胡散臭いこと極まりない能力について語りようないだろ。

あいつがどう思って生きていたのかが必要な要素だ。

それだけのいたって単純明快なことなのさ。

"校内一の変人"と称されるようになってから早三年。

中学時代からそうだったんだからな。

谷口が広めたのか北高内でもそう呼ばれていたのであった。

ともすればあの世界の涼宮も……光陽園学院に通ってるあいつはどうなんだか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺には危機感が少々不足していた。

この時代の北高文芸部はレバノンよりも危険といっても過言ではなかった。

あるいは世界大戦直前のバルカン半島だ。

どこになにが飛び火するかもわからんので大人しくやり過ごす他ない。

人間の一生には浮き沈みというものが存在する。

運が悪い運が悪いと嘆いていても実はいい事があったりしている。

それに気づくかどうかなのだ。

 

 

「お茶です」

 

お盆を持ったメイド女子改めナース女子こと朝比奈が俺に声をかける。

あっという間に六月にシフトしてしまい季節はもう充分に夏だったと言えよう。

パイプ椅子に座る俺もその向かいの古泉もブレザーはなく半そでのシャツだけを着ている状態だ。

そういやつい最近朝比奈が一コ上の二年生だということを知った俺だがここではあまり関係ない気がする。

部室に入っちまえば涼宮が女王様ってわけだ。

つくづく蜂のように迷惑がられる彼女であるが俺だけは味方してやりたいもんだね。

すみっこで丸テーブルを独占して読書している長門もいつまで頼れるかはわからない。

結局のところ最後の最後は自分が一番かわいいのだ。

その優先順位を他人にできる奴を人は怖がるもんなのさ。

 

 

「……どうも」

 

一言俺は述べるとお盆の上に置かれていた湯呑を取って息をふきかける。

そろそろ熱いお茶は勘弁していただきたいが不味いもんでもないので飲みはする。

しかしながらやはり冷たいお茶が恋しいのも事実。

ここは一つ涼宮が俺の代わりに苦言を呈してくれるとありがたいのだが彼女は不在。

というかどこを彷徨っているのか部室にあいつが来るのはだいたい一番最後。

つまり団長とかなんとか言って重役出勤という体の遅刻常習犯と化しているのが現状だ。

中二病患者三人はさておき俺に対して悪びれもしないのはいかがなものか。

 

 

「……」

 

患者番号一番。

長門有希。

身長は150センチちょっと。

寡黙であり眼鏡をかけたショートヘアの少女。

いわゆる文芸少女であり事実として一人しかいない正式な文芸部員だ。

SOS団などという住所不定同好会はこの文芸部部室を間借りしているというわけだ。

多分卒業するまで涼宮は返さないと思うがな。

それに現在SOS団が北高において正式な部活動とされるかどうかは保留中。

生徒会もてんで無能ではあるが馬鹿とまではいかないようであった。

なにやらこの長門は宇宙人――正式名称は別にあるが割愛させてくれ――らしい。

どうみてもどこにでもいるような根暗な女子だ。

だったらヒトの皮でも被って擬態してんじゃないのかと思い一度質問してみたことがあるが。

 

 

「わたしは有機生命体を模して造られただけ」

 

つまりアンドロイド的存在らしい。

同じクラスの美人委員長こと朝倉涼子もそうなんだとか。

宇宙人にできることはこの段階だとパソコンの遠隔ジャックぐらいしか確認していない。

宇宙人である必要あんのか?

次。

 

 

「うふふ。美味しいですか?」

 

患者番号二番。

朝比奈みくる。

前述の通り俺含めた他メンバからすれば上級生にあたるが頼りない存在だ。

身長は長門よりも少し低い。

おそらくだがこの中で一番身長が低いだろう。

彼女は未来人らしいがその確たる証拠を俺は見ていないのでどうにも胡散臭い。

その巨乳が未来の遺伝子工学の産物かもしれないって邪推ぐらいだな。

涼宮の命令によってメイド服をはじめ様々な着せ替えを人形のようにさせられている彼女。

誰が頼んだわけでもないのにお茶を淹れる給仕係となっているのが現状である。

今は薄いピンクのナース服を着ている。

ところでこういうコスプレって妙にちゃちな作りになってるのはどうしてなのだろうか。

本物と勘違いされても困るってことなのかね。

最後。

 

 

「ありがとうございます。朝比奈さん」

 

彼女から湯呑を受け取り、べつに欲しくもない笑顔を振りまくハンサムマン。

患者番号三番の古泉一樹だ。

ご覧の通りいい顔立ち、かつ身長も俺より高い。

180近いんじゃないか。

見てくれでパーフェクトなこいつは言うまでもなく他の男子生徒から目の敵にされているようだ。

更に古泉はこの学校が唯一進学校らしい点だと呼べる特別進学クラスなんぞに在籍している。

そのクラスで何をしているのかといえばなんてことはない。

つまり理数系の集団であり科目もそちらが中心になるように組まれている。

俺も先だっての中間考査ではなかなかの結果が返ってきていたが、彼と俺とでは前提条件が大きく異なる。

同じ"数学"の名を冠した科目であろうと問題が同じじゃないんだからな。

オールラウンドに勉強している俺と特化型の古泉とでは伸び率も異なるってわけだ。

 

 

「どうも調子が悪いみたいですね」

 

長机の上に置かれた野球盤を囲む古泉と俺。

四回ウラ。

打順を決めた所でグラウンドに立っているのは棒人形なので意味がない。

とりあえずの現状を報告すると俺が守備で古泉が攻撃。

たった今スリーストライクになったのでツーアウト。

出塁さえしていない。

一方の俺は五点を既に獲得しており早い話が古泉は負けているし多分負ける。

SOS団がなんの集まりかと訊ねられれば俺は間違いなくゲーム倶楽部だと即答する自信がある。

そのうちテレビとゲーム機が置かれても驚かない。

盗電行為だろうが涼宮は気にしないような奴なんだからな。

 

 

「調子がよけりゃホームラン出せるってのか」

 

「このゲームはあくまで模擬演習ですからね」

 

「だったら運頼みじゃあいかんだろ」

 

「はい。つまり運を確認するのにはうってつけというわけですよ」

 

小学性の方がもっともらしい屁理屈を述べるのではないかとさえ思えた。

よってハンサムマンが紳士的かどうかで言えば怪しいところなのだ。

そんな怪しい古泉一樹はもっと怪しい存在で、怪しさしか感じられない『機関』などという組織に所属する超能力者だ。

能力は"変な空間に入り込む"のと"赤い球に化けて空を飛ぶ"といった二つだけ。

どこが超能力者らしいのか俺にはさっぱりである。

こいつをはじめとする機関の連中に一度【X-MEN】を見せてやりたいんだがどうだろうか。

プロフェッサーXぐらいになってから超能力者を名乗ってほしいもんだ。

 

 

「模擬演習ねえ……」

 

古泉は数学のドリルのやりすぎじゃないのか。

たかだか野球盤といったボードゲーム相手をそこまで深刻にとらえる必要などあるまいて。

さて、じゃお次は剛速球をお見舞いするかねと思うや否や部室の扉がバンと開かれた。

力いっぱいなのはいいことだが部室棟をもっといたわってやるべきである。

 

 

「――さあみんな! 野球大会に出るわよ!」

 

扉を開けたのは涼宮ハルヒだ。

長門も涼宮もセーラー服は半そで。

夏らしからぬ恰好をしているのは朝比奈だけである。

もっと言えば学生らしからぬ恰好なわけだが。

……で、なんだって?

わけもわからぬままに右往左往させられたのは先月こと五月の話。

逆浦島太郎となってしまった俺なのだがその辺の話は今はいいだろう。

思い返せば世界崩壊の渦中にぶち込まれた俺がよく立ち回れたもんだが……。

これも全て涼宮の不思議パワーによるアシストがあったのだろうか。

いずれにせよ俺にはどうすることもできない大きな何かが動いていたのは確かだった。

それはさておきニンマリとした笑顔の涼宮が思いつくことにロクなことがないと思い知るのは追々の話である。

 

 

「野球大会だって……?」

 

なにがどうしたら俺たちがそんなものに出場するのか。

全くの無縁といえる存在だぞ俺たちは。

時間の浪費を惜しまずしている学生の屑じゃないか。

 

 

「ま、いいから黙ってこれ見なさい」

 

涼宮はつかつかと俺のまで歩き安っぽい黄色のチラシを差し出す。

そうしてさっさと部室の最奥にある窓際付近――夏だからか怨めしく思える――の団長席に座った。

しょうがないので野球盤ごと古泉を放置してチラシを眺める。

スーパーの特売かなにかと思っていたがそこにはまさしく『野球大会』とでかでかとプリントアウトされた文字が。

 

 

「……おい」

 

なにやらそれは市内で開催されるアマチュア野球大会らしい。

今回で第九回目だそうな。

ふむ。

このチラシの内容はべつにいいだろう。

特別におかしなことは書かれていない。

小市民の暇つぶしにはちょうどいいだろうさ。

問題はだな。

 

 

「"みんな"、とか言ってたがお前は誰に対してそう言ったんだ?」

 

「ここにいる全員に決まってるじゃない」

 

得意げに言ってくれるな。

こいつは熱気にあたまをやられて数字も数えられなくなってしまったのか。

なんと哀れな女なのだろうか。

現在部室にいるのは五人であって野球に必要なのは最低でも九人だ。

ゴリラ二匹従えて『オレが三人分になる』とか言ったところであと二人も足りない計算だぜ。

 

 

「はあ? なに言ってんのあんた。ゴリラが野球できるわけないでしょうが」

 

誰だってそう思う。

俺だってそう思う。

 

 

「つまりここにいるみんなとやらでは野球ができんと言っているんだが」

 

「どうしてやる前からできないって言えるのよ」

 

「できるわけがない、デキるワケがナイ、出来る訳が無い、できるわけがないッ……ほら、四回も言ってやったぞ」

 

「だからなんなの?」

 

この女。

どうやら野球大会に出る気だ。

マジだ。

やると言ったらやる"スゴ味"がある。

野球部に仮入部したことあるからルールもバッチリ、とかいってるが問題外だ。

前提条件が成立していないんだからな。

 

 

「お前……【すごいよ!!マサルさん】読んだことあるか…?」

 

「なにそれ」

 

「【逆境ナイン】でもいいぜ」

 

「ああ、漫画の話? あんたは読みすぎみたいね。ばっかみたい」

 

こっちの台詞だ。

足りない人員を"透明ランナー"で補うのかそれともボナンザ(シンバルモンキーのおもちゃ)を打席にでも置くのか。

どっちにしても公式には認められない。

あんなふざけたルールはギャグ漫画だから許されたんだ。

俺たちが五人しかいないから野球などできるわけがないという事実は変わらない。

馬鹿も休み休み言うんだな。

 

 

「足りないぶんぐらいどっかから適当に持ってくればいいじゃない」

 

「……ジーザス」

 

涼宮にとって人間とはなんなのか。

こいつには倫理の授業だけ受けさせればいいと思うんだが。

積み木が一個どっかいったとかそんな感覚なんだろうなオイ。

そういや涼宮ハルヒという女の子はこんな奴だったなと思い出していたところ。

 

 

「これは既定事項なのよ! 文句があるなら全部終わってから言いなさい」

 

アイアイサー。

涼宮はナース姿の朝比奈の胸をひとしきり揉んでから野球道具を調達してくると行って消えた。

スポーツショップにでも行くのか?

いや野球部に乗り込むほうが手っ取り早いだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いいんですか?」

 

ほどよくぬるくなったお茶をすすっていると目の前の古泉が苦笑しながらそう言った。

いいもなにも決定権がないんだろうが。

 

 

「むしろこっちがいいのかとお前らに尋ねたいぐらいなんだが」

 

「流石の涼宮さんも野球をするのに宇宙人やら未来人やら非日常的存在を求めはしないでしょう。僕には反対する理由がありません」

 

長門の方を見てみる。

視線が合って数秒してから外された。

 

 

「あたしはスポーツとか、身体を動かすのが苦手だからちょっと困ります……」

 

やや表情が曇る朝比奈。

苦手な原因は胸のせいだけではあるまい。

ともすれば現在の戦力は二人。

俺は野球なんぞついぞまともに経験していない。

運動神経のよしあしの競技ではない。

経験してるかどうかの差だろ。

完璧超人の涼宮なら通用するかもしれん。

目の前のハンサムマンも女子のうわさ話程度に運動神経がいい――だからモテるのだ――と耳に入れている。

読書を継続する長門が使えるかどうか尋ねてみよう。

なんかできないのか宇宙人。

 

 

「長門。お前は宇宙人なんだから地球人より強いんだよな?」

 

「……"強い"、とは?」

 

「こう超人的な身体能力があるとかそんなんでいい。野球のルールは知ってるだろ?」

 

「一応」

 

この場合の"一応"は俺の質問の両方に対して答えたらしい。

一応強くて一応ルールを知っている。

うん。

これ無理。

 

 

「そう気落ちする事はありませんよ。僕たちはただ楽しめればいいのですから。涼宮さんとて暇潰しがしたかったのでしょう」

 

朗らかに俺をさとそうとする古泉。

営業スマイルが腹立たしい。

 

 

「……お前さんは知らないかもしれんがな。涼宮は大の負けず嫌いだ」

 

「承知しておりますとも」

 

「違う。あいつは負けは負けと認めるが負けず嫌いなんだからな」

 

だからタチが悪い。

イライラさせたらなんかよからぬことになるんだろ?

閉鎖空間だとかが発生するそうじゃないか。

 

 

「中学二年の時の話だ……」

 

クラス替えがあったがあいつと同じクラスだった俺。

そんなことはどうでもいい。

あいつは見てくれは誰にでもわかるほど可愛いので愛想が悪かろうが一応他の女子から相手にされていた。

気のない返事だろうがガールズトークを一方的に成立させていたんだからな。

空気を読めるかどうかが中学生と高校生の差だろう。

 

 

「なんやかんやで半年以上経過したわけだ」

 

奇行をしてもむしろウケていた。

教師は不快に思っていただろうがある種のスター性をあいつが持っているのは確かだ。

馬鹿な中学女子からすればそこら辺の野郎より男らしく見えたに違いない。

ただ、そいつらは憧れと理解が程遠いもんだってことを知らないから馬鹿なだけなんだがな。

 

 

「冬になって体育は屋内で実施されるようになった」

 

当り前だな。

で、二年生の十一月後半ごろだっただろうか。

バスケットボールをやるはめになった。

どこを評価してるのかはしらんがスポーツをやるからには試合がつきもんだ。

生徒の方も使えもしない技術だけ練習させられてもしかたないからな。

で、たまたまその日機嫌が優れなかった涼宮は更に機嫌を悪くすることになる。

 

 

「運の悪い事に運動できないやつばかりと同じチームになっちゃったらしい」

 

らしい、というのはその一部始終しかり他の女子の実力しかりを俺が知らないからだ。

気がつけばあいつは盛大なヒステリックを起こした。

クラスの女子――とはいえ男子まで巻き込まれたが――に対して明確な拒絶を示すようになった。

たかだかごっこ遊び程度のバスケでボロ負けしたからキレた……だと。

 

 

「あいつにとってはそうじゃあなかったのさ」

 

きっと他の連中が手を抜いていた。

いや妥協していたのが腹立たしかったんだろう。

なまじ涼宮はなんでもできるからこそ甘えているやつが気に食わない。

すり寄って来るような連中が気に食わない。

そういう女だ。

 

 

「そんな涼宮を非難する方が正しいとか、涼宮が正しいとか、どっちが正しいとかはあいつにとってどうでもよかったのさ」

 

三年になったころには涼宮の相手をしようだなんて奴はいなかった。

腫れ物扱いってヤツだ。

俺はもともとあいつに干渉していなかったから変わらず。

あいつも一人でいる方が気楽だとか思ってたみたいだからな。

表向きは。

 

 

「死ぬ気でやれ。でなけりゃ閉鎖空間が発生するだけだぜ」

 

「……なるほど…ええ……よくわかりましたよ。もっともその時の彼女の様子は僕とて存じてます。彼女の精神が荒れていた時期ですから、当然、閉鎖空間も頻発してましたよ」

 

お前みたいなやつが東中にいたとは思えないんだが。

すると『機関』は三年前の結成以来涼宮を監視していたとか。

いや長門もそうだし未来人もそうだろう。

プライバシー保護の観点とやらは普通の人間にしか持ち合わせていないものらしい。

世も末だ。

俺と古泉のやりとりに表情を暗くした朝比奈は。

 

 

「うーん……やっぱりあたしには無理かもしれません。野球もよくわかりませんし……」

 

「涼宮に頼めば応援係ぐらいで済むんじゃあないか?」

 

「だといいんですけどね……」

 

そうなってしまえば必要メンバは五人に増えてしまう。

どうするよ。

今更参加を否定したらそれこそあいつは怒る。

俺はあいつを怒らせたくない。

俺のせいであいつの平穏を壊したくはない。

それだけは駄目だ。

古泉は再びさとすように。

 

 

「僕の知り合いを一人呼びましょう。戦力としては申し分ないかと思われますよ」

 

「……頼む」

 

すると朝比奈もおずおずと右手をあげて。

 

 

「あたしのお友達に運動ができる人がいます……。その人でよろしければお願いしていましょうか?」

 

「是非ともお願いしてくれ」

 

「はい」

 

少し笑顔になった彼女。

お友達さんとやらは女子だろうか。

なにやら朝比奈みくるファンクラブなるものがこの北高には存在するらしい。

これこそ俺たちなんかよりも正真正銘の馬鹿の集まりだろうが。

つまり朝比奈はマドンナ的存在だとか。

谷口も賛美しているぐらいだ。

事実として彼女の見てくれも平均を遥かに凌駕しており、かつ巨乳という思春期男子にとっては核兵器クラスの脅威をそなえている。

ところでこれは胸囲とかけた俺の渾身のギャグなのだが口に出すのは遠慮しておく。

涼宮の耳にでも入ろうものならなにが起きるか俺にもわからん。

とりあえず殴られるだろうな。

 

 

「……わたしからも一人分の救援を要請しておく」

 

こちらを見つめて小声でそう言った長門。

宇宙人が一人増えるってわけか。

ってまさか。

 

 

「朝倉涼子」

 

「大丈夫なのか?」

 

なんか知らんがヤバい奴なんだろ朝倉は。

少なくとも一人殺した殺人犯なわけだ。

今日も今日とてクラスの太陽な彼女だったが強すぎる陽射しによって身を焼かれたくないぞ俺は。

 

 

「問題ない。彼女は本来わたしのバックアップ。……それに監視係も用意する」

 

「他にも誰か来るのか?」

 

ならそいつにも出てもらえばいいじゃないか。

長門はゆっくり顔を右から左に動かし――否定のつもりらしい――て。

 

 

「彼女はあくまで監視。実働隊ではない」

 

「任務に忠実に、ってわけか」

 

「そう」

 

涼宮より宇宙人の方が社会性ありそうってのはどうなんだ。

だがあいつは猫を被る時は被るというあなどれない一面も持ち合わせている。

それにつけてもしたたかな奴だ。

 

 

「……はぁ」

 

溜息をついてからお茶を飲もうとするが湯呑の中は空になっていた。

もっと溜息をつきたいのは肝心の野球大会が二日後に開催されるといった地獄のような状況下ということ。

いずれにせよこの三人は涼宮に逆らわないわけだ。

己の立場上からくるものだろうがな。

俺は違うんだと自分に言い聞かせつつ俺は他の人員をどうするかを考えた。

考えるのを止めたのは涼宮が部室に戻ってからのことである。

 

 


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