剣鬼と黒猫   作:工場船

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第三十話:魔人《その4》

 高円雅崇(たかまどまさたか)は現在よりおよそ500年前に生まれた人物である。

 時代は戦国真っ只中、戦乱・疫病・災異に塗れた世において、『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィスを祀る一族の次期当主、それが彼だった。

 如何なる経緯をたどったのかは不明であるが、彼の一族はオーフィスより力の欠片たる『蛇』を授けられている。曰く龍神の眷族を自称する彼らは、その莫大な力を血に混ぜて継承していくことによって、わずか数代で京都の土御門に匹敵、あるいは凌駕するほどの法力と超常の異能を獲得していた。元来が霊能力の欠片も持たない武士くずれだったことを考えれば、これは驚異的なことだろう。

 雅崇はその最盛期において誕生した鬼才である。

 

 彼が生まれた時代、戦乱の世を駆け抜ける熱と混沌は日本に住まう妖物へと激烈な刺激を与えた。

 恐怖・憎悪・憤怒・享楽……高密度の感情が巻き起こす乱風が、本州はおろか北は蝦夷から南は九州まで際限なく吹き荒れる。それによって数多の妖異が地に溢れ、渦巻く邪念が呪いを呼ぶ。超常の御業を操る術師たちは各地でその手腕を発揮し、それは雅崇の一族も例外ではなかった。

 

 しかしながら、彼の一族は滅んだ。

 原因は時の有力者たちから淫祠邪教の認定を受けてしまったことによるものだ。これは当時の一族当主――雅崇の父親が成した所業に対する評価であったが、端的に言って目立ち過ぎたことが大きい。ともあれ当時の退魔組織から袋叩きにされたことで雅崇一人を除いて一族の人間は死滅した。

 その後、紆余曲折のすえ雅崇は陰陽師の家系である高円の家に養子として引き取られることとなる。

 

 成長し、陰陽師となった雅崇は、その隔絶した才能で次々と秘法秘術を習得・開発。数多の功績を残すものの、ある日忽然と姿を消してしまう。彼がまだ十代後半の時である。

 おそらくこの頃に雅崇は大陸へと渡り、仙術をはじめとする多くの技を学んだのだと考えられている。再び姿を現した彼は既に人ではなかったからだ。

 かくして魔人と化した高円雅崇は、日本の全退魔勢力と神々を相手に数百年もの長きに亘って激しい闘争を繰り広げることとなる。

 目的はかつて自身の一族を滅ぼした者どもに対する復讐……とされている。

 

 その激闘に決着をつけた存在こそが、御道修太郎(みどうしゅうたろう)

 彼が退魔剣士として活動を始めた当初、魔人は数多の術師が施した封印に縛られ、100年の眠りについた状態だった。しかし修太郎が14歳を迎えて数日後、わずかに弛んだ封を破って遂に目覚めることとなる。

 以降、修太郎の戦いは激化の一途をたどっていく。

 代表的なものとしては東北の九尾、飛騨の大鬼神などが挙げられるが、魔人が発端となった事件はそれだけにとどまらない。日本全土の妖怪が高円雅崇の放つ邪気に中てられて狂暴化する中、時には人の中でさえ狂う者が出たのだから、修太郎に休む暇など与えられなかった。

 退魔剣士・御道修太郎の戦いとはつまり、魔人・高円雅崇との戦いだったのだ。

 

 そして高円雅崇と、敵が従える祟り神との最終決戦。

 それまでに散って逝った仲間たちの屍を乗り越えて、己が力の一端を犠牲にしながら修太郎は敵を斬った。

 月緒の剣は退魔の剣。悪鬼調伏、神魔両断。天津神の加護を受けた修太郎の剣は確かにその時、比喩ではなく神をも滅ぼす代物だった。たとえ魔人が誇る天将たちがどれほど強大であろうと、従えた神がどれほど悍ましかろうと、放たれた刃は相手の本質(たましい)そのものを切り裂いた。

 それは同時に修太郎へと大きな災いを残し、大事なものを失う原因となったが、日本を苦しめた魔人・高円雅崇は確かにこの時滅びた――はずなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

                  ―○●○―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 開幕の一撃は壮絶だった。

 無数の魔力光弾が乱れ舞い、波となって押し寄せる。

 自らが放ったその間を縫うようにして駆け、ヴァーリ・ルシファーは閃光の速さで敵へと攻撃を仕掛ける。

 修太郎との戦いを経て、ヴァーリは己の神器が一段階成長したことを感じ取っていた。先ほど起こった赤龍帝の覚醒と共鳴するようにして昂揚状態となったアルビオンは、過去最高潮の制御補助を成している。戦意は高まり、気分は絶好調、病み上がりでうずく身体から放たれたエネルギーの奔流は、圧倒的なまでの波濤となって高円雅崇へと襲い掛かる。

 

 ほぼ抜き打ちで放たれた白光の暴威は、若き白龍皇に備わった規格外の才を如実に示している。にもかかわらず、やはり魔人の表情からは不敵な笑みが消えない。

 高速で背後に飛びながら、左手の刀印を振りおろし念威開放。念動力の剣が無数の割断現象を巻き起こし、迫る光弾の嵐を切り裂いていく。それでも全体の五割を消し去った程度であるが、残った光弾の規模では魔人の守りを崩すことができない。悉くすり抜けていく。

 大地を爆散し、土煙が晴れた後に現れた魔人の姿を見れば、外套の端が少し破れた以外は全くの無傷だった。

 

「流石は歴代最強となる白龍皇。わずかとはいえ初手で抜く(・・)とは」

 

「ちっ、話の通り厄介な……」

 

 魔人の称賛に閃光と化して飛ぶヴァーリは吐き捨てる。

 黄金の邪眼で空の閃光を追うさまは、まるで何かを見極めようとしているかのようだった。

 その隙を突いて黒歌が倶利伽羅剣を振るい、黒炎の波を連続して放つ。迫りくる壁、壁、壁、四方八方回り込んで魔人を包囲しながら殺到する。

 

「大した火力だが、甘い」

 

 刀印を一閃するとともに、地より溢れ出した水柱が龍の形をとって浄化の炎を受け止める。

 陰陽五行において、水とは火を消し止めるものである。すなわち――水剋火。

 いくら浄化の特性を帯びていようと火は火、森羅万象の理に抗う術は無い。黒炎の波を蹴散らした水龍は、続けて降り注ぐ数百の火車を飲み込んで天に昇る。

 そのまま黒猫を噛み砕かんと迫るが、直前で真っ二つに切り裂かれた。

 砕け散り飛ぶ雨霞の中、修太郎が斬風と共に現れる。

 

「クロ、術式付与(エンチャント)!」

 

「はいにゃ!」

 

 術式の帯が刀身へと絡み付けば、白銀の太刀が黒炎を纏う。同時に修太郎が消失。次の瞬間には魔人の目前へと移動していた。

 放たれた超速の一刀を、魔人は同じく超速の白刃で受け止める。黒炎の霊気と邪気の波動が衝突し、土煙が舞い上がった。

 両者共に、そのまま剣舞へと移行する。

 

 中空を閃光が走り、刃と刃が鎬を削る。

 刹那の間に生じた無数の火花が夜を照らし、巻き起こる斬風が結界となって余人へと立ち入る隙を与えない。

 驚くべきは高円雅崇。

 稀代の天才、神域の剣士たる修太郎と刃を拮抗させている。少なくとも、黒歌にはそう見えた。

 しかして実態は違う。剣術という分野において、間違いなく魔人は剣鬼に劣っている。にもかかわらず互角の状況を生み出しているのは、彼が常に纏っている秘術によるものだった。

 

 陰陽風水が秘奥『三式障壁』。

 その効果は運気の過剰集積による危難の回避・解消。これを纏う術者は現実を歪めるレベルの幸運を一時的に獲得することで、あらゆる災いが当たらないことになる(・・・・・・・・・・)

 実態としては可能性の拡大化。相手の攻撃に対して回避が成功する確率を強制的に100%へと近づけ、未来の方向性を固定するといったものだ。つまるところの運命改変である。

 あたかも敵の攻撃がすり抜けたように見えるのは、これによる回避が成功しているためだ。

 

 この術を力だけで破ることはできない。およそ何の工夫も見られない単純な突撃はまず外される。兵藤一誠の攻撃が悉く当たらなかったのはこのためだ。

 しかし絶大な効果にはリスクが付き物である通り、法則を無視するほどの幸運は後から相応の災いを招く。回避した危難の危険度が高ければ高いほど、それは逃れようのない破滅の運命として術者の身に襲い掛かるのだ。……本来であるならば。

 

 高円雅崇は風水師にして大陰陽師である。さらに左道の邪仙として呪いの扱いに長ける彼は、そういった災いを回避する術を知っている。

 呪相反転――高円雅崇は、術の発動で発生する揺り起こしの力を操り、自らの攻撃に重ねることができるのだ。喰らうべき制裁を相手に押し付け、自分は利だけを得る。効率的と言えば聞こえはいいが、極めて凶悪且つ悪質な術法であることに変わりはない。

 限界を超えて力を高めた一誠を一撃で沈め、先ほど放たれた黒歌の黒炎を難なく破ることが出来たからくりはここにある。

 

 敵の攻撃は確実に躱し、それと共に自らの攻撃力を上げ反撃する。危機に反応して自動で発動するため、不意打ちも通用しにくい。まさしく理不尽の具現。修太郎が現れるまで高円雅崇が滅ぼされなかった大きな理由の一つがこれだった。

 本来であれば捌ききれない修太郎の剣を凌いでいるのは、術の補助を受けているからこそ。実際は、平均して五回打ち合うごとに一撃は喰らっているはずであり、それらは全てすり抜けるようにして回避されていた。

 

 しかし、修太郎にとってこれは予想通りの展開である。既に何度も通った道だ。問題など何一つ無い。

 斬撃の回転率を上げれば、互いの中間距離を隔てていた火花の壁が徐々に魔人の方へと移動する。それと共に魔人の纏う軍装へと一つ、また一つと傷が刻まれていく。

 

 一見無敵に見える三式障壁だが、無論のこと崩す術は存在する。

 

 一つは、障壁の処理を超えるほどの連続攻撃。

 揺り起こしの蓄積がオーバーフローするまで間断なく攻め続けることだ。

 しかしこれは高速且つ高威力で行わなければならない。反撃の隙を作れば無意味であるし、威力が低ければ魔人が防ぐ。生半可な実力でこれを行うのは至難の業だ。

 

 二つ目は、躱す余地の無い攻撃を放つこと。

 たとえば神槍グングニル。たとえば魔槍ゲイボルグ。そうでなければ超広範囲を巻き込むか、もしくは認識できないほどの速度を有する攻撃。

 術の効果は「攻撃を躱せる確率」に対し作用する。襲い掛かる攻撃に躱せる要素が無い場合、障壁は途端に意味を消失してしまうのだ。

 

 三つ目は、同種の力による干渉。

 幸運に関連する術、または権能を用いれば力量に応じて封印・相殺することができる。しかし、これはこの場において関係が無い。

 

 先のヴァーリと黒歌は二つ目の攻略法を実践した。

 だが修太郎は前述の一つ目と二つ目を自らの技量のみで同時にこなしている。

 

 超高速で行われる一挙手一投足に十重二十重のフェイント、ブラフを混ぜ、こちらが行う些細な動きで相手の挙動を限定し、特定の行動を誘発。それを利用して、人体の構造上絶対に攻撃を躱せないだろう一点を作りあげる。

 修太郎には及ばずとも、まぎれもなく高円雅崇は剣の達人だ。しかし、それ相応の観察力を持つが故に嵌まる(・・・)

 一回なら障壁が回避させるだろう。二回目も同様だ。しかし、それが十回、二十回続けばどうか?

 

 念威の刃が身体を掠める中、黒炎の太刀が魔人を削る。そしてとうとう、蓄積された揺り起こしが臨界点を迎え……。

 しかし、剣鬼が思うと同様に魔人から見てもこれは予定調和、予想してしかるべき事態であった。

 足踏みひとつで大地が割れ、そこから無数の地蟲が溢れ出す。一匹一匹が呪力を放つそれらの蟲は、主の意向に従って敵対者へと襲い掛かった。

 

 迫る魔蟲の群れを鎧袖一触に悉く切り裂いていく修太郎だったが、その隙に魔人を逃がしてしまう。

 ヴァーリと黒歌が放つ追撃を回避しながら再び上空へと舞い上がった魔人は、修太郎を卑睨しながら口を開く。

 

「やはり腕を上げている。流石というより他は無いな。しかし、術式付与? そんなことなどせずともお前はおれを斬れるだろうに。月緒流退魔剣術は、降魔剣はどうした?」

 

「貴様こそ、自慢の天将はどうした。法力も相当落ちているように見えるぞ」

 

 彼らの間では今の攻防も小手調べに過ぎない。

 

 修太郎は、目の前の高円雅崇が完全ではないことを確信する。

 気で肉体を形成してはいるものの、かつてと比べておそらく六割程度の出力しか確保できていない。術よりも念動力を主に使っているのは、それだけ法力が衰えているということだ。

 

 そして同時に高円雅崇も確信した。今の修太郎は単独でこちらを討ち取れる手段を持っていない。

 本来であればこのような回りくどい方法を取らずとも、術ごとこちらを切り裂く術を持っていたはず。この男がそれをしないと言うことは、すなわち出来ないということに他ならない。

 

 しかし、それでもなお互いが互いを侮れないと評する。

 睨み合う両者の状況を崩したのは、大地を割って現れた巨大な蟷螂の上半身だった。

 龍に似た頭と芋虫の下半身――魔人が作った蠱毒虫だ。無数の光槍で身体を穿たれ、血反吐撒き散らしながら倒れ伏す。その背中には、黄金の鎧を纏う何者かがいた。

 

「アザゼル殿……か? その姿は……」

 

「おう、暮修太郎。俺が作った傑作人工神器の疑似禁手(バランス・ブレイカー)になる『堕天龍の鎧』だ。この蟲野郎が意外としぶとくてな。実験ついでに纏ってみた。どうだ、かっこいいだろう?」

 

 そう言って漆黒の十二翼を広げたアザゼルは、空を飛んで高円雅崇と相対した。

 

「お前が高円雅崇か……。よくもまあ今まで好き勝手やってくれたもんだな。だが、ここで終わりだ。――お前は危険すぎる」

 

 手に握る光の槍を魔人へと突きつける。

 

「そればかりは同感ですね。あなたから発せられる邪悪な力は尋常ではない。この世に在ってはいけないものです」

 

 金色の光が闇を照らす。輝く十二翼を羽ばたかせ、ミカエルが現れた。

 

「ソーナちゃんやリアスちゃんを虐めるなんて許せない☆ 私が仇をとってやるんだから!!」

 

「私としては投降することを勧めるが……。どうやらその気はないのだろう?」

 

 続けてセラフォルー、サーゼクスが姿を現す。

 

「俺は出来れば一人でやりたいところなんだが……今更だな。仕方がないか」

 

「これだけやって、無事に帰れるとは思わないことにゃん。塵も残さず消し去ってあげるわ」

 

 そこにヴァーリも加り、黒歌が修太郎の隣に降り立つ。それと同時に学園の敷地を天蓋が覆う。皆を治療する役目を担ったグレイフィアの結界だ。

 こうして高円雅崇を中心に、勢力屈指の戦力による包囲陣が敷かれた。

 

「なるほど絶体絶命という訳か。ではこちらも抵抗しなければいけないな」

 

 そのような状況にあっても魔人は敵を嘲笑う。

 暗影の外套を翻せば、それだけで総身の傷が無くなっていく。周囲から見境なく気を吸収し、さらに高密度の闇を身に纏った。

 

「とはいえ、戦力差は如何ともしがたい。故にこうしようか」

 

 魔人がそう呟くと、突如講堂が爆発した。

 驚く一同がそちらに振り向けば、天へと舞い上がる蛇体の姿。

 それは巨大な異形だった。蛇の身体に人型の上半身、備える頭は牡牛・人・牡羊の三つ。その中でも中央に据えられた人頭の容姿は見覚えがあるものだった。

 サーゼクスが驚愕に目を開く。

 

「まさか、クルゼレイか……?」

 

「馬鹿な……! 高円雅崇、お前いったい奴に何をしたッ!!」

 

 アザゼルの怒号が響き渡る。

 異形と化したクルゼレイ・アスモデウス。どう考えても尋常の現象ではない。何をすればこのようなことが起こるのか?

 不敵な笑みのまま、魔人は答える。

 

「貴公らとの戦闘前に、奴らは『蛇』を呑んだだろう? あれは、おれが手を加えたものだ」

 

 そう言って外套を翻せば、影の中よりある人物が現れた。

 目を閉じて眠る美しい女性。純白の翼を生やし、頭頂には光の輪が浮かぶ。真っ先に反応したのはミカエルだった。

 

「彼女は……!」

 

 この場の全員がその姿に見覚えを抱く。美女の正体はミカエルに随伴してきた天使だった。

 女の頬を手で撫でながら、魔人は語る。

 

「――天使。欲に嵌まれば堕ちるというのに、人並みの欲を持たされてしまった欠陥品。神はいったい何のためにこのような存在を創ったのだろうな。知っているかミカエル、この女は密かに貴公を慕っていたのだ」

 

「何を言って……」

 

「叶わぬ恋に生きるとは、まったく哀れな道化だと思わんか? せめて機械がごとく在れば良かっただろう。――このように」

 

 魔人の手の平に黒くうねる蛇のようなものが現れた。禍々しいオーラを放つそれは、確かにカテレアとクルゼレイが呑み込んだものと一致する。

 

「やらせるかよッ!!」

 

 アザゼルが光の槍を放つ。

 閃光は念動力の障壁によって狙いが逸れ、魔人の肩口を大きく切り裂くにとどまる。しかし動きは止まらない。

 傷口をドス黒い炎と燃え盛らせながら腕を動かし、魔人は漆黒の『蛇』を天使の口内へ押し込んだ。

 変化は一瞬にして起きる。

 

『あ、ああああ、アアアアアアアAAAAAAAAAーーーーーーーーッ』

 

 絶叫が響き渡る。

 苦悶の叫びと共に骨格が蠢き、溢れる光が物体として形を成す。

 輝きが治まると、そこには燃え盛る純白の車輪が一つ。軸の部分に女性の上半身を据えられて、裏側には四対の翼が風車のように配置されている。それは美しくも禍々しい異形だった。

 

「なんということを……」

 

 身を震わせて呟くミカエル。

 絶句する一同をよそに魔人の声が響く。

 

「『蛇』による強化と併せて潜在能力の全てを強制的に引き出した。今のこれ(・・)は本能のまま力を発散させるだけの怪物だ。貴公らで言う『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』や『覇獣(ブレイクダウン・ザ・ビースト)』と同じようなものと考えればおおよそ一致するだろう。まあ、こちらは二度と戻れんが」

 

「あなたは……ッ!」

 

 異形の様子を観察する魔人へと、ミカエルの剣が聖光を纏って迫る。

 極光爆裂。太陽の如き光が爆ぜ、辺り一帯から夜闇を駆逐する。広すぎる攻撃範囲は回避の余地を与えず、既に臨界点ギリギリとなった三式障壁を易々と抜くだろう。

 しかし、異形の天使が魔人をかばう。同時に発せられた聖光波動がミカエルの光を相殺する。

 

「――ッ!」

 

「しかし解せない、何故カテレア・レヴィアタンの反応が無い? ……まあいい。――行け」

 

 魔人の命に従うように、二体の異形が襲い掛かる。

 座天使(ソロネ)悪魔王(アスモデウス)、共に漲らせたオーラの質量は莫大極まる。咆哮一つで嵐が起き、腕の一振りで地が割れる。

 力だけを比べるならば、二体とも間違いなく前魔王を超えていた。

 

 その威容を目の前にして、しかし一欠けらも臆さずに、アザゼルとヴァーリがソロネを、ミカエルと魔王たちがアスモデウスを相手取る。

 敵の攻撃は威力こそ桁外れだが、傍から見てわかるほど隙だらけだ。それを躱せない弱者などこの場におらず、故に戦いは一方的に進む。

 光槍と魔力弾が翼を貫き車輪を割る。

 凍結魔力が蛇身を封じ、聖光剣と消滅魔力が巨体を消し砕く。

 だが、敵は止まらない。

 

 二体の異形は傷を受けた次の瞬間には肉を、骨を蠢かせながら再生と復元を行っていた。血を流し、叫び声をあげながら瞬く間に回復を終えるその姿は、どこか悲痛で物悲しい。

 それも当然、彼らは強制的に命を使わせられている(・・・・・・・・)

 

「天使はどうだったか知らんが、悪魔は確か1万年だったか? その分の生命力を1年の枠に圧縮している。兵器として使うにはちょうどいい塩梅だ。全てを消し飛ばす勢いでやらなければ、そいつらは死なんぞ」

 

「ちっ、ここまで命を弄ぶか、このクソ野郎が……!」

 

 異形どもの背後に控える魔人へと、アザゼルが怒りに燃えた目で吐き捨てる。

 

「何を憤っているアザゼル。堕天使にとっては悪魔も天使も敵だろう? それともまさか、本当に手を取り合って仲良くしようなどと思っているのか? そも貴公ら、揃いも揃って人間のような反応ばかり返して、いったい全体なんなのだ。理解ができんぞ気持ちが悪い」

 

 その言葉に、魔人は意味がわからないとでも言うように眉をひそめた。

 どうやらアザゼルの反応はそれほどまでに意外だったらしい。

 

「ああ、貴様にはわからんだろう高円雅崇」

 

 それに答える男が一人。

 輝く白銀の切っ先を天に、蜻蛉の構えで修太郎が魔人を睨む。

 

「いくら無限の視点を持とうと、それを雑音と認識しているうちは理解できる道理など無い。そもそも理解しようとすら思わぬくせに、身勝手な貴様の論など誰も聞きたくないのだ。そこまでして静寂が欲しいと言うのなら、ここで滅びて無明の闇に帰れ」

 

 背後に立つ黒歌が呪文を紡ぎ、術を構築する。

 修太郎の足元に魔法陣が敷かれ、そこからサンスクリットの術式――神々のマントラを中心にした呪文の帯が修太郎の太刀に巻き付き一体化、極大の刀身を形作った。

 星をも貫くその威容、灼熱に燃える朱と黒(ルージュノワール)火神(アグニ)の刃。先の術式付与(エンチャント)などとは比べ物にならない強度と鋭さに、この場の誰もが戦慄した。

 

 霊的器官(チャクラ)の第五――今現在の限界まで全開放。

 チャクラは闘気のブースターとしても用いることができるが、それとは別に第一から第五までがそれぞれ地・水・火・風・空の五大と密接な関係を持つ。その全てを励起させつつ、火の性質によって黒歌が創り上げた焔の刃と同調し、空の性質によって刃に高位の干渉力を与える。

 

 脱力からの緊張。皆が異形を迎え撃った中で、既に準備は済んでいる。

 修太郎が誇る斬撃の究極――『(いかづち)』の剣は、元来が高円雅崇を討ち取るために編み出されたものだ。神々すら認識できない超神速、閃光をも追い抜く人越剣は、三式障壁など当たり前のように無効化する。

 そして遥か天へと伸びるこの刃、全長にして300メートルを超えるそれによって、今や学園全土が修太郎の間合いに納まった。

 もはや逃げ場は何処にも無い。

 

 これぞ人魔連携、月緒流退魔剣術・降魔剣が崩し――『灼火天鎚』。

 

 斬撃が通り過ぎるのと、大地に鋭い斬傷が刻まれるのは同時。そして遅れることコンマ2秒後、朱と黒(ルージュノワール)の火柱が天地を繋ぎ、空間を粉砕した。

 刃の直線上にいたソロネは二つに分かたれ、直後に爆発四散。高位の干渉力が魂を砕き、それと共に消滅していく。

 爆炎を受けたアスモデウスは右半身を喪失し、今も叫びながら再生しようともがいている。しかしながら魔の存在が浄化の炎を受ければただでは済まない。修太郎により高められたマントラの神気が傷口を蝕み、それ以上の再生を阻害していた。

 

 そして魔人・高円雅崇は――。

 

「なる、ほど……。これが、今のお前が持つ切り札か……大した威力だが、しかしどうやら現状は一撃放つのが限度のようだな」

 

 失った左半身を燃える邪気で覆いながらもなお健在。溜まりに溜まった障壁の揺り起こしを全て念動力の防御に回して、致命傷を逃れていた。

 しかしその表情は苦悶一色。肉体そのものが維持できなくなってきているのか、徐々に輪郭が崩れていく。

 

「……ちっ」

 

 そして魔人の言う通り、修太郎も疲労困憊だった。

 ただでさえ肉体的負担が大きい『雷』の使用と併せて、チャクラの全力稼働と精密制御を同時に行うとなれば、修太郎をして全精力を消耗してしまうほどだ。そしてこの技、完成もしていなければ練度も低い。戦闘続行はともかく、先ほどの一撃を再度放つのは不可能に近かった。

 

「さて、ここらが潮時か……。得る物もあったとはいえ、今回はおれの負けだな。赤龍帝を侮ったこと、兵藤一誠に謝っておいてくれ」

 

「馬鹿を言うなよ高円雅崇、この期に及んで俺たちが見逃すと思うか?」

 

 立ち去ろうと印を構える魔人の前に、アザゼルたちが立ち塞がる。

 修太郎が厄介だと言っていた理由がよくわかった。こちらを封殺してきた手並みといい、先ほどの『蛇』といい、この男は危険すぎる。

 だが満身創痍の魔人は目の前の敵を無視して修太郎へと語りかける。

 

「ああ御道、確か先ほどおれの鬼神どもはどうしたと聞いていたが――もし既に打ち上げた後(・・・・・・)だと言ったらどうする? 覚えているだろう、第一天将だ」

 

 それはまるで世間話をするように、何気なく。

 しかし、その内容を聞いた修太郎は目を見開き戦慄した。

 

「――そら、落ちてくるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それ(・・)は遥か天上にて待機していた。

 暗黒の海に最も近く、青い生命の星を望むその場所――衛星軌道上にて速度を増しながら待つこと数時間、遂に命令が下る。

 それが持つ能力は多くない。呪いを放つ訳でもなければ空間を操るわけでもなく、ただただ大きく硬いだけだ。それでも何か取り柄を挙げるとすれば、火を吐けることぐらいのものだろう。

 

 故にこれから行うことは至極単純、その巨体で以って敵を圧し潰す。

 

 前を向く鋼の鬼面が歓喜に歪み、後背の鬼面が炎を吐く。

 高円雅崇が誇りし超絶の式神、鬼神の暴威が今、高度1200キロメートルの彼方より駒王学園目掛けて落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クロッ!! 全力で学園上空に障壁を張れ!!」

 

「わ、わかったにゃん!」

 

 今までになく焦る様子の修太郎に、わからないながらも事態の深刻さを察した黒歌は、最速の術式構築で可能な全力の防御障壁を張り巡らす。

 そして、間もなくそれは訪れる。

 

 落ちる灼星、破壊の鉄槌。

 大きさにして直径100メートル、質量は千トンそこらでは収まらない。鋼で出来た両面の鬼頭――陰陽五行が金行を司る第一の天将・無銘凶星。

 超音速にまで加速した巨体が秘める運動エネルギーは、核爆弾など比べ物にならない破壊力を持つ。

 展開に間に合ったのもむなしく、鋼の鬼は黒歌の張った無数の障壁を紙屑の如く破り捨てていく。

 

「ミカエルッ、サーゼクスッ!!」

 

「ええ、わかっています!」

 

「これで終わらせはしない……!」

 

 学園を覆う結界に迫るそれは、しかしさらなる壁に阻まれた。

 三大勢力トップによる共同の光壁防御が、鬼神を刹那押しとどめる。そこへ駆ける白い閃光は白龍皇ヴァーリ。

 

Divide(ディバイド) Divide(ディバイド)!!』

 

 腕をかざして遠隔からの連続半減化が鬼神の勢いを大きく削る。

 

「負けないんだから! 『零と雫の霧雪(セルシウス・クロス・トリガー)』!!」

 

 結界を突き破った鬼の顔面に絶対零度の嵐が直撃する。

 が、これで限界。迎撃は叶わず。

 

『皆さまがた、転移します』

 

 グレイフィアの念話が全員へ届くと同時、駒王学園は消滅した

 

 

 

 

 

 

 

 

                  ―○●○―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――なんなんだ、あいつはッ!!」

 

 アザゼルが壁を叩く。

 修太郎たちが住むマンションの屋上に、学園にいた全員は転移していた。速やかな大規模転移はグレイフィアの腕前もそうだが、転移先にベオウルフがいたことも大きい。

 遠くには紅蓮の光に包まれた学園敷地が見える。今も感じる地響きは中規模の地震と相違なく、もしもヴァーリが半減化に成功していなかったら、グレイフィアが学園を囲う結界を強化していなかったら、鬼神が起こした破壊の余波だけでこの町は崩壊していただろう。

 

 魔人は、こちらが逃げずに迎撃するだろうと確信していたのだ。

 下手をすれば自分の身すら消し飛ばしかねない行動をとったのは、あるいはアザゼルたちではなく、修太郎を信じていたのかもしれない。

 ともあれ高円雅崇はまんまと逃げおおせたに違いなく、一同の表情は暗かった。

 

「俺らの部下どもは死傷者多数、捕えた『禍の団』構成員は生命力の枯渇でほぼ全滅。クルゼレイもあの調子じゃ生きちゃいないだろう。カテレアが残っているのは幸いだが……クソッ、やってくれるなあの野郎……!」

 

「……私たちは一度天界に戻り、和平を含めた今後の対策について講じてきましょう。ヴァルハラと、須弥山への説明もしなくてはなりません」

 

「すまないミカエル。私たちはこの場の後始末を行おう。怪我人も多いことであるし、どうにも今夜は騒がしすぎた。人間たちへの対処も行わなければ、今回のことが一般人に知られるとまずい」

 

「そうですね。しかしあなたも我々を時間停止から守ったことで相当疲労しているはず。少し休むと良いでしょう」

 

 魔王たちのやり取りを背後に聞きながら、修太郎は周囲を見渡す。

 兵藤一誠をはじめとするグレモリー眷族に、ソーナ・シトリーと真羅椿姫、天使・堕天使・悪魔の軍勢、わずかに残った『禍の団』の構成員……大勢の人物が集う中、その大半が怪我人だった。

 黒歌は臥せる塔城小猫の方へ行っている。ギャスパー・ヴラディの件も合わせて、高円雅崇の施術を受けたというのなら彼女が一度診た方がいいだろう。

 

 ここであの魔人を滅ぼせなかったのは痛い。

 あの鬼神、修太郎が戦った頃はまだ10メートルほどのサイズしかなかった。それでも脅威的だったのに、まさか魔王級が揃って防御に徹してさえ防げないほど強化されているとは。

 天将は高円雅崇が攻撃の切り札たる式神だ。全部で六つ、先ほどの鬼神は不可能だったが、大半を以前の戦いで破壊している。しかし時間が経った今、どれほどまで取り戻しているか見当がつかない。

 そもそもが何故、4年以上の時間をかけて完全復活していないのか、それが疑問だった。

 

「修太郎さん」

 

 掛けられた声に振り向けば、鎧を纏ったロスヴァイセがこちらに近づいて来ていた。

 

「ロスヴァイセ、今回はキミのおかげで随分助かった」

 

 兵藤一誠が異界の要に突入する際、その守りを全て破壊したのは彼女が放った魔法だ。もしも自分の身に何かあった場合に備えて、修太郎は事前に彼女へ協力してくれるよう頼み込んでいた。

 修太郎の身体には、今も彼女がかけたマーカーがついている。体育館ではそれを通じて外部に簡単な連絡を取ることができた。

 どうやら異界内部への侵入は出来なかったようだが、簡単な合図だけで一誠の攻撃とタイミングを合わせたのだから流石と言わざるを得ない。もしも何か一つずれていたら、修太郎たちは既に全滅していただろう。

 

「いえ、お役にたてたのなら良かったです。それよりも、どこか怪我をしていませんか?」

 

「ああ、掠り傷程度だ。しかし……」

 

 紅蓮に沈んだ学園を見る。

 何もしなければ一地方まるごと灰燼に帰す規模の攻撃を躊躇なくやってのける。高円雅崇はそういう男だ。

 あれは一人で完結している。他者にかける情など、理解はしても欠片たりとて持っていない。有したモノが強すぎるが故に、自分以外の全てを騒音としか捉えることができない欠落者だ。

 

 高円雅崇には生まれながらに優れた感覚があった。それは第六感や霊感、あるいは虫の知らせ――などと呼ばれるものとは一線を画す代物で、神仏をも超える圧倒的上位者、つまりは龍神(オーフィス)の視点だ。

 人の手に余るほどの知覚領域は彼に超越的な力を与えた。三式障壁という秘術を常時運用できるのも、衛星軌道上という超遠隔地に式神を飛ばせるのも、その感覚があればこそ。

 しかし同時に、それは赤子の頃から精神を苛ませてきた病でもあったのだ。

 

 耳を塞いでも、目を閉じても、ありとあらゆる感覚封印の業を施しても、常に何らかの情報が頭の中へと土足で入ってくる。

 たとえばそれは触覚として。たとえばそれは味覚として。たとえば嗅覚、たとえば視覚、たとえば聴覚。

 どこかの誰かが感じた感情。心の奥に秘める想念。遠いどこかで地震が、嵐が起きた。火に焼かれて誰かが死んだ。苦しい。痛い。悲しい。辛い。

 知らない誰かの達成感。何かを成したという歓喜。美味しいものを食べた。長年の想い人と添い遂げた。嬉しい。幸福。心地よい。

 身体の上を虫が這い、突如として知らない景色が頭の中に映り、背筋を貫くほどの快楽と絶頂が駆け巡ることもあれば、全身の神経を激痛が襲うこともあった。

 それが、起きている時はおろか寝ている時でさえ途切れない。

 

 オーフィス本人であれば無意識レベルで制御できるだろうそれも、元は人間でしかない高円雅崇にはどうしようもなかった。彼の一族に目覚めた超能力が助長した面もあるのだろう。

 加えて彼の生まれた時代、戦乱の世は激情に満ちている。仙術の素養という優れた才能が仇となり、遠隔地の邪気までが身体の中に入り込む。

 心は鬱屈し、疲弊し、しかし周りには理解者がおらず、よって世間への嫌悪感だけが募る。何かを壊したい衝動が止まらず、感情が制御できない。

 他者を顧みる余裕など、生まれた時から彼には無かった。

 

 「この世は五月蠅い」と、かつて魔人は修太郎に言った。

 

 故に真の静寂を望むのだ、と。

 ヴァーリから聞くに、オーフィスの目的も同じであるらしい。

 奇しくもその原因である存在と同じ願望を抱いたのは皮肉以外の何物でもないだろう。件の龍神はそれを次元の狭間(ふるさと)に望むがしかし、高円雅崇の故郷はこの地上、この宇宙である。

 だからこそ、自分以外をすべて滅ぼそうと企んだ。

 

 高円雅崇の目的は、所謂ところの世界滅亡。

 あれの標的はそもそも日本だけではなかったのだ。

 

 その願望は生物として完膚なきまでに終わっている。邪気と呪いに飲まれ、狂った思考はもはや手遅れ、故に必ず滅ぼさねばならない。

 だが、再び出会った魔人からは何か違う思惑を感じる。それが何かははっきりとつかめないものの、それでも奴は敵なのだ。

 

 しかし、世界を巡り数多の技を身に着けたことでかつての力を取り戻したと思っていたが、それだけではまだ足りないらしい。

 

「どうかしましたか、修太郎さん?」

 

「いや、なんでもない。ただ、月が綺麗だと思っただけだ」

 

 この因縁に決着を付けなければ、きっとこれ以上前には進めない。

 胸の奥でうずく歪な感覚を押し殺し、修太郎は蒼く輝く月を見つめた。

 

 一方、男の言葉を聞いたロスヴァイセは顔を赤くし、小猫を診る黒歌は不穏な気配に耳を反応させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

                  ―○●○―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マサタカ」

 

「……オーフィスか。久しいな」

 

「ん。マサタカ、ドライグの匂いがする」

 

「ああ、気を取り込んだからだろう。今代の赤龍帝は、中々意外性のある宿主だった」

 

「傷だらけ。蛇、いる?」

 

「不要だ。放っておけばじきに治まる。しかしまさか、おれがいないうちにここまで大所帯になるとはな。まあ利用するにはちょうどいいから文句は無いが……問題は俺自身の手が足りんことだな。兵隊を集めねばならん。しかし御道よ、お前はおれが変わったことなど気付かぬのだろうな。理解した気になっているのは、はたしてどちらなのか……」

 

「マサタカ?」

 

「自らの心すらわかっておらんとは、相変わらずの頑迷さだよ。互いに持ち時間は少ないのだ、そのままでは少々容易すぎるぞ。興が醒めてしまう」

 

「マサタカ」

 

「む、どうしたオーフィス」

 

「マサタカ、我、いつになったらグレートレッドを倒せる?」

 

「そう遠くないうちに。真龍グレートレッド……せっかく取り戻した肉体と引き換えにしたが、実際に戦ってみてわかった。倒すための算段は立っているし、準備も順調に進んでいる。忌々しくも愛おしき、我が大いなる父にして母よ。おれが必ずグレートレッドに勝たせて見せよう」

 

「ん」

 

 

 




これにて魔人戦終了。
投稿も遅れてしまいましたし、文章もグダグダ感がありますね。
申し訳ないけれども、どうしたものか。

魔人の障壁はおよそ単発の攻撃ならどれほど威力が高かろうとほぼ確実に回避できます。
レーティングゲームで言えばテクニック・カウンターを得手とするウィザード。接近もかなりいけるクチ。
いわばグレモリー眷属に対する天敵です。ある程度まともにやりあえるのは木場ぐらいでしょう。
弱点は浄化系。つまり黒歌。全力で大魔猫を使えば一応勝てますが、後から落とされるメテオに対して時間稼ぎができなくなるのでその場合全滅します。
サーゼクスが本気出しても同様。と言うか消耗も激しく、周囲を巻き込むので出せませんね。

魔人の発生はほとんど全部オーフィスのせい。
ちなみにオーフィスは魔人の一族に力を渡した後、ものの見事にそれを忘れています。
長い時を生きる龍神にとって、人間なんて所詮その程度。

※なぜかパンツアーマーのルビ振りが反映されない……。文字数の関係?

※話の最後、コピペ漏れてた部分を追加しました。

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