陰陽師になりました。   作:ラリー

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16話

ー武視点ー

 

よし!後、少しで元の術式に影響を出さず、上書きした分を完全に消去できるぞ……。

それにしても……あのネタ式大丈夫か?

幼き頃に製作した負の遺産シリーズ第3弾『僕の考えた正義の味方』。

中二の塊である彼の容姿を夏目に変え彼には暴走した夏目の式神の偽者になってもらっている。

そうすることで、夏目たちの目はそちらに向き、俺は楽に証拠隠滅作業を終わらせ

ばれないように『僕の考えた正義の味方』と転移させて返却すればいいだけ。

我ながらうまい作戦だと思う。

まあ、この作戦に穴があるとすればあいつが上手く立ち回れるか出来ないかで

作戦の成功率が変わってくる。

上手くやれよ……『僕の考えた正義の味方』。

いや…夏さん!

 

 

ー天馬視点ー

 

う~ん。

僕は今、目の前の不審者に頭を悩ませている。

不審者かもしれないし、身長的に考えて塾生の可能性もなくはない。

まあ、塾舎は結界で守られているし登録されてない人間が侵入するのは難しい。

やっぱり塾生なのかな?声もどこかで聞いたことある気がするし……。

後、長髪とか。

あの格好はコスプレ?

とりあえず……。

 

刺激しないように財布を捜そう。

 

「……何か、探し物かね」

 

「え……はい。財布を」

 

「ふむ…私も探すのを手伝おう」

 

アーチャーさん?と距離を取り床をキョロキョロと視線を泳がせて探していると

僕の行動に疑問を持ったであろうアーチャーさんの質問に答えると、アーチャーさん

は四つんばいになって財布探しを手伝ってくれる。

格好はアレだけどいい人なのかな?

 

 

…………。

………。

……。

…。

 

ーしばらくしてー

 

「ん?ひょっとしてこれかね」

 

「え?ああ!これです!ありがとうございます!!」

 

あれから、しばらく探し続けていると、アーチャーさんが僕の

財布を見つけてくれた。

お礼を言った後に気が付いたのだけど、アーチャーさんの服がホコリまみれに

なっている。

やはり格好はアレだけどいい人のようだ。

もしかしたら中二病という人生に一度はなる病になっているだけかもしれない。

まあ、僕も女の子を落としまくる神様ごっこをしていたから分からなくもない。

もし、彼の正体が身近な人でも変わらず接してあげようと心の中で誓った。

 

「えっと…アーチャーさん。財布、捜すのを手伝ってくれてありがとうございました」

 

「何、ただの暇つぶしだ。気にしなくてかまわんよ」

 

「それでも、ありがとうございました。じゃあ、僕はもう帰ります」

 

「本当に気にしなくて構わんのだが…まあいい、気をつけて帰りたまえ」

 

ロッカールームを出て、下駄箱に向かう為に廊下を歩く僕。

それにしても、あの声……やっぱり聞き覚えがあるんだよな…。

もしかしてクラスメイト?

う~~ん

 

クラスメイト達のことを考えていると後、もう少しのところなんだけど分からない。

本当もう、喉から手が出そうなくらいに。

って、考えているうちに下駄箱まで着いちゃったみたいだ。

 

「よお、天馬!今帰りか?」

 

「あ、春虎君……に…夏目君!?」

 

そうだ!!あの声は夏目君だよ!!!

イメージが全然、合わなくて気が付かなかった!!

そうか!そうだったんだ!!

って、ダメじゃないか僕!!夏目君が中二病患者であることは秘密にしないと!!

 

「ええっと!僕、急いでるから!!また明日ね!!!」

 

あのままだと、春虎君の前でボロを出しそうだったから、急いで緊急離脱した僕。

夏目君!秘密は守るからね!!

 

 

ー春虎視点ー

 

 

何だったんだ?天馬の奴。

 

「ひょっとして、あいつ…夏目の簡易式にあったんじゃ……」

 

ああ、なるほど。

夏目の話だとお風呂用の簡易式らしいし、最悪天馬の前で脱……

 

「僕は地下を探す!!春虎は一階から上に!冬児は最上階から下に探してって!!

見つけたら確保!!」

 

「「わかった!」」

 

塾舎内に入った俺は、夏目の指示道理に一階から教室を一つ一つ、しらみつぶしに

探していった。

 

「くそ!一人じゃ、辛い。コン!!お前も手伝ってくれ!!」

 

「りょりょ了解いたしましたっ!」

 

一人から二人になり、調べる速度は上がったが全然見つからない。

 

「ここも居ねぇな…コン、そっちは?」

 

「むむ無人ですぅ!」

 

俺とコンで一回は全て調べたが夏目の簡易式は居なかった。

なら、二階か?

 

「コン!二階に行くぞ!!…って、あれ?

夏目!?早いな、もう地下は探し終わったのか?」

 

コンと共に階段を登ろうとしたら、夏目の後ろ姿を見つけた。

 

 

 

ー『僕の考えた正義の味方』視点ー

 

ふむ、マスターの命令を遂行するため、簡易式のフリをしつつ人気のないロッカールームに

潜伏していたのだが……。

まさか、呪力を無駄にしないように礼装を元に戻した所をメガネの青年に見られるとは……。

扉が開いた瞬間、とっさに近くにあったお面をおもわず被ってしまったが…まあ、結果オーライ

と言う奴だ。

今はお面をはずして元の場所におき、服装も呪力がもったいないが制服に変換する。

『接触は最低限にしつつ、簡易式が元に戻るまで本物の夏目に見つからず時間を稼げ!』か……。

まったく、無茶を言ってくれる。

そんな事を考えながら塾舎の階段を登っていると……

 

「コン!二階に行くぞ!!…って、あれ?

夏目!?早いな、もう地下は探し終わったのか?」

 

振り返ると、金髪の青年と狐耳+尻尾のついた和服幼女が階段を上りながら

私に話しかけてきた。本物の知り合いか?

まあ、見つかったのだから慌ててもしかたがない。

とにかく、冷静に対処してどこかに行ってもらおう。

そう思い振り返ると……。

 

「うおおおおおおお!!?」

 

「は、春虎様!!?」

 

金髪少年が足を滑らせたのだろうか?

彼は階段から転落しようとしていた。

このままだと廊下に頭をぶつける可能性が高い!

距離を考えると引っ張りあげるのは間に合わない!

ならば……!!

 

「夏目!?何を!?」

 

「黙れ!舌を噛むぞ!!」

 

転倒する時、私がクッションになればいい!!

私は青年をホールドし、空中で彼を上で私が下の状態にして……。

 

「ぐっ!」

 

「おい!大丈夫かよ!!夏目!!!」

 

背中が床に激突したが、見事に青年を怪我をさせずに助けることが出来た。

が……。

 

「どどどど、どうしようコン!夏目が……」

 

「春虎様!!落ち着いてください!!今すぐ人を呼んできますゆえ、春虎様は

夏目殿を……」

 

「わわ、わかった!コン頼む!!」

 

「ははっ!!」

 

不味い状態になってしまった。

大事になる前に、狐の式……確かコンだったな。

彼女に止めるよう青年…春虎に頼まねば。

 

「私は平気だ。春虎、大事になる前に今すぐコンを止めろ。

後、何時まで私の上に乗っている気だ?」

 

「ばかやろう!そんなの無理に決まっているだろう!!」

 

やれやれ。

任務失敗か。

しかたがない、マスターには悪いが私が式神であることを正直に話して…。

 

「うひょぉぉぉぉおおおお!!!イッツ リアル ファンタジィィィィィ!!!」

 

「アンド ドリィィィィィム!!!」

 

「ちょっとぉぉおおおお!!今それどころじゃ……って、何サラッと写メってるんでスか

あんたらぁ!?」

 

ふむ、本当のことを話そうと思ったら妙な女性二人がやって何やら騒いでいる。

これがカオスというやつなのか?

これは、場が収まるまでおとなしくしておいたほうが得策だな。

余計にこじれそうだ。

 

「はあっ!?私ったらつい!

でも、イケナイわ春虎君、無理矢理なんてっ!で、でも時には強引さも必要よねっ!?

だって思春期なんですモノ!」

 

「何口走ってんだ、あんた!?」

 

「初めまして、春虎君!女子寮寮母の木府(きふ)亜子(あこ)です!

君の噂はかねがねっ!それはもう、かねがね!!」

 

「初めまして、木府さん!けどご丁寧に挨拶前に写メの連射止めろ!

そして撮ったデータを消せぇっ!!」

 

「春虎様!人を連れてまいりし「きゃぁああああああ!!確かにこれは大変だわ!!」

 

「ケータイ小説キタ――――!!」

 

「ちょっと!みんな――――――!!

待て、コラ―――――――!!」

 

女性達が全員去っていったが

このままだと、どんどん騒ぎが大きくなる。

しかたがないここは私が『簡易式が元に戻った。すぐに転移して入れ替えするぞ』

む?

 

 

ー翌日ー

 

春虎視点

 

勘違いしたダブル寮母に写メを撮られまくられた上に同級生にも勘違いされ……。

しかも俺を助けてくれたのは夏目の簡易式で、俺の心配はまったくの無駄だった。

 

結果……。

 

 

 

 

皆に距離を置かれました。

 

 

 

「……屈辱(くつじょきゅ)だ」

 

 

そうっスね、夏目さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーおまけー

 

『僕の考えた正義の味方』は他の黒歴史と共に焼却されました。

 

 

 

 


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