インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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東雲さんに告白されましたという話です。


プロローグ 第9話 東雲さんの告白

「……」

「……」

 

夕焼けの屋上で俺と東雲さんは対峙する。俺達は決闘をする西部劇のガンマンであるかのような緊張感に包まれる。俺と東雲さんの腰にはリボルバーを収納するガンベルトは無いが、そんな感じである。

 

告白か、ケジメか、それが問題だ。

 

心の中でハムレットっぽく考える。見たことも読んだこと無いけど。しかし全ては東雲さん次第だ。俺は東雲さんが口を開くのを待つ。

 

「藤木。」

「…はい、なんでしょう?」

「私はお前に言わなければならないことがある。」

「はい。」

「ええとだな…」

 

本題を切り出そうとしない東雲さんが俺の緊張感を煽る。ヤるなら早くしてくれ、それでもヤクザの娘か。

 

「お前がIS学園に行けば、すぐに解ることだ。でもお前には先に知っていて欲しいと思った。お前は私の友達だから。」

「…続けて。」

「実は、私もIS学園に行くことが決まっている。」

「いや、東雲さん受験してないでしょ?どうやって行くのよ?」

 

よかった!愛の告白でもケジメ宣告でもなさそうだ!

しかし、試験も受けずにIS学園に行く…そんなことが可能なのだろうか?役人の話では俺は形式上とはいえIS学園入学試験を受けることになる。それは織斑一夏も同様だと聞いた。

代表候補生クラスになると国から圧力をかけて入学試験に色をつけたり、編入試験を受けさせることが出来るらしいとも聞いている。東雲さんが代表候補生なんて話は聞いたことが無い。そもそも代表候補生ならこんな所で呑気に学校に学校に通っているはずは無い。政府か企業の訓練施設で訓練漬けの日々を送っているはずだ。

 

「それには私の家族が関係してくる。」

 

東雲さんの家族。つまりヤクザ。東雲さんの家はそこまでの権力を持っているヤクザだったのか。ヤクザスゴイ!そんなヤクザに惚れた男に会いたいからって権力を振るわせる東雲さんもスゴイ!

そうか、彼女は家族を説得することができたのか。

 

「家族?」

 

先ほどの考えを胸の奥にしまいこむ。これまで東雲さんは俺達に家族の話をしてこなかった。それは話したくなかったからなのだろう。自分がヤクザの娘だと知られたら数少ない友達がいなくなってしまう。そうすれば今までのぼっち生活に逆戻り。彼女はそれを恐れているのだろう。

しかし、しかしだ東雲さん!少なくとも俺や花沢さんは君がヤクザの娘でも関係ない!俺達は友達だ!

君は安心して自分がヤクザの娘であることを告白してくれ!不肖このオリ主藤木紀春が君の告白をばっちり受け止めて差し上げますぞ!!バッチコイ!

 

「私の名前は東雲箒ではないんだ。つまりここでは偽名を使っていた。」

「ほうほう。」

 

ん?偽名?そんなのはオプションみたいなものだろう。そんなことより早く本題に入ってくれないかなぁ。

 

「私の本当の名前は篠ノ之箒という。」

「へぇ。」

 

しののめとしののの。平仮名に直すと一文字しか違わない。もうちょっと考えたほうが良かったんじゃないのか?しかし『篠ノ之』か、『の』の数を間違えそうで呼びづらい名前だ。あれ?しののの?どこかで聞いたことがあるような…

 

「そして私は、篠ノ之束の妹でもある。」

「ほげえええええ!!」

 

篠ノ之束。ISの開発者として名高いあのお方だ。アクエリオン(仮)こと白騎士を開発し世界にISコアをばら撒いて失踪した天才。いや天災。一部では世界一有名な住所不定無職と言われてるあの人か!そして東雲さんはその妹か、たまげたなあ。

 

「え?え?え?東雲さんが篠ノ之さんで篠ノ之束の妹?」

 

喋る言葉の中に『の』が多すぎて舌を噛みそうだ。

 

「そういうことになる。」

「ヤクザの娘じゃなかったのかよ!!」

「ヤクザ!?いままで私をどういう目で見ていたんだ!」

「ぼっちなヤクザ娘を見るような目だよ!」

「ぼっ、ぼっちだと!?私はぼっちなんかじゃない!」

「嘘だッ!!!」

「嘘じゃない!!」

「だったら、俺と花沢さんと織斑一夏以外の友達の数を数えろ!」

「たっ、田口!!」

「お前と太郎が会話してるとこ見たことが無いぞ!!仮に俺の知らないところでお前と太郎が友人関係を築いていたとしてもここに来る前はやっぱりぼっちじゃねーか!!!」

「……あっ、わたしやっぱりぼっちだ…」

 

東雲さん、いや篠ノ之さんがうなだれる。この勝負勝った!

あれ?何の話だったっけ?

 

「…ごめん、言い過ぎた。」

「…いやいいんだ。私がぼっちなのが悪いんだから。」

 

勝利の後には空しさしか残らなかった。気まずい空気が流れているので話題を変えたいところだ。

しかし、篠ノ之さんは篠ノ之束の妹で主人公織斑一夏の友達で恋心まで抱いている。そしてIS学園に行くと…

この子ヒロインだ!ラブコメだ!そしてここで話題変更だ!

 

「しかし、篠ノ之ねぇ、呼びづらい名前だ、『の』の数が多くて。」

「そうか?自分ではそう思わないが。」

「自分の名前だからだよ。それに俺の中では今日東雲さんから篠ノ之さんにジョブチェンジしたばっかりなんだよ。慣れるのが大変だなこりゃ。」

「そういうものか…よし、私の名前を呼んでみろ。練習だ。」

「しののさん」

「『の』の数が少ない。もう一回。」

「しののののさん」

「まじめにやれ。もう一回。」

「しのぬねの」

「怒るぞ?」

「ごめんなさい東雲さん。」

「もう東雲でいいや。」

「ごめんごめん。努力してみるよ。」

「ここでは東雲でいいからな?」

「わかったよ。篠ノ之さん。」

「本当に解っているのか?」

 

気まずい空気も晴れいつもの空気だ。俺のオリ主トークスキルも前世より上がってるようで嬉しい。

 

「まぁ、これからもよろしくね篠ノ之さん。」

「ああ、よろしく頼む。」

「と言うわけで握手!」

 

ズバッと右手を差し出す。篠ノ之さんが何事かと言う目で俺を見る。

 

「え?」

「ユウジョウ!」

「ああ、そうか。ユウジョウ!」

 

篠ノ之さんが力強く俺の手を握り返す。夕日に照らされる彼女の顔はまさに正統派ヒロインの顔だった。

そして、俺の十二年越しの伏線も終に回収されたのだった。サンキューカッズ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうそう、聞きたいことがあったんだ。」

「何だ?言ってみろ。」

「篠ノ之さんの周りに居たヤクザって結局何者なのさ。」

「あの人たちはヤクザじゃなくて重要人物保護プログラムの人たちだ。」

「重要人物保護プログラム?」

「そうだ!私も言わなければならない事があるのを思い出した。」

「?」

「これはかなり重要な話だ。真剣に聞いてくれ。」

「おふざけは無しね。了解。」

「お前の家族、離れ離れになるかもしれない。」

「…どういうこと?」

 

俺はその言葉を聞いて真剣な顔つきになる。篠ノ之さんの顔も真剣な感じだ。

 

「お前、今の自分の立場を正確に理解しているか?」

「世界で二番目の男性IS操縦者だろ?」

「正確に言うと世界に二人しか居ない男性IS操縦者の一人だ。」

「それと一家離散に何の関係が?」

「お前の家族は重要人物保護プログラムに入る可能性が高い。」

「つまり、俺は超レア物だから家族を使って俺を脅してくる奴がいるかも知れないって事でしょ?それから俺の家族を守るためにあのヤクザが護衛に付くって感じか?」

「そういうことだ。そして、篠ノ之束の妹である私は重要人物保護プログラムによって一家離散となった。」

「何だと!?」

「私の言いたいこと、解るな?」

「――ッ!すまない篠ノ之さん!俺は家に帰らせてもらう!」

「ああ…」

 

篠ノ之さんの返答を聞く前に階段を駆け下り俺は家まで全力で走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「母さんっ!」

 

俺は玄関のドアを乱暴に開ける。ドタドタと家の中に入るとリビングに母さんだけではなく父さんも居た。

それだけではない。ソファーに老人と女性が座っており、ソファーの後ろには黒服を着たヤクザが一人立っていた。

家の前に高級車が停まっていたのを思い出す。こいつらの車か。

 

「紀春、ここに座りなさい。」

 

父さんが俺を老人達の向かいにあるソファーに座らせる。父さんも俺の隣に座る。母さんはソファーの隣で立っていた。

老人が出された緑茶を啜る。

 

「いやぁ、いい味だ。茶葉はいいものを使っているようだし、入れ方も完璧なようだ。うちの秘書でもここまで出来る人は居ないんじゃないかなぁ。奥さん、美味しいよ。」

「ありがとうございます。」

 

母さんは結婚する以前はとある大会社で秘書をやっていたと以前聞いたことがある。そこに営業に来た父さんに一目惚れされ、今に至るというわけだ。茶の入れ方と所作はそこで培われたものらしい。

 

俺は老人達を睨む。すると老人の隣に居た女性が俺に声を掛ける。

 

「申し遅れました。私は三津村商事株式会社で秘書をやっております楢崎怜子です。こちらは社長の大泉幸三郎です。」

 

三津村商事…父さんが勤めている会社だ。そしてこの状況、もう俺が第二のIS操縦者であることを嗅ぎつけたのか。

父さんが何か喋ろうとするのを大泉さんが制す。

 

「いいんだ、藤木君。私に説明させてくれ。」

「説明?」

「初めまして、藤木紀春君。さっきの紹介の通り私が三津村商事の社長の大泉だ。」

「と、言うことは三津村全てのトップってことでいいんですかね?」

「そう思ってくれても構わない。」

 

俺は警戒を続ける。

三津村。明治時代から日本を支える旧財閥系の企業であり、多数グループ企業を抱えている。「三津村は国家なり」という言葉もあるくらいで、ISから子供のお菓子まで、この国に住んでいるのなら関わらずにいるのが不可能なほどの企業グループだ。そしてその頂点に立っている企業こそ三津村商事だ。

 

「それで、その社長さんが俺に何の御用でしょうか?」

「解っているのにそれを聞くかね?ご両親にはもう説明しておいたよ。」

「……」

 

俺がIS適性調査を受けておよそ六時間が経っている。その六時間でもう俺の家に来ているとは…

 

「私は長話は嫌いなんだ。率直に言おう。私たち三津村に君は何をして欲しい?」

 

俺が三津村入りするのはもう決定か。長話が嫌いにしても話が早すぎるぞこのジジイ。

しかし、俺には織斑一夏のような後ろ盾は無い。それに反対することは出来ない。

俺はオリ主頭脳をフル回転させる。

 

……答えは決まった。

 

「とりあえず三つお願いしたいことがあります。細々したものはその都度お願いします。」

「ほう、言ってみたまえ。」

 

ジジイが笑う。

 

「ひとつは契約金一億、年俸一千万。税金やその他諸経費は差し引いた状態でお願いします。」

「ずいぶん安いな。」

「ガキの小遣いなら十分すぎるほどの額ですよ。人間関係を作るのにも文無しじゃきついですからね。」

「わかった。それは叶えよう。」

 

まぁ、これは叶うだろうと思っていた。あのジジイからすれば端金だろう。

次のお願いも叶えてくれるはずだ。

 

「次は、俺の専用機の確保をお願いします。それに伴いIS学園入学までISの操縦訓練をさせてください。」

「当然だな。」

「俺は世界に二人しか居ない男性IS操縦者です。良くも悪くも目立つ人間です、IS学園の中なら特に。無様な真似を晒すわけにはいかないんですよ。」

「今から君の専用機を作るのに時間は掛かるが、それでも構わんか?」

「量産機でもいいです。とりあえず自分専用として使わせてください。練習する時間を少しでも多く取りたいんです。」

「わかった。我々の会社には今空いているコアが一つしか無い。それを君の専用機として使うので政府を通してIS学園に打診してみよう。」

「お願いします。」

 

さて、最後だ。これが一番大切なお願いだ。

 

「最後のお願いです。三津村の力で父さんと母さんを守ってください。」

「どういうことだね?」

「重要人物保護プログラムという言葉を聞きました。」

「そういうことか。」

 

やはりこのジジイ話が早い。

父さんと母さんの顔色が変わる。

 

「いいだろう。君の願い全てを叶えよう、特に三つ目はね。私よりも厳重な警備を付けようじゃないか。」

「ありがとうございます。」

「ただし、引越しをしてもらうことになる。なに心配するな。東京にある超VIP専用マンションだ。君がいつでも会えるように配慮しよう。それに家賃はわが社が持とう。」

「父さん母さん、それでいいかな?」

「私は構わんよ。」

「健二さんがいいって言うなら…」

 

二人とも納得してくれたようだ。いやそれは表面的なものだろう。住み慣れた土地を離れて、大勢の護衛に囲まれての生活が始まる。そのストレスはいかほどのものだろうか。

俺がオリ主ではなかったら、家族三人で普通の生活を送れていたのではないのだろうか。

俺は両親に罪悪感を抱く。俺が転生して十五年この二人と家族として生きてきた。

十五年、決して短い時間ではない。

 

「これで、俺のお願いは以上です。」

「では、次は私からのお願いだ。」

 

本当に話が早いよ、ジジイ。

 

「これから君に三津村商事本社に来てもらう。」

 

もうお願いじゃねーな。命令だよこれ。

 

「そこで何かさせられるんですか?」

「記者会見だ。楢崎君、報道の人間を何時までに集められる?」

「二十一時までには。」

 

ちなみに今の時間は十八時だ。

 

「遅い。二十時までには集めたまえ。」

「わかりました。」

 

このジジイ早スギィ!

 

「さあ、急ごう。主役が遅刻しては恥かしいからね。」

 

俺はジジイに車に乗せられ、一路三津村商事本社ビルを目指す。

二時間後、俺は世界に名を轟かす。




早いジジイと秘書登場。

私はオリキャラを多数出してくる二次創作はあまり好ましくはないと思っていたのですが、いざ自分が書くと凄い量のオリキャラが…
書き溜め分からもう一人出ることは確定してますし、もう一人出てくるのが予定されています。

どうしてこうなった

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