インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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第55話 激走×飛翔×ホームラン

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

「居た、あそこよ!」

「ちっ、まだ追って来るか!」

 

走る、走る、走る、はしる……

現在俺は多数の女子生徒に追われている、たっちゃん企画の学園祭イベントで俺と一夏が被っている王冠の争奪戦が行われているのからだ。

しかもその王冠を外そうとすると電流が流れるおまけつき、一度外そうとしてその威力は体感済みだ。痛い、というか熱い。むしろいくらかの毛根が死んだ気がする、将来俺がハゲたらどう責任取ってくれるのだろうかあの女は。

まぁ、今はその話は置いておこう。とにかく俺はその長い友達を守るために逃げ続けているのだ。

 

自分で言うのもなんだが一流アスリートの身体能力を持っている俺にかけっこで敵う奴はこの学園に居ない、しかしながら逃げても逃げてもどこからか湧き出してくる女子達に俺の体力はまだ余裕を残しているもののこんな状況が続けばいつしか俺の長い友達は狩られてしまう。

 

状況を打開する策はないか、そんな事を考えているもののこうも追われて続けていてはそんなものを思いつく余裕もない。

そんな感じで逃げ続けていると、俺に並走する女子が一人現れる。息を切らせながら確認するとその子はソフトボール部の部員だった。

 

「藤木さん! 部長からの伝言です、今から屋上に来て欲しいと」

「今から!? それに屋上ってたってどこの屋上だよ! それに屋上で何するんだよ、俺今すげぇ忙しいんだけど」

「藤木さんを助けるための準備が出来たとの事です。ああ、あと屋上ってのは少し前にシャルロット・デュノアと一緒にいた場所だそうです」

「少し前? 全然記憶にないんだが、シャルロットと一緒にいたって記憶もないし……ああ、多分記憶失ってるな、俺」

「ええと、あそこです!」

 

部員が指差す方を見る、どうやら校舎の屋上のようだ。あそこは以前篠ノ之さんに土下座した場所だ。

 

「オーライ、あそこか」

「ああ、私は……もう……限界……みたいです……」

 

メッセンジャーを務めてくれた彼女が失速していく、いくら俺によって鍛えられていると言っても彼女にも限界というものがあるようだ。まぁ、彼女と話をするために少しはスピードを落としているとはいえ俺と会話をしながら並走し三十秒近く持たせた彼女も中々頑張っている。

 

「そうか。ご苦労、助かった」

「はい……藤木さんも頑張ってください!」

「ガッチャ!」

 

その言葉と共に再度加速を掛ける、俺は彼女とその他諸々をぶっちぎり屋上を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで言われた通りにやって来たわけだが……」

 

てっきり俺としてはディアナさんが待ち構えていると思っていたのだが屋上には人っ子一人居ない。しかしあの部員に嵌められたというのはない筈だ、ソフトボール部の部員である以上俺に逆らうことは無い。

とは言うものの少し不安になってくる、屋上は完全に袋小路なわけでいずれ俺を追って女子たちがここに詰め掛けてくるだろう。そうなれば流石の俺でもゲームオーバーだ。

 

その時、尻ポケットのスマホが振動し着信を知らせてくれる。取り出してそれを見るとディアナさんからの電話のようだ。

 

「もしもし、言われた通りに屋上にやってきたけどこれからどうすればいいんだ?」

『はい、それはこちらでも確認できています。それでは藤木さんには……』

「そこに居たのね、藤木君!」

 

その瞬間屋上の扉が開け放たれそこから多くの女子がなだれ込んでくる。ヤバイ、すげえピンチだ。

 

「ふっふっふっ、色々と梃子摺らせてくれたけどそろそろ年貢の納め時のようね!」

「すまんが長い友達のために俺も捕まってやるわけにはいかないんだ。で、ディアナさん俺はどうすればいいんだ?」

『飛んでください』

 

なんだが非常識な答えが返ってきた気がする。

 

「……飛ぶ? この屋上から?」

『はい、その屋上からです』

「おいおいおいおい、この状況でそんな冗談はよしてくれよ」

 

女子達を警戒しながら後ずさりし、屋上の端まで到達する。屋上の柵から下を見てみると……そういうことか。

 

「……そういうことか、でもこういうのは先に言ってくれてもいいんじゃないかな?」

『ちょっとしたサプライズです。女の子はサプライズが大好きなんですよ、覚えていて下さい』

「そうなのか、勉強になる。ついでに言っておくと俺はサプライズは大嫌いだ、覚えておけ」

『……すみませんでした』

「いや、さっきのは売り言葉に買い言葉というか……まぁ気にしないでくれ。とにかくありがとう、助かる」

『いえ、藤木さんのためになるのならなんだってしますよ』

「ん? ……まぁいいか。じゃ、切るな」

『はい、御武運を』

 

その言葉の後、俺は通話を切る。そして再度女子の群れと対峙する。

 

「さて、覚悟は出来たかしら?」

「ああ、ばっちり。辞世の句も考えた」

「へぇ、聞かせてくれない?」

「ああ、いいだろう」

 

俺は屋上の柵に腰掛ける、この柵は余り高さがなく俺の腰くらいの高さしかない。転落事故防止の観点から言って非常に危ない出来である、IS学園には他にもあのやたらねじれた塔とかはっきり言って危ない建築物のオンパレードだ。建築家は一体何を考えてあんなデザインにしたのだろうか。

まぁ、今はそんな事どうでもいいことだが……

 

「梅雨明けて……」

 

その言葉と共に俺は柵を乗り越える、ちなみに今梅雨明けじゃないだろという突っ込みは禁止しておく。

 

「スカッと爽やか……」

 

乗り越えた柵からもう一歩踏み出す、その先にはもう何も無い空間が広がっている。

 

「スーサイド」

 

そして振り返る、俺を追っている女子達は一様に不安そうな顔を浮かべていた。

 

「あの……藤木君、もしかしてそこから飛び降りようなんて考えてないわよね?」

「思いっきり考えているが何か?」

「王子様役はISの展開禁止なのよ、そんなことすると死んじゃうわよ」

「大丈夫だって、多分」

「後、さっきの辞世の句って思いっきりパクリじゃん!」

「正解! というわけで皆さんさようなら!」

 

俺はその身を空へと投げ出し真っ逆さまに地上へとダイブしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、生きてるな」

「いや、部長も無茶な作戦考えるとは思っていましたけどそれを実行する藤木さんも中々凄いですね」

「褒めるなよ、照れるじゃないか」

「褒めているわけではないのですが……」

 

屋上から飛び降りた俺はソフトボール部が用意した数十個のマットやクッションのある場所に落下、うまい具合に落ちる事が出来俺の体には傷一つ無い。

それでもそんな所に落ちるのなんて狂気の沙汰としか思われないだろう、しかし俺達の信頼はそんな狂気すら易々と超えていける。そもそも俺が怪我していないのだから全く問題は無い。

 

「さて、俺はこれからどうすればいいんだ?」

「ここから先はノープランです、私達も出来るだけの援護はしようと思っていますが」

「まぁ、仕方ないな。それよりディアナさんは?」

「何か準備があるとか言ってどこかへと行ってしまいました」

「そうか、ならば行こう。グズグズしているとまた追いかけられてしまう」

「そうですね、行きましょう」

 

そして俺達は駆け出す、しかしこのイベントはいつ終わるのだろうか。そこが気になるところだ。

 

「居たわ、こっちよ!」

「って早速見つかったあああああっ!」

「ここは私達が食い止めます! 藤木さんは逃げて下さい!」

「頼む!」

 

俺を追う女子集団に向かってソフトボール部員が駆け出す、しかしその数は歴然だ、多分いずれ彼女らも制圧されてしまうだろう。こんな状況で俺が出来るのはただ逃げることのみ、彼女らの努力を無駄にしないためにも頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待てーーーーーーっ!」

「畜生っ! 結局振り出しに戻ってるじゃねーか!」

 

結局彼女らの努力の甲斐なく俺は追われ続けている、かれこれ三十分は走りっぱなしで俺の体力もそろそろヤバイ。

しかしながら相変わらず状況は打開できない、俺はこのまま走り続けいずれ漆黒の長い友に別れを告げる事になるのだろうか。

いや、そんな事は許されない。俺のために頑張ってくれた部員のためにも逃げきらなければ彼女らに示しがつかない。

とはいえ俺の体力にも限界がある、追いかけてくる女子との差は詰まっていく一方で彼女らはもうすぐ俺の王冠に手が届く所まで来ている。そんな時だった。

 

「きゃあああああああっ!!」

 

急に背後から爆発音、驚いて振り返ってみるとそこには土煙が立ち込めていた。

そして一陣の風が吹きその土煙が晴れる、そこには俺を追ってきていたはずの女子たちが倒れていた。

そしてまたしても俺のスマホのバイブレーションが着信を知らせる、そしてその相手も相変わらずディアナさんであった。

 

「なんとか間に合ったようですね」

「なんとかって……一体何やったんだよ」

「いつも藤木さんが私達にやっているやつですよ」

 

いつも俺がディアナさんにやっているやつって……千本ノックか。あたりを見渡すとそこにソフトボールが転がっているのが見える、ついに千本ノックまで習得するとは……バトルロイヤルの無双振りや今の打撃を見るにディアナさんは既に俺を超えているのではないのだろうか。

 

「いや、しかしあれは素人に対して気軽にやっていいもんじゃないだろうに」

「一応手加減はしておきました、気を失う程度までに力をセーブしましたので怪我はしていないはずですが」

 

倒れている女子を調べてみる、土で多少汚れているもののディアナさんの言う通り傷は一つも見当たらない。

 

「まぁ、そういうことならいいよ。俺もこのイベントにはリスクを負っているわけだし追いかける彼女らにもリスクはあって然るべきだよな、多分」

「おっしゃる通りです」

「ところでこのイベントに参加している女子の景品はあるのか? こんなになってまで追いかけてくるんだから何かあるんだろう?」

「はい、ご推察の通り景品は用意されていますよ」

「へぇ、なんなんだ?」

「王冠を奪い取った者には、その者と同室に住む権利が与えられています」

「なんと」

 

ということは俺を追いかけていた女子達は俺と一緒に住みたいと思っている子な訳で、ゆくゆくはあんなことやこんなことをしたいと思っているってことか。

 

「俺って結構もててたのか……」

「藤木さんはこの学園にたった二人しかいない男子生徒なんですよ、当たり前じゃないですか」

 

道理でイベントの序盤一年専用機持ちが俺を無視して一夏を追いかけていたわけだ。あの時は正直寂しかった、だってみんな俺のことを無視するんだもん。

その寂しさはシャルロットのトークで幾分は緩和されたもののそういう理由があったのか。

 

「いや、たっちゃんをレイプした噂が流れていた時に色々あったから不人気なんだと思ってた」

「そんなことありませんよ、藤木さんは織斑さんよりネームバリューもありますから」

「そうか、惜しい事をしたな」

「そうなんですか」

「だって俺だって彼女ほしいもん」

 

倒れている女の子達を見渡す、みんな可愛くて俺的には申し分ない子ばかりだ。

 

「だったら、その……私とかどうですか?」

「いや、俺とディアナさんはそういうのじゃないだろ」

「やっぱり、そうですよね」

「ディアナさんや部員のみんなが俺の事を好きで居てくれてるのは知ってる、でもそれがそういう好きじゃないのも知ってる。ありがとう、気を遣ってくれて。俺もみんなのことは大好きだ」

「はい、差し出がましい真似をして申し訳ありませんでした」

「いいさ。じゃ、もう行くよ。みんなの努力を無駄にしたくないし、女の子と同室になったら妊娠させてしまうかもしれないからな。とりあえず今はこのままでいいよ」

「そうですか。私達に出来るのはここまでです、頑張ってください」

「ああ、ありがとう」

 

通話を切り、俺は再度駆け出す。この王冠には多くの人の俺に対する信頼が込められている、なんとしても守り抜かねば




なんか投稿が凄く遅れたけど仕方ないじゃないか、年末は色々忙しいんだもの。
主にガンダムブレイカーとかガンダムブレイカーとかガンダムブレイカーとか……

そしてこれが今年最後です、来年もよろしくお願いします。学園祭後の話一文字も書いてないけど。

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