インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~ 作:たかしくん
藤木と生徒会長の戦いから二日後、私は一人放課後の教室で悩んでいた。
ここに一枚のチケットがある、言わずもがな学園祭の招待チケットである。
しかし私がそのチケットを渡す事が出来る相手なんて居ない。いや居ないわけではないのだがあの人をこの学園に招くとなると大混乱は必至だ、そして高確率で誰かの血を見る事態となるだろう。
『誰か』とは誰か、それは多分……
「おいっす、何やってんの?」
その『誰か』が私に声を掛けてきた。
「ああ、藤木か。これをどうしようかと考えているんだ」
そう言って藤木にチケットを見せる、それを見た藤木がにやりと笑う。なんだか嫌な予感がしてきた。
「ほうほう、友達居ないから渡す相手が居なくて困っていると」
「とっ、友達が居ないだと!?」
「え、居るのか?」
「居るだろ! ほら……クラスのみんな……とか?」
「なぜそこで疑問系なんだ? で、それ以外には?」
「それ以外……剣道部!」
「それ以外は?」
「それ以外……それ以外……それ以外…………」
「いきなりストック切らしてんじゃねーよ、そもそも学園内の友達にチケット渡せるわけねーだろ。学園外の友達居ないのかよ?」
藤木が意地の悪い質問をぶつけてくる、私に学園外の友人が居ないのを知っててそれを言うとは。
……あっ、居た。居たんだが……
「あっ、花沢さんが居た」
「良かったな、渡す相手が居て」
「いや、花沢さんは……」
「ん? 何かあったのか?」
花沢さん、藤木の幼馴染にして私の二人目の友人である。ちなみに下の名前は謎だ。
しかし、一つ問題がある。花沢さんはあくまで東雲箒の友人であり篠ノ之箒の友人ではない、つまり私が言いたいのは……
「結局私の正体黙ったまま中学校を卒業してしまった……今現在は連絡も取ってない」
「そういうのが友達出来ない原因なんだろうな、マメに連絡取り合うのって結構重要だぞ?」
「うぐっ……」
藤木から発せられる言葉のナイフが私を容赦なく切り裂く。しかしこんな奴でも私より友達が多い、しかもこいつは自前の狂信者まで抱えている。世の中は理不尽な事だらけだ。
「まぁ立場が立場だからな、言い出しにくいのも解る。よければ俺が連絡取ってやろうか?」
「……いいのか?」
「別に構わん、俺たち友達だろ。但し学園祭の時まで助けてはやらんぞ」
「のっ、ノリさん……」
「ノリさんはやめい」
藤木は口は悪いがなんだかんだで私を助けてくれる、悪い奴ではないとは思う、口が過ぎることもよくあるが。
「さて、私はもう行く。いつまでも二人きりでで喋っていたらまた要らぬ誤解をされてしまう」
「要らぬ誤解? なんだそりゃ」
「以前放課後の屋上にお前が私を呼び出したことがあっただろう、あの時クラスのみんなはお前が私に告白すると思っていたらしい」
「二人きりになれば即刻色恋沙汰かよ、そんなんだったら今頃俺はハーレム作っとるわ。……あー、なんで俺もてねぇんだろうな」
「そういう残念な所を見透かされてるからじゃないのか? まぁとにかくありがとう、礼は何時かする」
「別にいいって。あっ、でもどうしてもと言うんならその大きなおっぱいを一度もま「せいっ!」すぺらんかあ!」
セクハラしてきた藤木の顔面に正拳突きをお見舞いする、やはりこいつはこんな感じだったか。
気絶している藤木の顔面にチケットを貼り付け、私は教室から出て行った。
昼休みの教室、そこで花沢さんは一人唸っていた。なんだかとても難しそうな顔をしていて一応友人である僕も心配になってくる、というわけで僕は花沢さんに声を掛けてみることにした。
「うーん……」
「どしたの花沢さん?」
「ああ、太郎か。はい、これあんたにもあげる」
「ん?」
そう言って花沢さんは二枚持っていた紙の一枚を僕に手渡す、その表を見てみると『IS学園学園祭招待券』と書かれている。
「これは……かみやんが送ってくれたの?」
「うん、そういうこと。でもおかしいのよ、このチケットって生徒一人につき一枚しか配られてないらしいんだって」
「ふーん、一枚はかみやんからのチケットだとしてもう一枚は誰のかってことが気になるってとこ?」
「うん、一応かみやんにメールで聞いてみたんだけど答えてくれなくて」
「留学生とかじゃない? 流石に学園祭のために友達とか親とかを日本まで呼びつけるのは気が引けるんじゃないのかな? 渡航費とか宿泊費とかで結構掛るでしょ」
「そうかなぁ、高が留学生と言ってもわざわざ日本までISの事を学びに来てるんだから渡航費とか宿泊費とか気にするレベルの家の子はそもそも日本に来ないような気がするんだよね。一応各国に訓練施設はあるわけだし」
「じゃ、そもそも親が居ないとか」
「そりゃ大変ね、親と死に別れて単身右も左も解らない外国に放り出されるとか考えただけでも恐ろしいわね」
「だねー、もしくは日本人だけど呼ぶ友達がそもそも居ないとか!」
「うわー、悲惨だわ。この思春期にぼっちとか辛すぎるわね、私だったら人生悲観して自殺してるかも」
「そりゃ流石にオーバーじゃない?」
そう言いながらもう一度チケットを眺める、よく見るとチケット配布者の名前が書いてありそこには『藤木紀春』と書いてある。となると今花沢さんが持っているチケットが二枚目であるぼっちさんまたは親無し留学生のチケットということになる。
「花沢さん、チケット配布者の名前が書いてあるよ」
「あれ、そうなの? 全然気付かなかったわ。えーと、私のチケットには……えーと、しののの……」
しののの? どこかで聞いたことある名前だ。
「って、篠ノ之箒!? 篠ノ之ってことは篠ノ之束の家族ってこと!? 流石IS学園、かみやん程度の人間でもこうも簡単に超VIPとお近づきになれるなんて……」
「一応言っておくけど、かみやんも超VIPだからね?」
「しかしその篠ノ之箒がぼっちとはねぇ、やっぱりみんな遠慮して近づきづらいのかしら? ん? ぼっち……しのののほうき……どこかで聞いたことがあるような……」
「まぁ別にいいんじゃない、学園祭に行けば多分会えるだろうし。その時にお礼もしておかなきゃね」
「それもそうね。さて、お昼ご飯食べないと昼休み終わっちゃうわ。太郎、行きましょう」
「そーだね」
僕達は席を立って学食へと向かう。篠ノ之箒、どんな人なんだろうか。
「くしゅん!」
専用機持ちで集まって飯を食っている最中、女性陣がタイミングを合わせたかのように同時にくしゃみをする。
「飯食ってる最中にくしゃみなんてするなよ、きったねーな」
「いや」
「なんだか」
「急に」
「くしゃみが」
「ですわ」
と女性陣が返してくる。
「しかし一体何だったんだ。あれか、噂か?」
「噂ですか。まぁわたくし位になりますと噂の一つや二つ常にされているようなものですがね」
「確か一度目のくしゃみはいい噂で二度くしゃみをすると悪い噂をされているという話だったか」
「あら、ならいい噂ということですか。ふふっ、誰がわたくしの噂をしているのでしょ……くしゅん!」
セシリアさんがもう一度くしゃみをする、悪い噂のようだ。
「くっくっくっ、どうやら悪い噂をされてるようね。まぁ普段の行いが悪ければ仕方な……くしゅん!」
セシリアさんを笑っていた鈴も後を追うようにくしゃみをする、今度はそれを見たセシリアさんが笑う
「おーっほっほっほっほっ、どうやら悪い噂をされているのは鈴さんも同じのようですね」
「はっ、悪い噂? そんな迷信信じてるなんてあんたお子様ね!」
「なんですってえええええ!? 大体鈴さんが先に言い出したんじゃありませんか!?」
「あら、そうだっけ? あたし覚えてなーい」
「なにを都合の良いことを!」
「くしゅん」
「くしゅん」
「くしゅん」
鈴とセシリアさんが言い争っているのを尻目にしめやかにくしゃみをする残り三人、なんだかいつもの学園の雰囲気であった。
俺はその間に一気にチャーシューメン大盛りを啜り、奥ゆかしく席を立つ。そこに一夏が声を掛けてきた。
「あれ、もう行くのか?」
「ああ、とばっちりを受けたらかなわん」
「それもそうだな、俺も行くよ」
「私も行こう」
「あっ、僕も」
「兄よ、私も行くぞ」
そして一夏に追随するように早めに食事を終えた三人も席を立つ、そして俺達は逃げるように食堂を後にした。