インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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第36話 シスターオリンセス

パリ郊外から離れ、一度ベルギーを通過しながら俺達はケルン近郊の空軍基地ネルフェニッヒ航空基地に到着した。約五時間の旅路のほとんどはシャルロットのカウンセリングに費やされ俺はもうクタクタだ。

シャルロットを用意されていた宿舎に送り届け、俺は一人基地の司令部に招かれた。

ドイツの選考会の代表がぜひとも挨拶がしたいということだ、どんな人だろう。そんな事を思う俺を黒い軍服の集団が迎え入れる。

 

「兄よ、ドイツにようこそ。歓迎するぞ」

 

その先頭には愛する我が妹、ラウラが立っていた。

 

「ああ、歓迎ご苦労。もしかして選考会の代表ってのは……」

「いや、私ではない。イグニッション・プランの選考会にはこちらのクラリッサ大尉が出ることになる。クラリッサ、挨拶を」

 

クラリッサ……ラウラに色々と悪影響を与えているという諸悪の根源、早速で悪いが成敗しなければならない。

と、思ったが現在ISのない俺ではどうやったって勝ち目が無い。俺はそんな悔しさを営業スマイルで隠し敬礼するクラリッサ大尉に向き合う。

 

「お初にお目にかかります、兄上。クラリッサ・ハルフォーフです。以後お見知りおきを」

「おいちょっと待て」

「何でしょう? 兄上」

「その兄上ってのは何だ? 俺の妹は一人しか居ないぞ」

 

そんな疑問を口にすると、クラリッサ大尉はしたり顔で答える。

 

「兄上、私達黒ウサギ隊は部隊全員が家族のようなものです。故に隊長が兄上の妹であらせられるというのなら我々全員が兄上の妹なのです」

「はぁ!?」

 

クラリッサ大尉が超理論を口にする、ドイツ人ってのは全員がこんなのなのだろうか?

 

「ということでご紹介します、黒ウサギ隊です。もちろん全員兄上の妹です、可愛がってやってください」

「ファッ!?」

 

クラリッサに紹介される十人の眼帯ドイツ軍人、その全員がにこやかに挨拶する。

 

「初めまして兄様!」

「よろしくな! あんちゃん!」

「写真で見るより格好いいですね、お兄さん」

「この人が……私のあにぃ……」

「お兄ちゃん! お兄ちゃんの本買ったよ! サインちょうだい!」

「おにいたま、ゆっくりしていってくださいね」

「やぁ! 兄貴!」

「兄や……いえ、なんでもありません……」

「兄チャマ、だっこー」

「にぃに! 大好きだよ!」

 

急に増えた合計12人の妹。これの状態は……アレだ……シスタープリンセスみたいな状況だ。しかし全員眼帯ドイツ軍人、キャラ被りすぎでとても売れそうにないな。

 

父さん、母さん。妹が12人に増えました、彼女達を受け入れてもらえますか? 俺は無理です。

 

「…………」

「ふっふっふっ……感動して言葉も出ませんか? 兄上」

「クラリッサ大尉……」

「クラリッサ大尉などど呼ばないでください。私はあなたの妹なのですから呼び捨てで結構ですよ」

「そうか、ではクラリッサよ……」

 

決めた、久しぶりだがSEKKYOUしよう。こいつの暴走を止めなければいずれラウラはとんでもないことになってしまう。

 

「なんでしょう?」

 

クラリッサが俺に微笑む、しかし彼女にニコポは存在しないので俺の決意は変わらない。

 

「正座」

「えっ?」

「とりあえず正座しろ、クラリッサ」

「え? どうして?」

「正座しろってのが聞こえねーのかボケェ!! スッゾコラー!!」

「ひぃっ!?」

 

久しぶりに飛び出したヤクザスラングに百戦錬磨の眼帯ドイツ軍人たち(妹)も慄く、クラリッサもそんなヤクザスラングに怯え、固いコンクリートの上に正座をした。

 

「お前さぁ、何やってくれてんの? 勝手に人の妹増やしてくれやがって……俺の都合とか完全無視なわけ?」

「いっ、いえ。隊長から兄上が妹が出来て喜んでると聞いたものでつい嬉しくなって……」

「大体、おかしいだろ。アンタ歳いくつよ? 少なくとも俺より年上だよね、何で妹なんだ? 一夏の時だってそうだよ、あいつ男だぞ? 何で嫁なんだよ?」

「私の愛読している少女マンガにそう書いてあったものですから……」

「マンガの世界の話が現実でも通用すると思ってんのかよ? そんなん出来れば俺は今頃かめはめ波撃っとるわ」

「えっ? かめはめ波って撃てないんですか!? 毎晩練習してたのに……」

「馬鹿野郎! 気が現実にあったらISなんていらねーんだよ!」

「うっ、確かに……」

「全く、お前は常識ってのを知らないのか?」

「滅相もございません」

「滅相とかそんな言葉覚える前にもっと覚えなきゃいけないことがあるだろ!?」

「アッハイ」

「さりげなく忍殺語使ってんじゃねーよ!」

「アイエエエ!! 兄上がヤクザスラング使ってたからつい!」

 

その後俺の魂のSEKKYOUは一時間にも及んだ、SEKKYOUから開放されたクラリッサは正座のせいで足が全く動かなくなっており数人の妹に運ばれどこかへと消えて行った。

しかし、彼女も俺のSEKKYOUのお陰で欠片ほどの常識をわきまえただろう。妹と名乗るからには恥ずかしいことをさせるわけにはいかない、言わばこれは俺から彼女に対する愛情なのだ。

なぜ彼女達を妹と認めるかって? SEKKYOUの最中にラウラからニコポされながらお願いされたからだよ。仕方ないだろ。

 

「兄……申し訳ない」

「それもこれもお前達に常識を教えてなかった織斑先生のせいだ、IS学園に帰ったら織斑先生にもSEKKYOUしてやる」

「本気か? 織斑先生に説教などと……」

 

想像してみる、正座している織斑先生の前に仁王立ちでSEKKYOUする俺。

どう考えても無理があった。

 

「やっぱ無理」

「そうだろうな……」

 

そうだ、クラリッサへのSEKKYOUで完全に流れていたがもう一つ気になることがあった。

 

「おい、俺をにぃにって呼んだ奴出てこい」

「あっ、はい。私です……」

 

俺をにぃにと呼んだ妹が出てくる、クラリッサへのSEKKYOUが効いたのか彼女も怯えている。

 

「にぃには禁止だ。他の名前を考えて来い」

「えっ、何でですか?」

 

にぃにはアカン……そんな呼ばれ方をされたらだいじっこランドが開園してしまう。それだけは避けたいところだ。

 

「理由をお前に言う必要はない、とにかく禁止だ」

「酷いよにぃに! 私だって一生懸命考えたんだよ!?」

「もっと他にもあるだろうが!」

「他の呼び方は全部使われてるんだ」

「お前の兄の呼び方のバリエーションはたった12しかないのか?」

「いや……私達の基地に残ってる仲間が大勢居るから……」

「えっ? 黒ウサギ隊って12人じゃないの?」

「もっと居るよ」

 

俺の妹は12人じゃなかったらしい、家族が増えるよ! やったねノリちゃん! ってこれは駄目だ。

 

「仕方ない、お前がそこまで頑なならばお前のことを今日から新井と呼ぶことにする」

「えっ、新井?」

「お前がにぃにと俺のことを呼ぶのならば俺もお前のことを新井と呼ぶって言ってんだ。文句あっか?」

 

だいじっこランド開園はもう避けられない、ならば俺も新井のためににぃにを演じるしかなさそうだ。

 

「いや、僕にはアリー「黙れ新井! お前の本名など聞きたくもないわ!」ひぇぇ……」

「とうわけでお前は今日から新井貴浩だ。いや女だから貴子にしておこうか」

「よかったな新井、私だって兄にあだ名をつけてもらったことがないのに……軽く嫉妬してしまうぞ」

「隊長~代わって下さい~」

「だが断る」

「ううっ……」

 

そんな感じで俺の黒ウサギ隊へのSEKKYOUは終わった。

 

その後、黒ウサギ隊の面々が食事を用意してくれているということなのでご相伴に預かる。しかも俺が来ることの歓迎の印として和食を用意してくれているとのことだ。

妹達の俺に対する想いが身に染みる、外国人が作ったということでちょっと変なものが出てくるかもしれないと予想するがここまで頑張ってくれるのだ。多少の違いは笑って許そうと思う。

 

「はいにぃに! 残さず食べてね!」

「…………」

 

とりあえず一口食べてみる、多少どころの違いじゃなかった、まず米が赤い。そして、おかずかまんが肉だ。そして出汁のない味噌汁……

 

「おい、これは何だ?」

「これ? 赤い米だよ。日本ではお祝い事がある時は赤い米を炊くんでしょ?」

「ああ……間違ってはいないのだが……。まぁいい、次だ。この肉は?」

「これは黒ウサギ隊の定番の晩御飯のおかずのマンガ肉だよ。豪快にかぶりついてね!」

「そうかそうか、じゃ最後にこの味噌汁だ。出汁が入ってないように思えるんだが……」

「だし? なにそれおいしいの?」

 

俺の中から沸々と怒りが湧き上がる、ここに来てからこんなんばっかりだ。

 

「おい、これは誰が作ったんだ?」

「ええと、副隊長が……」

「クラリッサか……呼んで来い」

「アッハイ」

 

新井がクラリッサを呼んでくる間、俺は赤い米でボール状のおにぎりを作る。俺の怒りのオーラに気付いているのか妹達は誰一人として喋らない。

おにぎりが出来上がった直後、クラリッサが食堂にやってきた。

 

「兄上! お呼びですか」

「このアホンダラァ!!」

 

俺は赤いおにぎりをクラリッサの顔面に全力投球し、再度SEKKYOUを始めることにした。

 

そんなこんなでドイツでの最初の夜が過ぎていった。


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