インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~ 作:たかしくん
ホモは嘘つき。
ホモは嘘つき。
カズトさんは俺にチートは無いって言っていた。しかし、この状況はチートで無いと説明できない。
俺は渾身の力を込めてボールを投げる。その球は激しい音を立ててキャッチャーのミットに吸い込まれる。
「ストラーイク!!ヒズアウト!!」
この瞬間、全国中学校軟式野球大会決勝戦が終了した。キャッチャーの田口太郎をはじめ、選手全員がマウンドに駆け寄る。我々、織朱大学付属中学校軟式野球部はついに日本一の中学軟式野球チームになったのだ。
表彰式も終わり、学校のバスで球場から帰る。その中で監督に話しかけられた。
「お疲れ!よくがんばったな!」
「はい!監督もお疲れ様でした!」
「かみやん!俺達ついに優勝したんだな!!」
「そうだな太郎!今までの努力が報われて嬉しいよ。」
「そうそう、最後の球145キロ出てたらしいぜ!」
「マジかよ…かなり手応えはあったけどそんなに出てたとは。」
太郎が声を掛けてきてそんなことを言う。中学生が軟球で145キロ。改めて己がチートを持っていることを実感する。改めて言おう。ホモは嘘つき。
ついでに、かみやんとは俺のあだ名だ。名前に少しも掠ってはいないが、このことはいずれ語ろう。
「よし!今日は私の奢りで焼肉だ!!」
「「「「「「イヤッッホォォォオオォオウ!」」」」」」
部員全員が喜びの声を上げる。
今日は焼肉だ!そしてこの大会を機に俺達三年生は引退する。もう練習もないから今日は腹いっぱい食おう!
事の起こりは小学四年生の春、俺は体を鍛える場所を探していた。将来のことを考え剣道や空手などの武道がやりたかったが、近所にそれらしき道場は見つからなかった。南斗聖拳の道場も無かった。
どうしようかと考えてる時、小学校のグラウンドで野球をする少年達を見つけた。
野球。前世では野球観戦はゲームと並ぶ俺の趣味だった。
興味を引かれグラウンドまで行き、練習風景を見学する。すると、野球のユニフォームを着たおじさんに声を掛けられる。
「野球に興味があるのかい?」
「はい、少し。」
「じゃあ、少しやってみないかい?」
「いいんですか?」
「体験入団ということでね。」
「じゃあ、お願いします。」
おじさんは、野球をやっている少年達に向かって大声で言う。
「おーい!この子に打席を代わってやってくれないか?」
ヘルメットと軍手とバットを借り、打席を代わって貰いバッターボックスに立つ。
マウンドに立つピッチャーは俺を馬鹿にしたような顔を向ける。俺の闘志に火が付く。
(絶対に打ってやる!)
ピッチャーが第一球を投げる。俺はバットをフルスイングする。
バットは空しく空を切り、フルスイングした俺は勢い余って一回転しバッターボックスに尻餅をつく。
周りからは失笑が起き、ピッチャーも馬鹿笑いしている。
(次こそは絶対に打つ!)
恥ずかしいスイングをしてしまったが次は大丈夫なはずだ。
奴のボールはさっきので見切った。
ピッチャーが第二球を投げる。俺はボールをよく見て、自分が最高だと思うタイミングでフルスイングする。
甲高い音と共に手に衝撃を感じる。それに構わず俺はバットを振りぬいた。
「走れ!」
誰かがそう叫び、打球の行方を確認することも出来ないまま俺は走り出す。そのまま一塁、二塁を蹴り三塁を目指す。
三塁コーチャーが腕を振り回す。これはホームベースに到達してもいいと確信し、そのまま三塁を蹴りホームベースを目指す。
せっかくなのでホームベースに豪快なスライディングで突入してみる。周りから歓声が上がる。
俺はピッチャーに向かって勝ち誇った笑みを浮かべる。ピッチャーは地団駄を踏んで悔しそうにしている。
「さっ、さっきのは本気じゃねーし!もう一回やったら打たれねーし!」
いかにも小学生な言い訳をしてくる。だから俺はこう返す。
「まだやるかい。」
「いいぜ!やってやる!!」
その後、俺は五回ホームランを放ちピッチャーは泣きながらどこかへ行ってしまった。
「太郎君!!」
おじさんは先ほどのピッチャーを追いかけようとするが、ユニフォームを着た大人の人がそれを止める。
「追いかけないでやってください監督。あいつには挫折が必要だ。」
「次郎君…」
大人同士でのやり取りがされた後。次郎君と呼ばれた大人の人が俺に話しかける。
「すまないが、次は俺と勝負してもらっていいかな?」
「いや、流石に大人の人はちょっと…」
「残念だが俺は大人じゃない。小学六年生だ。」
「はぁ?」
嘘だ。ざっと見た限りでは175センチはある。自分の教え子がやられて悔しいのは解るが、見え透いた嘘をつかないでほしいものだ。
「ちょっと、幾らなんでもそれは無いんじゃないですか?嘘を吐くにしてももうちょっとマシな嘘を吐いてくださいよ。」
「いや、次郎君は歴とした小学六年生だよ。」
「えええええ。」
なんだ、このおじさん人の良さそうな顔をしてるくせに小学生の俺を騙そうってか。そっちがそう来るのなら仕方ない。この汚い大人たちに吠え面をかかせてやる。
「…わかりました。やりましょう。」
さっきホームランを打ちまくったお陰で妙な自信がついている。今ならやれる気がした。
次郎君…一応次郎さんにしておこう。彼がマウンドに登る。
「田口次郎だ。ついでに言うとさっき君が打ち崩したのが、弟の太郎だ。あんなのでもかわいい弟なんでね。敵はとらせてもらうぞ。」
兄が次郎で、弟が太郎とはこれいかに。
「よろしく、お願いします。」
次郎さんの体から出る威圧感が凄い。やっぱり小学六年生なんて嘘だ。
次郎さんが全身のバネを使って第一球を繰り出す。
バチイィィィィン!
「何これ?」
キャッチャーミットから以前とは全然違う音がする。それに彼のボールが俺の横をすり抜ける瞬間確かに風を感じた。おしっこが少し出た。
青ざめる俺をよそに、次郎さんが話しかける。
「どうした、振らなきゃ当たらないぞ。」
次郎さんが言う。その通りだ。弱気じゃこの人に勝てない。強気に振っていこう。
二球目が投げられる。
俺はそれにフルスイングする。
やられた。明らかなボール球だ。しかもスピードも遅い。
追い込まれた。そして完全に手玉に取られている。
更に第三球が投げられる。俺は当てることのみを考えバットを振る。
ボールにバットが微かに当たる。ボールは後ろに大きく逸れグラウンドを囲むネットに当たる。
「次郎君の球に当てるとは!?」
おじさんが驚く。次郎さんも意外だったのか表情を少し変える。
「驚いたよ。俺の球を当てることが出来る奴がいるなんて。」
当てるだけで驚かれるとは、この人どれだけ凄いんだ?
しかし、正直さっきのはまぐれ当たりだ。一球目ほどではないが球は見える。でもまだ捉えることは出来そうに無い。
四球目、五球目はなんとかファールを打つことができた。少しずつ捉えることが出来てきたようだ。しかしここに来て俺の精神的疲労がヤバイ。まだ五球なのになんでこんなに疲れるんだろう。いや、理由は解る。次郎さんから発せられる謎の威圧感だ。
次郎さんは正直生まれる世界を間違えていると思う。インフィニット・ストラトスが縦横無尽に飛び回る世界よりもっと似合いの世界があるはずだ。もし転生することが出来たのなら、分身魔球とかそんな奴が飛び交う世界に行ってもらいたいものだ。
とにかく、次の球だ。それで勝負が決まる。
次郎さんは一球目と同じようなフォームで六球目を投げた。
俺は全神経を集中させバットを振る。その瞬間世界から色が消え、向かってくるボールが遅く見える。
俺のバットのスイングスピードも遅く見える。これはいわゆるゾーンという奴か。いける!
俺は全ての雑念を打ち払い、バットを振る。ボールがバットに当たる。その打球は空しくもセカンドの目の前に落ちようとしている。セカンドゴロか。ボールを見送る次郎さんも心なしか笑っているように見える。
無駄な抵抗かも知れないが俺は一塁に走る。そしてボールが地面に落ちた瞬間、ボールがセカンドの頭上を超え跳ね上がった。
「イレギュラーバウンドだと!?」
次郎さんが声を上げる。俺はその隙に一塁にヘッドスライディングをする。この勝負勝った!
俺はヘルメットと軍手を一塁手に渡し、逃げるようにその場を立ち去った。
「さよーならー。」
「あっ、待ってくれ!!」
おじさんが声を上げるが無視してその場から立ち去る。汚い大人たちを余所目に俺は我が家まで全力疾走で駆け抜けた。その後、ヘッドスライディングのせいでボロボロになった服を着て家に帰った俺は母さんに怒られた。
数日後、登校中に田口兄弟に出会う。次郎さんはランドセルを背負っていた。
「これで解ってもらえたか。」
「すいませんでした。」
その後、俺は母さんと共におじさんの下へ行き織朱野球スポーツ少年団に入団することとなった。ポジションはピッチャーだ。
田口兄弟の弟、太郎は自分の能力の限界を感じキャッチャーに転向した。
その後俺達は栄光の少年野球道を邁進していった。勝った。勝った。勝ちまくった。そのほとんどが次郎さんお陰だ。入団初年には高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会 マクドナルド・トーナメントに出場し、当然のように優勝した。もちろん次郎さんのお陰だ。
次郎さんの卒業後には、俺と太郎がチームを盛り立てた。最初の出会いはあまりよろしいものではなかったが、俺達はすっかり親友と呼べる間柄になったと思う。次郎さんの去ったチームはかなり弱体化したが、それでも俺達だけで二度全国大会に出場することが出来た。
中学校に進んだ俺達を次郎さんは待っていた。やはり次郎さんは凄かった。次郎さんは中学生の二年間、当然のように全国優勝を果たしていた。そして俺達が中学校に入ったその年も全国優勝し、高校へ去っていった。次の年は全国に行くことすら出来ず悔しい思いをしたのだが、今年ついに俺達は次郎さん無しで全国優勝することができた。
「あれからもうすぐ五ヶ月か…」
「あれ、かみやん。なにたそがれてんのよ。」
「いや、優勝した時のことを思い出してた。」
「まだそんなこと思い出してたの?そんなことしてる暇があったら受験勉強でもしてなさいよ。」
「受験勉強が必要なのはお前だろ…」
隣の席の花沢さんに言う。
本来、俺達織朱大学付属中学校三年生に受験勉強は必要ない。エスカレーターに乗って高校に行けるからだ。よほど馬鹿だったり生活態度に問題がなければ俺達は高校生になれる。
俺に関しては問題ない。持ち前のオリ主知識と、三歳の頃からがんばった復習のお陰で成績は常にトップをキープしてきた。生活態度にいささかの問題があったが、野球で帳消しになっているはずだ。
花沢さんはこの中学校で唯一受験勉強をしている。彼女には行きたい学校があるのだ。
「絶対合格して見せるわ、IS学園。」
「無理だろ、お前あそこの倍率知ってんのか?」
「うっ…」
IS学園…その倍率は100倍を超える。
「でも受かる可能性はゼロじゃないし!」
「でも1パーセント以下だ。」
「ううっ…」
多分こいつは受からない。なぜなら…
「そもそも、お前今何してんだ?」
「えっ、モン○ンだけど…」
「勉強しろ!」
1月8日始業式後の教室、彼女は狩りに勤しんでいた。
そんな時、教室奥側のドアが開け放たれる。ちなみに俺の席は最後尾の廊下側なので真横のドアが開けられることになる。太郎が入ってきた。こいつとの出会いは最悪だったが今では一番の親友といえる間柄だ。
「かみやん!大変だ!」
「どうした太郎、そんなに慌てて。」
「転校生だよ!転校生!」
「転校生?三年か?」
「どうやらそうみたい。そしてめっちゃ可愛かった!」
「可愛かったって事は女の子か!?」
「その通り!」
「やったぜ」
しかし、三年の三学期に転校か。受験直前の今に転校するなんて相当なワケありなんだろう。変な奴じゃないといいけど…
そんな時、教室教卓側のドアが開けられ担任が入ってくる。
「お~し、席に着け~。」
我らが担任、山下秀典は怒ると非常に怖い。その声に教室の中の生徒達はそそくさと席に戻る。
「お~し、今日はお前らに転校生を紹介する~。」
山下先生の野太く間延びした声が教室に響く。俺と太郎、花沢さん以外は少しざわつく。
「お~い、入ってこ~い。」
転校生が教室に入ってきた。長い黒髪のポニーテールに黄緑色のリボンが印象的な子だった。あとおっぱいがデカイ。
「
そう言って彼女は頭を下げた。
かみやんこと転生オリ主藤木紀春15歳の冬はまだ過ぎていかなかった。
東雲さん。もちろん間違えてないよ。