インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~ 作:たかしくん
「束さん、どうして……?」
「どうして? そんな事決まってるじゃないか、あのクソガキが邪魔だったからこうしただけだよ」
「邪魔? 邪魔ってどういう事だよ!?」
「うーん、どう説明したものかね? まぁ、大人の事情ってやつかな? ――うわっ!?」
束さんが考え込む仕草をしていると、束さんが立っている巨大ニンジンが大きく揺れる。
巨大ニンジンは徐々に浮き上がり、その下の地面から銀色の腕が巨大ニンジンを支えるように生えてきた。
「グオォォォォォォォォォォ……」
銀色の腕の正体は紀春の打鉄・改だった、言葉になら無い声を上げながら地面からせり上がってくる。
そして顔がいつになく怖い、ラウラと試合中に喧嘩した時より怖い顔をしていた。
「ちっ! やっぱり生きてたか!」
巨大ニンジンの上で束さんが焦ったような顔をする、束さんは何故ここまで紀春に殺意を持っているのだろうか?
「死に晒せコラァ!」
その掛け声と共に後春は巨大ニンジンを空へ向かって放り投げる。
流石は天才野球選手、こんな時でも投げるフォームは綺麗だった。
「コイツでトドメじゃあ!」
紀春はその声と共にバズーカを展開、巨大ニンジンに向かって砲弾を撃ち込んだ。
大空で爆炎が上がり、それと共に轟音が周りを揺らす。
これでは巨大ニンジンに乗っていた束さんはひとたまりもないだろう、しかし何故か無事な気がする。何でだろう?
「おい! 何があった!?」
しばらく何も出来ないでいると千冬姉が俺達の下へ血相を変えて駆け寄ってきた。
初めてだった、人に殺されそうになるのは。
篠ノ之束は俺のことをムカつくクソガキと評した、そして奴にとって俺は邪魔な存在であるらしい。
俺が目指すものは一夏から主役の座を奪い取るということ、褒められたことじゃないのは承知しているがそれはあくまでメタ的な視点での話だ。
奴がどんなに強大な力を持っていようともこの神にも等しい視点を持っている人物はこの世界で俺しか居ない、いや、ラウラも居るか……
つまり、何故俺が篠ノ之束に邪魔者扱いされているのかが解らない、原作を知っていれば解ることでもあるのだろうか? しかし無いものねだりは出来ない、ここは思い切ってラウラに相談するべきなのだろうか?
ラウラとはこれまで転生の話などは一切してこなかった、こういう話を振るのは踏み台の役目だと思っているので切り出すのを待っているのだが、ラウラはそんな素振りを一切見せてこなかった。
もしかしてラウラは踏み台転生者じゃない? いや、それはありえない。ラウラがニコポの使い手であることが何よりの証明だ。
相談するべきか、しないべきか、それが問題だ。
「おい! 藤木! 聞いているのか!?」
「ふぇ?」
気がつくと織斑先生がすごい剣幕で俺を怒鳴りつけていた。
「……その様子だと聞いていないようだな」
「えっと……多分そうです」
「織斑達にも聞いたが一応お前にも聞くぞ、何があった?」
一夏に言われて上を見上げるとそこにはオレンジ色の物体が迫っていた、正直それ以後のことは無我夢中で何も覚えては居ない。
気がつくと俺は打鉄・改を装着してぼーっとしているだけだった。そんな感じの事を俺は織斑先生に話した。
「あの馬鹿が……今度は何をやろうというのだ?」
「俺、何で篠ノ之束にあんな目に遭わされなければならないんでしょうか……」
「私にも解らん。ところでお前はこれからどうする? 一応自由時間だが」
「もう泳ぐ気にもなりませんよ、部屋で寝ています」
そう言い、俺は部屋に戻ろうとする。
「紀春……」
「あ、一夏。写真撮影頼むな、俺寝てるから」
そう言い、一夏にカメラを放り投げ、俺は今度こそ部屋に戻って行った。
「紀春、起きてる?」
「寝てるよ」
「なんだ、起きてるじゃん」
そんなやり取りをしながらシャルロットが部屋に入ってきた。
シャルロットは旅館の浴衣を着ている。俺アレ好きじゃないんだよね、着たまま寝て朝起きると思いっきりはだけて結局パンツ一丁になってるし。
「もう夕食の時間だよ、いつまで不貞腐れてるの?」
「お前なぁ! 俺は殺されかけたんだぞ!?」
「ゴメンゴメン、でも何も食べないままでいいの? 朝から何も食べてないでしょ」
そんな事を言われ、急に腹の虫が鳴り出す。
こんな時でも腹が減るのは変わらないらしい、俺にシリアスは許されないのか。
シリアス……尻ass。
いかん、こんな考えをしていたらシリアスが訪れないのも当然だ。
「でも、飯食うところ食堂だろ? 今あまり会いたくない人とか居るんだが、主に篠ノ之さんとか……」
彼女は篠ノ之束の妹だ、今その人にどういう顔をして会っていいか解らない。
「紀春って普段は豪快な感じなのに、そういう所はヘタレだよね」
「完全に貶されてる……欝だ死のう」
「わーっ、謝るから」
「絶対に許さない」
「もう、そんなにわがまま言ってるとご飯あげないよ? せっかく持ってきたのに」
「飯、あるのか?」
「うん、紀春の性格的に食堂行きたがらないと思って」
そう言いながらシャルロットは部屋から出て、様々な料理が載ったお膳を運んできた。
しかし、用意がいいな。俺ってそんなに読まれやすい性格してるのか?
「あれ? 何で二つもあるんだ? 食おうと思えば食えるけど」
「もう一つのは僕のだよ、僕もここで食べようと思って」
「何で?」
「紀春、ぼっちは寂しいよ?」
ぼっち、その言葉で篠ノ之さんのことを思い出す。
うん、ぼっちは寂しいな。シャルロットの言うとおりだ、そしてそこまで俺のことを配慮してくれるシャルロットに感謝だ。
「シャルロットさん……アンタ天使や……」
「ふふっ、もっと褒めてくれてもいいんだよ?」
俺の天使シャルロットが微笑む。
天使……一般には神の使いである羽の生えた人。
あっ、そういえば神ってカズトさんの事じゃん。っていうかホモじゃん。
急にシャルロットが汚らわしいものに見えてきた。
「やっぱり天使はナシで」
「何でさ!?」
「いただきます」
「無視しないでよ!」
俺は元天使を無視し箸を進める、うまい。海が近いせいだろうか、刺身も新鮮だ。
刺身といえば冷蔵庫のCMを思い出す、あのCMで食った刺身はあんまり旨くなかったな。
「いやー、うまいねこれ。ホント感謝してるよ」
「そう? そう思ってくれるんなら僕もここまで運んできた甲斐があったよ」
「しっかし、お前箸の使い方ヘタクソだなー」
「仕方ないでしょ、まだ練習してる途中なんだから」
シャルロットは小鉢に入った豆に悪戦苦闘している、箸で掴むたび豆が滑っていく。
「あー、もう限界!」
そう言い、シャルロットは豆の入った小鉢を俺のお膳に置いた。
「なんだよ? 俺が食べればいいのか?」
「ううん」
「だったら何だよ?」
「あーん」
シャルロットが口を広げる。
正直、見ていて馬鹿っぽく感じる。
「アホか、自分で食え」
俺は豆の入った小鉢をシャルロットのお膳に戻す。
「えー、天使に対して優しくないなぁ」
シャルロットが豆の入った小鉢を俺のお膳に戻す。
「誰が天使だ」
俺は豆の入った小鉢をシャルロットのお膳に戻す。
「僕がだよ」
シャルロットが豆の入った小鉢を俺のお膳に戻す。
「自分で言ってて恥ずかしくないのか?」
俺は豆の入った小鉢をシャルロットのお膳に戻す。
「恥ずかしくないね!」
シャルロットが豆の入った小鉢を俺のお膳に戻す。
そんな言い合いをしながら小鉢が行ったり戻ったりする、とうとう何も話すことがなくなり無言の部屋で小鉢だけが移動する。
「がーっ! 解ったよ! 食わせばいいんだろ食わせば!」
「最初から素直に食べさせてくれればいいのに」
「うるせえ、一々文句言うな。ほら、口開けろよ」
俺がそう言うとシャルロットが口を開ける、その顔を見る俺にちょっとした悪戯心が湧き出した。
「あーん……ちょ……まっ……」
シャルロットの口に矢継ぎ早に豆を放り込む、シャルロットが戸惑い口を閉じようとするが俺の高速の箸捌きがそれを許さない。
「食ってる途中に喋るなよ、行儀が悪いぞ」
そう言う間も俺の箸は止まらない、俺はとうとう小鉢に入っていた全ての豆をシャルロットの口の中に捻じ込んだ。
「……モゴ…………」
シャルロットは両頬を膨らませて豆を咀嚼している、少しずつ頬の膨らみは減っていき、湯飲みに入っていたお茶を一気飲みした後怒ったような表情をする。
「優しくない!」
「お前の言うとおりにやったつもりなのに、気に入らないと申すか。なんと我侭な」
そんな会話を続けながら俺も豆を食う、これも中々うまいな。
そんな俺を見つめるシャルロットは、考えるような仕草をした後何故か頬を染める。
「あっ……」
「何だ?」
「そう言えば、間接キスだなーって……」
「そんなモンで照れるのは小学生までだ」
そう言いながら刺身を食う。あんなことを言ってみたが、実際に言われるとちょっと意識してしまう。
「……」
「……」
また無言、飯を食ってるので口数が少なくなるのは解るのだがこの無言空間のせいでさらに意識してしまう。誰か助けて欲しい。
結局俺達は飯を食い終わるまで無言のままだった。
「ふぅ、食った食った。ごちそうさん」
「あっ、そうだ。一夏からカメラ預かってきたよ」
「おっ、そうだった。すっかり忘れてたよ」
シャルロットが俺にカメラを手渡す、こちとらこれが楽しみで臨海学校まで来たんだ。
あの無職兎のせいで台無しにされたが、せめてこの思い出だけでも堪能せねばなるまい。
俺はカメラを操作し、画像を見る。
「えーと、シャルロットに、シャルロット……うわぁ、シャルロットまで居るよ! ってこれ全部お前の画像じゃねーか!」
「あれ? ラウラも居るでしょ?」
「何処にだよ……ん? この銀髪は……」
「それがラウラ」
「何だ? この全身バスタオルの変態は……」
我が愛しの妹ラウラが、全身にバスタオルを巻きつけている画像が表示される。
バスタオルの隙間から飛び出した銀髪と眼帯以外にラウラ要素は一切なくいきなりこれを見せられてもラウラと解る人はほとんど居ないだろう。
「しっかし、他の奴も撮れよ……」
「誰を?」
「篠ノ之さんとか布仏さんとか山田先生とか!」
「紀春……チョイスがあからさまだね。やっぱり大きいほうがいいのかな?」
「でかけりゃいいってもんじゃないが、ないよりあったほうがいいだろ」
カメラを置き、寝転がる。
俺の臨海学校はあの無職兎のお陰で滅茶苦茶だ、それを思い出すだけで憂鬱になる。
「そう言えばさ、俺が殺されかけた話ってどこまで広まってんだ?」
「当事者の一夏とセシリア以外は僕と先生達だけだよ。余計な混乱は招きたくないって」
「……まぁ、あまり広められてはないと思ってたよ。少なくともラウラがこの話を知ってたら飛んで来そうだしな。お前は何で知ってんだ?」
「紀春と同じ三津村ってことで教えてもらったよ、篠ノ之博士が何で紀春を狙ってるのかは解らないけどこの話を三津村に通しておかないってのはマズイからね」
「俺の保護者だからな、それも当然か。三津村からは何か指示があったか?」
「とりあえずはここに居ろって、ここには織斑先生も居るからね。篠ノ之博士に対抗できるのは織斑先生しか居ないからここが一番安全だって言ってたよ」
俺の命をを狙っているのは神出鬼没の無職兎こと篠ノ之束。確かに世界最強の称号を持つ織斑先生位じゃないと対抗できる人物は居ないだろう。
三津村最強は田舎ヤンキーの称号を持つ有希子さんだしね……正直言って格が違いすぎる。
「そうか……あっ、食器をかたづけないとな」
「そうだね、食器は廊下のワゴンに置いておいてくれたら持っていくって仲居さんが言ってたから――う゛っ!?」
シャルロットがテーブルに手をつけて立ち上がろうとするところで、凍りついたように動かなくなる。
「……痺れたのか」
「……うん」
シャルロットが動かないので仕方なく俺一人で食器を片付ける、結局俺が最後の食器を片付けるまでシャルロットはずっと同じ体勢のまま固まっていた。
「大丈夫か?」
「だっ、大丈夫……っ」
そう言いながらシャルロットは立ち上がる、表情を見る限りまだ痺れは取れていないようだ。
痺れる足に顔を顰めながらシャルロットが歩く、そんな時またしても災難が降りかかった。
「い゛っ!? うわっ!?」
「うおっ!?」
シャルロットがテーブルの足に小指をぶつけた。痺れと痛みにシャルロットは悶絶し、俺を巻き込んで倒れた。
「あっ…………」
気がつくと俺はシャルロットに押し倒されたような感じで寝転がっていた、シャルロットの顔はもう真っ赤っ赤で今にも蒸気が噴出しそうだ。
対する俺の心臓もすんごい音を立てて鳴り続ける、女の子に押し倒されるのは現世では初めてのことだ。前世では結構あったけどね、お店とかで……
しかしそれだけじゃない、一番俺をドキドキさせているのは今のシャルロットの姿だ。
倒れたシャルロットの着ている浴衣がいい感じにはだけており、今にもさくらんぼが見えそうなのである。
IS学園はほぼ女子高ということもあり、パンチラ程度なら日常茶飯事のように拝んできたがナマチチは今までで一回も拝んだことはなかった。俺は現世で女性のナマチチを拝んだことなど一度も無いのだ。前世では結構あったけどね、お店とかで……
あと、母さんはノーカンね。
「えーと、大丈夫か?」
「足が痺れてうまく動けない……」
どうやらこの状況はしばらく続くらしい。ありがとうございます、マイエンジェル!
しかし、俺のラッキースケベ力も相当なものだな。いまなら一夏にも互角に戦えるかもしれない。
だが、俺の幸せも長くは続かなかった。
旅館に到着してから私はすぐにシャルロットに連れられ海に出た、嫁のために用意した水着であるがいざ嫁に披露するとなると些か恥ずかしいものがある。
無駄な抵抗だと知ってはいるがバスタオルを全身に巻いてみたのだが、シャルロットには不評なようだ。
しかし、恥ずかしいものは仕方が無いじゃないか。
ここは一度兄に見せておかしなところがないか意見を聞いておこう、そうすれば嫁に披露する自信もつくというものだ。
しかし、待てど暮らせど兄が来ない。
昨日クラスメイトの水着姿を撮影するためにわざわざ新しいカメラを購入したと聞いていたので、兄は息巻いて海岸にやってくると思っていたのだが私の見当違いだったとでもいうのだろうか?
もしかして先ほどの爆発音に関係して兄が危ない目に遭っているのかもしれない、これは緊急事態だ。
私は判断の甘さを悔やんだ、IS学園で爆発など日常茶飯事であるため軽く考えていたのだ。
私が旅館に戻ろうとするその時、旅館から嫁とセシリアがやってきた。
二人の表情が冴えない、もしかして本当に兄になにかあったのだろうか?
「あれ? 紀春は? 真っ先に来てそうだと思ったのに」
一緒に居た鈴が口を開く。
「ああ、紀春は旅館に着いてから体調を崩したらしくて今は部屋で寝てるよ、本当に気分が悪いから誰も来ないでくれってさ」
嫁がそう返す。その歯切れが悪い様子に少し不信感を感じるが私が嫁を信じなくて誰が嫁のことを信じるというのだ、とりあえずその言葉を信じることにした。
しかし旅館に到着した途端に体調不良か、兄もつくづく運が無いな。
「そんなわけで紀春からカメラ渡されたんだけど……」
そう言いながら嫁が私を見る、早速嫁の視線を釘付けに出来たようで私としても満足だ。
「何コレ?」
コレ扱いされてしまった……私の何がいけなかったというのか。あっ、バスタオル巻いたままだった。
「コレはラウラだよ」
シャルロットも私の事をコレ扱いする、もうどうでも良くなってきた。
そんな私に向かって嫁はカメラを向ける。
「なにをするつもりだ、嫁よ」
「ラウラだったら紀春も喜ぶかなって思ってさ」
そう言い嫁がシャッターを切る、兄の水着コレクション一枚目は私になるらしい。水着なんて微塵も見えてはいないが。
その後、シャルロットにバスタオルを剥ぎ取られ私達は海を楽しんだ。
兄のことが気にならないかと言えば嘘になるが、ここは嫁の言葉を信じて兄のことはそっとしておくことにした。
海にいる間シャルロットが嫁にやたら自分の写真ばかりを撮らせていた。どういうことだろう?
時間は流れ、夕食の時間になる。
嫁と共に食事を摂ろうと思っていたが、嫁の隣の席を手に入れるのに熾烈な争奪戦が繰り広げられていた。
いつもなら兄が大体隣に座ることになり丸く収まる場合が多いのだが、今兄はいない。体調不良がよほど深刻なのだろうか、一度様子を見に行った方がいいのかもしれない。
ふと目をやるとシャルロットと山田先生がなにやら深刻な様子で話をしているのが見える。
シャルロットは兄と同じ三津村に所属している、もしかしたら私達の知らない兄の事情を知っているのかもしれない。
私はシャルロットに話を聞こうとした。
「おい、シャルロット。さっきのは兄の話か?」
「あっ、ええと……」
シャルロットも歯切れが悪い、明らかに何かを隠している。
嫁もシャルロットも一体兄の何を隠しているというのだろうか? 私の心配は尽きることは無い。
「ゴメン、言えないんだ」
「しかし、私は兄の妹だ。私にだって知る権利はあるだろう」
「ゴメン、それでも言えない。じゃ、僕は紀春にご飯もって行ってあげないといけないから……」
そうシャルロットが言い、お膳の載ったワゴンを押して廊下を歩く。
「待ってくれ、私も行く」
「社外秘のことを話さないといけないからちょっと遠慮してもらえないかな?」
社外秘、三津村の機密に関する話でもするのだろうか。
そう言われると流石に私の立場も弱くなる。私にだって嫁や兄には話せない機密が山ほどあるし、それは程度の差があるとはいえ誰にだってあることだろう。
「そうか……それなら仕方ないな……」
私は兄に会うのを諦めるしかなかった。
しかし神は私を見放してはいなかったようだ、兄に会いたい私にチャンスが巡ってきた。
嫁が兄を誘って一緒に遊ぼうと言ってきたのだ。
嫁の部屋は兄の部屋でもある、その嫁について行けば私も兄の部屋にいく大義名分が出来る。
嫁に惚れた女達も一緒だが、現在の私の優先順位は嫁より兄の方が上だ。大した問題ではない。
私達は嫁に連れられてぞろそろと廊下を歩き、嫁と兄の部屋に到着した。
「おーい、紀春。セッションやろうぜ……!?」
嫁はノックもすることなく扉を開いた、機密の話をしているかもしれないと思ったがそれは嫁には関係のない事だ。
扉を開いた嫁の顔が驚愕に染まる、私も気になり嫁の背中から顔を出し部屋を窺った。
「…………」
「…………」
部屋の中では、兄がシャルロットに押し倒されていた。
たしかにこれは機密事項だ、しかしこのような行為に及ぶのであれば部屋の鍵くらい閉めておけばよかったものを……
「兄……そういうことか。これはシャルロットを義姉と呼ぶ日も近いのかもしれんな」
「いや、ラウラ! これは事故で……」
シャルロットが反論する、いまから行為に及ぼうとするところを目撃されたのだから恥ずかしいのだろう。
「いや、気にするな。嫁は私の部屋で寝てもらうからお前は朝まで帰ってこなくていいぞ」
ちなみに私の部屋はシャルロットとの二人部屋だ。
しかしこうなると私も嫁と朝まで二人きりか……
うん、すごくいい。シャルロットに感謝だ。
私はシャルロットがまた何か言う前に部屋のドアを閉めた。
今夜は赤い米を炊かなくてはな、以前クラリッサがそう言っていた。日本では何か祝い事があると赤い米を炊くらしいと。
しかし、赤い米……何処で売ってるのだろうか? いや赤い米を炊いていたら嫁と二人きりの時間がなくなってしまう、非常に悩ましい問題だ。