インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~ 作:たかしくん
暗い部屋にはモニターから発せられる明かりしかなく、そのモニターに前に座っている人物はせわしなくキーボードを打ち続けている。
モニターの前に座っている人物は女だ。その女の頭からはウサギの耳が生えていた。
「♪♪♪~~~~♪♪♪~~~~♪~~~~~♪~~~~~」
彼女は鼻歌を歌いながらキーボードを叩く。そのメロディーは某ヤクザ映画のメインテーマだった。
「いや~、さすがいっくん。仕上がってきてるね~束さんの予想よりも少し早いや」
彼女は笑みを浮かべる。しばらく作業を続けていたが、その顔が一瞬曇った。
「藤木……紀春? 誰だコイツ?」
モニターにはオリ主こと藤木紀春の顔が映る。そのモニターを見る彼女の顔が少しずつ怒りに染まる。
「何だ、何なんだよコイツは。束さんはこんなこと知らないよ、どうしてこんな奴がISを動かしてるんだよ」
その時彼女は決めた。不純物は早めに除外しておかないと後々大変なことになる、自分の計画をこの不純物が台無しにするかもしれない。
彼女は不純物の駆除を決意した。
「ん~、でもどうしようか? 面倒だしいっくんと同じでいいか」
彼女はキーボードをさらに高速に叩く、彼女の顔には少しの笑みがこぼれていた。
「う~~アリーナアリーナ」
今アリーナで行われるクラス対抗戦の観戦に遅刻して全力疾走している僕はIS学園に通うごく一般的な男子生徒
強いて違うところをあげるとすればオリ主であり男なのにISを動かせるっとことかナ――名前は藤木紀春
そんなわけでアリーナまでの道にあるアリーナへ続く道にやってきたのだ
ふと見るとベンチに黒いISが座っていた
ウホッ!いいIS…
そう思っていると突然そのISは僕の見ている目の前で腕からピンクのレーザーを発射してきた、ってヤベェ! 死ぬ!
っていうかピンクのレーザーを撃つ前にISを展開しておいてよかった。あのままだと確実に死んでたよ。
「いきなり攻撃とはいい度胸だな! テメェ何モンだ!?」
「…………」
黒いISは何も答えようとはしない。
「無視って訳ね。正当防衛させてもらうからな」
左手に盾を構え、右手にサタデーナイトスペシャルを展開する。その瞬間黒いISがまたレーザーを放ってきた。
「くそっ、これでも食らえや!」
サタデーナイトスペシャルを連射し、また新しいサタデーナイトスペシャルを展開する。もう一度射撃を試みるがその前に黒いISが俺に近づき、俺をぶん殴った。
俺はそのまま吹っ飛ばされ、建物の壁に背面から激突する。ヤバイ、こいつは強い。
「くっ……俺一人で勝てそうな相手じゃないな……」
空中ドリフトを完成させることが出来ていない今、俺は戦闘に関してあまり自信があるわけではない。
以前一夏に、自分と一夏の実力差は天と地ほどの差があるといったがあれは嘘だ。実際今の俺は一夏にすら勝てることは出来ないだろう。このISを未だまともに動かせることが出来ないのだから。
「とにかく誰かに助けを呼ばないと……織斑先生!聞こえますか!?」
俺は織斑先生に通信を繋げる。すると声が返ってきた。
『何だ藤木、今忙しいんだ。正直お前に構ってる暇が無い』
「そりゃ悪かったですね、でもこっちも緊急事態なんですよ。正体不明のISに襲われてる―ってうわっ!」
俺が話している間も黒いISからの攻撃は続く。俺は何とか盾で凌ぎながら織斑先生と話を続ける。
『何だと!? お前の所にも来ているのか!?』
「お前の所にも……ってことはそっちにも居るんですか?」
『そういうことだ、今学園に増援を要請した。増援が来るまで何とか耐えろ』
「簡単に言ってくれる……あまり長くは持ちませんよ!!」
そう言い通信を切断した、俺は黒いISから放たれるビームを凌ぎ続ける。
牽制に撃っていたサタデーナイトスペシャルはもう十個全てを使い切ってしまった。あの拳銃威力が高いって触れ込みだったけど、あの黒いISにはあまり効果がなかったようだ。そして命中率も悪い、黒いISに当たった弾丸は五、六発といったところだろうか。元々当たりにくい銃な上に、俺の射撃技術が未熟なのと、あの黒いISも弾丸を避けてくる。ってこれは当たり前か。
「ヤバイ、このままじゃ徐々に不利だ」
増援はいつ来るのだろうか、そもそも織斑先生に連絡してからどれくらいっただろうか。緊張と焦りで時間の流れが遅く感じる。
とにかくだ、現状を打開しなければ多分俺の命は無い。あの黒いISだって俺のシールドエネルギーを削りきって、ハイさようならとは行かないだろう。
「一か八かだ! やってやるぜ!」
俺は
俺は突突を展開し、もう一度
守ったら負ける、攻めろ!
そう心の中でつぶやき黒いISに向かって飛んでいった。
「いくぜええええっ!」
しかし現実は非情だった。俺の突撃を黒いISはひらりと回避し、俺はそのまま地面に激突した。
奇跡的に気絶はしていないようだが、状況は相変わらず悪い。
体勢を立て直し振り向くと、黒いISは余裕をみせているのだろうかゆっくり地上に降りてきて着地した。
「余裕綽綽だな、お前」
虚勢を張ってみるが、黒いISに反応は無い。黒いISはゆっくりと両手を掲げ、レーザーを発射する態勢に移る。
今度こそと思い、
「がっ……はっ……」
衝撃が全身を襲う。シールドエネルギーも底をつきそうだ、今度こそ俺は負けてしまうのだろうか。
トドメだと言わんばかりに、黒いISはまた両手を掲げレーザーを発射しようとしている。俺はそれに何もすることが出来なくなってしまった。
ああ、俺のオリ主ロードはここで終了してしまうのだろうか。
そうして黒いISからレーザーが発射される。発射されたレーザーががやけにゆっくりと見える、ここで今更ゾーンかよ。やるならもっと早くしろってんだ、畜生が。
ゆっくりと迫るレーザーを見つめる、俺の心は完全に折れていた。
そんな時だった。
「やっほー、ノリ君。生きてる?」
誰かがレーザーの前に立ちはだかった。
ピンクの光が消えた。そして、俺の前にはISを纏った誰かが立っていた。
「あれ?ノリ君、本当に大丈夫?」
ノリ君?俺をノリ君って呼ぶ人は母さんしかいないぞ?なんだ、母さんはISを使えるのか……って違うだろ、母さんはあんな髪の色をしていない。
「……誰だ?」
「酷いなぁ、もう忘れちゃったの?」
彼女が振り向く、それは以前俺が八つ当たりした相手。たっちゃんだった。
「たっちゃん……」
「ボサっとしない、今は戦闘中よ。立ちなさい」
たっちゃんにそう言われて突突を杖代わりにして立ち上がる、待ち望んでいた増援はたっちゃんだったのだ。
「何でノリ君なんだよ」
「ノリ君が言ったことでしょ、私はそれに従っているだけよ」
いつか俺が言ったような台詞をたっちゃんが返した。
「そうか、それなら仕方ないな。で、あれどうしたらいいと思う?」
俺達の視線の先には黒いISが立っている、黒いISは何もしてこない。
「どうしよっか?」
「頼むよ生徒会長。強いんだろ?」
たっちゃんが笑う。
「そうね、たまには頼れる生徒会長ってのもやらないとみんなが付いて来ないし私が頑張らないとね」
たっちゃんの握る獲物を見る。どうやらたっちゃんもランスを使う人らしい。
「あれ? たっちゃんもランス使うんだ。奇遇だね」
「そうね、ということで今日はキミと私ででダブルランサーね」
たっちゃんがどこかで聞いたような台詞を言う。
「へぇ、つまり普段はランスを使う相方がいるんだ?」
「……居ないけど」
「なんだよ、居ないのかよ。だったら俺はむしろ力の二号ってとこかな?」
今から力と技のV3の登場が待ち望まれるところだ。
「さて、あのISが何故待っていてくれるのは知らないけどそろそろやってしまいましょうか」
黒いISは棒立ちのままだった、いつまでも待たせているのは忍びない。反撃開始の時間だ。
「OK、たっちゃん。期待してるよ」
俺達は同時にランスを構えた。その時、黒いISも動き出す。両手を俺達に向けると、またレーザーを撃ってきた。
俺達はその場から左右に散開し、そのレーザーを避けた。
大きく右に飛び、着地した瞬間俺は左手にヒロイズムを展開し黒いISに対して射撃を行う。
黒いISはそれを受け止め、俺に攻撃しようとするがたっちゃんが後ろから黒いISに蹴りを放ち黒いISは前方に倒れる。
たっちゃんは蹴りの反動を利用し、後方一回転の宙返りを決め着地する。着地した時のポーズがマトリックスに出てくるトリニティみたいでかっこいい。
そんな事を考えながら俺は前方に移動しながらヒロイズムを連射する。たっちゃんが戦闘に参加したお陰で戦いは一気に優勢に傾いた。
俺に攻撃がされようとしている時はたっちゃんが黒いISに攻撃し体勢を崩し攻撃を中断させるし、たっちゃんに攻撃が向かったときは俺が攻撃……するまでもなくたっちゃんが自分で対処した。
たっちゃんが黒いISをランスで殴り、黒いISが膝を折り地面に付ける。たっちゃん、ランスは殴るものじゃないよ。
しかし、これはチャンスだ。たっちゃんは大きく後ろに飛び着地する。
ハイパーセンサー越しに見えたたっちゃんの表情から俺は次にすべき行動を理解する。
俺達に言葉は要らなかった。
俺は
しかし、そこでトラブルが発生した。たっちゃんが俺より早く黒いISにランスを突き刺してしまった。
バランスを崩した黒いISは結果的に俺のランスを避ける。俺はそのまま通り過ぎてしまう。
ハイパーセンサーの視界に今まさに反撃を受けようとしているたっちゃんの姿が見える。
アレをやらなければならない場面が来た。一回も成功させることが出来なかった空中ドリフトを!
俺は失敗するかもしれないという弱気な心を打ち消し、全力で姿勢制御をする。
機体が慣性の力を受け大きくぶれる、それを俺は細心の注意を払い制御した。
これは絶対に成功させなければならない。何故か? なぜなら俺は”男だから”そしてオリ主だからだ!
俺がトドメを刺すことができなくてもきっとたっちゃんがどうにかしてくれるだろう。
しかしそれでいいのか!? 一夏と出会ってから自分がオリ主であることを忘れていないか?
俺は一夏の回りに居る大勢の登場人物の一人であってはいけない。俺はオリ主だ、主役の座を一夏から奪い取れ。それが俺に与えられた役目だ。
男には、そして何より主人公ならばやらなければならない時がある、それはきっと今だ。
俺の気合と欲望に呼応するように打鉄・改が空中を滑りながらカーブを描く。
俺は黒いISの正面まで回りこんだ。俺はついに空中ドリフトに成功したのだ。
そして休む間もなく
「コイツで、終わりだああああああっ!」
俺は以前と同じようにピンクの光に包み込まれる、しかし以前とは違うことがあった。
俺は突突の先端から確かに何かを貫くような感触を感じた。
俺は勝利を確信すると共に意識を失っていった。