Monster Hunter Delusion【更新停止】   作:ヤトラ

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久々の変異種編。妄想が沸いたので新たな要素「2つ名」を用いさせてもらいました。
今回のテーマは「角の形状が変化したディアブロス」です。本来は変異種でした。

1/31:誤字修正。正しい2つ名名は「斧槍角(オノヤリヅノ)」です。


Second Name1「斧槍角―オノヤリヅノ―」

 この生態観測記には、未知の樹海と呼ばれるフィールドで独自の進化を遂げたモンスターを幾つか紹介してきた。

 

 鎧蜘蛛ネルスキュラ。グラビモスの甲殻を纏い、睡眠毒と重い一撃を持つ鋏角種。

 

 弾甲虫アルセルタス。螺旋状の角を持ち、粘着液と火炎液で攻撃する甲虫種。

 

 爆甲虫ゲネル・セルタス。粘着性のある重油で爆破と爆炎を操る型破りな甲虫種。

 

 様々なモンスターが一箇所に集まった事で混沌とした生態系を築き、それに適応した変異種達。

 原種のまま生き延びた者や適応しようとして息絶えた者が大半であり、このように進化するのは極めて稀だ。

 バルバレギルドは発掘武具を目当てに潜るハンターの監視も兼ね、モンスターの生態調査を徹底している。

 

 しかし未知の樹海は広大な迷宮も同然。気球船からの監視という手段があっても鬱蒼とした森がそれを遮る。

 イビルジョーやゴア・マガラという目立つ存在に雲隠れする事も多く、見逃しというものはどうしても出てしまう。

 仮に発見できたとしても気球からの目視であり、ギルドに報告した頃には見えなくなったという事例も多い。

 

 

 故に―――未知の樹海で変異を遂げたモンスターは、新天地で悠々と生きていることだってある。

 

 

 

―新たな名を得て。

 

 

 

―――

 

―ガリョン、ガショ、ガシャンガシャンッ

 

 不協和音が轟く。硬い物にさらに硬い物を擦り付けるような高音だ。

 その正体は岩肌の地面に鉄を擦り付ける音で、擦り付けている鉄は摩擦により火花と熱を生じている。

 砂漠地帯で熱せられた地面がより高い熱を発するようになった頃、真っ赤になった鉄が振り上げられ……勢いよく振り落とす。

 

 

―斬竜ディノバルドの斬撃は、岩肌の壁を難なく斬り裂いた。

 

 

 このディノバルドは旧砂漠に適応したらしく、今日も巨大な尾の手入れを欠かさない。

 摩擦熱と太陽光の熱が合わさって高温を宿す尻尾は、火山地帯に及ばないものの古代林に比べれば研ぎ易い。

 その成果はディノバルド自身がしっかり理解しており、「今日も絶好調だぜー」と言わんばかりに吠えた。

 赤熱化した尾を引っ提げ、餌であるアプケロスを探そうと、彼らが居るであろう洞窟前に向かって歩き出す。

 

―ゴリゴリ、ゴリョ、ガリョリョッ

 

 ふとディノバルドは聴覚に響く不協和音を察知する。

 この音は聞き覚えがある。何せ己が先ほどやっていた行為で発する音と似ているのだから。

 音の正体を確かめるべく、普段はガレオスが泳ぐ砂地が広がるエリアへと足を運ぶ。

 

 

 

―――

 

―ガリョリョ、ガリョン、ゴリッ

 

 その正体は、飛竜種が体の一部を、剥き出しになった鉱石で研ぐ音だった。

 様々な鉱石が一緒くたにされている地層に向け、一心不乱に頭を突き出して角を擦らせる。

 角の強度は非常に硬いらしく、ドラグライト、下手をすればカブレライト鉱石ですら押しのける程。

 

 

 その角の持ち主はディアブロスであり―――ディアブロスと呼ぶには奇妙な(ナリ)をしていた。

 

 

 まずは大きさだが、イビルジョーに次ぐ図体を持つディノバルドより一回りほど大きい。

 次に角と尾の形状。大きくなったのは勿論の事、角と尾の先端は盾のように幅広くなっており、両刃の斧のような鋭さも併せ持つ。

 そして角と尾を始めとした体中に、鉱石で磨いたのであろう鉄粉がアチコチに散布されている。

 傷痕も多く、鉄粉と合わせて歪な印象を持つが、同時にこの個体の荒々しさを物語っている。

 

 背後から襲わず佇むディノバルドも、ディアブロスの厄介さ、内に秘める狂暴性を甲殻越しから感じ取ったのだろう。

 敢えて意識をコチラに向けさせようとディノバルドは軽く吠え、ディアブロスは音に反応して其方を向く。

 ディアブロスはディノバルドの存在に気付いた途端、一瞬にして怒りの黒煙を吐きながら咆哮を轟かせる。

 

―ギィオオオォォォォォォ!

 

 音に遅れてやってくる爆音。爆発するような高音を前に、ディノバルドは後ろ脚をしかと踏みしめて身を固める。

 ここはひたすらに広い。なのでディノバルドは深く考えず跳び、特大の尾刃を叩きつける!

 

 しかしディアブロスは両後ろ脚をしかと固定し、身を屈めることでディノバルドの尻尾を、なんと幅広くなった角で受け止めた。

 赤熱化していなかったこともあるだろうが、巨大な尻尾を角だけで受け止めるのだから、その硬度が知れる。

 

 ディアブロスは角竜らしい膂力を持って尻尾を押し出し、ディノバルドはそれに合わせて尾を引く。

 それだけでは終わらず、引いた勢いをそのまま回転力に転じ、発火性の高い尾を砂地に擦り付け、摩擦熱で赤熱化した尾を振り上げる!

 

 熱を帯びて攻撃力を帯びたディノバルドの尾を、ディアブロスは尾の先端で弾き飛ばした。

 ハンマーのようなコブではなく、分厚いバトルアックスのような形状の尾はディノバルドの斬撃を逸らす事に成功。

 そのまま遠心力も加わってディノバルドの態勢が崩れたのを切っ掛けに、今度はディアブロスが叩きつけるように頭を振りかぶる。

 

 右から左、左から右と頭を振り、尾と同じく刃のように鋭くなった角がディノバルドの胴体に傷をつける。

 荒々しく硬い甲殻に傷をつけるとは大したものだ。しかしディノバルドを倒すには物足りず、翼の付け根に噛みついた!

 分厚い尾を研ぐほどの咬力は伊達ではなく、噛みつかれたディアブロスはあまりの痛覚にもがき苦しむ。

 

 ここでディアブロスは角だけでなく尾の攻撃も加えようと、身を「の」の字に曲げて尻尾攻撃も加える。

 ディノバルドの尾と違ってこちらは両刃故に横への攻撃判定が大きいので、ガシガシと斧のような尻尾がディノバルドの横っ腹に食い込む。

 ディノバルド程ではないが重い一撃には違いなく、ディノバルドはあっさりとディアブロスを手放し、バックステップで距離を取った。

 

 ディアブロスが確かめるように翼を羽ばたかせながら威嚇する中、ディノバルドは高炉のような喉に火をつける。

 口内に溜まった煤が高温によって融かされマグマとなり、ディノバルドの攻撃準備は完了した。

 

 対するディアブロスも準備は万端だとばかりに後ろ足で砂を蹴り、徐に身体を丸めだす。

 先ほどの攻撃よりも「の」に近い、尾を自らの頭にくっつけるような体制は、まるでディノバルドのあの一撃(・・・・)の構えのよう。

 

 その動きを誰よりも理解しているディノバルドだからこそ、彼もまた動きを見せる。

 マグマを溜めた口で己の尾を噛み、口と尾で互いに引き合って力を溜める。

 

 

 

 二者が己の尾に力を溜めこむ中――――ディアブロスが先に動く!

 

 

 

 頭を右に尾を左に回すことで独楽のように高速で回転し、遠心力を持ってディノバルドに叩きつける。

 原種よりも大きく太くなった斧尾はディノバルドの顔の側面に直撃、溜め行為であったこともあって思わず怯んでしまう。

 

 怯んで口を離したことでバランスを崩すディノバルドだが、ディアブロスは勢いに乗じて角で斬り裂き、また尾をぶつける。

 こうして連続攻撃が決まり、ディノバルドに多大な傷とダメージを負わせるのだ。

 

 角と斧が容赦なくディノバルドに襲い掛かり、側面から滅多打ちにされて大小様々な傷を負っていく。

 ディアブロスの回転の勢いが収まると同時にディノバルドは立ち上がり、連続で叩きつけられた衝撃で立ち眩んでしまう。

 

 

 

 ここでディノバルドの取る行動は―――後ろへ全速前進DA☆

 

 

 

 こりゃたまらんと思ったのだろうか、獲物には執念深い事でも有名なディノバルドはあっさり退散。

 それに対してディアブロスは「一昨日来やがれ!」と言わんばかりに背を向けて逃げるディノバルドに吠える。

 

 どうやら先ほどのは小競り合い感覚の争いだったらしい。

 攻撃的なモンスターが向き合うと小競り合いでも重い一撃を軽んじて放つもの……なのだろうか?

 現にディアブロスは先ほどの戦いなど無かったかのように平然とサボテンを食らっている。それでいいのか角竜。

 

 

 兎にも角にも、このディアブロスの戦闘能力の高さは斬竜をも退ける程だと言うことが解った。

 角と尾が発達し、それを鉱石で【研ぐ】事で分厚さと鋭さを両立させ、それを武器に戦う。

 斧のように斬り裂き槍のように突く角竜。原種のパワーに鋭さと防御力、そして技の豊富さが併せ持った。

 

 

 

―まさに【斧槍角(オノヤリヅノ)】の2つ名に相応しいモンスターと言えよう。

 

 

 

―――

 

 近年、旧大陸でいう「特異個体」なる個体が、龍歴院の調査により各地で発見されるようになった。

 このモンスターは原種の特性を異常なまでに伸ばし、身体能力を始めに驚異的な力を秘めている。

 これらのモンスターは通称「2つ名持ち」と呼ばれ、いずれも特性に見合った名を持つ。

 

 例えば、アオアシラに圧倒的なパワーと巨体を併せ持った【紅兜】。

 

 例えば、鋏が巨大化し異常な防御力を得たダイミョウザザミ【矛砕】。

 

 例えば、猛毒を上回る「劇毒」なる毒を内蔵するリオレイア【紫毒姫】。

 

 いずれも特別な許可証を発注しなければならない程に強く、そして難易度が高い。

 決して軽んじたりしてはならず、装備と道具の用意は念入りにしなければ命にかかわる。

 もちろん討伐できれば見返りは大きい。2つ名持ちと呼ばれしモンスターの素材は強く、強力な武器や防具に転ずることができるからだ。

 

 

 

 そんな2つ名モンスターは、今後増える可能性がある。

 少なくとも、未知の樹海で育った【斧槍角】という存在がいる以上、可能性は低いとは言い切れない。

 

 

 

―モンスターの進化に、新たな道筋が誕生した瞬間でもあった。

 

 

 

―完―




更新優先なのでいつも半端ですが、いつか決着まで書いてみたいなぁ。
そんなわけでディアブロス変異種でした。変異種っていうより2つ名が似合うなーと思って書きました。

私はまだ2つ名モンスターと対峙したことがありませんが、いいですねぇ2つ名って。
亜種とは違った、そのモンスターの個性を更に引き延ばすような進化って素敵です。
この斧槍竜も個性を引き延ばした存在なので、2つ名モンスターにさせてもらいました。

おかげで斬竜との対決の妄想で執筆が捗る捗る(詳細になるとは言っていない)

簡易的ですが、作者風「斧槍角」の紹介を。
本来の設定は活動報告「Monster Hunter Delusion in Hameln 2」にあります。

●変異種紹介

2つ名:【斧槍角(オノヤリヅノ)】
角と尻尾の形状が変化したディアブロス。未知の樹海で育ったが旧砂漠に移動した。
斧のように平たく鋭くなった角と尻尾で斬り裂いたり防御したりとかなり応用が効く。
この角と尻尾の形状と硬度を維持する為、採掘ポイントで「研ぐ」習性を持つ。
その研ぎの際に鉄粉などが体に付着する為に防御力が高く、見た目が鉄っぽくなる。

○本日の防具一覧

●斧槍角シリーズのスキル一覧
・斧槍角(攻撃力UP【大】・防御力UP【大】・連撃の複合スキル)
・体術+2
・研磨術

活動報告にて新しい募集内容を足す予定。妄想が出たら寄ってらっしゃい見てらっしゃい(笑)
ではでは!今後も読者様のアイディアを中心に好きなようにモンハン妄想書いちゃいます!

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