Monster Hunter Delusion【更新停止】   作:ヤトラ

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正直転生者要素が邪魔に感じてきました。募集しておいてすみません(汗
なので心機一転、転生者要素を完全に排除して書かせてもらいます。
作者の嫌悪や自慰的な欲求を露出させてしまい、本当に申し訳ありません。

読書前の(どうでもいい)お願い:ガムート戦闘BGMを聴きながらお読みください。



Extra8-3「雪原」

 この日、全てを白く染める雪の世界「雪原」では猛吹雪が舞っていた。

 ポッケ村に近い雪山の反対側に位置する麓には針葉樹の森がまばらに広がっており、大半が雪原となっている。

 雪で埋もれたこの地には寒冷地に強い植物が多く眠っており、意外にもガウシカやポポ、ケルビといった草食種が多い。

 

 しかし雪原地帯というものは何処もが過酷な土地。食性を保てず低温で命を落とすなどザラにある。

 加えて針葉樹により降り積もった雪が落ちて群れが全滅する事も多いので油断ならない。

 そして木々が少なく平地が広いこの地では、吹雪の中でも互いの姿を認識しやすく、縄張り意識の高いモンスターにとっては神経を尖らせ易い。

 

 

 今まさに、その縄張り意識の高いモンスターの群れ同士が争おうとしていた。

 

 

―――

 

 吹雪荒れる雪原にて、二組の群れが対峙している。どちらも白いに近い体色故に見つかりにくいが、互いはしっかりと見据え睨み合っている。

 

 一方は雪獅子ドドブランゴ率いるブランゴの群れ。

 背後で子分達がいきり立って跳ねる中、ボスのドドブランゴは両手を地面につけて唸っている。

 

 もう一方もドドブランゴらと同じ牙獣種……【雪狼(セツロウ)】ガルゥと、その上位種【大雪狼(ダイセツロウ)】ドスガルゥである。

 見た通り狼を大きくしたようなモンスターで、灰色の体毛を持つガルゥと、ガルゥの二倍以上の大きさを持つ白銀のドスガルゥに分かれている。

 もっとも、このドスガルゥも本来はガルゥと同じ灰色なのだが、雪を体に纏う習性によって白銀に見えるだけだ。

 

 そんなドスガルゥはガルゥ達を置いて素早い跳躍で先陣を切り、ドドブランゴに飛びかかる。

 ドドブランゴはバックステップでこれを回避。勢いを殺す程の跳躍を持って、その逞しい剛腕で攻撃を仕掛けた。

 ドスガルゥは敢えて前方へ走る事でドドブランゴを潜り抜け、さらに一斉に飛びかかって来たブランゴ達ですら軽々と振り切る。

 

 ブランゴ達から距離を取ったドスガルゥは急転換し、軽い衝撃波を伴う程の咆哮を轟かせ、ブランゴ達を怯ませる。

 だがドドブランゴは別だ。ボスの風格に似合う肝っ玉はドスガルゥの咆哮に怯む事なく突き進む。

 

 ふと、ドドブランゴと並列する影が2つあった。ガルゥらである。

 二匹のガルゥらは甲高い吠えでを威嚇、ブッ潰してやんよ!と言わんばかりにドドブランゴは急停止して横殴りを噛ます。

 フットワークでは負けるが速度ならガルゥに采配が下るらしく拳を潜り抜け、もう片側のガルゥが隙を突いて背中に噛みつく!

 

 だが剛毛で身を包んだドドブランゴには効果が薄い。すぐさま引っぺがそうと手を伸ばすも、ガルゥは力不足と悟ったか直ぐに離して退散。

 牙を剥き出しにして怒りの姿勢を見せる中、ドドブランゴは周囲からの声を聞いて改めて状況を確認する。

 

 ドスガルゥが1匹のブランゴを噛み殺した直後で、その周りではツーマンセルとなったガルゥ達がブランゴ達を追い詰めていた。

 ガルゥらは狗竜のように鳴き声でチームワークを構成する習性がある他、ドスガルゥは獲物を観察する高い知能を持っている。

 二匹のガルゥで一瞬でもドドブランゴを引きつけ、その隙にスピードを持ってブランゴを一匹ずつ噛み殺す。それがガルゥらの作戦なのだろう。

 

 だが力と数ならドドブランゴらが上だ。子分を殺され怒りの吠えを轟かせたドドブランゴは素早いステップでドスガルゥらに挑む!

 そして子分達も負けじと雪の中へ潜り、ガルゥ達の包囲網を抜け出そうとしている。

 ガルゥらにはない雪中移動に戸惑う中、ドドブランゴの剛腕が一匹のガルゥを殴りつけ、遠くへとぶっ飛ばした。

 

 ドドブランゴをガルゥらが取り囲み、ドスガルゥはドドブランゴの前で唸り声を上げながら姿勢を低くし飛びかかる態勢に入る。

 怯える気配の無いドドブランゴは大声で吠え、それを合図にガルゥの包囲網外の地面からボコボコとブランゴ達が出てくる。

 流石のガルゥも背後からの出没には驚いたらしく統率を見出し、牙と拳をぶつけ合う大乱闘に発展。ドドブランゴはそれに乗じてドスガルゥに飛びかかるが―――。

 

―ウオォォォンッ!

 

 まるで小さな爆発が起こったかのような轟音。至近距離、それも正面から聞いては流石のドドブランゴも怯んで立ち止まる。

 ドスガルゥの咆哮に混乱していたガルゥ達はドスガルゥに視線が向き、続いてドスガルゥがバリエーション豊かな吠えを織り交ぜる事で動きが変化。

 今度はブランゴ達を攪乱するかのように入り乱れ、今度はブランゴ達を翻弄する作戦に変更。

 その攪乱っぷりはドドブランゴですら「どこから来るんだ?」と言わんばかりに周囲を慌ただしく見渡す程。

 

 ドスガルゥはドドブランゴを挑発するかのように牙を向けて唸り声を上げる。

 ドドブランゴは混乱を通り越して苛立ちを覚えたのか、怒りを叩きつけるかのように腕を振り落とし、咆哮を轟かす。

 

 

 二種の群れのリーダー……それこそ犬猿の仲である二匹が激突しようとした―――その時。

 

 

―――

 

―キュイィィィィィィ……!

 

 吹雪の中ですらはっきりと聞こえる鳥が上げるような鳴き声に、ドスガルゥとドドブランゴは立ち止まり、しきりに空を見渡した。

 攪乱していたガルゥや飛びかかっていたブランゴ達ですら一時停戦とばかりに動きを止め、不安げに空を見上げている。

 

 そしてゴウゴウと、吹雪とは別の暴風が吹き荒れる音を静かに響かせ、その音が徐々に牙獣種達に近づいていき―――その姿が見えて来た。

 

 巨大な翼。鋭い鉤爪と蹴爪。白が混ざった茶色い毛色に覆われた鳥のようなフォルム。

 しかし鳥竜種では無いと物語らせるのは、翼を伸ばした身体に屈強な四肢が生えているからだ。

 リオレウスの骨格に強靭な前脚が生えたような姿を持つこのモンスターは、吹雪が荒れ狂う空を悠々と飛び、牙獣種達に近付きつつあった。

 

 そして狙いを定めたのか翼を降り畳み急降下。真上から落ちてくると悟ったドスガルゥとドドブランゴは慌ててその場から逃げ出す。

 四足の鳥は直前で翼を広げ一気に減速、積もった雪を吹き飛ばしながら鉤爪の四肢で着地し、翼を広げて大きく見せ威嚇する。

 

 鷲のような頭部と翼を持ち、鳥のような蹴爪と鉤爪が生えた足と鳥の面影がある一方、獅子のような逞しい前脚と後ろ足を持つモンスター。

 伝説の魔獣グリフォンのような姿を持つこのモンスターは、ギルドや古龍観測所ですら未発見とされている伝説の存在。

 

 その名は「バルネイド」。別名「天翼鳥(テンヨクチョウ)」。世にも珍しい種「鳥獣種」にカテゴライズされことになるモンスターだ。

 

 どうやらバルネイドもまた縄張り意識が強いらしく、ドスガルゥとドドブランゴの縄張り争いを空から見て我慢できなくなったのだろう。

 言ってみれば「俺も混ぜろよ」状態で、身を低くして翼を広げながら完全に二匹を敵と認識している様子。

 

 その高い飛翔能力で雪山に降り立ちドスガルゥとドドブランゴの群れを追いやった存在を前に、二匹の牙獣種は唸り声をバルネイドに向ける。

 ブランゴやガルゥも追い出された恨みを忘れていないらしく、犬猿の仲であることを置いても見事な連携で即座に包囲網を敷き詰めた。

 

 バルネイドはそんな彼らを前に差を見せつけるべく翼を畳み、前脚を伸ばして頭を天に向けて咆哮。

 鳴き声は鳥そのものだが、姿はまるで獅子の如く。ブランゴとガルゥは怯むが、それを掻き消すように牙獣種の咆哮が律を正す。

 

 まず先手を取ったのはスピードのあるガルゥ。今の咆哮は足を崩せという指示らしく、バルネイドの足元にガルゥ達が駆け寄る。

 地に足を付けたまま翼を広げ、そのまま強く振り下ろす。それだけで吹雪と思えるような暴風が周囲に伝わり、小柄なガルゥ達を吹き飛ばしていく。

 

 次はブランゴ達。ガルゥ達に無い跳躍力で上から攻撃を仕掛けるらしい。

 暴風の勢いも借りて四肢を伸ばしてバルネイドが跳躍。次々とブランゴ達が地に着く中、鋭い鉤爪と蹴爪で踏みつける。

 何匹か難を逃れたが数匹のブランゴが鉤爪の餌食となり、深く食い込まれ掴まれる。バルネイドは前脚に力を籠めて踏み潰す。

 

だがそこへドドブランゴが殴りつけ、横から頭部を殴りつける事に成功。飛竜種のような防御力は無いらしく横転してしまう。

そこを逃すドスガルゥではない。横転したのを良い事にガルゥ達と共に密集、翼をもぎ取らんとばかりに噛みつく!

 

だが暴風を生み出す程の翼力は伊達ではない。数匹でも小柄なガルゥごと翼を広げて起き上がり、ドスガルゥに対し鋭い嘴を向けて応戦する。

後ろからドドブランゴの雪玉ストレートがぶつけられるものの、今度は翼を何度も羽ばたかせて起こした暴風によって小柄な連中を吹き飛ばした。

 

そのまま飛翔、鉤爪を見せつけるように滞空しながらバルネイドは咆哮を轟かせた。

空を飛び鋭い爪を見せつけられても怯むような二頭ではないらしく、子分らと合わせて甲高い咆哮を轟かせる。

 

 

弱者を率いる強者が上か。一匹で生き抜く強者が上か。

片や雪山を追い出された恨みを晴らさんと意気投合し、片や雪原ですら縄張りに戦と数の暴力を前に挑む。

厳しい環境下に置いてはよりシビアな弱肉強食を強いられ、そして数多の勝敗が決せられる。

 

 

 

鋭い爪を振り下ろさんとバルネイドが滑空。二匹の牙獣種は腕と牙を武器に鳥獣種に挑む。

 

 

 

―完―

 




●簡易的紹介

名称:ガルゥ
別名:雪狼
種族:牙獣種
名前の通り降雪地帯に生息する狼のような牙獣種モンスター。大きさはジャギィ程。
大雪狼ドスガルゥをリーダーに3~4匹の群れで行動し、仲間で狩りを行う。
縄張り意識と仲間意識が強く、群れ全体で素早く動いて翻弄し、敵を弱らせて仕留める。

名称:ドスガルゥ
別名:大雪狼
種族:牙獣種
雪狼ガルゥのリーダー格。雪を体に纏う習性を持つ。大きさはドドブランゴ程。
狗竜のように複数の遠吠えでガルゥ達を大まかに指示、仲間意識を持って強敵にも挑む。
鋭く大きな牙を用いて喉笛に噛みついて獲物を仕留める。素早くて勇ましい雪原の猛者。

名称:バルネイド
別名:天翼鳥
種族:鳥獣種(オリジナル)
鷲の体に獅子のような体躯を持つ鳥と獣が合わさった新種のモンスター。
大きな翼からは龍風圧に匹敵する暴風を生み出し、鋭い嘴と鉤爪、蹴爪で攻撃する。
甲殻が無いので竜種では無いが、姿から見て古龍種を遠い祖先を持つ説が浮上している。

犬猿の仲を再現したかったこともありますが、そう言えば狼のようなモンスターってジンオウガぐらいで少ないなぁと思って妄想しちゃいました。
天翼鳥は新ジャンル開発という偉業を成し遂げ、そのカッコイイ姿を妄想して登場させたくなりました。風で吹き飛ばしながら戦うってオーソドックスで良い!

そして悟りました。人間要素ゼロの方がすっごい書きやすい!
このスムーズな書き速度。これ今日一日で書いた作品なんですけど(汗)

やっぱり私の小説は他所の知識を入れるべきでなく、モンハン100%で挑むべきでした。
今年中に最後のモンハンデルシオンを投稿できるよう頑張りますので、生暖かい目で見守ってください。

ではでは。

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